隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1735.天久鷹央の推理カルテⅤ 神秘のセラピスト

2017年04月30日 | メディカル
天久鷹央の推理カルテⅤ
神秘のセラピスト
読 了 日 2017/04/30
著  者 知念実希人
出 版 社 新潮社
形  態 文庫
ページ数 310
発 行 日 2017/03/01
ISBN 978-4-10-180090-5

 

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曜日の一昨日28日には、その前にネットで予約を入れてあった近くの歯医者さん、さくら歯科に行ってきた。右上の奥場と、左下の奥歯がしみることが1週間以上続いていた。4年ほど前に他の歯だったが、同様の症状があったとき、治療してもらい具合がよくなったので、同じ歯医者さんを予約したのだ。
シュミテクトという歯磨き剤を使っているのだが、一向に改善する気配はない。仕方なく歯科を予約することになった次第。しばらくぶりの歯医者さんは、以前と変わらず清潔な待合室だが、待っている患者はいなかった。診察カードを出すと、受付の若い女性から、「あら、4年ぶりですね!」と驚かれる。
4年ぶりでも5年ぶりでも歯医者にはあまりかかりたくない、と言いたかったが黙っていた。まもなく呼ばれて診察室に入り、ドクターは一通り口中を見てから、「写真を撮ります」と言ってX線撮影室に呼ばれた。身体に放射線を通さないよう思い防弾チョッキのようなものを肩から被されて、機具の前に立つ。
頭部を固定されて顔の周りをぐるりと撮影具が一蹴して、30秒ほどで終わる。

撮影したフィルムをシャウカステンにかけて、ドクターは「虫歯はないようですね、歯肉が大分後退して、歯根が出ていますので、そこから神経を刺激するので染みて痛いのですね」という。 その後、助手かあるいは歯科技工士のような女性に、歯の磨き方を指導されてから、痛む歯の根元に薬品を塗られる。何度か鋭い痛みが生じるが、まあこれは痛みや染みるのを防ぐための手立てなので、我慢するしかない。
10分ほどで終わったが、何度か繰り返し薬品の塗布が必要とのこと。次回は5月8日の午後になった。できるだけ医者通いをセーブしようと思った矢先に、眼科、歯科と2件続いたのは皮肉なものだ。

 

 

そして、昨日29日土曜日に、懸案だった天羽支部会報がようやく印刷・製本を終えて出来上がった。
天羽支部会報というのは、社会福祉法人薄光会が運営するケアホームCOCO(ケアホーム6棟を管理する事業所)、障害児・者の通所利用者の生活介護をする太陽(ひ)のしずく、この二つの施設利用者の保護者・家族の会を天羽支部会と言い、年4回開催される支部会の出席者に配布している小冊子のことである。
今回で第8号となる会報だが、このところ制作担当の僕からみても、大分マンネリ化して、というのもいまだにこれといった制作協力者に恵まれず、ほぼ“制作ひとり”(どこかで聞いたような名前だが)の状態が続いているのだ。
出来るだけ長く続けたいと思ってはいるが、僕とて大分年寄化?して認知症予備軍の一人だから、早急に協力者を見つけないことには。薄光会と保護者の間の橋渡しのような役割を、というようなコンセプトも多少持ちながら始めたものだから、できれば薄光会の内情に通じた人物がいいのだが、そうなると職員・それも古い職員しかいないから困るのだ。
元々こうした会報のようなものを作ろうと思ったきっかけが、事業所からのプリント(会議用の)が無いなら自分で作ってしまえ、というのが発端なのだ。なかなか思うに任せないことばかりだ。

 

 

約資料がご用意できました。」というメールが、木更津市立図書館から届いたのが、今月15日土曜日だった。都合がつかず取りに行ったのは翌々日の月曜日だった。前に借りていた、服部真澄氏の「天の方舟」を前日の夜読み終わったばかりだったから、ちょうど良いタイミングだ。
なんとなく知念実希人氏の作品を全部読もうと思って、途切れ途切れだが読み続けている。まだ図書館が貸出中で、読めないものもあるが、近々他の作品も読めるだろうと思っている。 この「天久鷹央の推理カルテ」シリーズのⅣを読んだのが、1722冊目の3月17日だったから、およそ1カ月半振りになるか。連作短編はどれも面白く、天久鷹央という天才女医の医学知識の博学ぶりと、傍若無人ともいえる物言いや態度のギャップが、ストーリーの面白さを支えており、次々と読みたくなる。
本書も発行前から、Amazonのデータを拾って、木更津市立図書館にリクエストカードを出しておいた。
他にも数冊の予約というかリクエストを出してある。そのうちの1冊「窓辺の老人」は、まだ読んだことのない作者・マージェリー・アリンガム氏の作品で、連作短編集のようだ。木更津市立図書館をはじめ、周辺の図書館を探したが、何処にも置いてなかった。まあ、図書館と言えどすべての本を置いているわけではないから、当然の事とはいえるのだが、以前一度だけ行った国立国会図書館のように、すべての出版社から発行本のすべてが送られてくる本を、どのように在庫しているのかと、考えただけでも気が遠くなるようだ。
小さな木更津市立図書館のようなところは、年に一度古い書籍や雑誌を無料で、あるいは処分価格で販売して、整理している。よくは知らないが、国会図書館でもそうした処分、整理をするのだろうか?余計な心配をしても始まらないか。

 

 

