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隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

2071.ジェリコ街の女

2022年03月10日 | 本格

 

ジェリコ街の女
THE DEAD OF JERICHO
読了日 2022/03/08
著 者 コリン・デクスター
Colin Dexter
訳 者 大庭忠男
出版社 早川書房
形 態 文庫
ページ数 345
発行日 1993/03/31
ISBN 4-15-077555-9

 

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ばらく振りのシリーズ作品が続く。2007年3月に読んだ『モース警部最大の事件』に続いて4冊目だ。丁度13年振りとなる。このシリーズはNHKで放送された吹き替え版のドラマで知り、原作を読もうと思ったのだった。この英国ITV制作のドラマはNHKでは、11作までの放送だったと思うが、作品は32作に及んでおり、字幕版としてミステリーチャンネルで放送されたと記憶しているが定かではない。
現在僕のDVDレコーダーが故障中なので、検証不可なので確かめようがないのだ。パソコンでも確認できると思ってていたら、再生アプリがなくダメだった。何でもかんでも機械任せはこんな時不便を感じる。
さて、英国推理作家協会賞のシルヴァーダガー賞を受賞した本作は、ドラマで第1作となっているが、コロン・デクスター氏の作品の順番で行くと、第5作にあたるらしい。
僕はドラマの方を先に見ているから、そのダイナミックな作りに興奮を覚えたものだが、原作はそれとは違った趣を感じて、映像とな異なるときめきを感じたのだ。

 

 

僕はこのブログの中でも何度かドラマと原作について書いたが、僕が知っている限りでは、原作とは異なるドラマ作りが多いようだ。もちろん監督がその原作をどう読んで、何を訴えようとするかによって、ドラマの方向が決まるのだから、原作と異なる表現があっても当然だとは思うが、視聴者によっては―僕もその一人だ―原作と異なる表現を認めない人もいるようだ。
そんな堅苦しい見方をせず、僕は二通りの表現を、つまりドラマも原作も両方を楽しむことにしている、昔角川春樹氏の映画と原作本の両方を売るといったメディアミックスという手法が話題になって、その手法が多大な観客と読書家を生んだ。僕もその手に乗って大いに楽しんだのだ。特に僕が映像を楽しんだのは、横溝正史氏の金田一耕助シリーズのドラマだった。
このコリン・デクスター氏の作品とは関わりのない話なので、この辺でやめておこう。

 

 

ころでモース警部のシリーズのドラマは、32作も制作されており、原作者のコリン・デクスター氏も、多少制作面でも関わっていたようだが、ドラマの半分くらいはオリジナル脚本のような気がする。
コリン・デクスター氏の原作を全部調べたわけではないが、30作以上のモース警部シリーズは見当たらないのだ。例え原作がなくオリジナル脚本でも、優れたドラマ作りが成されていれば、それはそれで良いのではないかとも思うが、我儘ともいえる視聴者である僕は、原作があってそのストーリーや醸し出される雰囲気が、どの程度映像化されたか、あるいはキャラクターたちが如何にリアルに演じているかが評価できて、面白いドラマになっていれば、観客として満足できるか。

ドラマの話ばかりになったが、本作を読んでいていかにも本格ミステリーを読んでいるのだという、嬉しさが何度も湧いてきた。“探偵はみなを集めて「さて」と言い”なんていう川柳もあるが、やはりミステリーの醍醐味は本格推理だと改めて感じたのだ。

 

 

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2046.石の猿

2021年09月04日 | 本格

 

石の猿
STONE MONKEY
読 了 日 2021/05/17
著  者 Jeffery Deaver
訳  者 池田真紀子
出 版 社 文藝春秋
形  態 文庫2巻組
ページ数 413/387
発 行 日 2007/11/10
ISBN 978-4-16-770557-2/770558-9

 

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作『エンプティ・チェア』を読んだのは、2017年9月末だから、おおよそ4年ぶりのリンカーン・ライムシリーズだ。現在2018年刊行の『カッティング・エッジ』で、14作を数えるシリーズだが、僕は本作でようやく5作目だ。
国内のミステリーを追いかけて、このところ翻訳物になかなか手が回らない状況だ。
それでも僕がこのシリーズに嵌っているのは、全身がマヒ状態の中、その優れた頭脳と最新の機械、そして何より頼りになる女性刑事の、アメリア・サックスによる助力で、難事件を解決に導くことだ。
ライムとサックスのコンビの動向も、事件の行方とともに大いに気になるところで、それはリンカーンの手術の如何に罹っているのだ。
難しい手術の経緯がいかなる結果を招くのか?シリーズの行方を左右する一大事だから、世界中のファンはやきもきしながら、その結果を待っているだろう。

 

 

僕は、第1作の『ボーン・コレクター』の映画を見てから、原作に取り掛かったので、リンカーン・ライムはいつでもデンゼル・ワシントン氏の姿になって、また、アメリア・サックスはアンジェリーナ・ジョリー氏のかわいかった当時が目に焼き付いており、それぞれの姿が脳内を駆け巡る。この俳優たちのファンでもある僕は、新聞のテレビ番組欄で、彼や彼女の名前を見つけると、可能な限りその映像を見ることにしているが、アクションストーリーだろうが、シリアスなストーリーだろうが、彼等の演技がどうあろうと、いや、二人が名優であることも追いかけることの要因だ。
それはともかくとして、また同様の配役によってリンカーン・ライムシリーズが映画化されないかと、密かな可能性の低い望みを抱いている。

今回のリンカーンの敵は、ゴーストと呼ばれる密航者の命を狙う悪玉だ。当初からその卑劣な手段はサスペンスフルな描写と、計画を遂行する見えない敵に心を痛めながら読み進める。
なかなかその真の計画やその遂行者を、追い詰めることのできない過程を、少し退屈な所も含め読み進めるが、実際の警察組織の事件捜査は、僕らが考えるよりずっと地道なことが多く、小説のような具合には進まないだろうと思い、多少の冗長さは受け入れることにしているが・・・・。

 

 

くのミステリーに描かれる如くに、このシリーズでも気になるところは、リンカーンとアメリア・サックスの関係だ。古くはペリー・メイスンとデラ・ストリートに始まり、国内外を問わず数えきれないほどの、コンビの活躍がミステリーを、いやミステリー以外でも彼と彼女のロマンスが、より一層のストーリーの展開を際立たせている。
それにそうした小説を映像化する際にも、二人のロマンスの行方が欠かせないものとなっており、観客はストーリーの進展とともに彼らのハッピーエンドを望んでいる。あるいはハッピーエンドを予感させる結末が望ましいのだ。

多くの国民を驚かせた昨日の菅首相の、自民党総裁選への不出馬のニュースだ。いろいろ憶測が飛ぶ中彼の本音はどこにあるのか?気になるのは自民党内ばかりではあるまい。周りの雑音には我関せずといった態度で、総裁選に意欲を示していたことから一変して不出馬となった原因はどこにあるのだろうか?
政治の世界は分からないことが多くて、考えるだけ無駄か!

 

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2036.Y駅発深夜バス

2021年08月07日 | 本格
Y駅発深夜バス
読了日 2021/04/07
著 者 青木知己
出版社 東京創元社
形 態 単行本
ページ数 285
発行日 2017/06/30
ISBN 978-4-488-01793-4

 

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度もここに書いてきたことだが、僕はタイトルだけで作品を評価してしまうことがある。そしてそれがたまたま僕の好みに合う作品で、面白く読めることがある。
まあ、偶然の産物なのだが、僕はそうした現象を信じて、と言うよりあまりあてにはならない自分のそんな能力を信じて、これと思わせるタイトルは、出来るだけ読むことにしている。


この作品もそうした中の1冊で、読みたいと思った本だ。だが残念なことに木更津市立図書館には、蔵書がなく、隣町の袖ヶ浦市立図書館で借りてきた。僕が知ったのはごく最近の、東京創元社からのメールマガジンだったので、最近の刊行だと思っていたら、ご覧のように2017年6月だから、結構前の出版物だった。
僕の新刊の中から読みたい本を探す能力は、まことにお粗末なものだということなのだが、最近は歳をとるごとに衰えが深まるばかりだ。
しかし、読む力も衰えているから、次々と出てくる新館を読めるわけではないから、丁度良いのかも知れない。 そんなことを考えると少し寂しい気もするが、仕方のないことだ。

 

 

 

下表のように5編からなる短編集で、さらには表題作の「Y駅発深夜バス」は、光文社の「新・本格推理」という企画に応募され、入選した作品だという。僕の情報収集能力のお粗末なことから、そんな作品の詳細はとんでもなく時間が経ってからしか入ってこないので、ニュースではなくなっているが、しかし、この作品は、「新・本格推理03」(と言うことは2003年刊と言う意味か?)に掲載されて、ファンの支持を受けたということだ。
そんなことから、この作品は僕の好みに合った面白いミステリーだ、ということは半分当たって半分は外れだ。
というのは、僕はてっきり表題作が長編だと思っていたが、短編集だったことで半分外れ、だが短編集で表題作が本格推理に応募されて評価されたことが面白いミステリーだということになって、半分当たりの部分だ。
あまり僕は作品の内容を推察して、それがあたるなどと言うことはないのだが、今回のこの作品も同様僕の思いは長編で、Y駅と言うどこか架空の町の駅を想定しているのだが、予想に反してこの駅発の深夜バスは存在していなかった。
いくつかの想像を裏切る展開に僕の期待は次々にしぼんでいく始末だ。そして、短いストーリーは、考えていたこととは異なる方向へと収束した。

 

 

のところテレビの番組が、オリンピック放送の為、通常とは異なる編成だから、どちらを見ようかと迷ったり戸惑ったりしている。見なければいいのだが、折角のアスリートたちの活躍を見逃すのもしゃくだ。
先日観ていて文字通り感動したのは、棒高跳びの競技で自身が持つ世界記録更新への挑戦だった。
北欧スウェーデンのアルマンド・デュプランティス選手は最初の試技5m55cmから最後の6m02cmまで、全ての試技を1回でこなし、楽々と金メダルに輝いたのだが、金メダルに決定してからの挑戦が、素晴らしかった。自身の持つWR・6m18cmを超えて、6m19cmに挑戦したのだ。3回の試技は残念ながらすべて失敗だったのだが、僕はその21歳のアスリートの挑戦する姿に感動したのだ。
普通だったら最後のポールの高さが6m02cmだから、6m5cmとか6m10cmとなるだろう所を一気に世界記 録へと跳ね上がったところに彼の挑戦者魂を見た気がしたのだ。
オリンピックの開催に反対していた僕だが、活躍するアスリートたちの姿は尊い。

 

収録作
# タイトル 紙誌名 発行年月・号
1 Y駅発深夜バス 「新・本格推理03 りら荘の相続人」 2003年3月
2 猫矢来 書き下ろし  
3 ミッシング・リング 書き下ろし  
4 丸人病 「新・本格推理05 九つの署名」 2005年3月
5 特急富士 書き下ろし  

 

 

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2030.チャイナ橙の謎

2021年07月11日 | 本格

 

 

チャイナ橙の謎
THE CHINIES ORANGE MYSTERY
読了日 2021/02/26
著 者 エラリイ・クイーン
Ellery Queen
訳 者 井上勇
出版社 東京創元社
形 態 文庫
ページ数 364
発行日 1960/01/01
ISBN 978-04-488-10412-2

 

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い時からの憧れであったエラリイ・クイーン氏の、国名シリーズの1篇だ。その憧れだった割に僕はまだ今までに、たった3冊しか読み終わってない。いつもの言い訳をすれば、やはり、いろいろと面白い新刊ミステリーが泉のごとくに湧いてくるように、出現するからだ。
ミステリファンを自認するからには、やはりクラシックな作品、特に黄金時代と言われる頃の作品には目を通しておくべきと思いながらも、新たな作品の誘惑にはなかなか勝てない。
特に僕などは残された時間に限りがあり、読める量はそれほど多くはないから、余計に新作に目を惹かれるのだ。だが、僕は高校生の頃本格ミステリーの雄ともいわれていた、著者の作品に憧れていて、自分で金を稼ぐようになったらシリーズ全冊を買って読むんだと意気込んでいた。
その頃のことを思い起こしていると、エラリイ・クイーンの国名シリーズにあこがれていた一つの要因が蘇った。それは終盤近くになって、差し込まれている“読者への挑戦”だった。
それまでにすべてのヒント・条件が示されている。読者の推理を促すというわけだ。僕はこの“読者への挑戦” が純粋に本格ミステリーだということを示しているのだと、僕自身は犯人捜しは不得手ながらも、そうした読者と知恵比べをするような試みに強く惹かれたのである。
後に国産のミステリ―の中にもそうした試みを現す作品が出てきて、特に僕の好きな作家では高木彬光氏の作品に有ったと覚えている。

 

 

