![]() | チェーン・ポイズン (講談社文庫) |
クリエーター情報なし | |
講談社 |
「チェーン・ポイズン」本多孝好
「本当に死ぬ気なら、一年待ちませんか?」
音を失ったバイオリニスト。陰惨な事件で家族を失った男。真面目だけが取り柄の三十路のOL。三人に共通して訪れた、ある毒薬による自殺に不審を抱いた週刊誌記者・原田は、まだ事件として覚知されていない事件の向こう側に、死のセールスマンの存在を嗅ぐ。果たして、死のセールスマンの狙いとは? 被害者それぞれの、最後の一年間の過ごし方とは?
うおお、面白いっ。
暗いOLの一人称から始まるストーリーは、陰鬱で、救いがなくて、最後の一年間に突入しても目立った希望は見えてこない。特段絶望するほどの状況でもないが、すでに彼女は覚悟を決めているわけだし、やっぱりこのまま死ぬしかない。暗すぎる重すぎる……。
どうしようかと思っていたら、中盤以降に一気のマクリがあった。女が仕事を辞め、身寄りのない子供を引き取って育てる施設のボランティアになり、子どもたちからおばちゃんと呼ばれ、馬乗りになられたり、蹴られたりしながらも愛を育み、いつの間にか存続の危うい施設のために立ち上がっている姿が熱かった。しかも施設を救うための方法が、自殺志願者にのみ許される例のアレときては……。
誰かのために生きる。
命を燃焼し尽くす。
ヘタするとチープにしか聞こえない言葉が、万言の重みとともにのしかかってきた。
迫るタイムリミットと。
やっぱり死にたくないという気持ちと。
でもやっぱり死ぬしかないという諦観と。
危うい境界線上にあるいくつものことが、色鮮やかに描かれていてまぶしかった。
涙が出たのはきっとそのせいで……。
最後のどんでんがえしもお見事の一言。ファンになりました。おススメ!
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます