隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1623.密売人

2016年04月29日 | 警察小説
密売人
読了日 2016/04/28
著 者 佐々木譲
出版社 門川春樹事務所
形 態 文庫
ページ数 368
発行日 2013/05/18
ISBN 978-4-7584-3734-9

 

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察の予約をしてあった一昨日(4月27日)、君津中央病院の循環器科に行ってきた。レントゲンと心電図を撮った後、ドクターの診断は冠動脈の狭窄と、肺の汚れの二通りが考えられる、と言うことだった。
そこで、心臓のカテーテル検査をすることになり、5月18日に2泊3日の予定で、検査入院をすることになった。
もう10数年以上前になるが、僕は同じ病院でカテーテル検査を行ったことがある。その時と今では、身体的な条件が大幅に異なるから、今回は冠動脈の狭窄と言う結果の可能性は大だ。しかし、そうなれば治療により現在の不具合が緩和されることになるのだが・・・。
身体の不調の原因がどちらの方がいいのか?その後の治療によって治ることが一番なのだが、望みどおりになるかどうかは全く分からない。検査入院の結果次第、厄介なことだ。。

 

 

前にも書いたばかりだが、5月1日に行われる天羽支部会(社会福祉法人薄光会が運営するケアホームや、介護支援センター太陽のしずくの利用者の保護者・家族の団体の名称)に配布する会報が、今日の午前中にやっとすべての冊数が出来上がった。今回は10月からかなり長い期間があったから、僕はのんびりし過ぎて、間近になってから手を付け始めたので、多少焦りもあり読書も遅くなった。
会報作りは今の僕にとって、唯一の仕事のようなものだから、長く続けたいと思っている。思いもかけず長いこと法人の役員を務めたこともあって、在宅介護などの新しい利用者も徐々に増えていることから、出来るだ
け法人とその組織や運営する施設の仕組みなどを、保護者・家族に理解してもらえるよう、会報を活用したいとも思っている。
だが、一人の人間それも素人ができることなどたかが知れてる。できるだけ多くの人たちを巻き込んで行かないと、長く続けることは無理だ。そうした協力者を増やす算段もしていきたい。

 

 

海道警シリーズ、2011年に読んだ「巡査の休日」に続く第5弾だ。その前の年に読んだ「笑う警官」を読んで、そのタイムリミットを伴うサスペンスに、酔いしれるような躍動感あふれる警察小説に嵌ってしまった。
それほど間をおかずに第4弾まで読んで、登場するキャラクターたちの魅力にも惹かれた。
それでも、シリーズ作品を読む都度同じようなことを書いているが、ときには大分間が空いてしまうこともある。いや、そういうことの方が多いかも知れない。シリーズ作品がそうそう僕の都合に合わせて、全作揃って現れるわけではないから、当たり前のことなのだが・・・・・。
だが、このシリーズはすでに第7作まで出ているようなので、そんなに間をおかずに読みたいと思っている。

今回はスタートからいくつもの事件が重なって、一見無関係のような事件がほどなく一つの共通点に突き当たる。警察内のセクショナリズムや上層部の腐敗など、あるいは退職後の刑事たちの生き方などが、つながりを見せていくクライマックスの展開に胸が躍る。
相変わらずの個性的なキャラクターたちが、目に見えぬ絆を形成して、事件の真相に迫る描写は、ますますサスペンスを伴いながらも心地よい。

 

 

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1622.嫌な女

2016年04月25日 | サスペンス
嫌な女
読了日 2016/04/25
著 者 桂望実
出版社 光文社
形 態 文庫
ページ数 476
発行日 2013/05/20
ISBN 978-4-334-76576-7

 