この『チャイだ橙の謎』にももちろん“読者への挑戦”は当然のごとく差し挟まれている。
だが、世界的なミステリー研究者とも言える、エラリイ・クイーン氏に向かって。大変失礼な言い方になるが、この作品では必ずしも読者に対して公平なヒントを与えているとは思えない。
あまりにもある一つの事柄に、偏向の嫌いがあるのだ。それが読者全員に理解されない所だと考えるのだ。それに、冗長ともいえるエラリイ・クイーン(主人公の探偵の方)の推理と言うか、解決に至るまでの行動についていけないと感じさせてしまうのだ。
もっとも尊敬すべき大作家の作品にケチをつけるわけではないが、僕はこの作品に少なからず落胆の気分を味わった。昔夢中で読んだ作品も、いまだ10冊を少し超えた位しか読み返してないから、偉そうなことは言えないが、いくら考えてもこの作品はエラリイ・クイーン作の中でも駄作に入るだろう。

 

 

よいよオリンピックの開催日が近づいてきた。無観客まで想定することにどんな意味があるのだろう?
東京都に発出された緊急事態宣言が、新型コロナ対策と矛盾していることに、何故気づけないのだろう。
まるでオリンピックがコロナウィルスを抑えるかのような考えを持っているのだろうか?この国のリーダー達は。いろいろと考えの違う人たちがいて、国が成り立っているのだが、リーダー達ばかりでなく、そのリーダーに寄り添う人たちの考えも、理解できないことの一つだ。
今日、7月10日は朝からNHKテレビでで、西日本の豪雨に対しての報道が続いている。まだ大きな災害の報告はないが、起きていてもおかし宇ない状況が、依然として続いている。
自然災害に対する我々人間の力がいかに弱いものか、新な思いを持たせる瞬間だ。

偉大なミステリー研究者としても尊敬するエラリイ・クイーン氏の作品に対する記事としては、少々嫌な感じになってしまったが、致し方がない。

 

 

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2027.夜の床屋

2021年07月05日 | 本格
夜の床屋
読了日 2021/02/10
著 者 沢村浩輔
出版社 東京創元社
形 態 文庫
ページ数 309
発行日 2014/06/17
ISBN 978-4-488-43711-4

 

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めてこのタイトルを見た時から気になっていた。それがどれくらい前だったかは忘れたが、発行日からはもう7年も前だと分かり、改めて月日の過ぎる速さを実感する。

昨日から関東地方を猛烈と言って良いほどの雨が襲っており、我が木更津地方にも珍しく大雨警報が発せられたほどだ。僕の居住地は元は山間地であったところで、海が見えるほどの高台なので、水害、土砂崩れなどについては心配ないが、つい今しがたのテレビの映像によれば、静岡の熱海での土砂崩れの凄まじいまでの勢いで、家屋を巻き込んで街中を流れ下っていた。
驚きや恐怖の思いは、なんとも言葉にできない出来事だ。
どうやら梅雨前線を伴った低気圧は東の海上へと遠ざかりつつあるようだが、かつての東北を始め関東までをも巻き込んだ大津波の流れを想起させるような土石流は多くの家屋をも巻き込んで、尊い人命も失うことになった。
昼過ぎに一旦雨が治まった時を見定めて、少しでも仕事を終わらせておこうとしたが、始めると再び雨は本降りとなったので、三分の一ほどで終わりにして引き上げた。

 

 

 

この分ではJLPGAの資生堂女子オープンも。中止になるのではと心配したが、協議を短縮して行うようだ。
このところ僕の贔屓の鈴木愛選手は、何かしらが狂っているようで調子が良くない。ベストテンに残らないどころか、予選落ちすることさえあった。
さて、競技は36ホールに短縮して行われて、2年ぶりの鈴木愛選手の優勝が決まった。

彼女の涙ながらの優勝インタビューに、思わずもらい泣きをする。こんな一流選手でスター選手でもある鈴木愛選手でも、苦しくてゴルフをやめようとさえ思うことがあったのだと知って、プロの世界の厳しさのすべてを知ることはできないが、応援するファンとしては見捨てることなく、「これからも続けて応援していくよ」と声援を送ったのである。

7月3日に書いた記事だから、日時の感覚が少し狂っており、ご勘弁ください。

 

 

日はテレビ各局ともに、熱海の土石流の現場取材で大忙しだ。現場取材に招かれた専門家によれば、土石流の起きた頂上付近に行われた「盛り土が土石流を招いた」との見解もあるが、いずれにせよ後からの意見はどうとでも言える。
盛り土を行う際もそれぞれ専門家の意見も斟酌されたのではないだろうか?自然災害から人的な災害へと見解が変われば、それはそれで大変なことになる。多くの人命も関わっており、責任の所在と言うことになれば、どこにそれを求めることになるのだろう?
今日7月5日は午後になって薄日が差すほどの天候になっている。いまだに行方や存在の明らかになってない人々は、警察、消防によって懸命の捜索が続いている。

 

収録作
# タイトル
1 夜の床屋
2 空飛ぶ絨毯
3 ドッペルゲンガーを捜しにいこう
4 葡萄荘のミラージュⅠ
5 葡萄荘のミラージュⅡ
6 「眠り姫」を売る男
  エピローグ

 

 

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1999.キネマ探偵カレイドミステリー

2020年07月16日 | 本格
キネマ探偵カレイドミステリー
読了日 2020/07/14
著 者 斜線堂有紀
出版社 KADOKAWA
形 態 文庫
ページ数 352
発行日 2017/02/25
ISBN 978-4-04-892704-8

 

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よいよ僕は認知症の仲間入りを果たしたのかと、心配になる。13日に読み終わった本は『書物狩人』で、てっきり初めて読む本だと思っていたら、ブログに投稿する段になって、すでに5年も前に読んでいたことが分かったのだ。
無節操な読書がこういう結果を招くのだが、読書人を自任するならもう少し注意深く、などと思っても無駄なことか。前に読んだことを忘れて同じ本を買うのも同じことだ。そんな過ちを何度も繰り返して、認知症を心配するなど、それも無駄なことなんだろう。過去の反省が全く生きていない。
というようなことで、ブログへの投稿が1冊分亡くなって、ちょっと乱れが生じた。

本書のタイトルに惹かれて調べたら、著者が斜線堂有紀ということで、その珍しい姓に二度びっくり。だが、Wikipediaにもその詳細は記述されてないから、斜線堂という姓がペンネームなのか本名化は不明だ。また、性別も書かれてないが、名前からすれば女性だろう、と思っている。
まあ、それはどちらでも良い。要は書かれた内容が面白いかどうかだ。そんなことを思いながら、読み始める。

 

 

 