今回の天久鷹央の診断3件は、いずれも読みごたえのある内容だが、圧巻は最後の「聖者の刻印」だ。 一番のボリュームを誇るストーリーは、さすがの天才女医もお手上げか?と思わせるような前半から終盤に至るまでの内容。一見奇跡かと思わせるプロセスが、どうやってその謎が解明されるのかという、不安と期待がないまぜになって、迫る。 しかし、女医であるから当然のことなのだが、不可思議な現象に見合う病名を当てはめるという、その脳に詰まった知識はまるでコンピュータのようだ。人間の脳は一度見たり聞いたりしたことは、すべて記憶にとどめているというが―脳科学者などが言うこのことについて、あまり僕は納得していないが―その記憶を引き出す力がないことには、まさに宝の持ち腐れでしかない。 だが、たまにそうしたことのできるある意味天才ともいうべき人間が、テレビなどで特殊な能力を発揮するのを見ると、強ち学者の言うことも否定できないと感じる。 だから、このシリーズももしかしたら、天久鷹央医師のような人物も、この世に存在するのかもしれない、などと思って一層面白く読めるのだ。 度々僕はNHKテレビで放送された―今でも続いているのか?―ドクターG(総合診断医を意味する)に出演する医師たちの診断が、少し意味合いは違うが各医療現場でその腕前を発揮しているのが、近い現象か。 しかし、現実の医師の物言いは実に優しく穏やかなことが多く、その説明を聞いているだけで、病の半分は治ってしまいそうだ。 近頃―でもないか、天久鷹央のようなきつい物言いの主人公が、流行のようにあちこちに見られるが、作者たちが集まって、相談したかのようだ。まさかそんなことはあるまいが、そう思わせるような現象に喜んでいいのか、悲しむべきか。 いやいや主人公の性格や言動がどうあろうと、ストーリーが面白ければ文句を言う筋合いはない。 しかし、そうは言うものの主人公のキャラクターも、できれば惚れこむほどの魅力があってほしいものだ。

 

初出
# タイトル 誌名・発行月
プロローグ   書下ろし
Karte01 雑踏の腐敗 書き下ろし
Karte02 永遠(とわ)に美しく 小説新潮 2016年6月号
Karte03 聖者の刻印 書き下ろし
エピローグ   書き下ろし

 

 

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1734.天の方舟

2017年04月27日 | サスペンス
天の方舟
読了日 2017/04/27
著 者 服部真澄
出版社 講談社
形 態 単行本
ページ数 523
発行日 2011/07/07
ISBN 978-4-06-217058-1

 

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民健康保険の赤字という実情を考えれば、出来るだけ病院に通うことは避けなければ、とは思うがいろいろとそちこちに不都合な現象が起こって、歳は取りたくないものだ。と言ったところで、ここ1週間以上になるが、右目がかゆくて少し粘り気のある涙が出て鬱陶しいから、眼科に行ってきた。
かかりつけのドクターは花粉症だというが、僕の場合は家の中にいても症状が出るから、まあ花粉症というのは何らかのアレルギーだということで受け取った。診察後、点眼薬と内服薬を処方されて、帰宅後早速点眼薬を点したら、少し良くなったような気がして―僕はなんというか順応性が高いというか、半分はメンタル面でのことから、病院に行ったということや、あるいは薬を点したというだけで、もう治っていしまったという感じになるのが不思議だ。
病は気から、というのは僕のためにあるのか、そんな気にもさせるが、まさか1回の薬で治るはずもなく、しばらくは1日4回ほどの点眼薬と、就寝前1回の内服薬を続けて様子をみよう。

 

 

このところ春らしく暖かな日が続いたと思ったら、今朝は冷たい雨で少し寒さが戻った感じだった。
気象情報によれば、日中は温度が上がるようなことを言っていたが、5月が目の前になっても寒さを感じるのは、それほど珍しいことではないのか?もっとも梅雨寒という言葉があるくらいだから、だんだん寒さから遠ざかっている時のちょっとした寒さは身体にこたえる。

図書館に「白銀の逃亡者」と「ビブリア古書堂の事件手帖7」を返しに行ったついでに本書を借りてきた。
しばらくぶりの服部真澄氏の作品だ。この著者の作品にも「龍の契り」を読んで惚れ込み、一時期夢中で読んだことを思い出して、何冊か並んだ著者の棚から、本書を選んだ。
これといった理由はないが、最初読んだ「龍の契り」などと同様に、分厚い単行本が読んでみようという気を起こさせた。こうした分厚い単行本には、時として読むのを躊躇することもあるが、僕の脳なんて気ままで行き当たりばったりだから、同じことでも時と場合で変わる。
今回は前述のように、グローバルな内容の作品が服部氏の特徴なので、同様の内容の濃さを予感させて、読みたいという気になったのだ。

 

 

いプロローグで、このストーリーの主人公・黒谷七波が逮捕されるというショッキングなシーンが描かれて、驚かされる。「エッ!どうなってるんだ。」という思いは、第1章から始まるのが、そのプロローグに至る黒谷七波の回想というか告白ということで、納得するのだが・・・・。

1988年、黒谷七波が日本五本木コンサルタンツという会社の面接を受ける場面から、スタートする。
僕などは、コンサルタンツという言葉から、現役だったころになじんだ経営コンサルタントを思い浮かべるが、ここでのコンサルタンツは、それとは異なり―いや共通する部分も多少あるが、ODA(政府開発援助)がらみの、開発途上国からの要請により、インフラ整備などに大手建設会社などと開発調査などを行う、いわばソフト部分を仕事とする会社のことなのだ。
黒谷は女性としては珍しい気質の持ち主で、そうしたグローバルな仕事に興味を持って、日本五本木コンサルタンツの面接を受けたのだが、見事に内定をもらったのだ。

興味のあることだから、彼女は仕事を覚えるのが早いばかりでなく、もっと海外への進出を願っていた。それというのも、彼女には大きな金を必要とする事情があったのだ。
性別を超えた彼女の思惑は、仕事上のタッグを組むゼネコンの担当者に取り入って、彼とコンビを組むことにより、会社の信頼を得て海外の営業所所長となる。
そうした進展がリズムよく運ぶ中、反面大丈夫なのかと言った不安を抱かせることにも繋がって、クライマックスへと突入する。

 

 