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週の金曜日(4月22日)は、診察予定日で病院に行ってきた。血圧の高い状態が続いていたが、この1カ月ほどは薬の効果か、比較的安定した数値が経緯していた。だが、少しの運動で―例えば数百メートルの歩行でも、腰が痛くなると同時に息切れがして、胸が圧迫異されるような痛みを感じる。
そうした状況をドクターに訴えると、狭心症の疑いもあるから、一度君津中央病院で診察を受けてくださいと言われる。そして今回は2種類の薬が追加で処方された。診察後、紹介状をもらい帰宅、君津中央病院に予約の電話をする。
予約受付は4月27日の午前10時に指定された。そこでどのような診断が下されるか、わずかに不安もあるが、何しろ疲れるという以外自覚症状が何もないというのが、不思議な気もする。2年前の2階からの階段を、転げ落ちた時の後遺症か、そんな思いも起こさせる。
まあ、いずれにしても加齢による様々な症状(だろうと思う)は如何ともし難い。

 

 

前の回と同様でドラマ化されたことで興味を持って読んだ。ブログのタイトル「隅の老人のミステリー読書雑感」から外れることが少しずつ多くなっているようだ。読みたいミステリーは山ほどあるのに、ミステリーとも思えない本を読むのは、やはり話題に遅れないためか?
最近は他人との付き合いも多くなく、世間の話題から遅れようが外れようが、一向にかまわないのに、なぜか後れを取ってはいけないような気分になるのは小市民の一人だからだろう。
小市民でいることを命題にする主人公の作品もあったようだが、僕もこの歳になって(今年11月の誕生日が来ると77歳だ)いまさら名を上げようといった気力もなく(いや、もともと無かったか)、平平凡凡な暮らしに満足し、幸せを感じている。

 

 

HK,BSプレミアムによる6回にわたる連続ドラマは、録画したがこの原作を読んでから観ようと思って、まだブルーレイディスクに録画したものは観ていない。
さて僕はこの原作を読み始める前は、タイトルから女の底意地の悪い戦いをイメージして、嫌な予感を抱いていたのだが、読んでみてその僕の予想が良い方に外れて、誠に淡々とした?筋運びに次第に引き込まれていったのだ。
石田徹子と言う新進の弁護士と、その遠い親戚である小谷夏子という二人の女性が主人公。
女性弁護士を引き受けてくれる弁護士事務所のない中、大学時代のゼミの教授の口利きで、ようやく萩原弁護士事務所にイソ弁として落ち着くことができた。そんな石田徹子の許に小谷夏子からの依頼が舞い込む。
幼い頃の苦く嫌な思いのある相手、小谷夏子からの依頼は結婚詐欺事件から始まって、いろいろな詐欺事件に巻き込まれる。その詐欺師がなんろ小谷夏子なのだった。だが、そんな小谷夏子と関わっているうちに、石田徹子はだんだん彼女に惹かれていることに気づくのだ。人に喜びを与える魅力を持つ夏子に付き合って、年寄りになるまでの長い長い人生のドラマである。
詐欺師とその後始末をする弁護士の物語は、時に感動を呼び涙を誘われることもあり、最後まで気を抜けないほどに面白く読める。

 

 

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1621.その日のまえに

2016年04月22日 | 連作短編集
その日のまえに
読 了 日 2016/04/22
著  者 重松清
出 版 社 文藝春秋
形  態 文庫
ページ数 365
発 行 日 2008/09/10
ISBN 978-4-16-766907-2

 

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はミステリーを読むのと同じくらいに、テレビドラマや映画を観ることが好きだ。もっとも映画はもうかなり前から映画館に行くことはなくなり、もっぱらテレビで鑑賞になってしまった。
ドラマや映画はミステリー系統が多いが、たまにはそれ以外の話題の作品なども見ることはある。できるだけ好きな番組を見逃さないように、毎月月刊のテレビ番組誌を買って、1か月の録画予定をカレンダーに書き込んでいる。購読している東京新聞が毎月25日前後に織り込む、一枚物のカレンダーを使っていることは、ずっと以前ここにも書いたことがあるが、そうしたことは10年以上続いていて、初めからの数年分は捨ててしまったが、今手元には2005年10月からの物が閉じて保存してある。
何でもかんでも取っておくのはいいことではないが、それほどスペースをとるわけでもないので、なんとなくとってある。そんなことで先月末に、4月の番組誌とテレビの番組表を見ながら、録画予定を付けていたら、NHKのBSプレミアムで、「その日のまえに」と言うドラマのタイトルが目についた。

