息苦しい世の中で 自由に語り合える空間を

自由でも民主でもない この日本を もっともっとよりよく変えていくことができるように たくさんの知恵を語りましょう。

「神聖喜劇」を読み始める

2021年11月07日 21時46分59秒 | こんな本を読みました
以前から、ずっと読みたいと思ってきた、大西巨人の「神聖喜劇」を読み始める。
かつて彼の息子が、私の母校、埼玉県立浦和高校の受験を拒否されたという報道もあって、なにかしらの「縁」を感じていたこともあり、
気になりつつも、ずっと「大作」の読破を遠ざけていたことは、専ら私の怠慢なのだろう。
老いぼれてしまう前の今しか、腰を据えて向き合うことはないと決め、「一気に」ではなく、考え考え、噛みしめるように読み始めている。

なにしろ、ひとつの巻が400ページほど、全4巻である。いつまでかかることやら。はたまた挫折してしまうことも十二分に考えられる。

読み始めてすぐに、はっとするような文章に出くわした。

「・・・私の当代の思想の主要な一断面は、これを要約すれば次のようであった。世界は真剣に生きるに値しない・・・」

虚無的で情けないものであるが、私自身の考えの半分は、いつもこのテーゼで埋まっている。それを何度も何度も打ち消しながら、生きてきたとも言ってもよい。それを完全に打ち消すことができないままに、今日まで来てしまった。情けないことだ。
しかし、大西巨人のことだ。冒頭のこのテーゼは、ページをめくるごとに、別のものに置き換えられるに違いない。
そう信じて、少しずつ少しずつ、文字を追っている毎日だ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「晴天の迷いクジラ」

2021年09月20日 08時21分05秒 | こんな本を読みました
窪美澄 新潮社
三連休を利用して一気に読む。
重松清の「カシオペア〜」に似た読了感。
誰もが例外なく背負っている「重み」を、絶望させることなく展開させる手腕。
もっと若い作者だと思っていたが、妹とほぼ同じであることに驚嘆。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

白石一文「我が産声を聞きに」

2021年08月14日 10時39分54秒 | こんな本を読みました
癌発見を契機に、夫婦を解消して、好きな人の元に去ってしまった夫。コロナ禍を背景に揺れ動く奈香子を丁寧に描いた作品だ。
生き様や、一人一人が持つ、やっかいな欲望を、この作家はよく掴んでいるなと思う。
だから今まで不満はありつつも読みつづけてきた。
社会性という観点からは、今回のコロナにしても、原発の描き方にしても、「添え物」としてしかの位置づけなのが不満。いつ、それが克服されるのかと期待はしているが。
もしかすると、あまり絡まないでいることを信念としているのかもしれないかなとも思う。それはそれで、仕方ないのだが。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ディズニーとチャップリン」 やはりディズニーランドには行かない

2021年08月06日 13時44分42秒 | こんな本を読みました
大野裕之 著
光文社新書
この二人がこれほどまでに接点があるとは知らなかった。
それほど思想的に強固なものはなかったと思われるディズニーだが、この本の中でも、ふたつの行為について述べられている。
1つ目は、1938年から始まったディズニー社で起きた従業員のストライキに対する態度だ。ディズニーは、その動きに、御用組合を作ることを画策したり、スト参加の従業員の写真を撮り、FBIに売り渡すことすら行った。
ふたつ目は、大戦後の「赤狩り」での非米活動委員会の公聴会で、積極的に仲間を「売った」ことだ。
「共産主義者と思われる人物」として、何人もの従業員(もといた者も含めて)の名前をすすんで提供し、さらにその後も、FBIに密告を続けた。
本書でも、時代の制約という観点から、ディズニー自体を「悪者」だとは断定していない。私も同感である。
ただ、前にも書いたが、私の感覚からして、だから気持ちよくディズニーランドに行き、心から楽しむわけにはいかない。
ディズニー自身、もう釈明の機会は永遠に訪れないわけであるから、謝罪の遺言書でも発見されないかぎり、私の態度は変わらないだろう。
周りに押し付ける気はさらさらない。ただ、そんなことも知らないで、心底ディズニーランドでご満悦している人たちや、その風景がたまらなく哀しい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「堤清二 罪と業」児玉博

2021年08月01日 09時29分05秒 | こんな本を読みました
文春文庫
資本家の家に生まれ、さらに異母兄弟との確執、辻井喬としての活動、セゾン文化の創出、いくつもの顔を持って歩んできた堤清二。
私には、彼をひとつの言葉にして評価するには、到底力が及ばない。
この本で、インタビューに答える彼もまた、たくさんの矛盾が包まれており、またそれこそが彼の実像だったのだろうと思う。
生まれた瞬間から、彼は、この複雑怪奇な人生を送ることを運命づけられたと思えた。
なんとも哀しく、しかしまた羨ましい人生。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「火口のふたり」白石一文

