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隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1416.TOKYO BLACKOUT

2013年12月02日 | パニック
TOKYO BLACKOUT
読 了 日 2013/11/18
著  者 福田和代
出 版 社 東京創元社
形  態 文庫
ページ数 460
発 行 日 2011/08/12
ISBN 978-4-488-41711-6

 

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年この月になると、1年の過ぎる早さを実感する。自宅にいる分には静かな住宅街なので、ジングルベルのメロディなども聞こえないから、あわただしさも感じないが、それでも何かじっとしていてはいけないような気分になるのは、やはり年の暮れと言う時期のせいだろう。
今年は珍しくまだ年賀はがきを買ってない。デザインは前もってペイントとオートシェイプでイラストを描いておいたから、はがきを買えば直ぐに印刷できると言うことで、のんびり構えている。
僕が自作のイラストで年賀状を作るようになったのは、2008年(平成20年)分からで、ちょうどその年の干支が始まりのねずみだった。以来、丑、寅、卯、辰、巳、来年は午と、主としてワードのオートシェイプを使って、イラストを描く様にしている。
60~70枚程度出すから、あて先の氏名だけは手書きで、あとはプリントで済ます。昔は朴(ほう)木の板など使って版画を作ったりしたものだが、大昔のこととなった。なにやらきな臭い社会情勢だが、どうやら1年無事に過ごせそうだ。

今年6月に著者の「怪物」がドラマ化されて、日テレ系列で放送された。僕はそれまで著者の福田和代氏をまったく知らなかったが、話題のドラマということと、主演の佐藤浩市氏や向井理氏の演技にも興味があったから、期待して観た。
原作のあるドラマは出来るだけ見るようにしているが、量産されるドラマを追いかけるのは当然無理だから、番組表を見て興味のあるものだけに限られる。それも最近夜の落ち着いた時間は読書に当てるようにしているから、ドラマは録画したものを昼間見るようにしている。
だが、この録画と言う曲者はいつでも見られると言う気持ちが、見ないで貯めてしまうことにつながって、尚いけないことに、DVDなどという昔のビデオテープに比べて、格段に省スペースのデバイスは、溜めて置くのに都合がよく、溜まる一方なのだ。まあ、それは僕の心がけ次第なので、誰に文句を言う筋合いのものではないが・・・・。

 

 

ドラマ「怪物」の内容は僕の好みではなかったが、原作者に興味を持った。
例によってBOOKOFFの105円の文庫棚を見ていたら、本書が目に付いて買って来た。巻末に掲載された著作リストを見ると、著者はすでに13冊もの作品を発表していることを知り、僕の知らない作者がたくさんいることを改めて知る。

タイトルからいわゆるパニック・ストーリーが類推できるように、本書は大都会東京をターゲットにした、電力供給を遮断すると言うテロの話だ。まだ若くてたまには映画館にも通っていた頃は、一時期パニック映画に嵌ったことがあって、「ポセイドン・アドヴェンチャー」を始め、「エアポート75」などのシリーズ、あるいは「大地震」や「タワーリング・インフェルノ」など片端から―といっても年代が違うが―見てきた。
最近はパニック映画などと銘打たなくても、凄まじいカーアクション等の映像が差し挟まれ、大概のことには 驚かなくなってしまったが。なんだかどんどんエスカレートする映画の中のエフェクト・シーンはどこまで行くのだろうと心配になる。

 

 

書はしかし、その大停電の中で人々がどう対応するのかと言った話ではない。つまり、タイトルから想像できる内容とは少しばかり異なるところが読み終わって、あえて作者がこのタイトルを選んだのだと僕には思えるのだ。ちょっとややこしい言い方になった。
この中では当然のことながら、電力の供給がどのような仕組みになっているのか、作者も取材や調査をしたのだろう。実に詳しい内容が状況の進展に伴ってわかる仕組みになっている。
東北の大震災による福島の原子力発電所の事故が、様々な教訓を残して今尚新たな問題が次々と起こっている。それに伴う計画停電によるわずらわしさはまだ記憶に新しい。

僕たちは毎日の生活の中で、ごく当たり前のように強いて意識をせずに電気を使っている。
このようなストーリーを読むと、悪意を持った者が社会をパニックに陥れる可能性を想像して、底知れぬ恐怖を感じる。

