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はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

BIG‐4 2.ククク……ついに勇者が現れたか。ってぼくの妹じゃねーか!?

2012-05-24 20:30:05 | 小説
BIG‐4 2.ククク……ついに勇者が現れたか。ってぼくの妹じゃねーか!? (富士見ファンタジア文庫)
クリエーター情報なし
富士見書房


「BIG‐4 2.ククク……ついに勇者が現れたか。ってぼくの妹じゃねーか!?」大楽絢太

 どこぞのスズメに騙されて無理矢理魔界に送り込まれ、四天王が一人「知」の山田として君臨しつつ、人類抹殺計画を遂行し、魔王を目覚めさせ、ついでにそれを打倒するという回りくどい役割を仰せつかった山田は他の3人ともかなり打ち解け、普通に楽しそうな日常をおくっていた。
 がそこに、新たなる刺客が送り込まれる。山田雫。山田の妹にして、アイドルグループモーニング488の一員にして、人気実力ともいまいちなB級アイドルな彼女は、どこぞのスズメに騙されて勇者となり、魔王打倒を売りのアイドルになることを目的に、意気揚々と魔界へ侵攻してきた。
 のだが、3人の実力の前に手も足も出ず、出落ちのように敗退。魔界の闇に消えていった……。

 という騒ぎから始まる第2巻。個人的に一押しなアディの登場シーンがあまりなく、ユキと山田の「婚約者のフリ」や、イグナレスの「実は○○○だった」などベタな展開に押されまくりなのが残念だった。
 まあでも、一番の原因は雫だろうか。B級アイドルらしい世間ズレと、ポジティブシンキングとツンデレ成分まで併せ持つ彼女に完全に食われてしまった。山田にとって、唯一自分の正体を愚痴れる相手だというのもでかいか。これに打ち勝つには、さらなるデレか、ちょっとだけ垣間見えてたMっ娘成分を開花させるしか他あるまい。いや、ほんのちょっとなんだけどね。ほら、ツンデレMっ娘って強いじゃん?
 ストーリー的には、山田があっさりと魔族と人間の共存を計り始めたのが意外。このお話のメインテーマだから、もうちょっともったいぶると思ったけど、けっこうあっさりと出してきたなあ。変に長引かせられるよりはいいんだけどね。だれないし。
 

双子と幼なじみの四人殺し

2012-05-18 04:35:46 | 小説
双子と幼なじみの四人殺し (GA文庫)
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「双子と幼なじみの四人殺し」森田陽一

第三回GA文庫奨励賞の問題作。
や、本当に問題作でした。完全に地雷でした。

高校生の菱川迷悟は、幼なじみの双子の少女・新山一縷と朽縷と同居していた。ある事件がもとで両親を一気に亡くした者同士で遺産を共同管理して。
一縷は迷悟を愛している。朽縷も迷悟を愛している。迷悟も2人を愛している。双子は程度の差こそあるが似たようにエキセントリックな性格で、すぐ暴力を奮う。奮い様が半端じゃない。金属バットで人の頭を殴るのも朝飯前。迷悟も性格に問題ありで、自分の中の正義感に反する者を徹底的に人格を破壊するまで糾弾する。相手が誰だろうと関係ない。女でも容赦ない。
頭のネジの外れた彼らが、ある生徒の死に端を発する事件前に巻き込まれた結果、紙面にはいたたまれない惨劇が広がった……。

登場人物の誰ひとりとしてまともな倫理観を持ってない。それが怖かった。敵意と悪意と破壊衝動の海に、時折混じる迷悟たちのラブコメ的茶番も、食い合わせが悪くて何も誤魔化せていなかった。
オチも後味悪いし、つーか語られるべきところが抜けてるし、続きを想定してるにしても最悪の部類だと思う。非常に気持ちの悪い一冊。おすすめできません。

