隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1791.カレンダー・ガール

2017年10月30日 | リーガル
カレンダー・ガール
The Case of The Clendar Girl
読了日 2017/10/30
著 者 E・S・ガードナー
E.S.Gardner
訳 者 峯岸久
出版社 早川書房
形 態 文庫
ページ数 324
発行日 1981/08/31
ISBN 4-15-070226-8

 

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平洋沿岸を通過しながらとてつもない雨や風をもたらした台風22号も、どうやら東の海上に去ったようだ。
気圧の配置や海水温の関係で、このところの台風は勢力が衰えることなく日本に接近して、甚大な被害をもたらす。
以前テレビでアメリカの科学者たちが、ハリケーンの進路を変えるために、核爆発を起こさせるとかの実験をすると言うような、番組をやっていたが、科学の発達も自然現象を相手に立ち向かうことは、容易ではないことが分かっただけだった。
少し前のことで、大半の内容は忘れてしまったが、台風が近づくたびに、僕はその時のことを思い浮かべて、科学の力で被害を最小にとどめることは出来ないのかと考える。しかし、天候が回復して澄み切った秋の空が顔を見せれば、そんなことも忘れてしまうのが、僕の残念なところだ。

 

 

第57作目のペリイ・メイスン・シリーズだ。21日、シリーズを読み始めた最初の、「恐ろしい玩具」から本書で4冊目となるが、法廷場面はすべて予備審問の様子が描かれており、大陪審へ行かない前に検察側の告訴が却下されるという結末になっている。
我が国とアメリカでは裁判の仕組みが異なるから、時々疑問に感じることもあるのだが、とにかく依頼人を信じて、あらゆる手を尽くして、時には法律すれすれと思われるような手段を講ずることもあり、それは結局被告となった依頼人の無実を信じてのことだ。
だが、明らかに被告の犯した犯罪を示す、状況証拠の多く存在する中でもメイスン弁護士は、どうして被告の無罪を信じ続けられるのか?そのあたりも読みどころの一つだ。
今回は冒頭で工事請負を生業とするアンスレイという業者が、役人である検査官から嫌がらせとしか思えない、工事のやり直しを命ぜられるなどの被害に、その筋の有力者に相談に行って、訴えるところから始まる。
アンスレイはその帰途に、有力者の屋敷に入ろうとする車と接触して、相手の車が横転するという事故に遭遇する。
運転者と思われる若い女は、車から投げ出されたが幸い怪我もなく、女に頼まれたアンスレイはアパートまで彼女を送ったのだが、翌日の新聞で有力者が屋敷内で射殺されたことを知る。
そして、彼はその殺人容疑者となり、ぺリイ・メイスンはその弁護を引き受けることになるのだ。

 

 

はこのシリーズ作品に限らないが、海外のミステリーを読んでいて、思わず声を出して笑ってしまうことがよく有る。
特にこのシリーズを続けて読んでいると、なんでメイスン弁護士は、こういつもいつも面倒な事件に巻き込まれるのだろう?いや、時には自分で面倒を起こしてしまうこともあり、「またか!」と思って思わず笑いたくなるのだ。
また、海外ミステリーの魅力の一つに、しゃれた会話がある。ところどころでたくまざるユーモアを交えた会話は、やはり国民性の違いからくるのだろう。時には、聖書とかギリシャ神話に絡む洒落などは、そうしたことに不勉強な僕には、理解の及ばないこともあるが、それでも雰囲気を味わうことは出来る。

今回は、いつも奇妙な依頼人がメイスンの事務所のあらわれるというタイプではなく、秘書のデラ・ストリートとともに、ディナーの後フロアショーを楽しみ、ダンスに興じていたところへ依頼人が割り込む、といったスタートだ。

アンスレイが主張するアパートまで送ったという女はアパートには住んでおらず、横転した車は盗難車だった。
ここでも、僕は「幻の女」を探すという一つのパターンを見つけるのだが、このシリーズ作品では、そうしたパターンは、何度も使われているが、もちろんそれがメインテーマではない。
その後に続く複雑な事件の要素の一つに過ぎない。
本作では売り物の法廷シーンは、全体の半分あたりから始まる。仇敵ともいえるハミルトン・バーガー検事を相手に回して、メイスン弁護士の反対尋問が、彼らを悩ます展開は次第に胸のすくようなシーンとなって、カタルシスを感じさせる、という言い方は少しおかしいが、到底不可能だと思われる被告の弁護を通して、事件の真相に迫るメイスン弁護士の、いつもながらの法廷闘争が、もやもやを発散させてくれるのだ。

 

 

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1790.危険な未亡人

2017年10月27日 | リーガル
危険な未亡人
The Case of The Dangerous Dowager
読了日 2017/10/27
著 者 E・S・ガードナー
E.S.Gardner
訳 者 高橋豊
出版社 早川書房
形 態 文庫
ページ数 328
発行日 1990/03/31
ISBN 4-15-070246-2

