刀語 第一話 絶刀・鉋 (講談社BOX)西尾 維新講談社このアイテムの詳細を見る |
「刀語 第一話 絶刀・鉋」西尾維新
丹後沖にある無人島・不承島に流された虚刀流六代目・鑢六枝(やすりむつえ)の息子にして現当主の七花は、病弱な姉の七実を支えながら、2人きりでのどかに暮らしていた。
比喩ではなく本当に一本の刃物すらもない島で、類希なる運動能力と六枝直伝の虚刀流の技を磨き上げながら送る日々は、他に世の中を知らない見たこともない七花にとっては、平凡だけれども幸せそのもので、これからもきっとずっと、誰にも邪魔されることなく続いていくものだと思っていた。
1人の少女が島を訪れたところから、物語は動き出す。少女の名はとがめ。尾張幕府の奇策士を務めるという総白髪の彼女は、驚くべき事態を明かした。所有数がすなわち国としての力の優劣を表すとまで噂される刀鍛冶・四季崎記紀(しきざききき)の1000本の名刀。中でも12本の際物を巡って、各勢力が凌ぎを削っているのだという。
だがなぜ、流された虚刀流のもとを訪れなければならないのか。それは四季崎の名刀を手にした人間は、残らず刀の持つ妖気にあてられてしまうためだ。まず真庭忍群が、ついで最強の剣客・錆白兵(さびはくへい)が裏切った。そこで、金にも剣そのものにも心乱されることのない「無刀」の達人に白羽の矢が立ったというわけだ。
そんなとがめの説明を聞いてもいまいちぴんとこない七花を、突如真庭忍群が1人、蝙蝠が襲う。続けざまに明らかになるとがめの意外な経歴と覚悟が、外界を知らぬ少年剣士の心を揺さぶって……。
戦国時代とは思えぬほどのポップな文体。漢字検定でも受けているかのような難解な人名。心理描写のまわりくどさ。西尾の文章はあまり好きではないのだけど、そこにさえ目を瞑れればけっこう読める。四季崎の刀を巡る剣客や幕府や忍たちのバトル展開は文句なく熱いし、親の仇の息子の力を借りてまで成り上がろうとするとがめのあざとさと思い切りには目を引かれるものがある。一冊一冊のお値段がちと高いが、とにかく2巻を読んでみようとは思うのだ。
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