はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

小生物語

2007-06-21 02:00:29 | 小説
「小生物語」乙一

「夏と花火と私の死体」でデビューした。「GOTH」、「暗いところで待ち合わせ」などヒット作を飛ばし、多くの著作がメディアミックスされ様々な形で世に出ている。定金伸治、松原真琴などジャンプノベル出身の作家と仲がよく、たびたび旅行に出かけている。
 しかし小生は小生であって、乙一ではない。福岡出身で、羽住都と親しく、西尾維新や佐藤友哉と合コンをしたことがあっても、断じて=ではない。サインだって簡単じゃない。記号でいうなら≒。同じようでいて同じでない。違うようでいて違わない。真実は狭間にある。
 作家・乙一のブログを一冊の本としてまとめたもの。意図的に嘘ばかり書いている。乙一ならぬ小生という作家の書いたブログとして、有り得ないエピソードと事実を折衷させて、真実をあやふやにするような特殊な書き方をしている。それが乙一≒小生を生んでいるのだが、とするとこれも一種の叙述トリックといえるのだろうか。
 乙一自体は好きだが、この本は×。面白い試みだとは思うが、200ページ以上も引っ張るにはネタがくどすぎる。中古のソファにくっついてきた少年幽霊の話や、自分の通っていない大学のサークルメンバーとして同人誌を書いた、なんていう人を食った展開にらしさを感じるものの、その程度。やはりこの人は小説を書く人であってブログを書く人ではないのだなあと痛感した。
 途中「角川スニーカー大賞に応募した、死んだ息子の原稿を返して欲しい」という母親の話が出てきたが、これは本当なのだろうか。狼少年の声を聞いた村人のような気持ちだ。