メインキャラクターに次ぐキャラだから、サブキャラクターと言ったらいいか、それともCoCaractorか?
それはともかく奈緒崎という、英知大学ドイツ文学部に属する大学生は、同じ大学の学生ながら、引きこもりの秀才で名探偵の嗄井戸高久(かれいどたかひさ)との、因縁ともいうべき関係が面白い。
ドイツ文学の単位が取れないと留年と、教授から宣告された奈緒崎が唯一留年を免れる方法が、引きこもり の嗄井戸を高畑教授のもとに連れていくことだった。だが、それは簡単なことではなかった。あえなく留年となった奈緒崎だが、おかげで嗄井戸と望まぬ友人関係を結ぶことに。
そして、嗄井戸の映画への博識ぶりと名探偵ぶりを身近に感じることになったのだ。そしてストーリーは彼・奈緒崎の視線で語られる。

 

 

、この場合の昔は僕の中学生になったばかりの頃だから、60数年も前になる。その頃の娯楽の王様だった映画の記憶は、田舎の小さな映画館や中の同じく小さな売店などの記憶だ。近ごろ増々記憶力が衰えてきたが、その頃の記憶はうっすらと頭に残っている。
この本の主人公カレイドのような映画に関する博識は持ち合わせないが、それでもその後テレビの世界へと転身した俳優たちの思い出も結構たくさんあるのだ。思い返すだけでも貧乏で何もなかった時代のせいばかりでなく、我が家も一回り歳の違う妹が生まれたばかりの頃の、赤貧洗うがごとき!とまではいわないまでも、それに近いような状態だった。
どんな状況であろうと、思い返せば胸が騒めくのはなぜだろう?決して還りたいとは思わないが、ノスタルジックな切ない思いは、歳をとったせいか。
そんな中で僕はよく映画館へと通えたな、と変な感傷に浸るのだが週に1回程度、通い詰めたこともあった。
映画の記憶に依って事件の真相に迫る、嗄井戸高久の活躍はその映画への想い、知識の確かさが、嫌みでなく僕の心に迫る。 1冊余分に読んだことがブログの投稿に、思わぬ乱れを生じさせた。

 

収録作
# タイトル
第一話 逢縁奇縁のパラダイス座
(ニューシネマ・パラダイス)
第二話 断崖絶壁の劇場演説
(独裁者)
第三話 不可能密室の幽霊少女
(ヴレア・ウィッチ・プロジェクト)
第四話 一期一会のカーテンコール
(セブン)

 

 

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1967.密室蒐集家

2020年05月02日 | 本格
密室蒐集家
読了日 2020/03/24
著 者 大山誠一郎
出版社 文藝春秋
形 態 文庫
ページ数 286
発行日 2015/11/10
ISBN 978-4-16-790488-3

 

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つだったか、どこだったか忘れた。僕の記憶はいつでもこんな具合なのだが、多分雑誌の書評ではないかと思う。著者・大山誠一郎氏についてと、本書の紹介があって、興味を持たせる文章に読んでみたいと思った。 何年も前の事だ。
ミステリー好きにとって密室というのは、永遠のテーマだが、読者である僕の課題ではなく、あくまで作者の方の問題だ。
大昔はどちらかと言えば、機械的なトリックで密室を作ることが、歓迎された時代もあったが、作者や読者はそれに飽き足らず、錯覚によるものや心理的な要素が作る密室など、色々と工夫が凝らされてきた。
識者によれば、もう密室のトリックは出尽くしたのではないか、ということも言われているようだ。そんなことから僕も、若い頃のような密室にこだわる気持ちも薄れつつあった。
それでも気持ちのどこかには、やはり密室はミステリーの王様だという思いが残っていて、本書を手にして期待が徐々に高まる。

 

 

 

最初のストーリーは、読んでいた本を忘れて、校庭の木のそばで読んでいたことを思い出して、夜になって取りに行くという女子高生の話だ。校庭に忍び込んで、鮎田千鶴は本を拾ってカバンに入れて、立ち去ろうとしたとき、音楽室から明かりが漏れていることに気付いて、近づいて行ってそこで音楽教師が、何者かに殴り殺されるところを目撃する。
視角の関係で犯人の姿を見ることはできなかった。職員室にいた英語の教師と、現場に戻ると音楽室は鍵が掛かっている。音楽室の鍵は小使いの部屋だ。そこで二人は小使いの部屋に行って、鍵を持って小使いとともに3人で現場に引き返す。
鍵はかかったままだから、犯人はまだ部屋の中か?ところが中には殺された音楽教師だけだった。
という最初の密室だ。続いて、「少年と少女の室」、「死者はなぜ落ちる」、「理由ありの密室」、「佳也子の屋根に雪ふりつむ」と全部で5つの密室が語られる。

 

 

日は急に夏が来たかと思うような、穏やかだが暑い日だ。
暑さのピークと言った日だが、明日からも今日ほどではないにしても、晴れて温度の高い日が続くようだ。しかし、緊急事態宣言はあと1か月ほど延長するというのが、専門家会議の結果を踏まえて、政府の方針だ。
一律10万円の給付を含む補正予算が決定して、早くも実施に踏み切った自治体もあるが、それで事態が良くなることはなく、休業による事業の衰退に悩む人々の救済に、どれほどの支援が及ぶのか?
あまり明るいニュースは聞こえてこないのが現状だ。
4月24日のブログに、千葉県の新型コロナウィルスの感染者が、726人になったと書いたが、昨日(5月1日)現在、感染者数837人、死者33人となっている。1週間で100人余り増加していることは、決して少ない数ではない。
幸いと言って良いかどうか、木更津市は11人のまま増加はしてないが、油断はできない。今一度気を引き締めて、掛からないといつ爆発的感染(オーバーシュート)が発生するか分からない。

 

初出(単行本 2011年10月 原書房)
# タイトル 紙誌名
1 柳の園 1938 年 書き下ろし
2 少年と少女の室 1953年 「密室晩餐会」原書房2011年
3 死者はなぜ落ちる 1965年  書き下ろし
4 理由ありの密室 1985年 書き下ろし
5 佳也子の屋根に雪ふりつむ 2001年 「不可能犯罪コレクション 原書房」2009年

 

 

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1921.黒猫のいない夜のディストピア

2019年08月11日 | 本格
黒猫のいない夜のディストピア
読 了 日 2019/07/14
著  者 森晶麿
出 版 社 早川書房
形  態 単行本
ページ数 314
発 行 日 2018/12/15
ISBN 978-4-15-209823-8

 

