セリヌンティウスの舟 (光文社文庫 い 35-4)石持浅海光文社このアイテムの詳細を見る |
「セリヌンティウスの舟」石持浅海
米村美月、吉川清美、大橋麻子、三好保雄、磯崎義春、主人公の僕・児島克之を含む6人は、かつて、石垣島のダイビングツアーで大時化の海に放り出されるという絶対絶命の危機を乗り越えたことで仲間になった。そんな、利害関係を超えた信頼で結ばれた友人の1人、米村美月が、ダイビングの打ち上げの夜に青酸カリを飲んで自殺した。どうして彼女は死んだのか、死ななければならなかったのか、わずかな遺留品と状況証拠から、僕らは推理を始めたのだ。誰かを吊るし上げるためではない。共に彼女の死を悼み分かち合うために……。
メロスを待っていた男、セリヌンティウスになぞらえた「新本格」ミステリー。
いかにも「新本格」らしい作品。動機は二の次で推理そのものを楽しめる人には向いている。ほぼ固定シーンで、当日の現場の写真と当人たちの証言のみをもとにああでもないこうでもないと推理をこねくりまわす構成も、初心者が読むには敷居が高いかもしれない。
酔いつぶれごろ寝する仲間を見つめながら命を絶つ、という情景がたまらなく切なかったので読み始めたのだが、動機がどうしても納得いかなかった。もっというとうさん臭い。そんな奴いない。
後半の、主人公と清美が動き出すシーンからはかなり面白かった。人間同士の会話に飢えていたのかもしれないが、2人の心の通い合いが気持ちよく感じた。
ラストは軽い驚き。でもやっぱり動機がネック。自殺ではなく他殺だったら腑に落ちるのだが……。セリヌンティウスにゃなれそうにありません。
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