はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

丘ルトロジック

2011-01-24 08:35:39 | 小説
丘ルトロジック 沈丁花桜のカンタータ (角川スニーカー文庫)
耳目口 司
角川書店(角川グループパブリッシング)


「丘ルトロジック」耳目口司

 風景をこよなくする愛する男・咲丘は、入学先の神楽咲高校に丘研なる同好会があることを知り、胸を高鳴らせた。きっとそこには、一般人には切り取れぬ素晴らしき「丘」の風景を愛で合う人たちが集っているのだろうと勝手に思いこんで。
 だが、蓋を開けてみるとそこには「丘」を愛している人などひとりもいなかった。尊大な美少女・沈丁花率いるオカルト研究会は、都市伝説の収集と回収を目的に活動する、どう解釈しても終わってる同好会だった。
 沈丁花の強引な勧誘に屈し、丘研に所属することとなった咲丘は、しかしシーモネーターな同期の美女・江西陀や突撃特攻先輩・出島進、マッドサイエンティスト・女郎花などの一癖も二癖もある人物たちと交流を深めるうちに、いつの間にかそこが居心地の良い場所になっていることに気がついた。
 丘研に居続けることになった咲丘は、だがまだ理解していなかった。丘研の活動の真の恐ろしさを……。

 個性的なメンバーたちとのやり取りが軽妙で面白かった。都市伝説の探索も、日常からちょっと離れたところで起こる出来事の不気味さにぞくぞくさせられた。実際、そこまではとても良かった。良かったのだが、咲丘が「キレた」後半以降でいきなりギアが変わった。変わりすぎた。彼の異常性癖と、丘研メンバーの突飛な発想についていけなくて、正直厳しかった。作者の文章も、変に飛ぶ癖がきつくて、混乱させられる場面が多かった。
 とはいえ、先にも書いたようにメンバーとのやり取り自体が面白いので、そこだけでも十分楽しめた。咲丘と、江西陀、清宮(咲丘の同級生・男の娘)、沈丁花ら女性陣(?)との、恋……というほどのものではない、男女の微妙な機微が個人的にツボった。
 続編……は無理っぽいけど、なかなかの怪作なので、今後に期待したい。

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