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1733.夢の守り人

2017年04月24日 | ファンタジー
夢の守り人
読了日 2017/04/24
著 者 上橋菜穂子
出版社 新潮社
形 態 文庫
ページ数 348
発行日 2008/02/01
ISBN 978-4-10-130274-4

 

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曜日21日から3日間にわたって繰り広げられた、LPGAツアー第8戦・フジサンケイレディスクラシックをテレビ観戦しながら、勝負の厳しさを改めて感じた。野球は筋書きのないドラマだといわれるが、それは野球に限ったことではないだろう。スポーツ競技に共通していえることではないかと思う。
ただ野球は競技に関わる人々-監督を始めコーチや審判、その他のスタッフ、そして試合に臨む選手たち-それらの様々な役割が見えるからだろう。
だが、僕は女子プロゴルファーたちの競技を見ながら、選手とキャディの関係を始め、LPGAの競技員やボランティアで競技を支える人々の動き、その場に見えない大勢の裏方の協力などに思いを馳せて、観るのは簡単だが一つの競技を開催するのにどれくらいの人がかかわるのかを想像して、気の遠くなるような感覚を抱く。賞金を賄うスポンサーや、テレビ放送を支えるスポンサー企業、数え上げたら膨大な人々が関わっていることがわかる。
そして僕はそこに壮大なドラマを感じるのだ。
話がそれた。
テレビ放送は、「フジサンケイレディス・・・」という競技タイトルからもわかるように、フジテレビ系列で実況アナウンサーによれば、今回は地上波、BS、CSの3波を使って、全ホール中継だそうだ。
僕は地上波とBSだったが、それでも競技の大半、主に好スコアの上位選手のプレイを最後まで見ることが出来た。

 

 

初優勝を目指す堀琴音選手が7アンダーで初日トップ、6アンダーで韓国のキム・ハヌル選手と吉田弓美子選手が続くというスコアで終わり、堀選手の初優勝への期待が高まった。だが、2日目17番ホールに落とし穴が待っていた。ティーショットをバンカーに外し、バンカーショットがダフッて寄らず、痛恨のダブルボギーをたたいた。
結局、最終組の一つ手前の組でスコアを伸ばした9アンダー藤本麻子選手と同じく9アンダーの吉田弓美子選手、そして8アンダーとスコアを落とした堀琴音選手が最終日の最終組となった。
3日目最終日を迎えた伊東市の川奈ホテルゴルフコースは、快晴に恵まれて真っ青な空と紺碧の海を見渡せる、最高の競技日和だ。難しいとされるコースでの競技だが、2日目カットライン・1アンダー54名の選手が残っての最終決戦となった。
下位スコアの選手が次々と成績を伸ばす中、背中の痛みを負っての吉田弓美子選手が、12アンダーとスコアを伸ばして、優勝の栄冠を勝ち得て終わった。一時競技の継続を危ぶまれた吉田選手だったが、自らのゴルフ姿勢を貫いた同選手の頭上に栄冠がもたらされたのは、当然と言えるか!?
昨年女子プロ選手権で、アマチュアの畑中奈紗選手に敗れ涙をのんだ堀琴音選手は、この試合でも優勝へと届かなかったのが残念だったが、2位の藤本選手の戦いぶりが印象に残る競技だった。
またまた、ゴルフの話が長くなってしまったが、これからもテレビ放送のある週はテレビ観戦が優先されるから、ゴルフ観戦日記となりそうだ。

 

 

をあけながらもシリーズ3冊目となった。いつ頃だったか忘れたが、ヤマダ電機のポイントでシリーズ4冊をまとめて交換したから、このあともう1冊「虚空の旅人」が残っている。
そのあとは図書館で借りる予定だが、このシリーズはそれぞれの巻が独立したストーリーだから、続けて読まなくてもそれほど物語に入り込めなくなるということはないのだ。
NHKで放送されたドラマ、「精霊の守り人 悲しき破壊神」の全9回はまだ見ていないが、今回もドラマの第1シーズンで活躍した、主人公綾瀬はるか嬢のバルサや、東出昌大氏のタンダをイメージしながら、読んだ。
視覚的なドラマが僕の場合本の文字情報より記憶に残っているのは不思議だが、それだけドラマの作りが良かったのかもしれない。全10作という長いシリーズだが、読み通してみたいと思うのも、半分以上はドラマの影響かも知れない。早い機会に第2シ-ズンのドラマも観たいとは思うが、読みたい本も溜っているし、観たいドラマもたまっているし、と僕は何でもためてしまうのが困った習性で、「お前はハムスターか?」なんて言われそうだ。

 

 

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1732.ビブリア古書堂の事件手帖7 栞子さんと果てない舞台

2017年04月21日 | SF
ビブリア古書堂の事件手帖7
栞子さんと果てない舞台
読了日 2017/04/21
著 者 三上延
出版社 KADOKAWA
形 態 文庫
ページ数 341
発行日 2017/02/25
ISBN 978-4-04-892640-9

 

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面の曇り空の今朝だが、これも春特有の花曇りと言ったところか。ちょっと肌寒いような気がするのも、2-3日暖かなというより、暑いような日が続いたせいだろう。自然の気ままな成り行きは、僕の体調を少し狂わせるように、大きく気温を変化させる。(と思ったら朝だけのことだったようだ)

シリーズも7作目となった。確か前作・事件手帖6のあとがきだったか、この巻でストーリーは完結するようなニュアンスが、書かれていたような気がするが、もしかしたら僕の勘違いか。今作のあとがきでは、まだ物語は続くようなので一安心といったところだ。特に古書に興味を持っているわけではないが、やはり本好きにとっては読まずにいられない魅力を持った作品で、できるだけ長く続けてほしいと思うのは、何も僕に限ったことではないだろう。
相変わらず多くの読者が新作を待っていたようで、図書館の予約は2か月近く待たされた。と言っても僕は発売前からの予約というより、リクエストを図書館に出しておいたから、待ち時間が少し長かったのかもしれない。

