はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

ランド・オブ・ザ・デッド

2007-06-25 23:31:00 | 映画
 川を見ていた。
 水面には電気の光りに輝く高層ビルが映っていた。
 彼はしばらくその光景に見とれたあと、やがて無造作に一歩を踏み出した。

「ランド・オブ・ザ・デッド」監督:ジョージ・A・ロメロ

 近未来、地上のほとんどをゾンビに支配された人類は、要塞化した都市を築きそこに立て篭もるように生活していた。元はピッツバーグと呼ばれていたその街も、そうした多くの例に倣い、三方を川に囲まれた土地を防護フェンスで覆っていた。高層ビルに住む富裕層とその周りに這い蹲うようにして住まう貧困層。カウフマン(デニス・ホッパー)の指導のもと、厳格なる身分制が敷かれていた。
 ライリー(サイモン・ベイカー)は、武装した傭兵隊を率いて外界を探索するのを生業としていた。廃墟と化した街や店を物色しては食料や薬品、衣類に燃料などの生活物資を調達し、貧困層と富裕層に分け隔てなく供給していた。幾多の修羅場を潜り抜け、何千体ものゾンビを観察してきた彼は、ある疑問を抱いた。
 ゾンビが知恵をつけ始めているのではないか。
 未熟な会話(奇声)。道具の使用。生きていた頃に戻ることを追求したゾンビたちが、そのために成長している。それは身の毛もよだつような恐怖だった。
 厭世観を感じ、傭兵を辞めて車を手に入れ、北はカナダを目指そうと思い立ったライリーは、しかし車の入手のトラブルから人を殺してしまい、牢にぶち込まれることになる。だが、カウフマンに反旗を翻し武装蜂起したライリーの部下チョロ(ジョン・レグイザモ)を討つことを条件に釈放される。
 お供は顔面に大火傷を負って傍目にはゾンビにしか見えないガンマンのチャーリー(ロバート・ジョイ)と、見世物でゾンビと戦わせられていたところを助けたスラック(アーシア・アルジェント)、カウフマンの部下にして目付け役のマノレッティ、モニカ、ビルズベリーの3人衆。合わせて6人の混成部隊。彼らはピッツバーグへの大規模侵攻を開始したゾンビ軍団と擦れ違う形で街を出た。チョロの持つ装甲車を奪還し街へ戻るのが早いか、街がゾンビ軍団の猛攻の前に沈むのが早いか、多くの人の命を賭けたレースが始まった……。
 お見事、の一言に尽きる。20年ぶりにメガホンを持ったジョージ・A・ロメロ。まったく腕は衰えていない。彼独特の、人間っぽさの残ったゾンビや、ゾンビのいる世界で過ごすということの表現にむしろ磨きがかかっている。質感や空気すらもリアルに感じられるゾンビ映画なんて、滅多にお目にかかれるものではない。
 題名のランド・オブ・ザ・デッド(ゾンビの国)も、意味合いが深く作品に染みこんでいい味を出している。自分達の居場所を求めてさすらう死者の軍団と、楽園を夢想して北を目指すライリー。二つのさ迷える魂の彷徨の行く末を描いたラストは、斬新で、叙情的で、尾を引くような寂しさを湛えている。ファースト・ワンは、同時にグレート・ワンでもあるのだと、しきりに感動させられた。

ボアVSパイソン

2007-06-25 12:21:49 | 映画
「ボアVSパイソン」監督:デヴィッド・フローレス

 現代は「BOA VS PYTHON」とそのまま。「異生物同士の対決も飽きたから、そろそろ同種やってく?」、「いいねー」みたいな軽いノリを感じるバカ映画。
 巨大パイソンを密輸して狩猟しようとしていた若きカジノ王ブロディック(アダム・ケンドリック)。ボアという名のプロレスラーとパイソンという名のプロレスラーの対戦を見ながら美女とのひと時を楽しんでいた。しかしその頃パイソンを輸送していたトラックに問題が発生する。眠りから覚めたパイソンに鎮静剤を打ち込もうとした運び屋たちが全滅し、解放されたパイソンは洲の浄水場へ侵入する。
 場所が場所だけあって薬剤を流し込むことはできない。FBI捜査官シャープ(カーク・B・R・ウォーラー)は軍の展開と一帯の封鎖を施しつつ、二人の人間に協力を依頼した。ヘビの研究者エメット博士(デヴィッド・ヒューレット)と、イルカの研究者モニカ(ジェイミー・バーグマン)だ。エメット博士の飼育した巨大ボアにモニカの製作したAIチップGPSその他の機器を装着し、パイソンを追わせることにした。
 当初、追跡は上手くいっていたのだが、GPSからの情報をキャッチできなくなり、勇み足の軍人たちやブロディックの仲間の金持ちハンターなどの勢力が入り乱れ、浄水場は混沌と悲鳴の坩堝と化した……。
「エイリアンVSプレデター」、「フレディVSジェイソン」、「ゴジラVSメカゴジラ」……最後のは近いかもしれないが、異生物対決ものは世に多い。しかしまさか巨大ヘビと巨大ヘビを戦わせようとした人はこの人以外にいないだろう。しかもボアとパイソンじゃ生物学的にもそれほど大差ないし。戦う方法も基本噛み付き、巻きつきのみ。絵になるんだかならないんだかわからんじゃないかと思いながら借りてみたら、やはりB級。装備の貧弱すぎる金持ちハンター連中。装甲車からバズーカまで装備は充実してるが前線の部隊は小銃しか持っていないちぐはぐな軍など、つっこみどころ満載。縄張り争いの習性を生かして戦わせようとしたらオス(パイソン)とメス(ボア)だったから交尾しちゃったりするし、ほんとおバカな映画。ピット(赤外線感知器官)を眩ませて逃亡しようとするところなどは「おっ」と思ったものの、まあそのくらい。フルCGのヘビもあんまり迫力あるとはいえない。影のテーマがエメット博士やモニカの持つヘビへの愛情なので、ヘビ同士の激しい戦いを思い描いた人にはおすすめできない。