去年の十一月、まだかくしゃくとしていた母と、日蓮正宗総本山大石寺に二人で行った日々を懐かしく思い出す。
母は、足取りの早い私について来るのがやっとで、私も母の歩調に合わせて、母の手を引きながら、今度はゆっくりと歩いた。私と共に奉安堂までの道のりを、母なりに一生懸命、歩を進めた。
母は、大御本尊様のお目通りは初めてであり、多少のごたごたはあったものの、後におばあちゃんの話が出て来るたびに、あの大御本尊様を懐かしく思い出している。
母にとり、夜行バスでの強行軍で一晩眠れず、悪い事をしてしまった。しかし、母を富士大石寺にお連れ出来たのは、ただ感謝、という他はない。
私にとり、唯一出来た親孝行だと思った。
去年四月の奉安堂前の富士山。