正義のミカタ―I’m a loser | |
クリエーター情報なし | |
双葉社 |
「正義の味方 I'm a loser」本多孝好
蓮見亮太18歳。高校生まで筋金入りのいじめられっ子だった彼は、勉強の末に大学に入り、人生を変えようと思っていた。バカ高校だった出身校からは誰も来ない新天地での大学デビュー。……はしかし、新歓で賑わうキャンパス内で、いじめっ子の一人・畠田に再会したことで狂ってしまう。
またあの時のような地獄が始まるのだ。やはり、自分のような屑が大それたことを夢見るのではなかった。いっそ大学辞めちゃおうかな……発作的にそこまで考えた蓮見を助けてくれたのがトモイチだった。インハイ3連覇を成し遂げたボクサーである彼と友人になった蓮見は、さらに蒲原さんという美人ともお近づきになり、さらにさらに「正義の味方研究会」というある種の大学の自治会のような会にも所属し、今まで持っていなかった自分なりの居場所を確保していく。
大学内の悪を駆逐する研究会活動を中心とした大学生活の中で、蓮見が獲得した大切なパーソナリティーとは……。
「チェーン・ポイズン」が面白かったので。
純正いじめられっ子の蓮見が、コンプレックスを跳ね除けながら、彼なりに悪と戦っていくというシチュエーションが良かった。正義とは何か。世の不平等。さばけぬ悪。深いテーマも盛り込まれていて、考えながら読まされた。
でも気になるところは三つあって。
一つは、トモイチに習ったボクシングがなんの役にも立たなかったこと。暴力で解決しては意味ないってことなんだろうけど、じゃあなんで出した、なんで練習した? そう思えてしかたがなかった。最低限の自衛戦力。大切なものを守るための武力。それは必要だろう? 正義云々は別としてさ。「ホーリーランド」みたいにしろとはいわんけど。
もう一つは、最後の「あの人」の変貌。蓮見との対比……にしても変わりすぎでしょ。完全に狂人だよ、これじゃ。一連の対決展開は最高だったのに、そこだけ戯画化されすぎていた。
最後の一つは、トモイチ、蒲原さんらとの青春模様。これもね、全然中途半端だった。道半ばとはいえ、もうちょいすっきりしたかった。
上にも挙げたけど、それぞれの正義をぶつけ合う終盤の流れが良かった。そこだけでも見て損なし。
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