 

 

NHKオンラインで検索すると2014年3月に、2回に分けて放送されたものの再放送らしい。そこで重松清氏の同盟の作品が原作と分かり、録画することにした。著者の名前は前から知ってはいたが、ミステリー作品ではないから、あまり興味を持ったこともなかったのだが、タイトルからある種の想像を喚起されてのことだ。
そしてつい先ごろBOOKOFFで本書を見かけて、原作を先に読んでおこうと買うことにした。
少し買うことを控えようなどと言う、僕の決心はすぐに揺らいでしまう。意志の弱さを暴露するようだが、どうしても読みたいと思う気持ちを抑えるのは難しい。
番組表のドラマが2回(前・後編)だったので、長編だと思っていたら下表の通り短編集だった。終わりの3篇は連作だということがすぐに想像できるが、前の4篇はそれぞれ一話完結の短編だ。だがおしまいまで読んで、実は前の4篇も後の話に収束されるということがわかって、少し驚く。

 

 

像通りすべてのエピソードは涙を誘うストーリーなのだが、生きて生活していくということと、誰しもがいずれは死へと向かうことの現実の中に、人それぞれの人生の重みを感じて、思わず自分の生き方の来し方行く末を考えさせる。
ここに描かれた人間ドラマは、特別なものではなくどこかで出会ったことがあるか、あるいは知人の誰かを思い浮かべられるような、身近な人生とも考えられるところが、余計に感情移入させるのだろう。
僕も今年の誕生日が来ると77歳になるが、これまでに何人かの親しい友人を見送り、両親も亡くした。中にはドラマチックなエピソードもないではなかったが、この本の中で人の優しさの表し方が、いろいろあってそれらが描かれた人生を輝かせていると感じる。

 

初出誌(別冊文藝春秋)
# タイトル 発行月・号
1 ひこうき雲 2004年5月号
2 朝日の当たる家 2004年3月号
3 潮騒(「誰かがいた家」改題) 2004年9月号
4 ヒア・カムズ・ザ・サン(「小春日和」改題) 2005年1月号
5 その日のまえに 2005年3月号
6 その日 2005年5月号
7 その日のあとで 2005年7月号

 

 

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1620.七人の敵がいる

2016年04月19日 | 学園ミステリー
 
読 了 日 2016/04/19
著  者 加納朋子
出 版 社 集英社
形  態 単行本
ページ数 305
発 行 日 2010/09/24
ISBN 978-4-08-771356-5

 

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近に迫った天羽支部会を前に、会報作りが遅々として捗らない。何も考えずにいつもの定型(と言っても僕が作ったものだが)通りに作れば、問題はないのだが何か一つ二つ工夫を凝らして、などと思うからない頭を絞ることになる。
天羽支部と言うのは、社会福祉法人薄光会が運営するケアホームCOCO(ケアホーム六棟を有する事業所)の利用者の、保護者・家族の団体で、年に4回ほど事業所や法人本部とのコミュニケ―所を図るための会合を開催している。
薄光会はその他に入所施設の豊岡光生園、特別養護老人ホームの三芳光陽園、通所施設の鴨川ひかり学園、湊ひかり学園を運営しており、富津市をはじめとする千葉県南部地域の福祉の一端を担っている。
それぞれの施設ごとに、利用者の保護者・家族の会が結成されており、同様の会合が行われるが、天羽支部は先述のごとくケアホーム利用者の保護者・家族の集まりで、昨年(平成27年)4月に豊岡支部から分割されてできたばかりで、ようやく1年が過ぎたところだ。