這いよれ! ニャル子さん

2012-05-15 20:07:08 | 小説
這いよれ! ニャル子さん (GA文庫)
クリエーター情報なし
ソフトバンククリエイティブ


「這いよれ! ニャル子さん」逢空万太
 
 女顔の高校生・八坂真尋は何者かに襲われていた。見慣れぬ街の暗がりを、行くあてもなく逃げ惑っていた。やがて行く手を高い壁で塞がれ、逃げを失った真尋は、白馬の王子ならぬ銀髪の美少女に救われた。
 無貌の神ニャルラトホテプを名乗る彼女は、その名の通りのクトゥルー神話の異形の神で、彼女らにとって、とある理由から保護対象である真尋を助けに来たと。

 以上。まあこの手のものに無粋なツッコミをしてもしゃーないので。
 とにかく見た目可愛い異形の神が主人公にぞっこんで、オタク文化に造詣が深く、様々な刺客とどたばた……というお話。
 ニャル子がひたすら真尋さんラブでひたむきで、手段を選ばない。それが心地よかった。ここ最近この手のまっすぐなヒロインはいなかったので、それだけでも見る価値がある感じ。
 様々なパロディやクトゥルーネタはともかく、ニャル子の可愛いさだけで見れる。アニメのほうが大好評で、小説のほうも売り上げが引っ張られてるらしい。いい流れだね。

まよチキ!(11 )

2012-05-12 04:12:06 | 小説
まよチキ!11 (MF文庫J)
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メディアファクトリー


「まよチキ!(11)」あさのハジメ

すったもんだの末に迎えたクライマックス前編巻。
冬休みの間に女性恐怖症を治す。治ったら、女性陣からの告白にしっかり答えを出す。そう決めたジローの、運命の冬休みが始まった。
女の子たちは、それぞれがそれぞれのやり方で、ジローへの最後のアプローチを行う。マサムネはスケート、涼月は神社で巫女服、スバルは天体観測。魅力的な彼女たちと過ごすことのできる最後の日々は、嬉しく恥ずかしく、何より切なかった……。

うんまあ、説明不要かな。ハーレムラブコメへ真っ正面からピリオドを打たんとする真摯さの窺えた、いい巻だった。それぞれに魅力的な彼女らへ引導を渡さなければならないジローの胸中はいかばかりか。そして選ばれなかった彼女らの気持ち……。
考えてたら無性に悲しくなってきた。とくに僕はマサムネ派なので、ようやく他人と交流できるようになったばかりの彼女を独りにするのが忍びなかった。スバルには涼月がいるんだし、マサムネ選んでくれないかなーと思ってたんだけど、ええ、はい、そんなわけにいかないですよね。わかってます。
わかってるけどさ……てのが、恋愛のいい面でもあるのよね。好きだったら選らばなきゃならない。選択には犠牲が伴う。犠牲は、痛みだよね。
ともあれ、痛みをこらえながら選択をしたジロー。ラストで衆目の中驚きの行動に出たスバルに、これまた驚きの行動で返す……って、マジですか? 意味わかんないんですけど。
内容は書かないけど……いやあ、それはさすがにうそくさいと思った。スバルにも涼月にも不誠実なんじゃないか? 作者の思惑通りなんだろうから、最終巻でも変える気はないんだろうけどさ…… 。うーん。

レトロゲーマスター渋沢(2)

2012-05-07 20:42:23 | 小説
「レトロゲーマスター渋沢(2)」周防ツカサ
 
 不良の渋沢君と、彼の素行を改めさせようと同じ土俵に上がった結果、ミイラ取りがミイラになった委員長。2人は今日も今日とて隠れ家でレトロゲー三昧。どM系少女秋葉や、クールなお嬢様の西園寺の参加により、彼らの関係は次第に複雑さを増していく。委員長の無自覚なエロ声やエロポーズを収集したりするだけで十分満足していた渋沢君が、それだけでは満足いかないのと同様、委員長のほうからも、渋沢君との関係性の定義づけに関して疑問を抱く、内からの声が騒ぎ始めて……?