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烈な暑さの続く中、甲子園では高校球児たちのこちらも熱い戦いが続いている。千葉県からは習志野高校が代表として第1戦を勝ち抜いている。僕はプロ野球にはさほどの関心はないが、この夏の高校野球には、ドラマを感じて故郷代表以外にも、その戦いぶりに心を奪われている。
スポーツ観戦には何故気持ちを高める要素が、あるのだろうと思いながらも、筋書きのないドラマに酔いしれる。
AIG全英女子オープンを制した、渋野日向子プロの凱旋試合でもある、LPGA北海道meijiカップも、本日最終日を迎えて、その結果が期待される。
僕の贔屓は鈴木愛選手だが、今年のLPGAは、黄金世代と言われる若い選手たちの活躍が目覚ましく、特に渋野選手の急成長ぶりが注目される。
昨年プロテスト合格という、短いキャリアの中、5月のワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップで初優勝、7月の資生堂 アネッサ レディスオープンで、早くも2勝目を挙げるという快挙を成し遂げての、全英女子オープンへの参加だった。
42年ぶり樋口久子プロに続く2人目のワールドメジャー制覇は、海外の報道陣から“スマイリング・シンデレラ”と呼ばれて、試合中のその実力と笑顔がともに賞賛された。

 

 

木更津市立図書館で借りていた『平凡な革命家の食卓』を返しに行って、続けて樋口有介氏の作品を読もうと思い、『少女の時間』を借りようと書棚を見たが見当たらない。パソコンで検索すると、「カウンターでお聞きください」というメッセージだ。
係員に行って書庫から出してもらい、森晶麿氏のコーナーにあった本書を一緒に借りてきた。
著者の森晶麿氏は、ご存じのように早川書房が主宰する、アガサ・クリスティ賞の第1回の受賞者で、その受賞作『黒猫の遊歩、あるいは美学講義』に続くシリーズ作品を、書き続けている。本作はその最新作だ。
僕は第1作を読んで、若くして教授の椅子を獲得した、通称・黒猫と、その付き人に任命?された“わたし”のコンビに魅せられた。
そしてシリーズ作品を読み継いでいるが、本書でシリーズは7作目となり、さらには本書から新たな展開となっている。

 

 

年前まで、いや、今からすればおよそ10年前まで、僕の卒業した千葉県立大多喜高等学校の、クラス会「33会」が毎年1回実施されていた。昭和33年卒業ということと、第1回の集まりに33名の参加を見たことからも、33会と名付けられたクラス会は、東大卒のI氏を会長として、気の合った仲間が集うクラス会として、思いのほか長続きした。
だが、そんな仲間も今年で80歳を迎えるから、もう、クラス会が召集されることもないだろう。
クラス会に集まるメンバーのうち、多くの男性諸氏は大卒で、僕は時折彼らの大学時代を、羨ましく思うことがあった。いや、その学歴云々ということではなく、その時代のキャンパス生活の経験に、今更どうにもならない自身の同時代の、経験を重ね合わせたものだ。
そうしたことも、このシリーズを面白く読む要素の一つになっているのだろう。長く続くことを願うばかりだ。

 

 

 

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1916.完全犯罪研究室

2019年08月04日 | 本格
完全犯罪研究室
読 了 日 2019/07/02
著  者 由良三郎
出 版 社 集英社
形  態 文庫
ページ数 295
発 行 日 1995/08/25
ISBN 4-08-748371-1

 

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きな作家が多くいるということは、それだけ読書の楽しみが増えるということだ、と思っているが、逆の見方をすれば、読書の方向が定まらないともいえるから、もっとも僕の方向の定まらないのは、自身の気まぐれによるもので、別にもっともらしい理由を付ける必要はないのだが…。
夏だから暑い毎日が続くことは仕方がないが、にもかかわらず僕の日常は熱中症にもならず、比較的健康に過ごしている。そうは言ってもこの暑さは年寄りの身に応える。エアコンのない僕の部屋だが、開け放した窓からたまには涼しい風も入って来るから、扇風機の風だけでも少しの時間なら過ごせる。
我慢できなくなると、たまに階下の部屋のエアコンの涼しさを味わいに降りて、また二階に戻る。最近はその階段の上り下りだけでも、結構なエネルギーを消費する気がしているが、運動不足を補えると考えて、頻繁に繰り返している。

 

 

現在は廃止されてしまったが、昔、サントリー・ミステリー大賞なるミステリー文学賞があった。前回読んだ樋口有介氏や、この由良三郎氏も、その文学賞出身の作家だ。
当時僕は寿屋という社名がサントリーに変わったことなどを含め、近代的なものを思わせる社風に惹かれていた。サントリーには山口瞳氏や同期の開高健氏、柳原良平氏などもいて、モダンなテレビコマーシャルの映像などにも、興味をひかれたものだった。
アンクルトリスなどと呼ばれた、イラストは柳原良平氏のもので、宇津井健氏らのCMとともにヒットした。
その頃のことを思うと、僕個人の日常は決して幸せとは言えない状況だったが、“古き良き時代”などという言葉が浮かび、それは良いことだけが思い出として残るからだろう。
そんなどうでもいいことを思い出すということで、僕は時々由良三郎氏の作品を読みたくなることがあるのだ。

 

 

日は、近くのオートバックスで、ブレーキパッドの交換に行ってきた。前々日タイヤ交換の際ブレーキパッドの摩耗が見つかったことにより、交換を余儀なくされたのだ。
メール便配達という仕事を持っているから、まだ車は必需品で手放すわけにはいかない。それにしてもいろいろと、維持費はかかるものだ。来年2月にはまた車検が待っているから、数万円あるいは10万円弱の金が飛んでゆく。貧乏暮らしの僕には気の遠くなる話だ。

最近ペーパードリップでのコーヒーを淹れることすら面倒になって、時々コーヒーメーカーを買おうかなどという思いがわく。しかし、それとて後の器具の洗浄や後始末などを考えれば、やはりペーパードリップは、一番簡単で旨いコーヒーの淹れ方だと、思い直すのだ。
近くには“スターバックス”や“コメダ珈琲店”などといったカフェもあり、前を通るとそれなりに賑わっていることが窺える。昔は喫茶店が僕の行動範囲にいくつか入っていたものだ。会社勤めの頃は、勤務時間中にもかかわらず仲間と、無為な時間を過ごすこともまれではなかった。 今になって思えば、ずいぶん贅沢な時間を過ごしたものだと思うが、あれも人生の一部分だと、自分に都合の良い解釈をしている。

さて、コーヒーでも飲もうか。

 

 

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1906.運命のチェスボード

2019年05月20日 | 本格
運命のチェスボード
Wolf to the Slaughter
読了日 2013/01/15
著 者 ルース・レンデル
Ruth Rendell
訳 者 高田恵子
出版社 東京創元社
形 態 文庫
ページ数 317
発行日 1937/04/17
ISBN 4-488-24301-0

 

