隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

2059.山猫の夏

2022年01月08日 | 冒険

 

 

山猫の夏
読了日 2021/07/22
著 者 船戸与一
出版社 講談社
形 態 文庫
ページ数 760
発行日 1995/11/15
ISBN 978-4-06-263155-5

 

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ういう経緯でこの文庫を買ったのか覚えてないが、かなり前の事だ。本のデータにあるように、760ページと言う長編だから、僕はその厚さに恐れを成して、読むのをためらっている内に、どんどん時は過ぎていったのだった。
だが、読み始めるとそのストーリーのダイナミックな展開に、心を奪われるような気がして、ページを繰る手が止まらなくなるようだ。僕は映画やドラマでは割とアクションものと言われるストーリーが好きで、よく見てきたが、小説ではあまり読むことがなかった、と思う。
はっきりと覚えている話ではないが、冒険小説たるイメージがないのだ。
まあ、カテゴリーはともかくとして、この作品は山猫と呼ばれる弓削一徳が現れる、ブラジル東北部の町エクルウを舞台とした、反目する二つの家系の争いが描かれる。
考えてみればよくあるような土地の有力者の権力争いは、他でもよく見られる光景で例えば、有名な所では黒澤明監督の“用心棒”や“椿三十郎”のシリーズを始めとする活劇は、海外の監督たちにも大きな影響を与えて、西部劇などに同様のアクション巨編を製作させた。

 

 

その主人公たる桑畑三十郎や椿三十郎が、この物語の立役者・弓削一徳なのだ。
僕が著者船戸与一氏の作品に初めて出会ったのは、2013年に読んだ『龍神町龍神十三番地』だが、これは映像を見て気になったのがもとで、原作はどんな味わいだろうと、読んでみようと思ったからだ。
この『山猫の夏』はドラマや映画になっているのだろうか?いろいろな雑誌やWebサイトでも見た事が無いから、映像化はされていないのだろう。いや、されて居ればどんなキャスティングか、あるいは海外ロケは行われたのか、と言ったことを中心に確かめたかったのだ。
最近はレコーダーが壊れたままになっているから、ドラマや映画を録画して後で見るということが亡くなり、ドラマ、映画は即時見ることしかできないので、見ないことが多くなった。
だが、録画しておいて観ないということもなくなり、結果としては割と多くの映像を見ることになった。

 

 

ン読本ではなく、積ン観とでも言おうかDVDに録画したものを見ずにしまっておくということもなくなり、余分なスペースを確保することもなくなっている。結構なことだし、そのための余分な時間も手間もいらない。 僕の悪い癖で、買っておけば何時でも読める、録画していけばいつでも見られる、と言うその“いつでも”と言うのは永遠に来ない時、にならないことが良いことではないかと勝手な思いになっている。
歳をとってあらゆることが面倒になり、“朝起きて、夜になるまで昼寝して、時々起きて居眠りをする”と言う狂歌(正確ではないが、意味合いは分かると思う)があるが、笑ってはいられない。僕もその仲間入りになっているみたいだ。
少し読書をしては一休み、その一休みの多くは座敷にクッションを枕に横になり、時には30分ほど寝てしまうこともあるのだ。そういう毎日を送っているものだから、今流行りの?体内脂肪がたまって、太るのかと思えば栄養価の低い僕は逆に痩せるばかりで、なんと40数㎏しかなくなっている。
それでも近ごろ血圧を下げる効果を期待して、アテレック錠なる薬を服用しており、低い時には100を下回るときもあり、再度脳梗塞に陥る心配はなくなっているようだ。

 

 

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1866.東京湾岸奪還プロジェクト

2019年01月12日 | 冒険
東京湾岸奪還プロジェクト
ブレイクスルー・トライアル2
読 了 日 2018/09/05
著  者 伊園旬
出 版 社 宝島社
形  態 文庫
ページ数 318
発 行 日 2011/07/21
I S B N 978-4-7966-8421-7

 

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端技術やIT知識を駆使して、目的を達成するといった冒険小説といえばいいのか。著者のデビュー作にして、「このミス大賞」受賞作の、『ブレイクスルー・トライアル』を読んだのは、記録によれば2013年4月となっているから、6年も前になるのか。この文庫も最近買ったものではなく、記憶は確かではないが、おそらく数年前の事だろう。
僕の気まぐれな読書は、積ン読の蔵書の古さを増していくばかりで、今更せっせと読んだところで、一向にその数は減らないような気がしている。いつも同じことを言うようだが、それでも誰に迷惑をかけるわけではないから、僕自身にしてもそれほど痛痒を感じてはいないのだが。
前述のようにこうした先端技術の応酬によるサスペンス・ストーリーは、そうした知識をを持ち合わせていない僕をも、なぜか興奮の坩堝へと引き込むのだ。なんというか、ストーリーの登場人物と同等の知識を得たような気にさせるからなのだろう。つまり、知識欲を満足させるのだ。
何しろ昔勤務していた会社が所属していた、経営コンサルタントグループの講師として活躍していた、著名な先生の勧めで始めたパソコンで、曲がりなりにもプログラミングの面白さを経験したことが、その後のパソコンの扱いにも大きく影響しており、そうしたこともこのようなストーリーに惹かれる要因の一つかもしれない。

 

 