 というのが一番のポイントなのだけれども、さすがにストーリーの根幹部分だけあって、そうやすやすとは出て来ない(それ書いたらすぐ終わっちゃうしな)。「将来の進路」や「男と女」などという普遍的かつ身近な問題をベースに、今回も2人は遠くから関係性を深めていってた。委員長が意外に乗り気だったのがびっくり。嬉しい驚きともいう。
 秋葉は今回もいらない子だった。本当に誰得なんだろうこの子。西園寺がいればそれでいいじゃん。
 で、その西園寺。ようやく隠れ家一味に加わった。素直じゃないので認めはしないけど、委員長のことを心の中で「ちひろ」と呼び捨てにしてるほどにラブな彼女の参入は、渋沢も含めた三角関係をスリリングなものに変えてくれた。
 うん、今回も面白かった。
 変化したいと思う感情。現状維持を望む声。大好きなものを大好きだと思っていられた、それだけで満足だったあの頃。懐かしきあのひと時を思い出させてくれた。

のうりん(3)

2012-05-05 09:27:22 | 小説
のうりん 3 (GA文庫)
クリエーター情報なし
ソフトバンククリエイティブ


「のうりん(3)」白鳥士郎

 信じられるかい……? これでアラフォーなんだぜ……?
 独身ベッキー先生の表紙から始まる3巻目。裏表紙の頭の沸いたような本人によるあらすじはご愛嬌。
 前巻ラストで林檎と農が話の流れ上くっつき、ガチ百合スタートを迎えたわけだが、まあ当然というかなんというか、そういったアクションはほとんどありません。誰も望んでいないってのもあるだろうけど、そもそもこいつら耕作のこと好きだもんな。
 んで、今回も全編ほとんどギャグです。パロディネタと下ネタが過半数を占めているので、嫌いな人は嫌いかも。バキとかもののけ姫とか乳ガンダムとかあへ顔ダブルピースとか……分量は明らかに前巻よりも増えてる。挿絵だけ見るとホントエロ小説にしか見えない。テンポが良くて面白いし、僕は好きだけど。本格的農業モノされても誰もついていけないだろうしね……。
 人間関係的には、あらすじにもある通り、継の父が出現したことでちょっとした動きがあった。夏休みにさしかかる次巻は、継・良田組と耕作・農・林檎組で分かれるのかな? 
 今回も農はかわいかった。ストレートな愛情表現が素敵。この調子で「幼馴染はかませ」的風潮に一石を投じていただきたい。
 

俺の妹がこんなに可愛いわけがない(10)

2012-05-02 00:13:38 | 小説
俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈10〉 (電撃文庫)
クリエーター情報なし
アスキーメディアワークス


「俺の妹がこんなに可愛いわけがない(10)」伏見つかさ

 大人気の俺妹シリーズもはや10巻。かっこよくて、かわいくて、どの巻も身悶えするほどに面白いまま走り続けて……最新巻も当然のように面白かった。クオリティの高さに乾杯。
 
 突如両親に、兄妹の近親相姦を疑われて大狼狽する京介と桐乃。ほどなく京介は家を追い出されて一人暮らしを余儀なくされる。放り出された先は、父の用意した6畳一間のアパートだった。希望の大学への模試判定Aをもぎとるまでは帰ってくるなという厳命も下り、スタートから暗雲立ち込める超展開。
 でもま、これラブコメだからね。一人暮らしを始めた京介のとこにハーレム要員たちが朝な夕なの満員御礼となるのは目に見えているわけで……。
 黒猫、あやせ、麻奈美はもちろん加奈子まで来たのはちょいと意外だった。しかもフラグ立ってるのも驚いた。ともあれ学生の本分であるところの勉強にはよろしくない状況。この事態に怒ったのはなぜか桐乃。彼女は事態を丸くおさめるために、あやせが単独で京介の身の回りを一か月間つきっきりでやるように要請したのだが……あ、そっか、桐乃はあやせが京介に惚れていることを知らないから……てことは……。
 無敵のあやせさん回始まり始まり。
 なわけで、あやせ成分満タンの回でした。他のキャラ達の近寄ってこない濃密な日々の接触が、2人の仲を急速に深め、あやせは自分の気持ちを理解し、ついには……という流れが素晴らしかった。通い妻状態のあやせと京介の、あるあるトラブルのひとつひとつの破壊力も強く、黒猫派の僕の気持ちまでもがぐらぐら揺れた。緊急地震速報鳴ってた。
 一番のポイントは、あやせが頑張り屋であること。もともとあった桐乃への友情(愛情?)に加え、彼女のオタ成分をも理解し抱きしめようという前向きさにぐっときた。最終ヒロインにはなれないだろうけど、この調子で頑張ってほしい。
 あ、個人的には黒猫の妹の日向ちゃんが出てきてて嬉しかった。この娘いいわあ、楽しいわあ。