 

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1339.生存者ゼロ

2013年04月10日 | パニック
生存者ゼロ
読 了 日 2013/03/31
著  者 安生正
出 版 社 宝島社
形  態 単行本
ページ数 409
発 行 日 2013/01/24
I S B N 978-4-8002-0500-1

 

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月(3月)の初めにBS11(イレブン)で放送中の「宮崎美子のすずらん本屋堂」という番組で、成井豊氏がおすすめの本として、本書を絶賛していた。この番組についてはここでもたびたび書いてきたが、以前同局で放送されていた書評番組をリニューアルして、昨年(2012年)4月から、女優の宮崎美子氏をMCに迎えて始まった番組である。
僕は民放のバラエティやクイズ番組は見てないから、よくは知らなかったのだが、宮崎美子氏はそうした番組で、高い回答率を示して、クイズの女王などと呼ばれているらしい。(この番組に作家としてゲスト出演した、阿川佐和子氏の弁)
この番組のMCぶりを見ていて、読書に関しても造詣の深さを示して、毎回のゲストとして登場する作家たちへのインタビューも、巧みなところを見せている。
ちょっと横道にそれた。

成井豊氏はコメンテーターとして、たびたびこの番組に登場する、演劇集団キャラメルボックスの代表だ。成井氏は本書の帯にあるキャッチコピーに惹かれて読み、キャッチコピーの通り面白かった旨を、登場人物たちの関係図を書いたフリップを用いて、説明していた。
僕はいずれ読もうと思っていたので、詳しい説明のところはあえて見なかった。本は自分で読んでその驚きを実感したいから、あるいは映画やドラマであれば、同様に先入観を持たずに見たいのだ。それにもかかわらずこういう番組を見るのは矛盾しているような気もするが、新しい本やベストセラーについて、ゲストの作家のインタビューなどは、僕の情報源なのだ。
この本については、その前にAxnミステリーのBOOK倶楽部という番組でも、書評家の誰か―もしかしたら大森望氏か?―が推していた記憶がある。

 

 

というようなことから、僕はちょっと無理をして大枚1,400円也をはたいて本書を手に入れたのだ。
宝島社の「このミステリーがすごい!」大賞からは、海堂尊氏や柚月裕子氏、中山七里氏など、僕の好きな作家を輩出していることからも、無理して新刊を買う価値もあるかと期待していたのだ。
だが、往々にしてこうした評判の高い本ほど読んでみると、期待が大きかった分がっかりすることも多いのだ。
過去にそんなことを何度も経験している。にもかかわらず最近はそうした本を追いかけることが習慣になりつつあって、少し自重しなければ。
そんなことを書くのも本書を読み終わって、同じ思いを持ったからだ。ストーリーとしてはつまらないものではないのだが、何か心に迫るものがないのだ。読者は(僕のことだ)作者の労苦も知らず、勝手なことをいうのだが、一つはストーリー展開と、キャラクター造形がマッチしていないような気がする。一説にはB級ホラーサスペンスだとの評もあることを後で知ったのだが、発想としてはハリウッド映画を思わせるようなところもあって、わくわくさせる場面もある。

 

 

っと昔に同じような映画を見たような気がするが、僕の思い違いかもしれない。物語の収束部分にデジャヴのような感じを抱いたのだ。
登場人物の細菌科学者が、マッド・サイエンティストのごとき様相を示すところも、言われてみればB級ホラーと言えないこともないが、僕がデジャヴのような感覚を抱くのは、終盤の解決に至る経過が、どこかで見たか読んだか?それとはわずかに異なる―わけのわからない話だが、ネタばらしにならないようにするのは難しい―パニックの元となるオブジェクト自身の変化によって終息する、というシチュエーションが似ているような気がするのだが…。
自分でも言ってることがもどかしい。僕は話の持って行きかたでは、もっと壮大なメディカルサスペンスにも、あるいは生物科学ストーリーにもなるのではないかと、残念な気もしているのだ。しかし、このような作品が大賞に選ばれるということに関しては、少なからず疑問を持ったことも確かだ。

 

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