隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0888.そして、警官は奔る

2008年05月31日 | 警察小説
そして、警官は奔る
読了日 2008/06/02
著  者 日明恩
出 版 社 講談社
形  態 単行本
ページ数 522
発 &nbsp:行日 2004/02/29
ISBN 4-06-212255-3

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

年(2007年)9月に読んだ「それでも、警官は微笑う」(834.参照)の続編だ。
物語は独立しているから、続編というよりシリーズといった方がいいだろう。前作の笑いあり、涙ありの警察小説が面白かったから、またいつかこの著者の本を読んで見ようと思っていたところ、たまたま、ネットで単行本が安く手に入った。

その後、主人公の武本正純は池袋署から、新宿にある国際組織犯罪特別捜査隊を経て、本作では警視庁蒲田署刑事課の強行犯係に異動していた。蒲田署での相方は「冷血」と綽名される和田刑事だ。他にも、定年間近の温情派・小菅刑事や、徳田兄弟刑事等々、個性的な刑事が登場して、またもやにぎやかな展開となる。

 

 

発端は西蒲田の住宅街に住む主婦・谷久恵が持ち込んだテープレコーダーの雑音混じりの音声を署内に響かせたことだ。
運悪くつかまった武本が聞いてみると、主婦の申し立てどおり雑音の中にかすかに女の子の声が聞こえた。久恵の言うには、歯科医をしている三鷹健太郎の一人暮らしのはずの、隣の三鷹家の中から女の子の声が聞こえてくるというのだ。そうして、和田と武本が三鷹家を張り込むことになるのだが・・・。
前作で迷コンビ振りを示していた潮崎警部補は、故あって警察を辞していたが、今回も一市民として再び武本の前に姿を現す。
さて、今回は、アジアからの不法滞在の女性たちと、彼女たちと日本人男性との間に出来た子どもが話しの本筋となり、それに児童虐待や、児童ポルノなどが絡み合い、一大長編をなしている。
ここでも、無認可保育所もどきが出てきたり、世捨て人のような医師が登場したりと、波乱含みのストーリー展開を示す中、潮崎の言動と、武本の誠実さが、前回同様カタルシスを味合わせてくれる。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

0887.いつか、虹の向こうへ

2008年05月29日 | ハードボイルド
いつか、虹の向こうへ
読 了 日 2008/05/29
著  者 伊岡瞬
出 版 社 角川書店
形  態 単行本
ページ数 323
発 行 日 2005/05/25
ISBN 4-04-873612-4

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

25回横溝正史賞受賞作。テレビ東京賞を同時受賞して、同局でドラマ化されており、BSジャパンで放送されたものをDVDに録ったが、僕にしては珍しくまだ見てない。
ある時期僕は横溝正史賞の受賞作に疑問を感じたこともあり、(確かこの日記にもそのことを書いたことがあるが?)以前ほど興味を持てずにいたが、それでもネットに安く出ていると、つい手を出してしまう。というようなことで、それほど期待せずに読むことにしている。
本格か、あるいはファンタジー系の作品かと思って読み始めたら、タイトルに似合わず、ハードボイルドだった。

 

 

心臓疾患の息子が3歳で亡くなり、巻き込まれた事件で、犯罪者として獄舎に繋がれることなり、妻にも離婚されるという、哀れな中年男・尾木遼平の生き様が描かれる、ストーリー。
離婚した妻への慰謝料支払いに当てるため、持ち家を売りに出しているが、買い手が見つかるまでの間、彼は、二人の男と一人の女を同居させている。この擬似家族のような面々がそれぞれに個性的で、それぞれにひとつのドラマを抱えており、必要に応じて、それらの胸の痛くなるようなエピソードが語られる。
だが、そうしたエピソードとは別に、主人公の関わる事件は、暴力団のトップを巻き込む事件に発展して、サスペンスを盛り上げる。

形を変えて暴力に痛めつけられる主人公は、かっこいいスーパーマンではなく、警察を追われた、元刑事という、羽根をもがれた鳥のような弱い立場ながら、あらゆる手段を講じて、戦う姿が痛ましくも、好感が持てる。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

0886.ふたつめの月

2008年05月27日 | 安楽椅子探偵
ふたつめの月
読了日 2008/5/27
著 者 近藤史恵
出版社 文藝春秋
形 態 単行本
ページ数 253
発行日 2007/5/30
ISBN 4-16-325960-4