 

 

僕は特別に稀覯本と言われるような古書を欲しいとは思わないが、このシリーズに描かれるような、好事家の手を渡り歩く珍しい古書の物語は、ワクワクとした胸の鼓動を高めるのはどうしてだろう。
無意識のうちにそうした稀覯本への憧れがあるのかもしれない。本シリーズに限らず、僕は今までに英国のオークションハウス・サザビーズを思わせる舞台で、競売の迫力あるシーンを描いたストーリーも、いくつか読んできた。そんなストーリーがやはりシリーズで描かれる一つに、赤城毅氏の「書物狩人(ラ・シャスール)」シリーズがある。僕はまだそのうちの1冊しか読んでなく、そのうち全作を読みたいと思いながら、例によって気まぐれな僕の読書は、その欲求を果たしていない。
ビブリア古書堂シリーズの魅力の一つは、店主・篠川栞子の図書に対しての博学さがある。僕は主人公にそれらの博識を与える著者の資料調べにも、あるいはそれを物語に置き換える素晴らしさにも、感動する。

 

 

回は、シェイクスピアの「ヴェニスの商人」を幕開きとして、ストーリーが始まる。栞子さんの代々続く家族の縁が明らかになるにつれ、何億にもなるという高価値のシェイクスピアの古書が、彼女を別の世界にいざない絶縁している母との関係も修復されるのか?
この巻頭を飾る第1章で、栞子さんが五浦大輔に、「ヴェニスの商人」についての解説を施す場面が圧巻と言えるほどの、このシリーズの面白さの神髄を表しているかのようだ。もちろん前述の稀覯本が古書のオークションに表れれて、栞子さんと大輔のコンビが相手側と、競り合うスリル満点のオークションの模様は、クライマックスにふさわしい雰囲気を盛り上げるのだが、僕は、静かな巻頭のシーンもそれに勝るとも劣らないと思うのだ。
読み終わったばかりだが、次の巻にはどういうストーリーが生み出されるのだろうかと、期待はいや増すのである。

 

 

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1731.白銀の逃亡者

2017年04月18日 | メディカル
白銀の逃亡者
読了日 2017/04/18
著 者 知念実希人
出版社 幻冬舎
形 態 文庫
ページ数 334
発行日 2016/06/025
ISBN 978-4-334-42480-7

 

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曜日16日にカミさんと日帰りバス旅行に行ってきた。カミさんは朝刊に折り込まれるタブロイド広告紙に載っている日帰り旅行の日程を見ては、適当な行き先や費用を比べながら、決めるのだが早くも今回で3回目となった。
ところが、前日の夜になって、右の腰から大腿部にかけて、曲げると痛いという。立ってしまえば歩くのに不自由はないが、座ったり立ったりするときに痛むらしい。明日の旅行には行けないかもしれないと言い出したのだ。「お父さん一人で行ってくれる?」というが、僕は彼女が一緒でなければ言っても意味がないと思って、「一人じゃ行かないよ」と言ってから、「明日の朝まで様子を見てダメだったらキャンセルしよう」と言った。
1週間以上前に主催社に申込書を送って、費用を振り込んだ時の気象情報では、傘マークがあったのだが、予定日が近づくにしたがって曇りから晴れに代わり、どうやら快晴で温度も上がり旅行日和になったのも皮肉な結果になるかと思った。
だが朝になってカミさんは痛み止めを飲んで、大丈夫だというから行く事にした。

 

 

僕はいつものように早く起きて、朝食もたっぷりと食べたが、彼女は途中コンビニで握り飯とお茶を買って、バスに乗り込んだ。僕たちが木更津駅前についた時には、8時15分発の大型観光バスはすでに待っていて、僕たちが最後だったようで、乗り込むとすぐに出発した。
行先は先ずは佐倉市のチューリップフェスタだ。前の2回の時は袖ケ浦のバスターミナルで、2名ほどを拾ったのだが、今回は127号の神納(袖ケ浦市)交差点を右折、すぐに館山道に入る。市原サービスエリアでトイレ休憩をとる。何しろ今回は木更津からはるか南の道の駅・富楽里(ふらり)が最初の出発点で、6時45分発だったということで、市原SAまでで1時間以上かかっているから、トイレ休憩も必要だ。
15分ほどで再びバスは館山道から東関道に入り、佐倉に向かう。4月だというのに今日はバスの中は冷房が入っている。寒かったり暑かったりと、気候の変動は身体にこたえるが、それでも寒いよりは暑い方がいくらいい。
現役の頃はホームセンターやSS(サービスステーション:ガソリンスタンド)の出店で、千葉県中はおろか埼玉、山梨、長野と車で走り回ったものだが、バスに乗っているとどこを走っているのか分からない。
9時半ごろチューリップフェスタ開催中の佐倉ふるさと広場に到着。
広大な面積を持ち印旛沼湖畔に広がるチューリップ畑は、今は盛りと咲き誇っている。日曜日とあって、たくさんの観光客が来園して賑わっている中、我がカミさんはざっと見た後は、椅子に座ってかき氷を食べての暑さしのぎだ。僕はバスにデジカメを置いたまま出てきたから、カミさんを携帯のカメラで撮ろうとしたが、何しろ熱いほどの日差しは携帯の画面を見せてはくれず、いい加減なところでシャッターを切ったから、多分写ってはいないだろう。

 

 


チューリップ

 


ジャンボ機

 

食は成田ビューホテルでバイキングだった。ここも結構混んでいて「食べ放題のバイキングです。」などと添乗員(珍しく今回は男性だった)は言うが、いくら食べ放題と言ってもそんなに食べられるわけではなく、適当なところで済ましてコーヒーを飲む。しかし、この食事も旅行の楽しみの一つであることに違いなく、カミさんも楽しんだようだ。