2021年07月28日 19時06分47秒 | こんな本を読みました
新刊が出たのだが、まだ未読の方から読むことにした。
彼の作品には、いつも半分失望、半分期待を抱きながら読んでいる。
ストーリーテラーとしては優れている反面、セックスには深みが、社会問題の扱いには人物や小説の展開から遊離した「添え物」程度にしか描かれていないことに不満を感じてきた。
この小説も、同じ読了感。
さて、新作は克服されて?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「いつか たどりつく 空の下」 それでも生きようと

2021年07月22日 18時52分15秒 | こんな本を読みました
八幡橙 双葉社
これが二作目だということに驚く。
いつも死の誘惑と隣合わせの主人公が、関わる人たちにより、「生きたい」という境地に至るまでが、丁寧に描かれている。
読み終わるまで一週間もかかったが、ブラック勤務校でなければ、2日か3日で一気に読んでいただろう。
読後が心地よい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「雪ぐ人 冤罪弁護士 今村核の挑戦」

2021年05月29日 21時31分54秒 | こんな本を読みました
佐々木健一 著
新潮文庫
有罪率99.9%と言われる我が国の刑事裁判で、冤罪事件を14件もかち取ってきた今村弁護士のノンフィクション。国民救援会、自由法曹団など、懐かしい組織も出てくる。
やはり私たちもプロでなければならないのだと思う。
妥協してはならないのだ。
一人一人の子どもと対する場のシナリオを作り上げる準備が後回しになっている、現在の学校に妥協してはならないのだ。
ああせい、こうせい、それはやってはならないと、上から押し付けてくる、あらゆる命令や「大きなお世話」を、改めて検討し、批判し、議論の俎上に載せなければならないのだ。
と、勇気を得た本だ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

篠田節子「田舎のポルシェ」

2021年05月05日 11時46分13秒 | こんな本を読みました
雑誌の記事を除いて、連休中に読了したのはこれだけ。
集中力がなくなったのだろう。傍らでテレビの音声があると、読めなくなった。若いときは、BGM流れる喫茶店が、一番集中できたのに。

三編の中編小説。登場人物が、それまで生きてきた重みをぶつけ、重ね、安堵する。どこにでもいそうな人物の登場であるからこそ、それがまた読み手にも返ってくる。
人は、ひとりひとり、この世にふたつとない道を歩いてきたこと。そのひとつひとつがかけがえのない宝なのだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「俺と師匠とブルーボーイとストリッパー」

2021年03月13日 18時41分45秒 | こんな本を読みました
惜しみつつ読了。
外は強い雨が、風を伴って落ちているらしく、ときどき、パラパラパラという音が家の中に飛び込んでくる。
もうすぐやみそうだ。
明日はきっと快晴にちがいない。
読み終えたあとの気持ちにふさわしい天気だと思う。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ボクたちは みんな 大人になれなかった」

2021年02月04日 19時13分14秒 | こんな本を読みました
燃え殻
新潮文庫
なんと鋭い感性をもった作者だろう。
失った恋人との逢瀬をせつなく回想しているだけの小説だが、こんな老人の私にも響き、心を重くする力を持っているのだ。
2日で読み終えるほど、飽きさせない。いや私に被さってくる心情が憎い。
雑司が谷病院の彼女は、いま、幸せに生きているのだろうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「教育現場の光と闇~学校も所詮<白い巨塔>」 小林宣洋

2021年01月17日 20時26分10秒 | こんな本を読みました
「本書を読まれた方ならお分かりの通り、私は学校教育界の異端者だ。・・・果たして、「異端の中にこそ創造的な意味での正統があり」得るのだろうか。危ない橋を渡っている感覚を持ちながらも、渡り切った先に広がる「まっとうな世界」に想いを馳せ、突き進んでいくだけである。」

 あとがきの言葉を引用させてもらった。
 同業者として、一言感想を述べるなら、「あなたはけっして異端者ではない」ということに尽きる。
 小林氏は、「異端者」として自らを位置づけるほど、自己肯定感が高いのか。または、真逆に低いからこそ「異端」として宣言しているのかは分からないが、小林氏の叙述から見て、彼の教師としての、これまでの実践は、「異端」の範疇には入らないと思う。
 私の40年を越える教員生活で、どの学校にも、またどの地区にも、小林氏くらいの教師はごろごろといたものだ。
 自己申告の際の抵抗も、職員会議で「間違っている」と怒鳴ったことも、部活動の指導に関する理不尽な決定に対する抗議も、管理主義への抵抗も、多かれ少なかれ、だれしも一度は関わり、そして成就したり、諦めたりしてきたのだ。
 