1年前の発刊で、まだそれほど安くなっていなかったが、著者の新作(僕にとって)が読みたくて、Amazonで手に入れた。
現役の頃と違って、新刊より古書を買うほうが圧倒的に多くなった今、そのつど思い出すのが刑事コロンボの「死者のメッセージ」で、コロンボがミステリー作家のアビゲイル・ミッチェルとの会話の中で、彼女の新刊が出るたびに図書館へ足を運ぶというくだりがある。
新刊を買うのではなく、図書館で借りて読むというのが、いかにもコロンボらしいところで、本好きの僕には、このエピソードを初めて見たときから、深く印象に残っている。

~~~・~~~・~~~・~~~・~~~

さて本書は、3年前に読んだ「賢者はベンチで思索する」で登場した、七瀬久里子23歳のシリーズで、3編の連作で構成されている。彼女の他に、赤坂という正体不明の老人がメインキャラクターだ。
ミステリーと呼べるほどの謎は発生しないのだが、彼女や、その周辺での出来事が、あるいは彼女の恋模様が、切なく、時には狂おしく描かれていく。
落ち込む彼女を慰め、励ましてくれるのは、二匹のワンちゃん、アンとトモ。カバーのイラストがその雰囲気を良く表している。

最初の「たったひとつの後悔」では、契約社員から晴れて正社員へとなった途端、勤めていた服飾雑貨の輸入会社が、部署の縮小から、彼女を必要としなくなったと言い渡される。お祝いまでしてくれた両親に、打ち明けられなく、毎日会社に出かける振りをして、家を出るものの時間をもてあます彼女の心境が、僕には痛いほど良くわかり?同情してしまう。
実は、今だから笑って話せる事だが、昔僕にも似たような経験があるのだ。
犬を飼っている著者らしく、ワンちゃんたちとのちょっとした会話や散歩の様子がリアルで、かわいい。

初出誌(別冊文藝春秋)
# タイトル
第一話 たったひとつの後悔
第二話 パレードがやってくる
第三話 ふたつめの月




0885.針の誘い

2008年05月25日 | 本格
針の誘い
読 了 日 2008/05/25
著  者 土屋隆夫
出 版 社 双葉社
形  態 新書
ページ数 350
発 行 日 1970/10/15
分類番号 0293-600033-7336

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

者・土屋隆夫氏は、デビュー当初から本格ミステリーを通しながら、なおかつ、文学との融合を試みてきた数少ないミステリー作家の一人である。
著者のファンなら大方の読者の知るところだが、本書のカバー裏側には、わざわざ本作が当時人気を集めていたお色気を交えたサスペンスストーリーではないことを著者自身が断り書きをしている。
僕は、「危険な童話」(112.参照)を読んで以来、その本格推理の面白さに、なんとなく気になる作家の一人となり、読み継いできたので、そうした断り書きは、無用なのだが、この作品は僕が読んできた作品の中では、「危険な童話」に次いで古い方の作品(1970年=昭和45年作品)だからだろう。

 

 

これは、幼女誘拐を扱ったストーリーなのだが、探偵役は、その後の作品にも登場してシリーズ化されている検事・千草泰輔である。
僕が今まで読んだ中で彼が登場するのは「不安な産声」(578.参照)だが、気のせいか人間ドラマとしてのニュアンスというか、どこかで似たような印象を受ける。
勿論、筋書きは全く違うのだが、この作品では、特に本格ミステリーの面白さが強調されており、一種の密室殺人事件の変形と思わせるようなところもあり、不可能犯罪への興味を引かせる。
千草泰輔が事務官の家に招待されて、ほろ酔い加減での帰途、気まぐれに入った路地で事件に遭遇するという発端で、ストーリーは展開される。そうしたことから、ことさらに事件解明へとのめりこむ千草が描写されていく。彼の執拗な追及と推理が次第に真相へと近づいていく様子が、克明に描かれ、ミステリーの醍醐味を味あわせてくれる。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

0884.オックスフォード運河の殺人

2008年05月23日 | 安楽椅子探偵
オックスフォード運河の殺人
The Wench is Dead
読了日 2008/05/23
著 者 コリン・デクスター
Colin Dexter
訳 者 大庭忠男
出版社 早川書房
形 態 文庫
ページ数 279
発行日 1996/06/25
ISBN 4-15-077558-3

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

慢できる話ではないが、このところ記憶力の減退が進んでいるようで、心もとない。
つい先ごろ、ミステリ・チャンネルで放映された英国のドラマ「オックスフォード運河の殺人」を見ながら、前に見たことがあるはずなのに初めて見たような気がしたのだ。
ずっと以前にNHKで放送された時には、2ヶ国語放送だったが、今度のミステリチャンネルのは、字幕放送なのでそう感じたのかとも思ったが、どうもそうではないようだ。

ドラマでは、不摂生がたたって、喀血したモースが短期間入院するところから始まる。