さて、その後は空港の隣のさくらの山公園で桜見物だが、前日までの雨や風で半分以上が散ってしまった桜だ。それでも丘の上からはすぐ近くの低空を跳ぶジャンボ機の離発着が、迫力を持って迫ってくる。だが、音は思ったほど大きくはなく、短い間隔で見ることのできるジャンボ機の姿は美しくもある。
さくらの山公園では、割とゆったりとした時間が取れて、小さなスーパーと食堂を合わせたような建物の外では、フラダンスが行われていた。ダンサーの中にはまだ中学生かと思われるような子もいて、どこのチームか知らないが大勢の観客の前で、優雅な踊りを見せていた。
次の見学場所は、同じく空港近くにある航空科学博物館だ。この最後の見学場所が目的だったのか、今回は子供さんを連れた方も参加している。5階建ての建物の中には、フライトシュミレーターなどもあって、子供連れにも格好の場所だ。

好奇心旺盛のカミさんは5階の展望ルームで、ソファに座り係員の説明をしっかりと聞いていた。
他にもボーイング747の主翼や、胴体の一部分、客室、エンジン等々興味深い展示がされており、大人も子供も航空ファンに喜ばれそうなところとなっている。ここもゆっくりと見学して、予定通り16時に出発して帰路に就き、市原SAでのトイレ休憩の後、木更津には17時20分に着いた。
カミさんは足腰の痛みも出ず結構歩いたから、夕食後は早めに寝に就いた。

 

 

「白銀の逃亡者」は、メディカルサスペンスとSFの面白さを併せ持ったような作品で、ある部分は著者の持てる知識と経験を大いに活用できた作品ではないか。
設定の一部分は最近何十年ぶりかで、司法の謝罪を招いたハンセン病の問題を思わせたが、もちろん関わりは全くない。
2016年、ドイツ ニュルンベルクの病院に、世界的な考古学者ウィリアム・テラーが、発熱と呼吸困難で緊急入院後死亡する。その6日後今度は主治医だったドナルド・ミュラー医師が、同様の病状を呈した。同医師の報告を受けたWHO(World Health Organization:世界保健機関)が調査に乗り出し、未知のウィルスを特定、ドナルド・ミュラー・ウィルスと名付けられ、このウィルスによって引き起こされる疾患を、ドナルド・ミュラー症候群、通称DoMS(ドムズ)と呼ばれるようになった。
世界的な流行を示したが、その後症状は一部で小康状態を示しながら、回復する者が出てきた。ところが生還した者は、その運動能力や力が通常の何十倍にもなっていた。

ウィルスによって引き起こされる。致死率95%という奇病から生還した患者は、「憩いの森」と呼ばれる隔離地域で暮らすことになるのだが、ヴァリアントと呼ばれて通常の人間の能力をはるかに超えた機能を持つため、また、彼らと性交渉を持つことで、ウィルスに感染する恐れがある、ということから一般に恐れられていた。
WHOのその後の研究から、ヴァリアントからはウィルスは出ないということが確認されたのだが、恐るべき風評の流布が、ヴァリアントに対する拒否反応につながっていた。
だが、ヴァリアントの特徴である光に弱い白銀の瞳を隠して、救急病院の深夜業務を続ける医師・岬純也のもとに、白銀の瞳を持つ少女・遥が訪れた。彼女は憩いの森からの脱走者だった。
遥かは岬がヴァリアントであることを知っていた。そして、彼女の仲間・反政府組織が危険なたくらみを抱いていることを岬に打ち明けるのだが・・・・。
さらには、異常なほどにヴァリアントを憎み、脱走者を追跡する刑事が岬の元を訪れるのだ。

 

 

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1730.あなたのための誘拐

2017年04月15日 | 警察小説
あなたのための誘拐
読了日 2017/04/15
著 者 知念実希人
出版社 祥伝社
形 態 単行本
ページ数 408
発行日 2016/09/20
ISBN 978-4-396-63505-3

 

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曜日の昨日から始まったKKT杯バンテリンレディスの、LIVEフロント9生中継テレビを見ていたため、ブログの更新が遅れた。2017年度LPGAツアーの第7戦だ。KKT(熊本県民テレビ)杯は昨年地震災害のため中止になったが、女子プロゴルファー他の復興への活動が実って、本年に実施されることになったツアーである。熊本出身の選手14名が参加する試合は、上田桃子選手の3アンダーを筆頭に、それぞれ活躍ぶりを見せた。
熊本空港カントリークラブの、定評のあるグリーンのアンジュレーションの難しさは、各選手のスコアをなかなか伸ばせなかった。
特に打ち下ろし1番ホールはフェアウェイ途中がラフで途切れており、グリーン手前のバンカーも待ち構えるといった具合で、ここでバーディーを取る選手は少なく、ボギーをたたく選手も多かった。

 

 

僕のブログは読書日記なのだかゴルフ日記だかわからくなってきたが、若い頃は「何が面白いんだろう」と思っていたゴルフが、テレビ観戦だけでも夢中にさせるほどの魅力的なスポーツだと、思い始めた40代に至って、やってみようかなどとも思うようになった。
しかしいかんせんゴルフは金がかかり、いや、ゴルフに限らず何かしようと思えばそれなりに費用は掛かるのだが、ゴルフは他のことより多く掛かるような気もして、何度か練習場に行くにとどまり、実際にグリーンに出ることは残念ながらなかった。
勤務していた会社では、社長がハンディ1桁という腕前だったこともあり、ゴルフを始めるきっかけは数多くあったのだが―例えば接待ゴルフなど・・・―やはり僕の経済事情がそれを阻んだのだ。 今になって考えれば、ゴルフをしようがしまいがそれほど家計に影響が出るとも思えないから、やってもよかったのではないかと、ほんの少し後悔の念が…。
しかし、今日のような風は少し強いが、暖かな春の日はゆっくりとテレビの前で、KKT杯の第2ラウンドを見て満足しよう。

