隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1640.福家警部補の追及

2016年06月21日 | 倒叙ミステリー
福家警部補の追及
読 了 日 2016/06/21
著  者 大倉崇裕
出 版 社 東京創元社
形  態 単行本
ページ数 248
発 行 日 2015/04/24
ISBN 978-4-488-02544-1

 

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年4月に刊行された福家警部補シリーズの最新作で、従来よりも少し長めの短編というより、中編と言った方がいいのか、2編が収録されている。このシリーズはファンなら誰もが知っていることだが、かつて多くのミステリーファンをテレビにくぎ付けにしたアメリカのドラマのパスティーシュだ。
ということは前回書いたか。刑事コロンボと言えば、わが国にも僕を含めて、熱狂的なファンはたくさんいるが、中でも有名なのは、町田暁雄さんと言って自身も「刑事コロンボ読本」(現在は「刑事コロンボ完全捜査記録」と名前が変わっている)という本を刊行している程の方だ。
その他に「安葉巻の煙」というサイトもあり、町田氏はそこでもいろいろとファンに対するアドバイスをしたり、「刑事コロンボ完全捜査ブック」というムックの監修をするなど、幅広い活躍をしている。そうしたことから、町田氏は本シリーズの著者・大倉崇裕氏とも交流があり、シリーズの刊行し際してもいろいろとコロンボ学について、アドバイスをしているらしい。

 

 

もう大分昔のこととなるが、僕もいっぱしのコロンボファンを気取っていたこともあり、NHKで当初放送された当時の録画テープを、雑誌の投稿を通じて探したりしたことがあった。誰しもそうだろうが、見られないとなると余計に見たくなるもので、今はすでに廃刊となった東京ニュース通信社から刊行されていた、ビデオコレクションという雑誌の投稿欄に、何度もコロンボファンへに向けて、呼びかけたものだった。
その時の縁で、30年のとき火が過ぎた今もなお、年賀状のやり取りをしている仲間?がいる。考えてみると、僕もまだ50歳には届いていない、まだ若さの片鱗が残る時代だ。
だが、今のようにハイビジョンによるリマスター版が全作気軽に見られるようになるなど、夢にも思わなかった時のことで、時代の経過はいろいろなことを変化させる。

 

 

のシリーズの最初の頃は、そうしたことで元のアメリカドラマのシチュエーションを取り入れたりしていたが、その後は福家警部補の捜査方法も、独自のやり方に代わって行き、より愛すべきキャラクターが出来上がっている。
のみならず、警察小説にありがちな女性刑事への侮蔑や、軽視するというような設定がないのも、好ましい。男女雇用機会均等法なる法律もあることだから、もうそろそろそうした描写からも抜け出していいのではないかと思っているので、エンタテインメント・ドラマに徹しているのはミステリーを楽しむ上でもいいのではないかと思っている。
倒叙推理は、初めから犯人が分かっているから、ドラマにするにしても、キャスティングに依って犯人や容疑者を推測されるといった、ミステリードラマの欠点がない。そうしたことからも、彼の地のドラマでは、著名な俳優をゲストに迎えて、犯人役を振るといった事も出来たのだろう。

今もなお人気の衰えることの無い、否むしろ新たなファンを作り続けているのではないかと、そんなことさえ思わせるコロンボだから、本シリーズもやり方によっては、人気ドラマになるのではないか?
著者がシリーズを書き続ける限り、ドラマ化を考える局が現れて。ファンの納得のいくドラマ作りをしてほしいと思うばかりだ。

 

初出一覧
# タイトル 紙誌名 発行年月・号
1 未完の頂上(ピーク) Kindle 2014年1月23日、30日、2月6日
2 幸福(しあわせ)の代償 書き下ろし  

 

 

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1639.福家警部補の報告

2016年06月18日 | 倒叙ミステリー
福家警部補の報告
読 了 日 2016/06/18
著  者 大倉崇裕
出 版 社 東京創元社
形  態 単行本
ページ数 295
発 行 日 2013/02/25
ISBN 978-4-488-02541-0

 