5月1日に行われる平成28年度最初の支部会には、第4号となる会報を配布する予定だが、一応八部どおりは出来ているのだが、どうもいまいちピンと来ないので、頭を悩ませている。しかし、ない頭をどう絞ったところで、仕方がないから適当なところで妥協するしかないだろう。
明後日4月21日には支部会役員の打ち合わせがあるから、それまでにできた処までを見本としてプリントして、見せなければならない。

 

 

実に10年ぶりの著者の作品だ。著者を知った当時はストーリー構成の斬新さに驚きながら、ずいぶん入れ込んだという気がしている。北村薫氏に続く「日常の謎派」と呼ばれる作家の一人として、次々と作品を発表した加納朋子氏は、僕の読書生活に欠かせない作家の一人となったのだが、2007年4月に読んだ18冊目の「モノレールねこ」を最後にしばらくご無沙汰している。
いつものように特にこれと言った理由があるわけでも、もちろん嫌いになったわけでもない。
八方美人的な僕の読書は、その時々で気になった本を読んでいるから、時として好きな作家も忘れがちになることは往々にしてあるのだ。
この作品はドラマにもなっており、気になってはいたが見はぐってしまって、当然録画もしてない。原作を読んだので、いつかレンタルビデオでも借りて、見ようと思っている。

 

 

容は下表にあるように、タイトルの七人の敵が7章にわたって描かれる。昔読んだ著者の作品とは一味も二味も違い、キャリア・ウーマンの仕事とは別の、私生活での奮闘がテーマのストーリーだ。
まるで鉄の女とでも言いたいような、出版社の編集を仕事とする山田陽子は、一人息子の洋介が小学校に入学したのを機会に、PTAに出席するがそこでの彼女の一言が、他の全員を敵に回してしまうことになる。と言うスタートは後の様々な立場での彼女の活動を妨げる元となるのだ。
しかし、それぞれの敵に向かって恐れることなく立ち向かう、山田陽子の言動は小気味よく、その機知と行動力で撃破?して行く展開が面白い。と書く女の闘いは面倒くさくて僕は嫌な感じを抱くのだが、この作品は後味が良く、著者の作品として配食とも思えるが、新境地を開いたという感じだ。

 

初出(小説すばる)
# タイトル 発行月・号
第1章 女は女の敵である 2009年4月号
第2章 義母家族は敵である 2009年6月号
第3章 男もたいがい敵である 2009年8月号
第4章 当然夫も敵である 2009年10月号
第5章 我が子だろうが敵になる 2009年12月号
第6章 先生が敵である 2010年2月号
第7章 会長様が敵である 2010年4月号

 

 

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1619.侵入 検疫官 西條亜矢の事件簿

2016年04月15日 | メディカル
侵入
検疫官 西條亜矢の事件簿
読了日 2016/04/15
著 者 仙川環
出版社 PHP研究所
形 態 文庫
ページ数 314
発行日 2014/11/25
ISBN 978-4-569-76257-9

 

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日、と言っても1週間くらいになるか、走行中に突然車のエンジンの調子がおかしくなった。赤信号で止まるとアイドリングが不安定で、止まりそうになる。発進しようとするとアクセルを踏んでもふけ上がらない。
どうにか用を足して帰途オートバックスに寄って点検してもらうと、プラグかイグニッションコイルの不具合とのことだ。とりあえずプラグを交換してみることにしたが、取り寄せになるというので、3日ほど待って交換してもらった。だが、依然として調子は良くならない。イグニッションコイルの不具合のようだ。
またまた取り寄せの期間を待つしかない。そして、今日の予約時刻午後2時にオートバックスに行く。 2時間ほどの作業時間を待ってようやくイグニッションコイルの交換と、エンジン回りのパッキングの交換が終わる。
車は以前と同様、否それ以上に調子よくエンジンは開店する。3万3千何某かの代金を払っただけのことはある、そんな思いを抱きながら帰宅する。こうした修理代やら車検などと言う維持費、ガソリン代もそうだが、それらの費用を考えると、タクシーを使った方が安上がりだという人もいる。

