松井度器製作所(現・松井精密工業株式会社)が以前製造されていた「昇龍 曲尺」です。
木造建築の墨付けにおいてとても重要な道具である曲尺(かねじゃく)ですが、プレカット加工が盛んになり、大工さんが墨付けをする機会も減り、この道具を使う頻度が以前より少なくなってきています。
松井さんは、すでに10年前に曲尺製造をやめて、今では社名も「松井精密工業株式会社」と変更され、ノギスやケガキゲージなどを製造されています。
(それでも、大工さんが使う道具のスコヤや鉋の下刃定規(ストレートエッヂ)、尺目盛のノギスなども製造されています。 感謝。)
ところが、金物業界のフリーペーパー「金物マガジンVol.11」(2008年10月25日発行)に、この幻?の曲尺が紹介されるや、欲しいとの声があちこちから聞こえてきました。
この「金物マガジン」は、「プロの職人を応援するツール情報誌」として2007年2月25日に創刊され、隔月刊偶数月25日発行で、12月25日にはVol.12が発行されました。
12月10日現在、北海道から鹿児島まで全国の小売店638店に設置してあるので、お近くの大工道具店や金物店に置いてあるかもしれません。
フリーペーパーなので無料です。
(設置希望の販売店はメールでお問合せ エフキューブ info@ef-cube.com)
再び「曲尺」の話へ。
今でも他のメーカーの曲尺は、たくさんあるのに、なんでこの曲尺が貴重かというと・・・。
「松井度器製作所 昇龍 曲尺」は、焼入れから目盛りの刻印まで全て手仕上げで製造されていて、
「使い手いわく、腰のあるしなりが勝手良く、しっかりと焼きいれされた角が厚くできているため欠けにくい。また、手彫りで入れた目は深く、腐食しないため永い間かけて使っていけばいくほど手に馴染んでくるという。江戸末期創業から続いたこちらの曲尺製造を惜しまれつつも「手間がかかり過ぎてしまう」との理由で十年前に止めてしまわれた。」(「金物マガジンVol.11」より引用許可済) なるほど、納得。
この記事が出た1週間後、京都で展示会がありダメ元で松井さんにお聞きしたら、なんとまだ少しだけならあるとのことで5~6本用意してもらい出発しました。
会場で展示の準備をしている時に、お店の常連さんがお見えになって、いきなり
「松井さんの曲尺はない?」
「えっ!まだ出してないのに、なんで持ってきたのを知っているんですか?」
「前からず~っと探していたんだ。」
「すごい偶然ですね。」
で、展示会に並べる前に全部お買い上げいただきました。
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ところが、意外にもその後 気にしながら出張していると、何軒かの取引先の曲尺コーナーで松井さんのものを見つけることがあり、運がよければ入手できることもありそうでした。
欲しい人は、お宝探しをしてみたらいかがですか?
気がつかれないままひっそりと眠っているのかもしれません。