 

 

際の犯罪としては、これほど割に合わないものはないだろう、と言われるのが「誘拐事件」である。そんなことは僕が今更言うまでもないことだが、ミステリーの世界では相変わらず次々と、「誘拐事件」が発生する。努力と成果が釣り合わない犯罪だからこそ、作家たちはその壁を打ち破ろうとして、新作を発表するのだろう。僕は別にそうした作家の努力をたたえるために読むわけではないが、今度はどんな手で誘拐事件を作るのか?そうした興味が湧くのは当然のことと言える。もっともそんなことを言ったって、過去の誘拐事件を覚えてはいないから、いつだって驚きの念を抱きながら、新しい誘拐事件の捜査を警察や探偵たちと追うのである。
だが、僕の捜査は全く当てにならないから、無駄な努力でミステリーを好きな割に犯人当ては最も苦手とするところだ。

だが、誘拐事件ともなれば大体において、犯人ははじめから分かっていることも多い。綿密な計画の下にいかに身代金を奪うか、そこにスリルとサスペンスを漂わせて、読者を引き込むのだが、この作品での誘拐事件は、4年前に起きた事件と全く手口が似通っており、過去の犯人が? だが、4年前に事件を起こしたゲームマスターと名乗る容疑者は、首つり自殺をしたため容疑者死亡ということで、事件は収束していた。

だが、模倣犯と思われる犯人はゲームマスターと名乗るばかりか、、4年前に身代金を運ぶ役目に当たった刑事・上原に身代金を運ぶ役目を指名してきたのだ。さらには、4年前の事件に関して、犯人しか知らないことまで知っていた。4年前の事件の責任を負って刑事を辞めていた上原だが、再び事件にかかわることになる。
著者初の警察小説は、全くその結末を予想させない緊迫感を以って迫る。

 

 

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1729.改貌屋 天才美容形成外科医・柊貴之の事件カルテ

2017年04月10日 | メディカル
改貌屋
天才美容外科医・柊貴之の事件カルテ
読了日 2017/04/10
著 者 知念実希人
出版社 幻冬舎
形 態 文庫
ページ数 437
発行日 2015/05/15
ISBN 978-4-344-42341-1

 

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日は早朝の5時30分からBS・TBSで、マスターズの最終日の実況が放送されて、もちろん僕はそんなに早く起きることは出来ないから、予約録画して観ているのだが、アメリカジョージア州、オーガスタでのトーナメントを、日本では金曜日から初日の模様が放送された。参加選手94名の中に、日本からは池田勇太、谷原秀人、松山英樹の3選手が参加したが、池田、谷原の両選手は残念ながら予選を通過できず、松山選手だけが3日目まで4オーバーというスコアで最終日に臨んだ。
最終日の松山選手は(僕の目的は日本の松山選手だけだ)それまでの遅れを取り戻すかのように、試合に臨んで7バーディ1ボギーの67というスコアで、トータル1アンダーの11位タイまで上がった。
試合後、松山選手は「パットを来年までに何とかしたい」と、今季メジャー第1戦での課題を語っている。今後の益々の活躍を期待したい。

それにしても優勝争いを演じたスペインのセルジオ・ガルシア選手と、ヨハネスブルグのジャスティン・ローズ選手(この二人の選手は日本のファンにもなじみ深いだろう)の戦いは見ごたえのあるものだった。
僕は前述のごとく松山選手だけを見ればいい、などと思いながら観ていたが、最終組カップルの二人に次第に引きずられていった。最終18番ホールにおいて、9アンダーで並んだ両選手はプレイオフに臨み、1ホール目でバーディーを取ったガルシア選手が栄光の座に就いた。華麗な戦いに満喫したパトロン(オーガスタでは、ギャラリー《観戦者》をパトロンと呼んでいる)たちは、両選手に惜しみない拍手を送ったのである。

もう一つ、兵庫県の花屋敷ゴルフクラブで行われた、LPGAゴルフツアー第6戦は、2日目まで8アンダーで首位だった申ジエ選手を、最終日4打差の2位で出た台湾のテレサ・ルー選手が、1イーグル(3番でホールインワンを決めた)、4バーディ、1ボギーの68をマーク、通算11アンダーで逆転優勝を決めた。申ジエ、キムハヌルの両選手が3打差の2位、僕の贔屓・鈴木愛選手は6アンダーの4位に終わった。
今回も女子ツアーは、外国選手に奪われたが日本ツアーで13勝目を挙げたテレサ・ルー選手のプレイを目の当たりにして、日本の選手とは異なる強さのようなものを感じた。次週は熊本で行われるKKT杯バンテリンレディスオープンだ。4月15日から3日間のトーナメントには是非日本選手の活躍を期待したいものだ。

春に3日の晴れなしというから、晴れた日は有効に楽しみたいが、僕にはこれと言って野外に楽しみはないから、日差しで温かくなった部屋で本を読んだり、前述のごとく録画したゴルフ番組を見たりが関の山だ

 

 

読むスピードに合わせて借りればいいのだが、なんとなく読みたい本は他の人の同様だろうという、僕の思い込みがいっぺんに数冊の本を借り出すという無謀をしてしまうのだ。調子が良ければ1日1冊はいけるのだが、歳をとった近頃はやはり1冊に最低でも2日はみておく必要がある。
時には数日を要すこともあるから、途中で借りた本をいったん返して、改めて借りなおすということもある。
聖徳太子ではないから、一度にできることはせいぜい一つか二つだから、我々凡人は一つことに絞って集中しなければだめだ、というのは若い頃よく言われたことだ。
ところが僕のように凡人の最たるものは、いろいろと欲張るものだから、虻蜂取らずになって結局は何もできないという具合なのだ。今僕がかろうじて続いているのはこのブログだけだが、これだってなんということのない文字の羅列になっている。
本当は読んだ人がなるほどと思って、読書の参考になるようなことを書けばいいのだが、そんな文才は微塵も持ち合わせていないのが残念だ。まあしかし、これは自分のための読書記録だから、それでいいのだ、と自分に言い訳しても仕方がない。

