「かつて私は自分の父親が死んだとき、どうしてもっと話を聞
いておかなかっただろうと後悔した、父のことをほとんど何も
しらなかった、だが生きていくというのは、そうした後悔を無
数にしながら歩むことなのだろう、後悔なしに人生を送ること
などできない、たぶん後悔も人生なのだ」
これは作家の沢木耕太郎氏が亡き父について語った言葉である、
同世代として私も11年前に亡くなった父に対し同じ思いを抱
いていただけに共感するものがあった、私の父は小さい頃は厳
格で近寄りがたい存在だった、話しやすくなったのは社会人に
なってからで、無口な父がなにかと気を使って話かけてくる感
じだった。
人は他人の内面を知ることができるのだろうか、私は無理だと思
う、どれほど長いつきあいでも親子でもそれは同じで人の心の内
側をのぞくことなど誰にも出来ないよう気がする、それでもせめ
て認知症になる前にもっと話を聞いておけばよかったと11年経
っても後悔している。