病床を見舞った女性博物館長から贈られた彼女の著書、ヴィクトリア王朝時代の研究所「オックスフォード運河の殺人」を読んで、モースは疑問を抱きそこから、アームチェアディティクティブならぬ、ベッドディティクティブへの様相が描かれていく。

 

 

ジョセフィン・テイ女史の「時の娘」(546.参照)や、我が国では、高木彬光氏の「成吉思汗の秘密」(560.参照)を思い起こすスタートだ。こんな面白いドラマを忘れてしまうなんて、ちょっと考えられないことなので、がっくりきているということだ。
そこで、ドラマの面白さが頭から抜けないうちにと、本書を読み始めた次第。
読み進むうちに、ドラマは大分脚色されていることがわかる。いつも思う事だが、ドラマと原作は別作品と考えた方が良い、とは言うものの、特に英国ミステリードラマの質の高さと、原作に忠実なつくりには定評のあるところだから、本書を読んで、ちょっと意外な気がした。

 

 

まかなストーリーは、ドラマで判っていながら、小説ならではの面白さはまた別で、安楽椅子探偵ストーリーとしての面白さは、やはりこちら(原作)の方に軍配を上げたい。
モースの安楽椅子探偵の情報収集には、前半では、彼と同室に入院中の父親を見舞う娘・クリスティーン・グリーナウェイが担う。モースから図書館での調べ物を頼まれた彼女は、幸いにして、図書館の司書だった。
八方美人のモースが、彼女の他にも若い看護婦などとも、お互いに好意を持ち合うところなども描写される。後半は、例によって、部下のルイス部長刑事が引っ張りまわされるのだが・・。
100年も前に、既に殺人罪で2名の水夫たちが絞首刑に処せられた、事件の過ち?をいろんな角度から追尾していく過程がごくごく短い章割で、そのつどエピグラフが添えられて展開される。

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村




0883.ゴールド2/死線

2008年05月21日 | 本格
ゴールド2/死線
THE GOLD DEADLINE
読 了 日 2008/05/21
著  者 ハーバート・レズニコウ
Herbert Resnicow
訳  者 後藤安彦
出 版 社 東京創元社
形  態 文庫
ページ数 350
発 行 日 1988/12/16
ISBN 4-488-24502-1

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

に読んだ「ゴールド1/密室」(682.参照)のシリーズ第2弾。
本書を読み始めて、前作では感じなかった?ミステリーへの憧憬のような感覚を憶えて、これは居住まいを正して、味わうべき作品だ、などというおかしな考えが頭をよぎる。

大女で、名探偵アレグザンダー・マグナス・ゴールドの細君であるノーマの語りで、ストーリーは進むのだが、適度な毒舌と、たくまざるユーモアで彩られる語りが心地よく僕の中に沁みこんで来る。
これはじっくりと時間を掛けて読まなければと思い、先ずそのまえにコーヒーを淹れなければと、下に降りて(僕の部屋は2階なので)、湯を沸かし始める。
コーヒーの淹れ方については、若い頃からサイフォンを使ったり、コーヒーメーカーを使ったりとと、いろいろと試してきたが、今は、ペーパーフィルターで、一杯ずつドリップする方法一辺倒だ。一番簡単でオーソドックスな淹れ方が、手間が掛からず美味しい淹れ方だとわかったからだ。
前にも書いたかもしれないが、僕にとってミステリーを読むときに、コーヒーは欠かせないものとなっている。といっても、大してコーヒーの味が判るわけでもない。以前に、小型の電動ミルなど使って豆を挽いてから、淹れていたこともあったが、次第に面倒になって、UCCの500g入りの大袋の粉を愛飲している。
一日3杯から4杯飲むから一月に2袋くらい飲んでいることになる。話を戻そう。

 

この小説を読んでいて、前に読んだり、見たりしたジェフリー・ディーバー氏の「ボーン・コレクター」を思い起こした。あの中で、身動きの出来ないリンカーン・ライムが交通係の婦警アメリア・サックスを、まるでいじめるかの如く、手足のように酷使する様が、本作の名探偵ゴールドと、その細君や、友人の弁護士バートン・ハンスクリック夫妻の関係と似ている。
だが、本作では、ゴールドの妻ノーマの方はむしろ積極的に、ゴールドの手足となって働くのだ。
そして彼ら、否、彼女らは徹底的に、あらゆる手段を講じて、短時間に可能な限りの情報収集に努める姿は、感動的ですらある。ゴールド夫妻の信頼関係がどのようにして培われてきたか、というようなエピソードもストーリー半ばで出てくるが、ゴールドならびにノーマの魅力的なキャラクターが余すことなく描写されていく。

 

護士バートンの仲介で、億万長者マックス・バロンの招待を受けたゴールド夫妻は、ボグスラフ・バレー団の公演を鑑賞している最中、隣のボックス席で、バレー団のワンマンオーナーである、ヴィクトリア・ボグスラフがナイフで刺し殺されるという事件が発生する。
そのボックス席に入るためには、手前の小部屋を通る必要があるのだが、その小部屋には、マックス・バロンの息子ジェフリーがいたのである。最重要容疑者となった息子の無実を信じるバロンは、ゴールドに事件の解明を依頼する。