だが、我が家のようにカミさんの具合が悪く、娘も何かと車の必要があるところは、やはり自家用車は必需品なのだ。全く貧乏暮らしには必要悪としか思えないようなことだが、致し方のないことと、諦めるしかない。

 

 

昨夜からテレビは九州熊本地方の地震のニュース一色だ。震度7を観測した地域での9人の死者、1000人を超える負傷者に対しては、気の毒としか言いようがない。また、倒壊した家屋の陥没した道路や崩れた崖などに、明日からは雨と強風が襲うらしい。踏んだり蹴ったりの状態だ。
何かこのところの自然災害の大きさに、ただ手を拱いているしかない人間の弱さが、恨めしい。

 

 

い先達て著者の作品を読んだばかりだという感覚だったが、読書録をめくると読んだのは1月だった。どうも月日の経過の感覚が狂っているみたいだ。僕の読書の傾向は気まぐれの際たるものだから、いつどんな本を読もうとかまわないのだが、それでも気持ちのどこかでは、あまり偏りのない読書をしたいという思いがあって、気を付けてはいるのだが、しかしそれだって大した縛りにはなっていない。
その時々で読みたいと思った本を読めればそれで良いではないか、と自分の都合のよいところへ気持ちを納めてしまう。
仙川氏の作品を読むたびに、現役の医師同様の医療サスペンスを次々と発表していることに感嘆する。そして本書で7冊目となった。時々思い出したように読みたくなるのが著者の作品だ。否、本当を言えば続けて読みたい著者の一人と言っていいだろう。

 

 

今回の作品はPHP研究所がWebに出している、「Web文蔵」に連載されていたものだ。連載当時はサブタイトルにもなっている「検閲官 西條亜矢の事件簿」がタイトルだったようだ。
前々回読んだ坂木司氏の「ワーキング・ホリデー」同様、本作も4つの章に分けられているが、おおむね各章は独立した話となっており、連作短編集と言ってもいいくらいだが、一人の主人公の活躍を描いているから、まあ長編と言ってもいいかもしれない。
検疫官とは、海外からの感染症などの侵入を、水際で防ぐという重要な役目をを持ち、もちろん国内でのそうしたウィルスやそれを媒介する蚊の発生によるウィルスの有無などを調べることも、仕事の一部として持っている役人だ。
そんな検疫官である西條亜矢と言う女性の、物の見方の一本気なところが魅力の一つなのだが、誰に対しても、たとえ相手が恩人であろうと、破天荒ともいえる物言いを変えない言動は、ある種小気味よく、このくらいポンポンと物が言えたらと、誰しもが思うのではないか。
最近こうした強い女性を描いた作品をいくつか読んでいることに気づき、僕はこんな人物に憧れているのかと、ちょっと驚いた。

 

 

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1618.ボッコちゃん

2016年04月12日 | ショートショート
ボッコちゃん
読 了 日 2016/04/12
著  者 星新一
出 版 社 新潮社
形  態 文庫
ページ数 315
発 行 日 1971/05/25
ISBN 4-10-109801-8

 

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い頃も今も大した違いはないが、若い頃は今よりも純粋にたくさんの本を読むことに熱中していた。星新一氏の作品に傾倒していたこともあり、全集を買い求めたりもしたが、全部揃う前に散逸してしまったのが、考えると不思議だ。
熱しやすく冷めやすいというところもあったのか?今頃になってそうしたことを思い出して、この文庫が手元にあって読んだ。ここに収められた50篇のショートショートは、著者のあとがきによれば、自薦の短編集と言うことだ。初期の作品が多いということだが、僕が著者の作品を読み始めたころのものが多くあって、どれもがその頃を思い出させて、懐かしい。
後にショートショートと呼ばれることになる、短い作品の数々は近年になって、ノンフィクション作家の最相葉月氏の「星新一一〇〇一話を作った人」にもなって、話題を呼んだ。が、ショートショートという一つのジャンルを築いた星氏は、1997年に71歳で惜しまれながらこの世を去った。

