隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1279.思考機械の事件簿Ⅱ

2012年08月06日 | 短編集
思考機械の事件簿Ⅱ
The Casebook of the Thinking Machine
読 了 日 2012/08/06
著  者 ジャック・フットレル
訳  者 池央耿
出 版 社 東京創元社
形 態 文庫
ページ数 350
発行日 1979/12/21
ISBN 4-488-17602-X

 

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月(7月)読んだ「ソーラー・ポンズの事件簿」と同様、本書の主人公論理学者ヴァン・ドゥーゼン教授はシャーロック・ホームズのライヴァルたちの一人として誕生した。
ッヴァン・ドォーゼン教授は、思考機械と呼ばれるほどの論理的な思考を展開して、事件の謎を解明する名探偵である。もう何度となく書いてきたが、本書は東京創元社から、“シャーロック・ホームズのライヴァルたち”という企画の基、刊行されたクラシックな短編を集めた1冊だが、わが国で編纂された短編集だ。
ジャック・フットレル氏の作品は、このシリーズでⅠからⅢまで3冊が出ているが、僕は古書店で手に入った順序で読んでいるから、ⅢからⅡへと順序を逆にたどっている。
こうした古典的ないわば探偵小説を読んでいると、シャーロック・ホームズの誕生がいかに多くの作家たちに影響を与えたばかりでなく、2匹目、3匹目どころか10匹、20匹と続々名探偵が現れたのだ。

 

 

東京創元社でこの企画に携わっていたのが、名編集者(これはあまり事情を知らない僕の独断による評価だが…)戸川安宣氏だ。本書でも巻末に開設を書いている氏の、ミステリーへの造詣の深さに僕などはただただ感心するばかりだ。おかげでさほど知識のない僕でも、過去の隠れた名探偵と遭遇することが出来るというわけだ。
昔は―僕の言う昔とは10年ひと昔の昔とは違って、40年、50年前のことだ―只々犯人の仕掛けるトリックを名探偵がどう解き明かすのか、それだけが探偵小説の面白さだということに、何の疑いもなく読んでいた時代があった。時代の変遷とともに、名探偵の様相も様変わりしたかに思える。
だが、僕は形は変われど、やはりミステリーの面白さはそこに尽きるのではないかと、近頃そんな思いになっている。このところ2冊ばかり読んだサイコ・サスペンスにしても、そこのところはしっかりと取り入れられており、ミステリーとしての構成は保っているのだ。
何を言ってるのかわからなくなってきた。

 

 

書のような探偵小説の黄金前期?の作品集を読んでいると、いかにして読者をだまして、楽しませようかという作者の心意気のようなものが伝わってくる。
もしかしたら、作者自身だって楽しんで書いたのではないか?そう思われるストーリーや内容がたくさんあるのだ。この短編集には、最後に収められた「幻の家」は問題編と、解決編に分かれており、エラリイ・クイーン氏が国名シリーズでやっている、読者への挑戦?ともいうべき形をとっているのが、その典型だろう。しかもこの作品はジャック・フットレル氏の奥さんのMrs.メイ・フットレルが書いた怪談に対して、夫のジャック氏が解答をつけたというのだ。
そう言えば、少しニュアンスが違うが、わが国では坂口安吾氏の未完の長編「復員殺人事件」の続きを高木彬光氏が書いて(樹のごときもの歩く)完成させた、ということもあったが・・・。
特にミステリー作家は、いつでも読者を「アッ!」と言わせようと、案を練っているのだろう、こうした作品集を読んでいると、そんなことを感じさせて、純粋に謎解きを楽しむ読者がたくさんいた、古き良き時代を思い起こさせる。

 

収録作と原題
# タイトル 原題
1 呪われた鉦 The Haunted Bell
2 幽霊自動車 The Phantom Moter
3 復讐の暗号 The Fatal Cipher
4 消える男 The Problem of the Vanished Man
5 跡絶えた無線 The Interrupted Wireless
6 ラジウム盗難 The Lost Radium
7 三着のコート The Three Overcoats
8 百万長者ベイビー・ブレイク誘拐 Kidnapped Baby Break,Millionaire
9 モーターボート The Moter Boat
10 百万ドルの在処(ありか) The Probrem of the Hidden Million
11 幻の家 嗤う神様
家ありき
The Grinning God
The House That Was

 

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