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国の本格ミステリーを担い、アガサ・クリスティの後継者の一人として、本格推理のほか数多くのサスペンスを書いているルース・レンデル女史。僕はこの名前を見たり聞いたりすると、1985年の事を思い出す。
当時はまだ高かった大型テレビを、取引先の家電担当氏の計らいで安く手に入れることが出来て、BS放送の契約もした。
暑い夏のさなかカミさんの具合が思わしくなく、近くの病院に入院していた時の事だった。夜テレビを見て いると、日航機の墜落事故のニュースが入ってきた。乗客の中に歌手の坂本九氏の名前もあって、大変な事故だという認識が頭を駆け巡った。話が横道にそれた。
そのテレビを買ったおかげで、当時まだ試験放送だったWOWOWの放送で、ルース・レンデル・ミステリーという番組があった。

 

 

その頃はあまりミステリーも読んでなかったから、というより慣れない営業職が、少し重荷だったころだ。
そして、その英国ミステリーの面白さに嵌った。本作のドラマは、シリーズのパイロット版ともいえる作品で、後に連続ドラマとして製作されたものとは、オープニングのテーマ曲や、導入部分などのフォーマットが異なっている。だが、ジョージベイカー氏、クリストファー・レイブンスクロフト氏といったメインキャラクターのいかにもといった警察の人物像が、重厚なドラマという印象だった。
僕はドラマを録画してDVDに残し、後に何度となく見返したからだろう、今も記憶にあるのは。

 

本書の冒頭から数ページを読んでいると、記憶力のいささかあいまいな僕にも、ドラマの場面がよみがえって、改めてドラマが綿密な作りだったことを認識せざるを得ない。
しかし今になって本場英国のミステリーと、その映像化の素晴らしさは、「シャーロック・ホームズの冒険」を始め、「名探偵ポワロ」、「ミス・マープル」等々、数え上げればきりがないが、手間と時間をかけて作られたことが分かる。
世界各国で歓迎されて、いずれも高い視聴率を誇っていたのがその証しだ。

 

 

名な画家の妹で、アンという女が行方不明となって、殺された。犯人はジェフ・スミスだ―そんな匿名の手紙がキングスマーカム署に届いた。ウェクスフォード警部は調査を開始したが、屍体さえ発見されない状況に困惑せざるを得ない。本当に殺人はあったのか?混迷する捜査陣の前に、やがて事件は意外な真相を明らかにする!
本書に記されたキャッチコピーだが、僕はドラマの印象とともに、このシリーズにははるか昔にテレビの前で、心惹かれたストーリーや各キャラクターを演じた俳優諸氏の、いかにもそれらしい役柄を見ながら満足していた自分を思い起こすのだ。
気まぐれな僕の読書は、このシリーズを前作読み通そうと、BOOKOFFの100円の文庫棚で見かける都度買い集めたものが、まだ数冊積ン読となって棚を埋めている。いつになったら読み終わるのか、全くわからないが、まあいずれは手にすることが出来るだろう。(と思っているが。。。。)
うっかりして、ブログへの投稿が済んでいるものと思っていたが、忘れていたことに今頃(2020年7月29日)まで気づかなかった。

 

 

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1878.屍人荘の殺人

2019年02月01日 | 本格
屍人荘の殺人
読了日 2019/01/01
著 者 今村昌弘
出版社 東京創元社
形 態 単行本
ページ数 316
発行日 2017/10/13
ISBN 978-4-488-02555-7

 

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27回鮎川哲也賞を受賞した作品。さらに『このミステリーがすごい』、週刊文春のミステリーベスト10、『本格ミステリ・ベスト10』でそれぞれ第1位を獲得したということで、ミステリーファンの間でも高い評価が、口コミで広がった感がある。が、読み終わって僕は半分は好みでなかったこともあって、評判ほどの感銘はなかった。面白くないというわけではないが、途中から山口雅也氏の『生ける屍の死』を連想して、全く異なる内容だが、同じく僕の好みでないという点で、思い出したのだろう。
前述のように出版各社の好評が、売れ行きにも拍車をかけたということが、僕に読んでみようという気を起させたのだが、好みから外れるということは如何ともし難く、ちょっぴり落胆。

 

 

次々と読む本が僕の好みに合って、面白く読めるとは限らないのだが、しかし、読もうと思ってページを開く本については、大体自分でこれは面白そうだと、見当を付けて選ぶのだから、期待を胸に読み始めるわけだ。
例えば、僕の場合はこのブログで分かる通り、昔読んだ本の再読もかなり多い。また、一度面白い本にぶつかると、同じ著者の本を探してy婿とも、これまた多い。この読書記録を始めたころは、新刊、古書に限らず書店で買って読むことが多かった。その際、店頭で気になった本が面白いかどうか、かなりの間迷うこともあったのは、買って面白くなかったら、時間と金の無駄遣いになるという思いが、即座に買うということにブレーキをかけていたのだ。
今のように簡単に図書館で借りて読むということは、考えてみれば今回のように、落胆に結びつくという確率も高くなるのだろう。

 

 

食前に洗濯機に入れておいた洗濯物が洗い終わったので、食後、ハンガーにかけて竿につるす。僕は結婚当初から、主な衣類は自分で選択することにしている。もちろんカミさんに頼むほうが多かったのだが、退職後はすべて自分のものは自分で処理するようになった。
別にカミさんに断られたというわけではなく、彼女の具合が悪いことも一因だが、出来ることは自分で、というのが僕の身上なのだ。
しかし、今は陽も差して少し暖かくなったが、今朝の寒さは、北風もその寒さを増長させて、半端なものではなかった。8時半ごろ、今日の荷物が届いたから、これから準備をして早ければ午前中に仕事に入れるかもしれない。寒さに負けているわけにはいかないのだ。

 

 

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1871.誘拐

2019年01月18日 | 本格
誘拐
読了日 2018/0920
著 者 高木彬光
出版社 角川書店
形 態 文庫
ページ数 415
発行日 1973/10/20
書肆番号 0193-133804-0946(2)

 

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、一度読んでいるといっても、半世紀以上も前の事だから、もちろん覚えているわけはない。読み始めてみたが、半分くらいまで進んでも一向に記憶は蘇らない。この作品が発表されたころ、ファンの間に大きな反響を呼んだのみならず、探偵小説の世界を担う多くの作家たちにも衝撃を与えたのだった。
そんなことから著者の代表作の一つといっても過言ではないだろう。
僕も高木氏のファンだった一人として、読んでその世界を堪能したことだけは、記憶にあるのだが前述のように、今となってはその中身を覚えていないことの方に、ショックを覚えている。
確か(いや、確かという言い方は、適当ではないな、多分という意味だ)高木氏は、1963年に起きた現実の悲惨な誘拐事件である吉展ちゃん事件に触発されて、この作品を描いたのではなかったか?
その辺も僕の頭の中では時系列があやふやだから、確たることは言えないが、どこかでそんな高木氏の談話を 聞いたか読んだか、覚えがかすかにある。