 

 

こんな短い話だから誰でも書けそうだと、一瞬思うがそんな簡単なことではない。だからこそ日本SF作家協会長を務めたり、日本推理作家協会賞の選考院を務めたりするわけだ。しかし、そういう思いを抱かせながら、多くの読者を魅了して止まないのは、短い中にユーモアや風刺を効かせたり、あるいは悲劇喜劇を縦横無尽と言った具合に、著わすからだろう。
そんなことは今更僕が言わなくとも、読んだ人なら皆が思うことだろうが・・・・。
ここに収められた作品の大半は若いころすでに読んではいるが、もちろん僕のことだから覚えているわけではなく、今回改めて読んでみて、ところどころで「アゝ、そうだった。」と思い出すこともあれば、初めて読む作品のように、新鮮な感動を覚えることもあって、著者の作品の素晴らしさを再確認した。

積ン読の本をひっくり返していたら、もう1冊「妄想銀行」(1978年新潮社文庫)もあった。近いうちにまた読んでみたいが、何時のことになるか全く予定が立たないのが僕の読書で、それでもいつかは再読したいと思う。

 

 

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1617.ワーキング・ホリデー

2016年04月09日 | 日常の謎
ワーキング・ホリデー
読了日 2016/04/09
著 者 坂木司
出版社 文藝春秋
形 態 文庫
ページ数 326
発行日 2010/01/10
ISBN 978-4-16-777333-5

 

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別年齢不詳の作者だが、僕はどうやら女性ではないかとの見方を最近するようになった。確たる理由はない。
そんな気がするというだけのことだが、そんな勘のようなものが往々にして当たる場合もあるから、まあ、作者の性別が僕の読書に何の影響も与えることはないが、ブログの著者のページも女性に直したところだ。
著者の作品を読むのはしばらくぶりだと思って、データを辿ると2013年6月に「和菓子のアン」を読んだのが最後だった。
僕が坂木司氏を知ったのは2002年だったと思う。当時ファンになったばかりの加納朋子氏についての情報を得ようと、ネットを探していて彼女のファンサイトを知った。そこで同様の安楽椅子探偵形式の作品の作者である坂木司氏とその作品である「青空の卵」が紹介されていた。この作品は引きこもりの鳥居真一と、その友人で語り手でもある坂木司が、ホームズとワトスンと言うようなキャラクターのミステリーで、僕はすぐにはまった。
以前から、安楽椅子探偵が探偵の究極の姿だという思いがあり、そっちこっち探しては読んできたつもりだった。その傾向は今でも変わらないが、その当時はそうした書き込みに飛びつく格好で、「青空の卵」を読んだことを思い起こす。

 

 

その割にはその後しばらくご無沙汰が続いているのは、いつものように僕の全くの気まぐれで、なかなか一人の作家を追うというのも難しい状態だ。なにしろ毎月のように次から次へと新作のミステリーが出るものだから、そっちこっち目移りがするのは僕だけではないだろう。
そうは言っても貧乏暮らしの僕には、そうそう新作を買うわけにはいかないから、BOOKOFFなどでそこそこのものを探しては読むのがせいぜいで、また、以前買ったままで積ン読になっている本もあるから、なおさら好きな作家の作品を続けるわけにもいかないのだ。
まあ、それでも僕は思い出したように、著者の本を読む。読みやすい文体はすぐに僕をストーリーの世界に引き込む。

 

 

ストクラブで働く沖田大和の目の前に現れたのは、小学生と思われる男の子、営業中のホストクラブには誠に似合わない風情だ。だが、彼は大和の息子だという。神保進と言う名前を聞いて、忘れることのできない過去を大和に思い起こさせた。そんなスタートで物語は始まる。
身に覚えのある大和は進少年と夏休みの間、生活を共にすることになるが、なんと家事全般をそつなくこなすどころか、大和は彼に教育される始末だ。

子どものキャラクター描写には宮部みゆき氏の上手さに定評があるが、坂木氏の本作でも独特の感性が光って、笑ったり泣いたりさせる。乱暴な言葉が飛び出す大和だが、それは彼の優しさの裏返しだということが良くわかり、少年との生活がいつしか親子の情愛へと発展する過程が素晴らしい。
これはシリーズ作品?

