166)穴を掘る

 大同での植樹の適期は短いのです。土が凍結しているとコンクリートのように硬くて穴を掘れません。ことしの冬はとくに寒く、長かったので、凍結が融けるのが遅かったのです。そして苗は冬眠しているあいだに植えるのがいいのです。芽が動き出すと活着率が下がります。4月中旬になって急に気温が上がり、一挙に春の気配です。このような年は植樹適期が20日もありません。
 私たちの実験果樹園はいろんな事情で作業が遅れ、整地をはじめたのが4月になってから。日立建機から贈られたショベルカーが穴掘りに大活躍していますが、それでもまにあいません。そのうえ6つのツアーのほかに日本のテレビ局の取材まで重なって、関係者はてんてこまいです。カウンターパートの武春珍所長の表情もこわばってきました。
 ボランティアの労働力がこれほど期待された年はありません。縦横60センチ、深さ60センチの穴を掘ります。たいていの人は都市の育ちでスコップを持つのも初体験。最初の2つくらいは悪戦苦闘ですが、だんだん慣れてピッチがあがります。いっしょに働く中国の農民が「日本人が勤勉だとは聞いていたけど、これほどだとは思わなかった」と感心していました。どういうわけか今春は雨が多く、土が湿っていて掘りやすかったことも幸いしました。2時間半で351も掘りました。1人平均9個です。私もがんばったので、翌日は両方の腕が筋肉痛です。
 【写真】わき目もふらずに穴を掘る。ショベルカーの効率をみると、労働意欲がしぼんでしまう。
 (2008年5月5日号)
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