 

 

誘拐事件は、特に営利誘拐は一説によれば、犯罪としてはもっとも割に合わない犯罪だという。身代金を受け取る際にどうしても、姿を現す危険があるから、きわめて成功率が低い、というのがその要因だ。計画に要する努力が結果に結びつかない、つまりコストパフォーマンスがあまりにも低すぎるというわけだ。
にもかかわらず、推理作家たちにとっては、そうは思えないようだ。何とかして、新たな方法を考えるに値すると思い、新しい誘拐事件をテーマに作品を発表し続けている。
今までに数えきれないほどの、誘拐事件を扱ったストーリーが、生み出されていることを見れば明らかだ。
僕のような単なる一読者とすれば、そんな割に合わない誘拐事件が、どのような工夫の下に実行されて、捜査当局はいかにその犯罪を解明するのかという、その両者の闘いをワクワクしながら読むことだけを、楽しめばいい。

 

 

日も外は少し冷たい北風が吹くものの、部屋はまぶしい日差しがあって、ストーブ要らずの温かさだ。
金曜日の今日は、メール便配達の荷物が、多くはいる予定だ。毎月決まって来る自動車関連の機関誌で、部数は多いが、軒並みと言っていいほどの、配達先となるから作業効率が良い。
ただし、配達先の動態地図へのマッピング(地図上の配達先に印をつける作業)と、配達先名簿作りという―これは僕だけの事だが―準備に時間がかかるが、毎月の変動は数件なものだから、あらかじめそれらの作業を終わらせておくことも可能だ。
僕は独自にゼンリンの動態地図に、前回の配達先をマッピングして、Excelで作成した配達先一覧とを、セットにしてある。
もうじき荷物が届くはずだ。

 

 

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1784.京都寺町三条のホームズ8 見習い鑑定士の奮闘

2017年10月09日 | 本格
京都寺町三条のホームズ8
見習い鑑定士の奮闘
読了日 2017/10/09
著 者 望月麻衣
出版社 双葉社
形 態 文庫
ページ数 306
発行日 2017/09/17
ISBN 978-4-575-52032-3

 

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都の名所案内がごく自然に、ストーリーの中で行われて、そうした説明を聞きながら名所めぐりをしてみたい、そんな風なことを思わせる展開が心地よい。
僕は若い頃から旅行好きではなく、今でも特別に言ってみたいと思うところはないが、最近こうしたシリーズ作品を読んでいると、舞台となっている地域の観光名所などが出てきて、特にこのシリーズでは京都が舞台だから、主人公たちがそれほど有名ではない、隠れた名所を訪れることもあって、そうした際の名所案内がストーリーの展開に不自然でなく、行われるため思わず前述のごとく、行ってみたいと思わせるのだろう。
ミステリーといえば、殺人事件が起こるのがごく一般的だが、こうしたライトミステリーと呼ばれる作品は、凶悪な犯罪を追うことはごくまれで、もっと軽い事件を扱うことが多い。
そんなことからライトミステリーと呼ばれるのだろう。このシリーズも回を重ねるごとに、時の経過が表されて、今回、ホームズこと矢頭清貴は大学院を終了、そして、真城葵はいよいよ大学生となる。

 

 

 

この二人の主人公たちの恋愛関係も徐々に進んで、多分先行き二人が結婚するようなところまで、物語は続くのだろう。
ところがそうした状況を阻むがごとく、骨董店「蔵」のオーナーであり国選鑑定人の矢頭誠司は、清貴を修行ということで最低でも10社を回って来いと、受け入れ先の書類示して、命令したのだった。
ホームズといえど、オーナーの言うことに逆らうことは出来ない。
そしてホームズが最初に選んだ修行先は、松花堂美術館だった。松花堂は石清水八幡宮の社僧・松花堂昭乗が構えた草庵の名称だ。男山の麓にある石清水八幡宮には、宿坊が多くあり仁和寺の老僧が「一生に一度は、石清水八幡宮に行きたい」と言っていた、そんな記述が吉田兼好の徒然草にあるという。
ホームズの修行は元々彼が持ち合わせている経験や知識が、修行先の仕事に役立つといった状況だが、見識を広め、あるいは人脈を広げるといったことに関しては、オーナーの目論見通りだが、矢頭清貴のホームズたる所以はその先々で発生するミステリーを、解決に至ることにあるのだ。

 

 

主が案内する石清水八幡宮へは、ホームズをはじめ松花堂のボランティア5人と、タレントの梶原秋人、真城葵、宮下葵ら一行。
そこで、「目貫きの猿」の彫刻のところに来た時だった、ホームズの鋭い「目貫きの猿」の釘が抜けていることに気づいたのだ。左甚五郎が手掛けたという「目貫きの猿」とは、あまりにも精巧な作りだったため、夜になると猿がそこを抜け出して、町に降りて悪さをするようになったという。そこで右目に長けの釘を打つと、猿は抜け出さなくなった、という言い伝えだ。
その右目に打たれた竹の釘が、何者かに盗まれたというのだった。ホームズの推理がそこから始まるのだが、それまでに配置されたいくつかの伏線が、ホームズによって明らかにされるに及んで、名刺旧跡の魅力もさることながら、ホームズこと矢頭清貴の知識と観察力が冴えわたることになる。

 

収録作
# タイトル
プロローグ  
第1章 「一生に一度は」
第2章 「小さなホームズ」
第3章 「聖母の涙」
掌編 宮下香織の困惑
エピローグ  

 

 

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1782.櫻子さんの足下には死体が埋まっている ジュリエットの告白

2017年10月02日 | 本格
櫻子さんの足下には死体が埋まっている
ジュリエットの告白
読 了 日 2017/10/02
著  者 太田紫織
出 版 社 KADOKAWA
形  態 文庫
ページ数 281
発 行 日 2017/08/25
ISBN 978-4-04-105204-4

 

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週木曜日から始まった日本女子オープンゴルフの、テレビ中継はNHK・BS1と地上デジタルの両方で、4日間にわたって放送された。昨年の覇者は畑中奈紗選手。史上初というアマチュア、しかも18歳という若い選手の優勝は、女子プロゴルフ界に衝撃を与えるとともに、ゴルフファンを大いに沸かせた。 そしてディフェンディングチャンピオンの畑中選手は、今回も初日5アンダーという好位置で発進。2日目の第2ラウンドでは8アンダーで早くも単独首位に駆け上がった。決勝ラウンドの第3ラウンドからは1オーバーの69名の選手によっての闘いだ。
第3ラウンド終了時点で、13アンダーという好成績を収めた畑中選手の、「20アンダーを目指す」というインタビューに答えての発言があった。そして、最終日の17番ホールのバーディでついに言葉通りの“20アンダーを達成したのだ。
2位以下に8打差をつけての闘いは、一人次元の異なる舞台だったかのようで、圧倒的な強さで第50回という節目の、日本女子オープンを飾った。僕は鈴木愛選手のファンで、彼女の最終日の盛り返しを願って見ていたのだが、カップルのアマチュア小倉彩愛(さえ)選手が気になったか、いまいち自慢のパットも冴えを見せることがなく、11アンダーで3位の小倉選手に次いで、10アンダーの4位に終わった。