 

 

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1616.スープやしずくの謎解き朝ごはん 今日を迎えるためのポタージュ

2016年04月06日 | 連作短編集
スープ屋しずくの謎解き朝ごはん
今日を迎えるためのポタージュ
読 了 日 2016/04/06
著  者 友井羊
出 版 社 宝島社
形  態 文庫
ページ数 312
発 行 日 2016/02/18
ISBN 978-4-8002-5136-7

 

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日は午前中は良く晴れて青空が見えていたが、午後になると少しずつ雲が広がった。カミさんが介護センターのリハビリが終わり帰宅してから、娘を伴って三人で近くの公園に花見に行ってきた。

雲が広がったせいで、満開の桜もいくらか華やかさが控えめのような感じだ。
高台の住宅地の一角のおおよそ200坪程の小さな公園だが、周囲に12本の桜が植えられて、この時期になるとほぼ満開の桜が楽しめる。その割に訪れる人は少なく、たまに近所の主婦が小さな子供を連れて来るくらいで、いわゆる花見の宴会が開かれるというような場所ではない。
我が家では昨年からの2回目の花見で、それ以前はずっと昔息子がまだ若い頃に、散歩がてら連れて行ったことがあるくらいだ。多分これから先もこの静かな公園に花見に来ることが続くのだろう。

 

 

 

先月(3月)読んだシリーズ作品の第2弾。ヨドバシカメラのポイントで交換した2冊の文庫の1冊で、続けて読むつもりだったのが、間に何冊か入ってしまった。原則としては一話完結の連作短編集なので、僕のように前作の内容を忘れてしまっても、それほど影響はないだろう。そう思いながら読み始めたが、やはりシリーズ作品は僕のような忘れっぽい者には、出来ればあまり魔をおまずに読んだ方がいいかもしれない。全作揃っていればの話だが・・・・。
この作品の面白いところ―と言ってもストーリーのことではなく、何か前々から読んで知っていたかのような、スムーズに話に入って行けるところだ。やはり作者の文章力と言うのか、あるいはキャラクター造形のせいか、穏やかなストーリー展開が心地よく頭に入る。

 

 

うすっかり市民権を得た日常の謎派といったジャンルで、多くの作品が様々な形で、あるいは様々な職業を有する名探偵が生まれている。
このシリーズではスープ屋しずくの店主、あるいはマスターと言った方がいいのか、麻野と言う人物の押しつけがましさのない、キャラクターが展開する推理・推論がなるほどとうなづける解決に導くさまが良い。
事あるごとに紹介される料理やスープの効能や栄養価など、料理好きや町のグルメにも参考になるのではないか。僕も台所に立つのが嫌いではないので、もう少し若かったら何とか作ってみようと思ったかもしれない。
今では食事もインスタントのものが多くなって、自分で料理を工夫することも少なくなっているが、こうした作品の中に出てくるレシピなどを見ていると、また自分でも作ってみたいような意欲がわいてくるみたいだ。
今回は最後の「レンチェの秘密」が少し長めのストーリーとなって、店の名前の元となった麻野の今は亡き妻静句(しずく)の亡くなった経緯が解き明かされる。

 

初出
(このミステリーがすごい!大賞作家書き下ろしBOOK)
# タイトル 号・発行月
第一話 モーニング・タイム Vol.9 2015年5月
第二話 シチュウのひと Vol.10 2015年9月
第三話 山奥ガール Vol.11 2015年12月
第四話 レンチェの秘密 書き下ろし