話は変わるが、僕は今年11月の誕生日で80歳を迎える。今でこそ80歳といってもそれほどの年寄とは言えないかもしれないが、75歳が後期高齢者の入り口だというから、80歳も立派な老人といっていいだろう。にもかかわらず、僕は知的障碍者の息子が入所している施設、グループホームあけぼの荘を運営する、社会福祉法人薄光会の運営協議会の委員や、保護者・家族の会の役員などをしている。
特に施設を利用する障害者の親、あるいは兄弟姉妹の組織である保護者・家族の会の役員は、当初の親の高齢化により、その息子や娘、つまり障害者の兄弟・姉妹に代替わりしつつあるのだが、役員になり手がいないのだ。だから、いったん役員を引き受けると、何年にもわたって務めることになるから、そうしたことも引き受け手がなくなるという負のスパイラルを生むことになる。
80歳にもなる人間がそうした役員を続けるのは、恥ずかしいではないかと思うのだが、いかがだろう。

 

 

か月も前に読んだ本について何を書けばいいのだろうと、いささか戸惑いのようなものを感じながら、まあ、いい加減なことを書いているが、昨年、冬の入り口には暖冬などということも言っていたが、厳しい寒さが続く毎日で、どうやら僕の両足の親指に霜焼けができたようだ。
子供の頃は両手両足の霜焼けに苦労したものだが、何しろ朝起きると膨れ上がった両手は、拳骨が握れないほどだったから、その痛痒さもさることながら、鉛筆を握れないことも学校生活にも影響して散々なものだった。今考えると手足の毛細血管の血流がスムーズでなかったことが原因だろうが、それよりも栄養失調が主な要因ではなかったかと感じている。
ということで、現在も僕の貧しい食生活は、両足に霜焼けなるものを発生させているのだろう、という結論になるのである。お粗末!

 

 

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1382.三匹のおっさん

2013年08月20日 | 冒険
三匹のおっさん
読 了 日 2013/08/04
著  者 有川浩
出 版 社 文藝春秋
形  態 文庫
ページ数 443
発 行 日 2012/03/10
I S B N 978-4-16-783101-1

 

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書は1年以上前の発行だから、いずれ古書店で買うつもりでいたら、前に書いたように数冊の新刊が買えるような、僥倖に恵まれて富津市にあるイオンモールのすばる書店で、「隻眼の少女」などと一緒に買ってしまった。
著者の作品は前に「図書館戦争」を読んだのだが、世間一般の高い評価にもかかわらず、僕の好みには合わなかったから、その後本書が評判になったときも、強いて読もうという気にはならなかった。しかし、気持ちの中ではどこか片隅に引っかかっていたようで、登場人物たちが定年を過ぎた高齢者?であることなども、僕の読んでみようかという気を、引き起こした。そこで、頭書のようなことになったのだ。
病のため惜しくも亡くなった俳優の児玉清氏も、NHKラジオの朝の番組で本書を推薦していたようだ。児玉氏はテレビの司会などでも知られている他、読書人としても知られており、NHKBSで長く放送されていた「週刊ブックレビュー」という書評番組でも、名司会者として活躍した。
いつの頃からか僕は年代も近かったせいもあって、児玉氏の書評に関心を持つようになり、途中からではあったが、「週刊ブックレビュー」を欠かさず見るようにばった。

 

 

サラリーマンを定年になり退いた後、清田清一は父親の代から受け継いだ剣道場の生徒もいなくなったので、系列会社が運営するアミューズメントパーク(清一に言わせればゲームセンターだ)で、嘱託として働くことになった。奇しくもそこは清一の孫の高校生・祐希のバイト先でもあった。
ひょんなことから、若い店長が不良仲間からゆすられていたのを助けた清一は、子供の時分からの気の合う仲間立花重雄、通称シゲと、ノリこと有村則夫の三人で、自警団を結成して町内の夜回りをすることになる。
剣道の達人清田ことキヨ、柔道の有段者シゲ、そして機械いじりならプロ並みというノリは三人の中での参謀役だ。
現在は長男夫婦に譲ったが、立花重雄は「酔いどれ鯨」という看板を掲げた赤提灯の元店主であることから、そこが三人の集合場所となっていた。まだまだジジイと呼ばれることに抵抗のある彼らの自警団「三匹のおっさん」の誕生となる。

 

 

婚が遅かった有村には、遅く授かった子供、まだ高校生の娘早苗がいた。清一には彼のことを「ジジイ」とか「ジーさん」と呼ぶ、口は悪いが正義感の強い孫・祐希がいて、彼も高校生だ。
三匹のおっさん達の活躍とともに、ある事件がきっかけで知り合うことになった祐希と早苗の関係もほほえましい。胸のすくような三匹のおっさん達のアクションは、文句なしに楽しめて、連続ドラマ向きだ。
猛暑の続くかと思えば、片方では豪雨による水害、熱中症などとあまり明るいニュースがない毎日だが、こんな本を読んでストレスを解消、いやなことを忘れよう。

 

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1348.ブレイクスルー・トライアル

2013年05月07日 | 冒険
ブレイクスルー・トライアル
読 了 日 2013/04/20
著  者 伊園旬
出 版 社 宝島社
形  態 文庫
ページ数 415
発 行 日 2009/03/19
I S B N 978-4-7966-6827-9

 

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5回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作だそうだ。この賞はメディカルミステリーで多くのファンから喝采を受けて、ドラマや映画にと引っ張りだこの売れっ子作家・海堂尊氏を登場させた。
その後、幾つかこの賞の受賞作を読んできて、柚月裕子氏や中山七里氏の作品にほれ込んだ。中には僕の好みから外れるものもあったが、それはごく当然のことで、個人の好みは千差万別だから、他の多くの人が好む作品でも、僕の好みに合わないことがあるのは当たり前の話だ。
だが、そうはいってもこれと思う本を買って、面白くなかった!という事態は、できれば避けたいものだ。
厄介なことに、本は読んでみないことには、わからないからいろいろと選んでは読むことによって、好みに合った本を見る目を養うしか方法はない。同じようなことを何度も書いてきたが、それが思うほど簡単ではないから、過ちや勘違いは何度も繰り返されて、悩みの種をまき散らす。