だが、ゴールドに与えられた時間は経った3日=72時間しかなかった。

最後まで読めば、伏線と思しきエピソードはそこここにあるのだが、泣かせる話なども織り込まれ、タイムリミットの迫る中で、終盤になるまで見えてこない事件の真相がわくわくさせる。

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

0882.暗い日曜日

2008年05月16日 | 短編集
暗い日曜日
読 了 日 2008/05/16
著  者 仁木悦子
出 版 社 角川書店
形  態 文庫
ページ数 270
発 行 日 1979/08/20
書肆番号 0193-145404-0946(0)

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

馴染み仁木悦子・雄太郎の兄妹の活躍するスト-リーが1篇、結婚後仁木悦子から浅田悦子になった主婦の活躍を描くものが1篇、私立探偵・三影潤のものが1篇に、子どもを主人公に据えたものが1篇など、バラエティに富んだ短編を集めた作品集。
今更ながら、著者の偉大さを認識して読み続けてきたが(本作で18冊目?)、まだ未読の作品がかなりあるようだ。
収録作のタイトルは下記の初出一覧の通りだが、最初の表題作ともなっている「暗い日曜日」は、仁木兄妹のシリーズで、1962年「宝石」12月号に発表された作品だから、かなり古い作品だ。しかしこのような作品を読んでいると、若い頃寝る間も惜しんで探偵小説を読み漁った頃のことを思い出して、オーソドックスなミステリーのストーリー展開に、幸せなひと時が訪れる感覚だ。
作中の主人公である仁木悦子は、著者が自由に外を駆け回れたら、そうするであろうと思われるような活発さを示して、そうした面からも興味深い。

 

 

小説が作家の想像から生まれるものだということが、この著者の作品ほど僕の胸に訴えるものはない。
私立探偵・三影潤の登場する「くれないの文字」では、彼が3日間のスキー旅行から帰ったところからスタートするが、月に一度はリフレッシュのための休暇をとり、スキーへと出かける探偵の行動さえも、僕は読んでいて、つい肢体の不自由だった著者の願望の現われといった読み方をしてしまうのは、失礼なことなのだろうな・・・。

 

 

初出一覧
# タイトル 紙誌名 発行月・号
1 暗い日曜日 宝石 1962年12月
2 くれないの文字 小説サンデー毎日 1970年4月
3 うす紫の午後 ミステリマガジン 1978年3月
4 早春の街に 小説推理 1978年4月
5 かわいい妻 小説サンデー毎日 1972年11月
6 木がらしと笛 推理 1972年12月

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

 


0881.女か虎か

2008年05月14日 | 本格
女か虎か
読 了 日 2008/05/14
著  者 高木彬光
出 版 社 角川書店
形  態 文庫
ページ数 336
発 行 日 1980/04/10
分類番号 0193-133849-0946(0)

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

か高校のときの教科書に載っていたのだと記憶しているが、定かではない。
フランク・R・ストックトンの名高いリドルストーリーを初めて読んだ時の、なんとももどかしいような不思議な感覚を覚えたことが、記憶にあり、元々著者のファンでもある僕はこの作品を読んでみようと思ったのだ。
本好きの人なら一度は読んだことがあるか、あるいは聞いたことがあるだろうと思われる著名な作品だ。

 

 

ストーリーは、ローマ時代の王女と婚約していた騎士が、侍女と恋仲になったことを咎められて、命を掛けた裁きで武器を持たずにコロシアムに引き出される。
そして、壁面にある二つの扉のどちらかを開けるよう命じられる。扉の中には、片方には彼の恋した侍女が、もう片方には虎が潜んでいた。
ところが彼は前の日に、王女から右の扉を開けるよう耳打ちをされていた。運良く女の扉を開ければ、彼は無罪放免となるが、もう一方の扉を開ければ・・・。
いよいよその時が来て彼は扉を開けるのだが、どちらの扉を開けたのだろう、というところで終わっている。

 

 

うしたストーリーのモチーフを取り込んだ高木氏の作品は、勿論リドルストーリーではなく、本格ミステリーなのだが、名探偵神津恭介も、百谷泉一郎弁護士や、霧島三郎検事も出てこない。シリーズ外の長編である。
ある女性が、夫以外の男性を引き入れて、自宅で情事を愉しんでいたところへ夫が帰ってくるという事件が発端となってストーリーは展開する。
男の差し金で、女は帰ってきた夫を強盗範として110番通報するのだが、この事件に興味を持った新聞記者が調べ始める。
やがて事件は殺人事件にまで発展し、女霊脳師が登場したり、混迷の度を深めていくのだが、他の高木作品とは趣を変えた風変わりの印象だ。

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村