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家警部補シリーズは、東京創元社のキャッチコピー「刑事コロンボ、古畑任三郎の系譜」に誘われて、初めて読んだのが2006年8月で、第2作はそれからおよそ3年後の2009年6月に読んだ。
第3作目の本書が木更津市立図書館にあって、何時でも借りられる状態にあったことから、安心して今頃になって読むことになった。なかなか借りる順番が回ってこない時はすぐにでも読みたいと思うのに、いつでもどうぞという時にはなかなか手が出ないという、へそ曲がりな性格は今更治らない。
僕は特別に倒叙推理が好きなわけではないのだが、初めは馬鹿にしていた「刑事コロンボ」を、カミさんに「面白いよ」と言われてから、見るようになって―と言っても、もうその頃は放送終了間際だった―その面白さに嵌ってから、後には同様のドラマ古畑任三郎にもはまって、本シリーズも全部読みたいと思ってきた。
それにしては間が空きすぎているが、それは本書に限らず例によって、いろいろと読みたい本は山の如しというわけだ。

 

 

このシリーズももっとドラマになってもいいと思っていたが、案に相違して2009年にNHKで単発ドラマとして、放送されただけだったが、ようやく2014年になってフジテレビ系列で、全11回の連続ドラマになった。

しかし僕はフジテレビで放送された連続ドラマには、いささかがっかりした、というほかはない。好きな女優さん(檀れい氏)が主演したにもかかわらず、彼女の利点が活かされなかった(と思う)演出に、腹立たしいような思いを抱いたほどだった。
まあ演出家には演出家として、また脚本家には脚本家としての思いも主張もあるだろうから、頭ごなしにけなすことはできないが、NHKでドラマ化された永作博美氏の主演によるドラマは、キャラクターも原作に込められた味が良く出ており、及第点を付けたのだが・・・。
後者の方は共演に稲垣吾郎氏を据えたことで、どちらかと言えば彼を主役にしたかったのだろう、僕はどこかで同じことを書いたかもしれないが、檀れい氏の某社のビールのCFが好きで(いくつかCFだけを録画したこともあったくらいだ)。
だから、福家警部補を彼女が演じると聞いた時、あのコミカルな演技がみられるものとばかり思って、楽しみにしていたら、コスチュームばかりコミカルで、原作にあるユーモアはどこかに消し飛んでいたから、大いに落胆したのだ。これはキャスティングのミスか、否、もしかしたらこれは稲垣吾郎氏のためのドラマ化だったのか? ああ、そうだとしたら、もう何をか況やだ。

 

 

はドラマと原作は違うものだという認識でいる。だから原作とドラマの両方で楽しめばいいのだと思っているが、それにしても全くの別物にしてしまうのはどうかと思うが、ドラマ化の意図が別のところにあったのでは致し方がない。
やれやれ、ドラマの話になったら、切りも際限もなくなってしまった。
本書はそのフジテレビ系のドラマでも演じられた、三つのエピソードから構成された連作短編集だ。
ファンなら誰しも承知のように、これは世界中で人気を博したアメリカのテレビドラマの、主人公を女性に置き換えたパスティーシュだ。前作からかなり間をおいて読んだせいか、今更ながら福家警部補のその誇張された、オッチョコチョイ振りや、その反面に人を驚かせる特技などなど、改めてよくできたキャラクターに驚かされる。
相棒とも言うべき鑑識の二岡刑事の振り回され方も、各エピソードでこれでもかという具合に繰り返されて、少し気の毒になるくらいだが、彼らのコンビ振りがこれから先も、事件解決に発揮されることを願ってやまない。

 

初出一覧(ミステリーズ!)
# タイトル 発行年月
1 禁断の筋書(プロット) Vol.44~45 2010年12月-11年2月
2 少女の沈黙 Vol.47~48 2011年6月-8月
3 女神の微笑 Vol.51 2012年2月

 

 

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0221.十字路

2002年05月31日 | 倒叙ミステリー
十字路th>
読 了 日 2002/05/31
著  者 江戸川乱歩
出 版 社 講談社
形  態 文庫
ページ数 259
発 行 日 1988/02/08
ISBN 4-06-195229-3

 

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に読んだ「上を見るな」「人形はなぜ殺される」のところでも書いたが、昭和30年当時、講談社の書き下ろし探偵小説全集のために書き下ろされた作品。
一説によると、半分共作だということだが、この当時は胸躍らせて読んだものだ。Easyseekのメールマガジンで、紹介されているの見て、懐かしく思い購入した。

美しい秘書との交際を疑われた会社社長が、詰め寄る妻を誤って殺害してしまう。彼は、前に行ったことのある、近くダムの底になる村の古井戸に死体を捨てるのだが・・・・。
車に乗せた死体をその場所に運ぶ途中の十字路で、思わぬ運命が交錯する。というこの物語は、三国連太郎、新珠美千代諸氏の主演により映画化もされて、話題を呼んだ。時代背景が古いのは致し方ないが、複数の事件、思惑が交錯するストーリーは今でも面白く読める。

 

 

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