オブザデッド・マニアックス

2012-04-22 22:12:00 | 小説
オブザデッド・マニアックス (ガガガ文庫)
クリエーター情報なし
小学館


「オブザデッド・マニアックス」大樹連司

 安東は、とある高校のいじめられっ子、というほどではないか、クラスの中でもどうでもいいレベルの存在だった。長い長い高校生活の3年間、いや、それよりも前から、ゾンビ映画を夢想するしか暇つぶしのなかった存在だった。いつかどうか、この退屈でくそったれな日常を、愚鈍な死者の群れが蹂躙してくれないか。そうすれば、そのミニマムな生活の中でなら、自分は輝けるから。他の、勉強ができるやつとかスポーツができるやつと同じように、息をすることができるから……。
 そんな彼の望みは、ひょんなことからかなえられた。日本の遥か洋上に浮かぶ孤島への特別夏合宿中、それが発生したのだ。ゾンビハザードが……。

 いまさら解説するまでもないが、昨今はゾンビブームだ。さまざまなジャンルが開拓され、吟味され、淘汰されきった挙句の飽和状態の上での、という注釈つきではあるが、また僕らの手に時代が戻ってきた。
 とまあ、そんなおおげさな解説は必要はないか。どうせこのブームも一過性のものだろう。
 ともあれ、ゾンビなライトノベルだ。
 夏のさ中の日本の孤島で起こったゾンビハザードに巻き込まれた安東は、持ち前のゾンビ知識を駆使してタブーを避け、立てるべきフラグのみ立て、いじめられっ子の江戸川と小伏鈴、金髪ツインテなギャルの丹咲いずなを集めてパーティを組み、とある別荘へ立てこもる。が、江戸川の建築能力や小伏の医学知識に前にはまったく見せ場がないので、安全な家屋を出て、「やむなく」大型ショッピングモールへ移動する。
 そこには安東らのクラスメイトら全員が奇跡的に生き残っていた。委員長オブ委員長な城ヶ根莉桜をリーダーにして。秀麗な彼女はしかし、安東と同じゾンビフリークだった。彼女が敷いていたのは恐怖政治。ゾンビモノを知り尽くす故に、そしてこの地をおいて自らが生き残る地はないと知っているが故に、美しき死に場をのみ求めていた。情などなかった。徹底的にスクールカーストの上部を駆逐した。丹咲いずななどは即座に安東の奴隷へと堕とした。江戸川と小伏は重宝し、重要なポストにつけた。
 というところがポイント。ゾンビフリークの行く末の違い。走るゾンビは是か否か。そういう命題と似ている。仲間と友好を結ぶべきか。ゾンビと共に死すべきか。そのへんを、フリークな2人の、莉桜と安東がどう煮詰めていくのか。
 結果的には、ゾンビが何百体いても蹴散らせるルミ姉という異分子がいるのがネックだったが、かなり楽しめた。なんやかやいうても僕もフリークなので、出だしから心が躍りっぱなしだった。くそくだらない学校生活を、クラスメイトどもを、ゾンビたちが駆逐してくれた。パラダイスだった。だからというか、この終わり方にはしんみりきた。
 問題は、安東自身がゾンビと接触する機会がほとんどなかったこと。一番の肝であるところのゾンビアクションが淡白すぎて、人間模様に集中しすぎていたこと。あと、ゾンビの発生理由そのもの。そこさえ見なかったことにできるのなら、この作品はひとつの完成形といえるのではないだろうか。