毎回ドラマチックな展開を見せる日本女子オープンだが、今年も高校2年生のアマチュア、小倉彩愛選手の活躍などにも注目が集まったり、初日の豪雨というような悪天候にも見舞われたり、という展開を見せたが、やはり何と言っても樋口久子選手に次ぐ、先週に続き2週連続優勝、大会2連覇を達成した畑岡奈紗選手の偉業は長く語り継がれることだろう。

 

 

早いもので、このシリーズも12巻目となった。読み始めたのは、今年の7月だから4カ月弱で12巻を読んだことになる。ほとんどが連作短編という形だから、読みやすいということと特異なキャラクターによる推理が、時には僕の好きな安楽椅子探偵の様相を示して、なおさら僕はこのシリーズに引き込まれるというわけだ。
好きなシリーズが長く続くのは、読書好きにとってこの上ない幸せだ。
幸いにして僕はこの他にもいくつかのシリーズ作品を知って読んでいる。若い頃もシリーズ作品という感覚はなかったが、同じ主人公や気に入ったキャラクターが登場する作品は、探して読んでいたのだが、今読み続けているシリーズ作品のように、短い期間でほとんど立て続けに発行されるようなことはなかったし、作品によっては何年もの歳月を過ぎて刊行されることもあったから、全く異なる味わいではあった。
しかし多くの時を過ぎた今となっては、そうした古典的名作でさえ、読もうと思えば時を待たずして読めるのだから、とにかく至福の時を簡単に手に入れることができる環境に感謝。

 

 

月18日に木更津市立図書館からのメールで、予約してあった本書の用意が出来たとのこと。翌日は火曜日で休館日だったので、20日に行って借りてきた。
こうして順調に予約した本が早く読めることは、何よりうれしいことだ。目次を見ると、第参骨の「わたしのおうちはどこですか」が“前”となっている。ということは、すでに次の巻が予定されているということで、まだ物語は続くことがわかる。大河ドラマのごとくに主人公たちの人生の展開が、この後も繰り広げられていくのだろうと、ますますシリーズの継続と櫻子さんが遭遇する事件と、彼女の推理に期待を寄せるのだ。
一般的にこのシリーズ作品のような形態が、ライトミステリーと呼ばれているようだが、気軽に読めるという点では言葉通りだが、内容は決して軽いばかりではなく、キャラクターの特性を生かした筋立てや、ミステリーを解明する論理性に、僕は本格ミステリーの面白さを感じている。

 

収録作
# タイトル
プロローグ  
第壱骨 ケルヌンノスの妙薬
第弐骨 ジュリエットの告白
第参骨 わたしのおうちはどこですか 前

 

 

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1780.矩形の密室

2017年09月26日 | 本格
矩形の密室
読了日 2017/09/26
著 者 矢口敦子
出版社 徳間書店
形 態 文庫
ページ数 347
発行日 2009/09/15
ISBN 978-4-19-893044-8

 

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ラマになったのをみて、8年ほど前に「償い」を読んだ。内容は全く思い出せないのだが、その後本書を買っているくらいだから面白く読んだのだろう。面白い本を読んだ後、同じ作者の本を読みたいと思うのは、誰でも同じだろうと思うが、僕は特にその傾向が強いらしく、BOOKOFFなどで安い文庫本の棚を見て歩きながら、そうした本を探したものだった。
今では、図書館の本ばかりを読んでいるから、書店、古書店を問わず、足を運ぶことはなくなったが、たとえ買わなくとも、本を見て歩くことは楽しいことだ。が、最近僕はそれさえも無精になって、本屋さんに行くこともなくなっている。
ここ1週間ほどだが、間近に迫った天羽支部会に配る、会報の作成に追われて、読書も思うように進んでいない。
自ら蒔いた種だから―会報の発行は2年前に僕が独自に始めたことだ―自分で刈り取るしかないのだが、こうした仕事は、誰でもというわけにはいかないから、手助けを頼むにしても悩ましい問題なのだ。

 

 

ところで、天羽支部会というのは、息子が入所してお世話になっている、ケアホームあけぼの荘を運営する、社会福祉法人薄光会の保護者・家族の会の一つで、年に4回ほど開かれる会合のことだ。
主に法人本部からの報告や通達と、ケアホーム事業部からの予定などの報告、利用者(施設を利用する障害者たち)の日常生活の様子などが、時にはプロジェクターの映像とともに報告される。
そうした内容とともに、薄光会の組織などについて、新しい保護者・家族の会の会員にも、知ってもらおうとする意味で、始めたのが会報だ。過去にしばらくの間、法人の役員をやっていたこともあって、会員相互のコミュニケーションをとることも含めて、いくつかある支部会との差別化も視野に入れて、始めたことなのだが、一年ごとに年寄り度を増す僕に、負担となってきたようなのだ。
しかし、少なくとも5年くらいは続けなければ、という思いもあってまだ投げ出すわけにはいかないので、ちょっぴりジレンマに陥っているというわけだ。

 

 

部会の役員、と言っても男女合わせて4人だが、話し合いで支部会の欠席者にも会報を郵送することになって、前回から50部を作成することになったから、そうしたことも負担を増す要因となっている。というのは言い訳でしかないか。30部も50部も作る手間はたいして違いがないが、小口を糊付けする製本―ホチキス止めは、時に錆びることもあり、重ねると平にならない、などという理由で僕が独自に考えた方法だ―は1冊ずつの全くの手作業だから、手間も時間もかかるのだ。
毎回18ページほどの小冊子が、今回は僕の記事の編集作業の失敗か、あるいは種類が増えたか20ページになった。余分なことだが、しばらく僕はこの製本方法が、独自の発案かと思っていたら、いつかソニー(だったと思う)から送られてきた何かの取扱説明書が同様の糊付け製本だったので驚いた。
この原稿を書くのに探したが、不要になって捨ててしまったらしく見当たらなかった。だが、人が考えることなどそれほど沢山はないのだと、思った次第だ。それでもこうした製本はその他には見たことがないから、ページ数の少ない印刷物にしか利用できないのだろうと、思っているがどうなのだろう?
なんだか訳の分からない話になった。

 

 

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