隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1668.紙魚家崩壊

2016年09月22日 | 短編集
紙魚家崩壊
読 了 日 2016/09/22
著  者 北村薫
出 版 社 講談社
形  態 文庫
ページ数 264
発 行 日 2010/03/12
ISBN 978-4-06-276595-4

 

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んでいると、中ほどのページの間から、BOOKOFFのレシートが出てきた。木更津市の店舗だから僕が挟んでおいたものだろう。2012年3月2日金曜日の日付が印字されている。4年も前に買った本を今頃になって読むことは、僕にとってさほど珍しいことではないが、レシートを本に挟んでおくことはめったにあることではない。栞代わりに挟んだのだと思うが、買ってすぐにここまで読んだのか?記憶は全くない。
どうもあいまいなことが多くて、こうしたことが歳をとったということなのか、まことに心許ない。
この読書記録を始めて間もなくのころ、北村薫氏の“円紫師匠と私”のシリーズ作品に惹かれて、ファンになった。その後は覆面作家シリーズや、シリーズ外の作品など次々と読み、直木賞受賞作品の「鷺と雪」まで20冊近くを読んだのではないか。
それにしては近頃とんとご無沙汰で、本書も4年も読まずにおいたのは、別に大した理由があったわけではなく、単なる僕の気まぐれな性格からだ。

 

 

この後もたくさんある蔵書を読み進むうちに、僕にとって思わぬ珍本が出てくるかもしれない。いや珍本といっても、買い置いて忘れていただけで、一般的な珍しい本という意味ではない。しかし、記憶力の乏しい僕でも、手元にある蔵書を全く忘れている、ということはあまり無いからそう期待できる話ではない。
読書の楽しみはこれから読もうとする本の、どんな内容だろうか、主人公はどういう人物なのか、事件はどのように起こるのだろうか等々、そうした様々な思いが湧くことにもある。 また、想像から外れて思いもかけなかった内容に、驚くことも読書の面白さの一つだ。本書に収められた短編に相当するのが、その考えてもみなかった面白さなのだ。
下表でご覧の通り、それぞれの作品は発表された時期も、場所も異なっており別作品なのだが、こうして一つにまとめられてみると、あたかも最初からこの短編集のために書かれたように思えるのも不思議だ。
優秀とはお世辞にも言えない僕の頭では、理解に苦しむ話もあるが、概して従来考えていた著者の作品からは、かけ離れているようで、実は北村氏の本領はこうした作品に表れているのだ、そんな気にもさせる短編集となっている。

 

 

でも僕が一番面白いと感じたのは、最後の「新釈おとぎばなし」だ。いつどこで見たか、あるいは読んだかは忘れたが、「本当は怖いグリム童話・・・(アンデルセンだったかも知れない)」というような(正確ではない)、キャッチコピーがあった。
何となく心惹かれるコピーではあったが、いつか機会があったら読んでみようか、などと思っただけで忘れていた。だが、本書の「新釈おとぎばなし」を読むにつれて、そんなコピーが頭に浮かんだのだ。
オトギの国の名探偵うさぎの活躍が、カチカチ山事件の真相を解明するというストーリーは、本格ミステリーさながらの展開を見せて、ところどころにユーモアを交えながら進む話が、逆に恐怖感も感じさせる。
だからと言って、僕がこういったストーリー群を好きかといえば、正直言って好みではない。しかし、好みではない内容にも小説の面白さが感じられるのは、好みと面白さは別のものだということなのか?よくわからないがまあ、面白く読めたのだから良しとしよう。

 

初出
# タイトル 紙誌名 発行月・号
1 溶けていく 小説現代 1994年7月増刊号
2 紙魚家崩壊 ミステリマガジン 1995年11月増刊号
3 死と密室 メフィスト 1997年12月号
4 白い朝 鮎川哲也と13の謎‘90  
5 サイコロ、コロコロ  銀座三丁目から 1991年8月号
6 おにぎり、ぎりぎり 鮎川哲也と13の謎‘91  
7 ミステリマガジン 1990年8月号
8 俺の席 週刊小説 1998年8月21日号
9 新釈おとぎばなし メフィスト 2004~2005年連載

 

 

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