正義の味方 I'm a loser

2012-04-15 14:29:50 | 小説
正義のミカタ―I’m a loser
クリエーター情報なし
双葉社


「正義の味方 I'm a loser」本多孝好

 蓮見亮太18歳。高校生まで筋金入りのいじめられっ子だった彼は、勉強の末に大学に入り、人生を変えようと思っていた。バカ高校だった出身校からは誰も来ない新天地での大学デビュー。……はしかし、新歓で賑わうキャンパス内で、いじめっ子の一人・畠田に再会したことで狂ってしまう。
 またあの時のような地獄が始まるのだ。やはり、自分のような屑が大それたことを夢見るのではなかった。いっそ大学辞めちゃおうかな……発作的にそこまで考えた蓮見を助けてくれたのがトモイチだった。インハイ3連覇を成し遂げたボクサーである彼と友人になった蓮見は、さらに蒲原さんという美人ともお近づきになり、さらにさらに「正義の味方研究会」というある種の大学の自治会のような会にも所属し、今まで持っていなかった自分なりの居場所を確保していく。
 大学内の悪を駆逐する研究会活動を中心とした大学生活の中で、蓮見が獲得した大切なパーソナリティーとは……。

「チェーン・ポイズン」が面白かったので。
 純正いじめられっ子の蓮見が、コンプレックスを跳ね除けながら、彼なりに悪と戦っていくというシチュエーションが良かった。正義とは何か。世の不平等。さばけぬ悪。深いテーマも盛り込まれていて、考えながら読まされた。
 でも気になるところは三つあって。
 一つは、トモイチに習ったボクシングがなんの役にも立たなかったこと。暴力で解決しては意味ないってことなんだろうけど、じゃあなんで出した、なんで練習した? そう思えてしかたがなかった。最低限の自衛戦力。大切なものを守るための武力。それは必要だろう? 正義云々は別としてさ。「ホーリーランド」みたいにしろとはいわんけど。
 もう一つは、最後の「あの人」の変貌。蓮見との対比……にしても変わりすぎでしょ。完全に狂人だよ、これじゃ。一連の対決展開は最高だったのに、そこだけ戯画化されすぎていた。
 最後の一つは、トモイチ、蒲原さんらとの青春模様。これもね、全然中途半端だった。道半ばとはいえ、もうちょいすっきりしたかった。
 上にも挙げたけど、それぞれの正義をぶつけ合う終盤の流れが良かった。そこだけでも見て損なし。

修羅場な俺と乙女禁漁区2

2012-04-04 03:23:18 | 小説
修羅場な俺と乙女禁猟区2 (ファミ通文庫)
クリエーター情報なし
エンターブレイン


「修羅場な俺と乙女禁漁区2」田代裕彦

 遠々原家のクソ義父からの無茶ぶりで、「この中に、本当にあなたのことを愛してくれている女性が1人だけいます。他の女性は殺したいほどあなたを憎んでいるうえに、もしあなたが間違ってそれらの女性を選んでしまった場合には、我々一族もろともの生殺与奪の権利をあげちゃいます。さあ、自分の婚約者となるべき女性を選びなさい」というハーレム型デスゲームに強制参加させられた主人公・節は、持ち前の疑り深さと人の悪さでもって、見事第一の偽者を見破った。
しかしその慎重さがたたってか、なかなか他の偽者が炙り出せない。業を煮やしたクソ義父によって、一ヶ月以内に決めろという制限時間を決められた節は、時々折しも夏真っ盛りの林間学校で、海水浴場で、温泉場で、温泉宿で、ぽろり上等の婚約者探しに乗り出すのだが…。

 うん面白い。一番好きだった天海崎さんが脱落と思いきや、まさかの「本当に好きになっちゃった」コールで戦線に踏みとどまってる出だしが最高だった。話の性質上、どうしても先に犯人が割れてしまうという弱点を逆手にとった手法が見事。この路線なら、いくらでも敗者復活できるもんね。
 どうせ表紙見た瞬間にばれるのでいってしまうと、今回の犯人は奥有楽乙音なのだが、彼女の出自や動機や「本物でないことの理由づけ」にはかなり意表をつかれた。良くも悪くも強引だった一巻と比べて格段に練られたネタだったし、和風引っ込み思案キャラという、個人的に全然ひかれないキャラ筆頭であるところの彼女に知恵としたたかさを与えるいじりかたも良かった。
 まあ、それでも天海崎さんにはかなわないと思うのだけど、今後に期待がもてた。普通に睦月を選ぶという選択肢だけはやめてほしいかな。