近隣にあるBOOKOFFで、105円の文庫棚から本書を見かけて買ってきた。僕の購買動機なんて大体が気軽に買える安さを旨とする。 字面から見て、作者は男性だと思っていたら(内容も若い男性好みかと思っていたから)、ネットで略歴などを調べていたら女性だとわかり、意外に思った。
というのも、本書の内容が、企業のセキュリティを扱う会社の最新のセキュリティシステムをかいくぐって、建物に忍び込み目的のものを持ち去るという、ゲーム「ブレイクスルー・トライアル」を競う物語だからだ。僕の偏見かもしれないが、オタクともいえるような内容から、女性向でないという先入観があったのだ。

 

 

もちろん世の中には優秀なコンピュータ・プログラマーや、アプリケーション・ソフトの解説書を書いている女性は大勢いる。僕の持っているビジュアル・ベーシックのプログラミング・テキストも、何冊かは谷尻かほり氏という女性のテクニカルライターが書いている。先ごろ名前の変わったアスキーから出ている月刊誌「アスキーPC」(前はアスキー・ドットPCだった)に、長いことExcelVBAのプログラム活用(エクセルVBAでここまでできる!)を書いていたのも、矢野まど佳さんという女性SEだった。
そんなことからコンピュータ関連のベテラン女性を身近に感じていたにもかかわらず、小説となると僕の中では別の感覚を抱くものらしい。

少し好みから外れた後は、やはり好みのストーリーに浸りたい!そんな思いを持ちながら読み始める。内容は先に書いたようなことだが、読み始めて、まずスタートダッシュが良い。コンピュータ関連の女性云々についてゴチャゴチャ書いたが、どうもコンピュータ関連というよりは、(勿論コンピュータに無関係というわけではないが)これは冒険小説といった方がいいかもしれない。
昔フランク・シナトラ一家の総出演で映画化された「オーシャンと11人の仲間」、その後この映画はジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット氏らの主演でリメークされてヒットしたが、そうした映画を思わせるようなストーリー展開だ。

 

 

海道の上川盆地の一角にある建物を監視する二人の男の会話で、ストーリーは始まる。
二人は、セキュア・ミレニアムというセキュリティ・システムの開発会社に勤める俺・門脇雄介と、その親友丹羽史郎である。ある日俺は丹羽から「ブレイクスルー・トライアル」に挑戦するチーム作りへと誘われる。
ミッションを成功すれば賞金の1億円は全部提供するという丹羽の言葉に、俺は会社を辞めてチームに参加することを決意する。
後方支援のコンピュータ・プログラマーの中井をチームに加えて、万端の準備を整える。
ところが、ひょんなことから展示会場から宝石を強奪した犯人たちが、ブレイクスルー・トライアルの会場へ現れる。そして、舞台となった研究所の元警官の守衛、その娘と恋人など、ブレイクスルー・トライアルの現場は、目的の異なる人物が入り乱れて・・・・。

と、手に汗握る展開となるのだが、からっとした文章と馬鹿な犬が引き起こす騒動など、ユーモラスなところも見せて、予定調和ではない結末も好ましい。後味すっきりの物語だ。

 

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1311.ラスト・チャイルド

2013年01月12日 | 冒険
ラスト・チャイルド
The Last Child
読 了 日 2012/01/09
著  者 ジョン・ハート
John Hart
訳  者 東野さやか
出 版 社 早川書房
形  態 文庫上下巻
ページ数 367/345
発 行 日 2010/04/15
ISBN 978-4-15-176703-6
978-4-15-176704-3

 

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xnミステリー(スカパーHD 649ch)のBOOK倶楽部で紹介されたのを見たのかどうか、僕が本書を知ったのはどこだったか忘れたが、タイトルだけは記憶の隅に残っていたらしい。
BOOKOFF木更津店で105円の文庫棚に、珍しく上下巻がそろっていたので買ってきた。今これを書いていて、いやもしかしたらこれを知ったのは、以前BS11(イレブン)で見たのかもしれない、とどうでもいいことだが頭の隅をよぎる。不況を伝えられる出版界の現況をよそに、否だからこそか、テレビの書評番組は打ち切られることなく、僕は楽しみに毎週見ている。
そのBS11で現在放送されている「宮崎美子のすずらん本屋堂」という番組を見ていて、最初はなぜ番組のMCに彼女が選ばれたのか分からなかったが、回を重ねるうちに宮崎美子氏が大変な読書家であることが分かってきた。しかもただ読むだけでなく、著者の狙いや内容を深く理解していることが、到底僕などが足元にも及ばないことも分かったのだ。
毎回作家をゲストに迎えて、新作についてのトークを行うコーナーでは、彼女がそれらの本をよく読んでいることが、トークの中で作家にも伝わっていくのがわかり、作家の対応が真剣みを増していくのを見るのも楽しい。以前はNHKで放送されていた「週刊ブックレビュー」という番組では、惜しくも亡くなった児玉清氏が名インタビュアーを務めていたが、宮崎美子氏のインタビューも、控えめながらそれに劣らない実力を示している。

 

 

ちょっとわき道にそれた。
最近は翻訳小説は読み始めてしばらく、舞台となっているその地方の環境や慣習、人々の生活や人情の機微に慣れるまでが、近頃は時間を要する。そんなことから翻訳物から遠ざかっているのかもしれない。昔はそんなことはなかったのになあ、と思うのは老人の繰り言か?
面白い本を読むには、それなりの努力???も必要ということか。努力といえば、物忘れも加齢とは関係なく、忘れないための努力が歳を経るごとに減ってきているのが原因だということだ。僕などはその典型だ。
全く努力をしなくなってきた。安きにおぼれるというが、楽な方楽な方へと傾いている。そんな中でこのブログが続いているのは奇跡のようなものだ。

 

 

こか定かではないところで紹介されていた内容は、全くと言っていいほど覚えていないが、何とはなしに、「誰かが行方知れずになって、その家の少年が捜し歩く・・・」というような、ストーリーではないかと思っていた。
読み始めて、確かに一人の少女が行方不明になっているというスタートだったが、いわゆる営利誘拐事件ではなく、失踪事件だ。事件は1年前に発生した。
失踪したのは13歳の少女・アリッサ・メリモンだ。彼女はジョニー・メリモン少年の双子の妹で、この1年傍から見たら異常とも思える行動とともに妹アリッサを探し続けている。メリモン家は、父親のスペンサー、母親のキャサリン、そしてジョニー、アリッサの兄妹の4人家族で、平和な暮らしをしていたが、突然のアリッサの失踪が、父親の家出や母親の薬物依存を招いて、悲惨な状態に陥っていた。
ジョニーはそんな状況の下、親友のジャック・クロスを巻き込みながら、あきらめずに妹を探し続ける。近隣の性犯罪者をしらみつぶしに調べるというジョニーの危険な行動に、ひそかにキャサリンに思いを寄せるハント刑事は、手を焼きながらも理解しようと努めるのだが・・・・。
そうした中、またもや一人の少女が行方不明となる。

悲惨な真実が分かる結末を迎えるのだが、事件解明のカギを握る人物の感動的な行動が胸を打つ。

 

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1310.サクリファイス

2013年01月09日 | 冒険
サクリファイス
読 了 日 2012/12/28
著  者 近藤史恵
出 版 社 新潮社
形  態 文庫
ページ数 290
発 行 日 2010/02/01
I S B N 978-4-10-131261-3

 

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藤史恵氏の作品を読むのは随分としばらくぶりのような気がして、記録をたどったら、2011年5月に「モップの精と二匹のアルマジロ」を読んだのが最後だった。およそ1年半ぶりの本書は、2008年に大藪春彦賞を受賞した作品だ。
大藪春彦賞という賞がどういう趣旨のものか僕はよく知らないのだが、昔よく読んだ大藪氏の作品からのイメージと、近藤史恵氏の作品イメージが合わなくて、近藤氏の受賞に関してちょっと違和感を感じたこともあった。
しかし、考えてみれば大藪賞といっても、必ずしも大藪春彦氏の作品のような、クールな殺し屋が出てくる小説ばかりとは限らない。いや、そうした大藪氏の作品に似た小説は、かえって受賞の対象にならないのだろう。

 

 

それにしても近藤史恵女史(前は近藤史恵嬢とも書いてきたが、もうベテラン作家の仲間入りだろうから、敬意を表して・・)は、実にたくさんのシリーズキャラクターを生み出している。
僕が著者の作品を読むのは、アンソロジーを除いても本書で27冊目となる。いくつかのシリーズキャラクターに惚れ込んで読み継いだ結果だ。前出の「モップの精と二匹のアルマジロ」のキリコちゃんや、名探偵・今泉文吾の梨園シリーズに出てくる歌舞伎役者・瀬川菊花、その弟子の瀬川小菊、また時代物の猿若町捕物帳シリーズ江戸・南町奉行所の同心・玉島千蔭などなどである。
僕に取れば、読みなれたキャラクターたちの活躍を期待したいところだが、著者のことだから今度の作品でもまた魅力的なキャラクターが生まれたのだろうと、思いながら手にした。

 

 

作品は、サイクルロードレースを題材としたストーリーで、そうした背景の中での人間ドラマを描いている。
巻末の解説氏によれば、サイクルロードレースについては、いろいろと難しいルールもあって、初めての者にとっては理解の及ばないところもあるらしい。
僕は全部読み終わってから、この解説を読んだのだが、(解説の)最初の方を読んで、何を言ってるのだろうと少し反発の気持ちが湧いた。どうもこの解説者は自分がサイクルロードレースに関しては、いかにエキスパートであるかを吹聴しているような感じを受けたからだ。まあしかし、そのくらいでないとなかなか人の作品の解説などできないのかもしれないが・・・・。
確かに予備知識なしにこのロードレースを見れば、「あれ!」と思うような場面が出てくるかもしれないが、この作品の読みどころは、先述のごとくサイクルレースに題材をとっており、迫力に満ちたレース場面もさことながら、その中での選手たちの人間ドラマなのだ。それはタイトル「サクリファイス(犠牲)」にも表れている。
いま若い人たちの間では、不安定な社会の在り方も影響してか、将来に夢を持てない人が増えているというような、メディアの報道もあるが、この作品の中の人物のように、自分の目指すところを明確にとらえて、そこに向かって努力する若者も数多くいると思う。

読み終えて、そうした若者がいる限りこの国の将来も見限ったものでもないな、とそんな思いを持ったのである。

 

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1274.インフォメーショニスト

2012年07月24日 | 冒険

 

インフォメーショニスト
THE INFORMATIONIST
読 了 日 2012/07/20
著  者 テイラー・スティーヴンス
Taylor Stevens
訳  者 北沢あかね
出 版 社 講談社
形  態 文庫上下巻
ページ数 287/266
発 行 日 2012/04/13
ISBN 978-4-06-277244-0
978-4-06277245-7

 

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々ここで僕はドラマなどに言及するとき、AXNミステリーというスカパーのチャンネルについて書いている。このチャンネルを見るようになってから10年以上になる。いや、もしかしたら20年くらいになるか?
主に海外ミステリードラマを見るのが目的で視聴するようになったのだが、ドラマだけでなくいくつかの書評番組や、出版社の宣伝ともいえる番組を見ている。その中で講談社の発信するリブラリアンの書架という15分番組で、先達て編集者が推すミステリーが本書だった。その時は特別興味を抱いたわけでもなく、見るとはなしに見ていたのだが、後にどこかほかの番組でも本書を勧めていたことから、読んでみようという気になり、amazonで手に入れた。もちろん僕のことだから古書である。
それでも本書は上のデータでもわかるように、今年の4月に出たばかりの、言ってみればまだ新刊だ。

前にも書いたが、少し翻訳ものをまとめて読もうと思っているので、番組は渡りに船といったところだったの だ。タイトルにもなっている「インフォメーショニスト」とは、情報収集の専門家のことだ。
と言っても、ただそれだけのことではもちろんない。世界を股にかけて、女一人で活動するためには(主人公のインフォメーショニストは女性だ)無法者を相手に立ち回りをすることもあるから、護身術の心得も必要だ。しかし、この主人公の場合護身術などと言えるような生易しいものではない。生活環境も、習慣も、治安に対する警察の対応も、権力の在り方も、何もかも西洋文明とはかけ離れたアフリカの国で情報収集をすることが、いかに難しく、命がけであるかということが、ストーリーの進行とともに明らかになる。

 

 

彼女、ヴァネッサ・マイケル・マンローはドゥカティ(イタリアのバイクメーカー、ドゥカティの製造する大型バイク)を操り、時速240kmで跳ばすのがストレスの解消法なのだ。
アメリカ国籍を持ちながらも、カメルーン(アフリカ南西部に位置する国)で生まれて、17年間もアフリカ各地で育ったマイケル(それが彼女を人が呼ぶときの呼び名となっている)は、壮絶なその過去から今の生業のためには、あるいは業務上自分の身を守るためには、冷静に、時には過激に障壁を排除する。
今までにもそうした女性を主人公としたストーリーをいくつか読んではきたが、本書の主人公はその別格と言えるかもしれない。こういうストーリーを読んでいる時、次第に主人公の人となりが少しずつではあるが、具体的にわかっていく過程が、僕の胸をドキドキと高鳴らせて、先行きへの期待も高まる。読書の至福感だ。

 

 

ルコでの仕事が終わって、アメリカはヒューストンで待ち構えている、ビジネス・パートナーで弁護士のケイト・ブリーデンに連絡すると、タイタン・エクスプロレーションの経営者リチャード・バーバンクから依頼のあったことを知らされる。
ヴァネッサ・マイケル・マンローのインフォメーショニストとしての仕事は、海外進出をする企業のための情報収集だ。そのマイケルに筋違いと思える、仕事の依頼が舞い込んだのである。リチャード・バーバンクの依頼はアフリカで行方を絶った娘のエミリの捜索だった。人探しは本意ではなかったが、成功報酬の高さに心を動かされた。しかしそれには一つ条件が付け加えられた。バーバンクの腹心ともいうべき人物を同行させるということだった。
一匹狼ともいえるマイケルにとっては、人と組んで仕事をするということは信条に反することだった。しかしながら、マイルズ・ブラッドフォードという人物は、万一の時にマイケルの命を守るためだという依頼人に、致し方なく条件をのんだ。

莫大な報酬を呈示して人探しをするというシチュエーションに、2010年11月に読んだ「ミレニアム」を思い浮かべた。それと形を変えた「幻の女」というテーマも僕を夢中にさせた。先述のごとく不条理感の漂うアフリカ各地での捜索は困難を極める。そして、マイケルは絶体絶命の危機に陥るのだ。

著者の紹介を読むと、彼女は「神の子」というカルト集団の中で誕生して、通常の学校教育を受けることなく、組織の中の働き蜂として育ったという。それがどういうものかはよくわからないが、そうした中で世界中を放浪した経験が、この処女作を生んだということだ。 さらに処女作がニューヨークタイムズのベストセラーとなるのは、異例のことだという。確かに読んでいて手に汗握る展開と、現在の主人公を形作っているその生い立ちのすさまじさと、非情さや、バイオレンスに満ちたストーリー、全体の構成などなど、読後しばらく興奮の余韻を残す。

 

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1224.図書館戦争

2012年02月15日 | 冒険
図書館戦争
読 了 日 2012/02/05
著  者 有川浩
出 版 社 角川書店
形  態 文庫
ページ数 398
発 行 :日 2011/04/25
ISBN 978-4-04-389805-3

 

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れの大晦日(2011/12/31)に発生した、福祉施設の行方不明者の事故から1か月半あまりが経過したが、残念ながらその行方は未だ定かではない。
捜索の方法も尽き、その後の手がかりも皆無という状態の中、捜索の打ち切りを提案したが、それでもなおかつ継続を主張する者もいて、捜索本部も置かれたままだ。
富津市から君津市にかけていくつかの小さな河川が存在する。豊英ダムから三島ダムの下流を流れる小糸川、豊岡光生園の下に位置する戸面原(とづらはら)ダムの下流の湊川、亀山ダムの下流を木更津市に向かって下る小櫃川などである。
捜索本部長は、船で川下りをして捜索するということを考えて、プラスチック製の平舟を手配した。川と言っても浅瀬の多い所で、その上舟や人を川に下す場所も少ないことから、難しいことも予想されるが、他に方法もないこともあって、来週(2/20~24)決行する予定を立てている。 僕も捜索助勢員としてささやかながらアシストしてきて、先日(2/13)不明者の保護者宅を訪問して、相も変わらない状況を母親に報告してきた。情報の全くないという、文字通り情けない状況を報告するのは、心が痛むが何とも仕様がないことである。 保護者会の支部長、湊ひかり学園の職員と3人で、その帰路に川下りの出発点を見つけて歩くも、適当な場所はそうそうあるわけでもなく、君津市植畑地区の小糸川に流れる小さな流れに架かる橋の際が、強いて言えば出発点になるかと視認した。

捜索は天候次第で、来週の気象状態が安定することを望むしかない。

 

 

 

 

 

そんなことで、読書もブログもなかなか進まないが、あまりの評判振りに、どんなストーリーなのだろうと、ついに本書を読むことに。
男性だとばかり思っていた著者は既婚の若い女性だったことに少し驚く。
巻末に著者と、俳優で読書人としても知られていた児玉清氏の対談が載っており、読み終わった後、なるほど児玉氏の好みに合いそうな内容だと納得。児玉氏は残念ながら前年胃癌のため故人となってしまったが、生前NHKのラジオ番組で、アナウンサーの問いに答えて、サスペンス小説が好きだという旨を語っていた。
その中にはもちろんミステリーも入っており、最近では週刊ブックレビューというNHKBSの番組で、アメリカの人気作家、ジェフリー・ディーヴァ―氏のインタビューでいろいろと興味深い話を聞きだしていた。

 

 

は著者がこの作品を書くに至った経緯を読んで、旺盛な創作意欲と好奇心や想像力に圧倒された。
この作品そのものは僕の好みではないが、あり得ないような話の中で、活躍するキャラクターや、環境が実在するかのように描かれていることに、驚く。しかし、僕が好みでないというのは、基本的に僕の中には戦争への拒絶反応があるのだ。多分幼い頃の太平洋戦争の記憶が、トラウマになっているのかもしれない。前にどこかで書いたと思うが、僕は子供のころからかなりの歳になるまで、そうだな20歳を過ぎるころまでかな、サイレン恐怖症のような感じだった。東京大空襲を受けた後、おふくろの実家である茨城県の牛久村(現在の牛久市)に疎開していた頃に、始終警戒警報発令のサイレンが鳴り響いて、B29の襲来を告げていたのがその原因だ。
話がそれた。

 

 

それなのになぜ戦争という文字がタイトルに入っている本書を、読もうという気になったのか?やはり好奇心か。図書館でなぜ戦争が起こるのか?といった疑問も後押ししたのかもしれない。
特殊部隊の戦闘員として活躍する笠原郁という若い女性兵士?と、その上司である堂上篤を主人公とするストーリーではあるが、僕は笠原郁よりも、その同僚で図書委員の柴崎麻子のあっけらかんとしたキャラクターの方が好きだ。
他にも個性的なキャラクターが数多く出てきて、あり得ない話?を面白おかしく進めていく。このシリーズが番外編を含めて6冊も出ているということに驚くが、痛快さや、1巻で収束されないラブストーリーの進展を求める読者がたくさん居るのだろうな。

 

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1179.ジェノサイド

2011年09月06日 | 冒険
ジェノサイド
読 了 日 2011/09/01
著  者 高野和明
出 版 社 角川書店
形  態 単行本
ページ数 590
発 行&nbsp:日 2011/03/30
ISBN 978-4-04-874183-5

 

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S11(イレブン)で毎週金曜日の午後8時から放送されている番組「ベストセラーBOOKTV」で、メインキャスターの斎藤広達氏が本書を紹介していたのが頭の片隅にあったので、いすみ市大原の古書店あずまで、これを見かけて迷わず買い求めた。
著者については乱歩賞受賞作「13階段」を読んだとき少しふれたが、その後読んだ「グレイヴディッガー」が好みに合わなかったこともあって、そのほかの作品については手を出しそびれていた。
にもかかわらず、それほど安くはない単行本に惹かれたのは、面白そうだという単なるぼくの勘に従ったまでだ。
だが、前回の有吉佐和子氏の大作「複合汚染」を読んだ後の興奮冷めやらぬ時だったから、続けての大作は体力がもたないかなという心配もあった。何しろ590頁という厚さにちょっとばかり、恐れをなしたのだ。

 

 

しかし、そんな心配は全くの杞憂だった。帯に書かれた各方面からの称賛の数々は、それでも足りないと思わせるほどの文字通りの超大作ともいえる内容だった。
なんと言ったらいいか?面白さの要素がたくさん詰まったストーリーとでも言ったら良いか?
日本と、アメリカと、アフリカに主な舞台を置いたグローバルな展開を見せる物語である。
かつて、エボラウィルスという恐ろしい病原菌が発見されたアフリカのコンゴで、新種の生物が発見され、それによって人類は絶滅の危機に陥る可能性があるという、情報がホワイトハウスに寄せられたことから物語の幕は切って落とされる。
バーンズ大統領は、軍や諜報機関あるいは科学者などからなる会議で、民間軍事要員のチームによる新種の生物を抹殺するための作戦計画が練られたという報告を受ける。