 今月13日発行とあって、すぐさま今日購入し、一気に読み終えたのだが、正直(すみません)、途中で投げだそうかなと考えるようになった。
 教育書として期待して読んではいけない。「自叙伝」として読もうと思いを切り替えた。

 残念ながら、ひとつひとつの「教育問題」に対する考えが浅いと思う。自分の立場が相対的であり、いまいち歯切れが悪い。それはきっと、それぞれの事象を深く考え、その上で実践し、それをさらに深く振り返って考え抜くという経験が薄いのかもしれないと思った。「ゼロトレ」に関する箇所などは、その典型である。

 悪くはない方だとは思う。
 一緒に働けたら、互いに成長できたかもしれないとも思う。
 もちろん小林氏は、今がゴールではないはずだから、今後の「異端者」を目指した成長を、心から願っている。
 
 
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「JR上野駅公園口」 柳美里

2021年01月04日 21時44分26秒 | こんな本を読みました
 上野公園を居とする主人公のホームレスと、彼とは天皇の動静とを対比させながら、物語は展開する。
 これを解説する力量は、私にはない。
 「フクシマ」は、時の総理は「under control」という嘘をついた。そしてさらに、オリンピックの大儀として「福島復興」が、いつのまにか「人類が新型コロナウイルス感染症に打ち勝った証」にすり替わってしまった。
 この時間帯は、小説にはないが、それが象徴するような「権力」に、静かに抗議を続けている作品だと思う。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「日本型新自由主義の破綻」 ぜひお勧めしたい

2021年01月01日 12時36分25秒 | こんな本を読みました
元旦にようやく読み終わる。読み終えるまで、3日もかかったが、内容がすばらしかった。
メインは、旅客機の空路が東京の上空に変更になったことから始まり、それがこれまで政府のとってきた「新自由主義」路線とどのように絡みついているか。どう理不尽なものなのか。そして、それはこの問題だけでなく、コロナの対策、東京五輪なども明快に解明していく。
 筆者2人の熱い思いが伝わってくる。
 日本型の新自由主義が、いかに民主主義を破壊してきたか、「利権」や「腐敗」と結びついていくのか。バラバラであったコロナ対策、五輪、羽田都心ルートなどの政府が行たことが、いかに破綻してきたか、すっきりと私に教えてくれた。
 終章では、来るべき社会像を提示しているが、それも魅力的で、説得的である。ただ、これらを実現させるとなると、権力側は、ありとあらゆる手段を講じて(殺人すら厭わないはず)抵抗、妨害、阻止するであろう。
 それを押し返すだけの力量を、国民は持っているか。現時点では「否」である。
 どうやって、その「体たらく」な国民が、主権者として学習できるのか、成長できるのか。これも大きな課題だと思った。

 読んだ後、コンビニで「産経新聞」を購入。
 1面に、「民主主義が消えてゆく」との見出し。
 おお、産経も宗旨替えをしたのか、と期待して読むと・・・
 なんのことはない。中国批判のオンパレードであった。
 権威主義、強権主義の中国については、言うまでもなく私も「No」である。香港や、東南アジア海域での軍事行動、金をちらつかせて中国の言いなりにさせる外交など、とても弁護などできはしない。
 ただ、読んでいくと、それを是正する日本の果たす役割が書かれてはいるものの、対米従属で自国の判断ができない日本の外交路線については何もない。日本の内部で、進行しつつある「権力の驕り」「腐敗」についても、いっさい書かれていない。こちらの「民主主義の危機」は、目をつむってしまって、よく言えば、あまりにもバランスが悪い。悪く言えば、一面しか捉えていない説得力のない文だ。
 同じ一面には、さらに「中国共産党をもう助けるな」とした論説委員の文章もある。
 つまり一面は、中国批判のオンパレード。
 定期購読者は、こうやって「愛国者」として刷り込まれていくのだろうなと、背中が薄ら寒くなる。
 ついでに広告欄を、パラパラとめくってみると、「Will」「この1冊で韓国丸わかり さよならしよう、この国とは」「こんな組織に10億円もの血税を注ぎ続けていいのか! 日本学術会議の研究」「捏造と反日の館 ウポポイを斬る」などなど・・・胡散臭い本の広告。
 産経の方針なのだろうが、改めて「自民党機関誌」と呼ばれていることが、よく分かり、これも心を暗くした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「まにまに道草」大町テラス

2020年11月23日 08時25分15秒 | こんな本を読みました
久々に漫画を読む。
娘が大学生となり家を出ていく。子育て一筋だった主婦が、時間をもて余し街にふらっと出てみる。
クレープ、銭湯、バイト、遊園地、カラオケ、そこに時間の流れや安堵を感じる。さらに娘と連れ合いにも、心を広くして、また接することのできる自分を自覚する。
たわいもない短編にホッとする。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする