トウモロコシ、米干ばつで高騰 燃料か食料か
エタノール使用に批判
- 2012/8/20 12:50日経新聞
- 米国を見舞う干ばつの影響で価格が高騰するトウモロコシを巡り「食料用か燃料用か」の議論が再燃してきた。ガソリンに混ぜて使うバイオ燃料「エタノール」用のトウモロコシを減らさなければ、食糧価格高騰が止まらないとの声が米国内外で強まっているためだ。
「干ばつの被害で今年夏にトウモロコシが枯渇する可能性もある、エタノール使用義務の変更は急いで取り組まなくてはならない課題だ」。1日、米下院議員の4割近い156人が連名で、エタノールの使用を義務付ける規制の変更を米環境保護局(EPA)に求めた。矛先を向けたのはエタノールの使用量を2015年に150億ガロン(1ガロン=約3.78リットル)まで増やすよう義務付ける07年の規制だ。
牛肉の主産地テキサス州では2年続きの干ばつで牧草が枯れ、家畜の飲み水も不足している。追い打ちをかける飼料用トウモロコシの高値で飼育頭数の削減に追い込まれた。批判は海外にも広がる。国連食糧農業機関(FAO)幹部も英紙への寄稿で、食糧危機再来を懸念し米国のエタノール使用義務緩和を求めた。
喜んだのはエタノール増産による原油需要伸び悩みに頭を痛めてきた米石油協会(API)だ。エタノール業界とライバル関係にあるAPIは「畜産業者がエタノール批判に加わり、議員が(我々の)味方についた」(APIのロバート・グレコ氏)と話す。
実はやせ、粒が欠けているトウモロコシが多い(イリノイ州アナワン)
ただ、EPAが規制緩和に動くかは微妙な情勢だ。「気の毒だが、エタノールの使用義務を停止しただけで(干ばつの被害が深刻な)インディアナ州に雨が降るわけでも、トウモロコシの価格も下がるわけでもない」。米再生可能燃料協会(RFA)のボブ・デニーン専務理事は反論する。
エタノール生産時に出るDDGと呼ぶ副産物は家畜飼料に使われる。これを考慮すると、実質的にはエタノールは世界のトウモロコシ生産量の3%を使用するにすぎないとみている。
ロン・ギル・テキサスA&M大学教授によると、米国のガソリンスタンドの9割以上がエタノールを10%混ぜたガソリンを販売する。普及度の高さを考えると、規制の変更には大きなコストがかかる。ギル教授は「EPAはエタノール政策維持に固執するはず」と予想する。
米国はトウモロコシ生産量が世界の4割近くを占める主産地。米農務省によると、今秋収穫する米国のトウモロコシの生産見通しは6年ぶりの低水準、13年8月末時点の在庫は17年ぶりの低水準になる見通し。
国際指標になるシカゴ市場では、トウモロコシ価格は6月初めから5割近く上げ、史上最高の水準にある。ただ、収穫はまだ始まったばかり。干ばつの被害全容が明らかになるまで「食料か燃料か」の議論は尾を引きそうだ。(シカゴ=野毛洋子)
★
1.トウモロコシは食糧となり、飼料となり、燃料にもなる。干ばつで収量が落ちたので燃料に使うのは止めてほしいと言う意見は分かるが、燃料化は将来の石油不足対策のためだと思うが、この点に関してシェールガスがアメリカで出るようになったと言われているので、不作の事態では燃料化は遠慮すべきではないでしょうか。
2.[FT]米国の干ばつ深刻、食料価格高騰のおそれ (2012/7/12 14:00)とあるように食料高騰の恐れがあるので燃料使用は減らすべきでしょう。
3.日本人が考慮すべきことはTPP参加で制限なしコメも関税撤廃をすると食糧価格は高くなり、
高くても輸入できなくなるという事態を招きかねなくなるのです。コメの自給率は最低でも60%は確保してTPPを進めるべきだ。
4.今後異常気象が起きて食糧不足の事態がおきかねません。その時高い金を出しても輸入できない事態が起きるのです。その対策はしっかりしておくべきです。花の命は水が一時的に切れて枯れると後でどんなに水を注いでも一旦枯れたものは生き返らないのです。食糧不足も命に係わるのです。
バイオ燃料とは (2012/8/20 16:53)
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- 食糧vs燃料、穀物争奪戦の限界
編集委員 浜部貴司 - (1/2ページ)
- 2012/8/21 6:00
トウモロコシの国際価格高騰を受け、自動車燃料のエタノール向けに大量に使うことを義務付けた米国の政策に批判が強まっている。米畜産業界や米石油業界などが相次ぎエタノール政策の見直しを求め始めた。背景にあるのがトウモロコシは飼料や食糧に優先して使うべきではないのかという不満の台頭。トウモロコシは食糧か、それとも燃料か――。
「エタノール使用義務を1年間、全面停止するか相当量減らしてほしい」。全米豚肉生産者評議会(NPPC)など全米19の畜産関連団体は7月30日、米環境保護局(EPA)に嘆願書を提出した。干ばつによるトウモロコシの大幅な減産見通しと価格高騰への危機感を背景に、エタノールに使う分を家畜飼料に回してほしいという訴えだ。
興味深いのはこれまでエタノール混合ガソリンの精製で協力してきた米国の石油業界が批判を強めている点だ。8月8日、米石油協会(API)はワシントンで記者会見を開き、エタノール使用義務量の急激な拡大に警鐘を鳴らし、EPAに政策見直しを求めた。
米シカゴ在住の石油エネルギー技術センターの福田竜也主任研究員は「ガソリンはE10(エタノール10%混合)が主流だったが7月にカンザス州でE15(同15%)の販売が始まった。比率が上がるとエンジンに悪影響を及ぼす可能性があり、技術の改善やバイオ燃料の義務量が未達の場合に払うクレジットのコスト負担がかさむ」と解説する。
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- 2012/8/21 6:00
- エタノールは1990年代にガソリン燃焼時の一酸化炭素抑制のために使われ始め、2005年に使用が義務付けられた。原油の輸入依存度低減を狙ったエネルギー政策法成立に伴うものだった。義務量は07年に引き上げられ今年は132億ガロン、15年は150億ガロンに設定されている。この結果、米国産トウモロコシの全需要に占めるエタノール向けは4割に達し、飼料向けを上回るようになった。
こうした需要の構造変化は市況に大きな影響を与える。穀物コンサルティング会社グリーン.カウンティの大本尚之代表は「エタノール需要が10年で5倍に拡大したことで在庫率が大幅に低下し、干ばつなどの供給変化で高騰を招きやすくなった」と指摘する。
確かに米国産トウモロコシの期末在庫率はここ数年で急低下。07穀物年度(07年9月~08年8月)には13%近くあったが10年度は1桁になり、12年度の米農務省予想は5.8%。米国は世界の輸出量の4割を握るだけに在庫減少は国際価格高騰に直結してしまう。
ただ、米オバマ政権は政策の見直しには消極的。就任以来クリーンエネルギー政策でバイオ燃料利用を推進してきたうえ、11月の大統領選を控えて失点になる政策変更に動きにくい。
米国の著名な環境学者、レスター・ブラウン氏はかつて「SUV(多目的スポーツ車)をエタノールで満タンにするのに必要な穀物で人間1人を1年養える」と警鐘を鳴らした。世界の食糧不足がいわれる中で08年の穀物高はメキシコ、ハイチなどの暴動を引き起こし、11年はエジプトなどの暴動で“アラブの春”を誘発。今年の穀物高も食料価格を押し上げ始めている。国際政治の場で「トウモロコシは食糧」の認識を共有し、米国に政策の見直しを求めていくべきだろう。
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