 

 

方その頃日本では、創薬科学の研究を続ける大学院生の古賀研人が、胸部大動脈瘤の破裂で急逝した父親の葬儀に対応していた。そして、その後死んだ父親からの不思議なメールを受け取った。研究資金にも事欠いていたようなさえない大学教授だった父は、生前何を行っていたのだろうか?そうした疑問を抱かせるような内容のメールだった。
タイトルのジェノサイド(Genocide)とは、宗教や人種を対象とした計画的絶滅や、大量虐殺を意味するにだが、本書の中ではいろいろな意味での大量虐殺が現れる。アフリカのコンゴで発見された新種の生物とは?
民間軍事要員で組まれた特殊部隊の目的は?
様々な謎と疑問を呼び起こしながらストーリーが進む中、次第に緊張感を高めていく展開に、胸が躍る。

読み終わって次の本に移る間、興奮が冷めるまで1日、2日置いたほどだ。とにかくスケールの大きな面白いストーリーを読みたいと思っている方にはお勧めの本だ。

 

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0829.楽園

2007年09月10日 | 冒険
楽園
読了日 2007/09/10
著 者 樋口有介
出版社 角川書店
形 態 単行本
ページ数 289
発行日 1994/10/30
ISBN 4-04-872831-8

 

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になる作家の簡単なデータベースをエクセルで作ったのだが、それに拠ればこの作品は著者の9冊目の作品ということになっている。僕は、この人のちょっと投げやりな感じの語り口が好きで、読み継いできたが、本書は今まで読んだものと少し趣きが違い、CIA現地駐在員のアメリカ人が主人公となっている。
楽園というタイトルについて、読後ちょっと考えさせられる内容となっているが、文体はいつものように淡々とした語り口で、最後まで進んでいく。ハードボイルドとまで行かず、ハーフボイルドといったところか?

赤道直下の群島で形成されるズッグ共和国が物語の舞台だ。照りつける陽光、椰子の茂るさんご礁の島は、長いイギリスの統治から抜け出して独立したズッグ共和国。平和そのものに見えるこの小国に、何故CIA駐在員が必要なのかというようなことはさておいて、アメリカや、日本からの政府開発援助資金で道路や橋梁の建設が進んでいる。
だが、その資金の大半はこの国を率いるサントス大統領一派の懐を潤す結果に終わっている。純朴な国民の生活を向上させるという名目の政府活動は、名目のみの空回りで、誰一人として、その現状を憂いているものはいないのだが・・・。

 

 

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0441.ドミノ

2003年10月07日 | 冒険
ドミノ
読了日 2003/10/7
著 者 恩田陸
出版社 角川書店
形 態 単行本
ページ数 340
発行日 2001/7/27
ISBN 4-04-873302-8

単行本の装丁や、扉の次に4ページにも亘って描かれた街の絵地図、登場人物たちのイラストが物語を端的に表現していることが、読み始めて間もなくわかってくる。そして、更に“人生における偶然は、必然である――”というサプルの意味も。

ことの起こりは、関東生命という保険会社から始まる。この会社の営業強化月間、七月戦の最終日の今日、東京本社から相模原本社へ契約書類を送る最終便が夕方6時15分に出ることになっている。それまでに外回りの営業マンから契約書類が届けられる必要がある。待っているのは大口契約を約束された額賀義人の契約書類だ。
関東生命の中堅女子社員・北条和美は新人の田上優子にお茶菓子を買ってくるよう指示する。折から、外はこの先のドラマを象徴するかのような稲妻が走り遠雷が轟くあやしい空模様。田上優子は前から食べたかったケーキを買おうと東京駅の名店街へと向かう。
鮎川麻里花は、母親の明子と関東劇場での舞台公演「エミー」のオーディション会場で、テストを前にして緊張していた。ライバルの都築玲菜も母親と来ていた。
東京ステーションホテル吹き抜けの二階カウンターで、浅田佳代子は、ある計画のためにあの男をイライラしながら待っていた。
東京駅八重洲南口に着いた長距離バスから降りた吾妻俊作は茶髪の若い男女が折り重なるように目の前で倒れるのに出くわす。長髪の男は散乱した紙袋をかき集め、逃げるようにその場を立ち去った。俊作は自分の荷物を持ち上げたとき紙袋が違うような気がしたがすり替わっていることに気づかない。
こうして書いていると、物語を全部書いてしまいかねない程の27人と1匹?の登場者たちが東京駅へと収束していくドラマなのである。良く考え、巧みに計算された、ドタバタコメディが、必然的にどのような結末を迎えるのか?終盤に至り、もう一つイラストに意味のあったことに気づかせるところなど、作者にしてやられたという感じだ。

 

 

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0431.劫尽童女

2003年09月17日 | 冒険
劫尽童女
読了日 2003/9/17
著 者 恩田陸
出版社 光文社
形 態 単行本
ページ数 322
発行日 2002/04/20
ISBN 4-334-92358-5

 

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本のカバーに色鮮やかなイラストや写真が入るようになったのはいつごろからだろうか?特に文庫のカバーはイラストあり写真ありでにぎやかだ。結構昔から有ったような気もするが、角川書店が、映画とタイアップして始めたのが一般的になった最初だったのかもしれない。
その始めの頃は、表紙によって購買意欲をそそられることなど、僕にすれば全く無かったのだが、ここ3~4年に至って、イラストに心を動かされることが多くなった。