 

 

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1615.ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女

2016年04月02日 | 国際サスペンス
ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女
MILLENIUM DET SOM INTE DÖDAR OSS
読 了 日 2016/04/02
著  者 ダヴィド・ラーゲルクランツ
訳  者 ヘレンハルメ美穂
出 版 社 早川書房
形  態 単行本2巻組
ページ数 356/351
発 行 日 2015/12/25
ISBN 上巻678-4-15-209584-8
下巻978-4-15-209585-5

 

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々月(2月)の末頃だったか?娘が精文館書店に行きたいというので、車を走らせた。今年7月の誕生日が来ると51歳になるわが娘は、車の免許を持たない近頃珍しい人種の一人である。誰に似たのか?独特の感性の持ち主で、いまだに独り身を通しているところから見ると、結婚する気はないようだ。
そんな娘を心配したカミさんは過ぎた昔の一時期、娘の嫁入りの世話を焼いていたが、当の娘はどこ吹く風と言った風情で、そのまま今に至っている。これも現代の風潮を表す一つの現象かと、僕は心配しても鹿がないと割合冷めた目で見ている。(親がそんな風では本当は困るのだが・・・・)

話がそれた、娘に同行して精文館(国道16号線沿いにある木更津市では最も大きな書店だと思う)を訪れた際、単行本の棚で本書を見かけて驚いた。
社会現象とまでなったスウェーデン・ミステリーの傑作「ミレニアム」三部作を読んだのが2010年のことだから、6年もたつのかと改めて時の過ぎる速さを実感する。
本国スウェーデンで映像化されたものを見て、その素晴らしさに感動して、大半は図書館の本を利用して一気読みと言った具合で三部作を読んだことは、僕には珍しくまだ記憶に新しい。志半ばにして病没した著者スティーグ・ラーソン氏は、続編の構想を練っていたばかりでなく、途中までの原稿もあるそうだが、本書はそれとはかかわりなく、ダヴィド・ラーゲンクランツ氏の独自の作品と言うことだ。

 

 

それはともかく、書店で見た上下巻は僕の読みたいという欲求をいやがうえにも高まらせた。しかし上下巻3千円プラス消費税は、貧乏暮らしの僕にはちょっと手が出せない。やはり古書店に安く出回るのを待たねばならないのか。そんなことを思っているうち、ヤフオクに3分の2ほどの価格で出品されているのを見つけた。
送料もクリックポストで安く済むので、思い切って入札したら幸い競争相手も現れずに落札した。2日ほどで届いた2冊をむさぼるようにして読んだ。とは言うものの、このところの僕の集中力の減退は、10数分で途切れるから途中休憩をはさみながらで、全部世も終わるまでに4日もかかった。
シリーズ作品が全く関わりのない新たな作者によって書かれるのは、異例のことだというが、三部作に登場した主なキャラクターを、前作の雰囲気をまとったまま再び登場させて、全く違和感なくストーリーを展開させていることに感動しながら、彼らに再会できたことに幸せを感じる。

 

 

派の雑誌「ミレニアム」の共同経営者の、ミカエル・ブルムクヴィストに前の事件以降、スクープ記事がないことで、彼は過去の人だという心無い噂が立つ中、人工知能を研究する世界的な権威である、フランス・バルデルが殺害されるという事件が起こった。
その直前彼と会うことになっていたブルムクヴィストも、その事件に巻き込まれることになった。事件はNSA(アメリカ国家安全保障局)や、スウェーデン公安警察、さらにはストックホルム県警犯罪捜査部を動かすという大きな動きを見せることになる。 そして、前作よりもさらに力を増したハッカー、リスベット・サランデルの登場だ。

巻末の杉江松恋氏の巻末の解説や、その一部が帯に記されたキャッチコピーを読むまでもなく、スリルとサスペンスを満喫した。

 

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