 

 

念作品も11冊目となった今回は、美容形成外科医・柊貴之の物語だ。
自らを天才と称する柊は、新たに雇った麻酔科医・明日香の反感を買いながらも、胡散臭い依頼を受け入れていく。金のためにヤクザの依頼も断らずに、怪しげな依頼も引き受ける柊に疑問を抱き、一度は辞めようと思う明日香だったが、終盤にはとんでもない事件が待ち受けていた。
キャラクター造形が他の作品と似通ったところがあるが、それが知念作品の特徴と言えるかもしれない。しかし、こんな天才美容形成外科がいたら(もしかしたら、現実にもいるかもしれないが・・・・)、このストーリーのように、良からぬ依頼者が殺到するのではないか。そんな思いも持たせる美容形成手術の物語だ。

 

 

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1728.いなくなった私へ

2017年04月07日 | 本格
いなくなった私へ
読了日 2017/04/07
著 者 辻堂ゆめ
出版社 宝島社
形 態 単行本
ページ数 393
発行日 2015/02/24
ISBN 978-4-8002-3729-3

 

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昨日の5日は、社会福祉法人・薄光会の保護者・家族の会天羽支部の新旧役員の引継ぎがあって、太陽(ひ)のしずく(こちらも薄光会が運営する生活介護事業所である)へ行ってきた。天羽支部というのは、薄光会が運営する事業所の一つ、ケアホームCOCO(6棟のケアホーム)に入所している知的障害者の保護者、および太陽(ひ)のしずくを通所利用している在宅介護の障害者の保護者の組織を指す名称で、会員は現在40名ほどになっている。
薄光会は、他にも富津市をはじめ鴨川市、南房総市に事業所を展開している。その事業所ごとに利用者の保護者・家族の会が結成されて、利用者を通じて職員とのコミュニケーションを図るなど、利用者すなわち障害者の安寧な日常生活のための補助的な役割を果たしている。
元々薄光会という法人は、障害を持つわが子の将来を案じた、親たちが立ち上げたもので、昭和50年代というまだまだ、障害者に対する社会の認識は低く、受け入れる施設も今のようにはなかった時代のことだ。
その中心的な任務を理事長として担っていたのが、鈴木栄氏だったが、平成15年の夏に病のためこの世を去った。それについては何度もここに書いてきたが、いつもこの記事を始めて読む方のために、同じ説明を繰り返している。

天羽支部会の役員は支部長のS氏のみ留任で、副支部長、会計、会計監査の3名が交代した。
天羽支部には在宅介護の障害者の比較的若い保護者がいて、役員のなり手がいるということで、助かっている。今回会計と会計監査を担ってくれるのが、まさにその在宅介護障害者のお母さんたちで、今年度の天羽支部の活動を積極的にけん引してくれることを、大いに期待できる。
他の支部とは異なる新たな活動を目指そう、そうした考え方の支部長の下、今年度も新たな役員を迎えて、利用者(障害者)ファーストを旗印に、頑張っていこうと思う。

 

 

読んでみたいと僕が思う動機は実に様々だ。本書の場合、一つは宝島社の「このみすてりーがすごい!」大賞優秀賞を受賞したことだが、偶然ネットで彼女の画像を見たことにある。画像には東大卒ということや「このミス大賞」優秀賞受賞についてなど、添えられていたことからぜひ読んでみたいと思った。
「このミス大賞」には優秀賞のみならず、受賞に至らなかった作品も隠し玉ということで、宝島社から文庫として刊行された作品が幾つもあり、中にはシリーズ作品となって多くの読者を勝ち得ているものもあるから、見逃すことが出来ないのだ。
若くて優秀な頭脳を持った(東大の総長賞をもらうくらいだから)女性作家の作品はどんなものだろうと、興味を持つのは当然のことだろう。著者・辻ゆめ嬢の画像がどうして目に入ったのかは、覚えていないがどこからか僕の頭に入ってきたことは間違いなく、面白そうな新作ミステリーを探すのに、それほど多くのことをしているわけではないから、多分Amazonからのメールマガジンなどから関連付けられたのだろう。直ぐに市原市立図書館のサイトを見て、貸出可となっているので、借りに行ってきた。

 

 

イトルからいろいろとその内容を想像するのも、読む前の楽しみの一つで、古典の名作ウィリアム・アイリッシュ氏の「幻の女」を思い浮かべたが、残念ながら全く異なる内容だった。
一口で言ってしまえば、ファンタジーというカテゴリーに入る作品だが、ミステリーとしては本格ミステリーで、その内容を説明するのは難しい。主人公は若い女性シンガーソングライター・上条梨乃という。
ある朝、彼女は路地裏のごみ置き場で目覚めた。なぜこんなところにいるのだろう?そう思ったが、昨夜からの記憶があやふやなのだ。誰にでも好かれるようなカリスマ性も持つ彼女は、事務所でもナンバー1の稼ぎ手であった。だが、そんな彼女の顔を見ても誰一人として、彼女を上条梨乃として認識しないのだ。
そして決定的に彼女を驚かせたのは。街の電光板に流れる「上条梨乃の自殺」というニュースだった。そんな中交差点ですれ違いざま、「上条梨乃さんですね」と呼びかけたのが、佐伯優斗という青年だった。
こんな波乱含みの幕開きで始まるストーリーは、もどかしい思いを抱かせながらも、サスペンスを漂わせて進む。

 

 

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1727.黒猫の小夜曲(セレナーデ)