本書は単行本だが、店頭に平積みされていた頃より、何度も目にして子供たちの、特に中央の女児に目を惹かれた。不思議なことにイラストに目を奪われていたので、著者の名前に気づかなかった。タイトルの「劫尽童女」の意味も判らなかった。
今度図書館の棚に並んでいる背のタイトルを見て改めて、恩田陸氏の著書と知った次第。もっとも、彼女の作品を初めて読んだのが、昨年11月のアンソロジーだったから知らなかったのも無理はない。

ZOOという秘密組織の主幹をなす研究をしていた伊勢博士が研究の全てを持って失踪した。七年もの間完璧に姿を消していた博士が息子と共に日本の避暑地に現れた。
ZOOはハンドラーという狙撃者を差し向けた。襲撃の夜、ハンドラーとその仲間は博士の潜む別荘を包囲するが、その一人がいつの間にか首筋にナイフを突き立てられて絶命していた。という第一話「化現」からストーリーは始まり、五つのパートに分かれて展開する。
今まで読んだ作品とはがらりと変わった内容で、遺伝子操作された犬が出てきたりと、近未来のアクションドラマ風だ。
ジェームス・キャメロン監督の「ダーク・エンジェル」を連想したが、もちろん、ストーリーは全くの別物で、著者がこうした内容のものも書くのかと、ちょっと驚き、面白く読んだ。ただ、終盤があっけなく収束しきれないような感じがあったが、続編を考えたのか?
読み終わってカバーイラスト及びタイトルの意味もわかる。




0370.上と外

2003年04月16日 | 冒険
上と外
読了日 2003/04/16
著 者 恩田陸
出版社 幻冬舎
形 態 文庫
ページ数 154/160/160/155/213/214
発行日 2000/08/25(1-3)、2001/02/25(4)
2001/06/25(5)、2001/08/25(6)
ISBN 4-344-40004-6/4-344-40022-4
4-344-40042-9/4-344-40064-X
4-344-40110-7/4-344-40137-9

 

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くページ数の少ない文庫の6巻に亘ってストーリーが展開する、グリーンマイル形式というのだそうだ。
書下ろし長編を分冊にして、次々刊行していくやり方のようだが、僕は、幸いにして最後の巻が出てから2年もたった今読むので、当時隔月刊だったのを待つことも無く読める。

中学生の楢崎錬と妹千華子の冒険物語だ。
両親の離婚で、別れて暮らす元・家族が年に一度集う夏休み。錬は久しぶりに会う妹、母と共に考古学者の父が居るアメリカへと向かう。中央アメリカからヘリコプターで、父の居る中南米・密林の国へと向かう途中で、軍事クーデターに遭遇し、錬と千華子は、ヘリコプターからジャングルへと放り出された・・・。幼い二人はジャングルでサバイバル出来るのか?

各巻のタイトルは以下の通り
1.素晴らしき休日
2.緑の底
3.神々と死者の迷宮(上)
4.神々と死者の迷宮(下)
5.楔が抜けるとき
6.みんなの国

 

 

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0254.トゥエルブY.O.

2002年07月15日 | 冒険
トゥエルブY.O.
読 了 日 2002/07/15
著  者 福井晴敏
出 版 社 講談社
形  態 文庫
ページ数 408
発 行 日 2001/06/15
ISBN 4-06-273166-5

 

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書に限ればそういうことはなかったのだが、僕は一時期アクション映画に凝ったことがあり、冒険活劇や、パニック映画を好んで見た。
ところが本に関しては、普通ハードボイルドとか、冒険小説を選ぶということはない。
読書の目標を立てて読むようになってから、一つの指針としてミステリー文学賞の受賞作品を読むようにしてからは、その中にハードボイルドが入っていることたびたび有って、それらを読んで結構カタルシスを感じることも多くなった。

今月はじめに読んだ、「ナイト・ダンサー」しかり、本書もその一つである。第44回江戸川乱歩賞を、池井戸潤氏の「果つる底なき」と共に受賞。
たった一人のテロリストが、沖縄から米海兵隊をを撤退させた。テロリストの名は「12(トゥエルブ)」。最強のコンピュータ・ウィルスをを使って、米国防総省を脅迫する「12」の謎を追うサスペンス・ストーリーだ。

 

 

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0209.今夜は眠れない

2002年05月11日 | 冒険
今夜は眠れない
読了日 2002/5/11
著者 宮部みゆき
出版社 中央公論新社
形態 文庫
ページ数 323
発行日 2001/12/10
ISBN 4-12-203278-4

 

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2月に読んだ「夢にも思わない」(167.参照)と同様、緒方雅男クンと、島崎俊彦クンの中学生コンビが活躍する物語。
こちらのほうが先に書かれた本なのだが、何しろ古本屋さんで、見かけたら買うというようなランダムな順序で読むものだから、読む順序が発行順にならないことはしょっちゅうである。

著者の子どもを描き方には評論家を唸らすほどにうまいという定評があるようだが、思わずにやりとされられる小理屈を言う子どもたちのセリフに感心する。だが、この子どもたちを生き生きと、元気にしているその親たちの生き方、世渡りが明るく、さわやかで僕はどっちかいうと、親たちのあり方に感動してしまうのだ。
「この親にしてこの子あり」と昔から言われているが、正にその通りだ、と、こうした物語を読むと感じるのだ。

ごくありきたりの、平凡な一家である雅男君の家に弁護士が現れ、「放浪の相場師」と呼ばれた男が雅男君の母親に五億円も遺贈したということを告げる。そこから始まる一家の悲喜劇を描いた物語である。

 

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