2017年04月03日 | ファンタジー
黒猫の小夜曲(セレナーデ)
読了日 2017/04/03
著 者 知念実希人
出版社 光文社
形 態 単行本
ページ数 397
発行日 2015/07/20
ISBN 978-4-334-91039-6

 

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こ1週間ほど左足のふくらはぎ上部が鈍い痛みを放っている。どこかにぶつけたとか変な座りかたをしたとか、そういった覚えがなく、原因がわからない。医師に見せるほどではないが(そういう素人判断が、大事になる元なのだが)、気になっていた。
加齢による様々な体の不具合はなく、いたって健康な体が自慢だったのが、75歳を過ぎたあたりから高めの血圧やら、視力の衰えなど少しずつ変調が出てきた。とは言っても元来鈍感で楽天的なものだから、それほど深刻になることはない。
僕は若い頃から、自らの自然治癒力なるものを本能的に信じており、「そのうち治るだろう」を繰り返してきたからか、足の痛みも気づいたら治っている。そんなことから益々自分の身体に備わった治癒力を、信じることになるのだが、そうではなく別に大したことではなかったのだろう。
前年から南岸低気圧の通過による、天候の不順が多いような気がしていたが、今日はどうやら春の日差しが戻ったようだ。こういう暖かな日が来れば、身体の調子も自然とよくなるのだろう。

 

 

我が家はカミさんが10年以上前にリウマチが発症してから、血糖値が上昇して軽い糖尿病を併発した。10数種類の薬を毎日飲んで、インシュリンを打ってと、見ていて気の毒になるくらいだが、幸いなことに高齢者に高い発症率を示す認知症には程遠いから、その点では安心している。
僕だってこの先認知症にならないとは限らないから、気をつけてはいるが、こればかりは気をつけたからと言ってどうなるものではない。だが、できるだけ規則正しい生活を送ることを心がけてはいる。
若い頃の無謀ともいえる暮らしぶりは、カミさんに「歳をとってから大変だよ」とよく言われたものだが、そのカミさんの方が具合の良くないのが皮肉なものだ。なかなか理屈通りにいかないのが世の常で、真面目に一生懸命働いても、僕のように一生貧乏生活から向けだせないものもいる。
不公平な世をはかなんでも仕方がないが、時々テレビのニュースで報道される振り込め詐欺や、オレオレ詐欺などに大金をだまし取られるのを見ていると、そうしたことは金持ちと貧乏人の落差を解消するために行われているのか?などと、とんでもない考えも浮かんでくる。
しかし、あるところにはあるものだ。僕のように持たないものには縁のない話だから、詐欺の被害にあわれた人には気の毒だが、良く金のあるところを調べるものだと感心したりもするのだ。

 

 

昨日と昨日はヤマハ・レディースオープンがあって、夢中でテレビ観戦をしていたから、おかげで少々テレビ疲れだ。それほど夢中にならなくてもよさそうなものだが、自分ではゴルフをしないのに、僕はテレビ観戦だけであたかも自分がプレイしているような疲れを感じてしまう。
近年はテレビ放送が女子プロしかないが、昔は男子プロの試合が多くて毎週のようにテレビにかじりついたものだった。僕の贔屓は尾崎直道選手で、テレビ観戦ばかりではあったが、彼の活躍に胸を躍らせていた。
女子のツアーでは1990年の日本女子プロゴルフ選手権での優勝が印象深い岡本綾子選手が好きだった。その頃はキャディ出身の大迫たつ子選手といった強敵もいて、今とは違ったゴルフ熱が高かったような気がしている。
少し前にも書いたが、今の女子プロゴルフ熱は、韓国選手の活躍に負うところが多い、という人もいて常に優勝、あるいはトップ10に入るなど、相撲はモンゴル、女子プロゴルフは韓国、などと言った声が聞かれるくらいで、2017年も開幕戦はアン・ソンジュ選手、第2戦は藤崎莉歩選手とのプレイオフの末、全美貞(ジョン・ミジョン)選手と韓国選手が優勝をさらった。
だが、3戦目Tポイントレディスは菊池絵理香選手、4戦目アクサレディースが若林舞衣子選手と日本の選手が底力を見せた。いよいよ日本の若手選手の台頭かと思わせたが、5戦目のヤマハ・レディースオープンでは、残念ながら渡邉彩香選手の追い上げもわずかに届かず、韓国のイ・ミニョン選手の優勝に終わった。
日本人新横綱・稀勢の里関の活躍と共に、女子プロゴルフ日本選手の活躍も大いに期待したいところだ。

 

 

読み始めてすぐに前回読んだ「優しい死神の飼い方」のシリーズ作品だということがわかる。そのくらいのことは借りる前に確認すべきことなのだが、おっちょこちょいな僕は、というよりその時は他の本が目的だったから、そちらの方に気をとられていて知念作品が2冊並んでいるのを見て、内容は確かめずに借りてきたのだった。
その目的の「国を救った数学少女」でさえ、僕の思っていたこととは違っていて、大いなるユーモア・ストーリーだったのだから、そういう間違いもあるのだ。だが、そうはいっても読後の幸せ感を味わえたのだから、間違いもたまにはいいものだ。
前作の死神が犬に変身?しての活躍を描いたものだったのに対して、こちらは猫に化けた死神の活躍だ。
それも交通事故で意識不明の少女の身体に、漂っていた女性の魂を入れて、生き返らせる?などと言った伏線もあり、長い物語の末には感動の結末も控えており、死神と呼ばれて人間社会の不合理な生き方を否定しながらも、活躍の場である地上に長くいると、次第に人間の気持ちに寄り添っていくところが胸に響く。

 

プロローグ
第一章 桜の季節の遺言状
第二章 ドッペルゲンガーの研究室
第三章 呪いのタトゥー
第四章 魂のペルソナ
エピローグ

 

 

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