 

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え積ン読本だったとはいえ、かつて古書店―主としてBOOKOFF―で見かけると、買ったのがこのぺリイ・メイスン・シリーズだった。未読の積ン読本を少しずつ消化しようと、たまたま手に取った「恐ろしい玩具」で、手に汗握るような法廷シーンに、しばらくぶりで遭遇したことは、前々回書いた通りで、この際少し続けてメイスン弁護士の法廷闘争に付き合ってみようと考えたのだ。
幸い前述のごとく僕の蔵書には、シリーズ作品が10数冊もあり、読むには事欠かないから、まあどれくらい続くかわからないが、ここはひとつぺリイ・メイスン弁護士の活躍を、若い頃のように極めてみようか。 といってもまあ、本書を含めて僕が読み終わっているのは15冊くらいだから、長編82冊を読むにはかなりの年月を要するだろう。
せめて手持ちの文庫は、あと3冊くらいなのでせめてそのくらいは、続けて読んでしまおう。
僕の気まぐれともいえる読書のペースは、乗っているときにどんどん読まないと、時にスランプの状態になる時があるから、気をつけないといけない。

 

 

このシリーズを読んでいると、若い頃といっても10代後半から20代前半の頃のことだが、ペリーメイスンシリーズを全部読んでみようと思いながら、果たせずにいたことを思い起こす。
一つにはまだ若かった(僕は自分ではバカ【馬鹿】かったと言っているが)ことと、世間知らずだったことと、その割に謙虚でなかったこととか、いろいろ今になって思えば、恥ずかしいことばかりで、僕の青春とは何だったのだろうと、後悔することばかり思い出すのだ。
それでも、好意的に考えれば(自分のことだから)、届かぬ夢に酔っていたような、作家への道を模索していた時代もあった。若さとはそうした怖いもの知らず、といったこともあるが、それがいい方に向かえば無限の可能性が生まれるのだが・・・。
残念ながらそれほどの才能や行動力は僕にはなく、平々凡々の人生は来月2日で78年となる。
今こうして好きな本を読んでは、勝手なことを書いていられるのは、充分に幸せなことだ。それでもまだ、「足るを知る」といった心境には程遠く、わずかな年金暮らしにもかかわらず、不相応な金の使い方を時にはしてしまうという、バカさ加減は治っていない。

 

 

イトルの「危険な未亡人」と深井国氏イラストの美女が、それかと思ったら表紙の彼女はその未亡人の孫娘だった。その孫娘・シルビア・オクスマンの奔放で博打好きなことが、とんだ事件に発展するというストーリーだ。
ある時メイスンの事務所に現れたのは、マチルダ・ベンソンという白髪の恰幅のいい老婦人。彼女の語りところでは、孫娘であるシルビア・オクスマンが博打でこしらえた借金は、2500ドルの借用書3枚に亘る7500ドルということだ。
12海里の領海水域外に浮かぶ船舶で、「豊饒の角」なる賭博場を開いているのは、サム・グリーブとチャーリー・ダンカンという共同経営者だ。彼らは、その借用書に2000ドルものプレミアをつけて、シルビアの夫・フランクに買い取らせようと画策していた。
威勢のいいマチルダ・ベンソン女史は不当な割増金を払うのはまっぴらだというのだ。
だが、賭博船の中で経営者の一人・サム・グリーブが殺害されるという事件が起きて、容疑はシルビアにかかってきた。さらにメイスンはその逃亡を助けたということで、共犯の容疑が・・・・。
絶体絶命といった状況のメイスンだが、いつもながらの窮地脱出はとても可能とは思えない。シリーズ第10作目という初期の作品だ。

毎年のことなのだろうが、今年は台風による被害が特に大きいような気がする。といっても、僕は昨年のことを覚えているわけではないから、実際のところ比較しようもない。しかし、なんとなく今年は天候の不順が多く、急に冬がやってきたと思っていたら、昨日、今日は小春日和といった感じだ。季節的に言えば、「小春日和」は、もう少し後、11月に入ってからのことらしいが、暖かな日差しはありがたい。
日増しに年寄りになっていくような感覚を持つ僕にとって、ちょっとした寒さも身に応えるようになって、今からそんなことでは、これからやってくる本格的な寒さに、どうすればいいだろう。

 

 

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1789.重婚した夫

2017年10月24日 | リーガル
重婚した夫
THE CASE OF THE BIGAMOUS SPOUSE
読了日 2017/10/24
著 者 E・S・ガードナー
Erle Stanley Gardner
訳 者 宇野利泰
出版社 早川書房
形 態 文庫
ページ数 289
発行日 1984/12/15
ISBN 4-15-070236-5

 

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度も同じことを書いているが、このシリーズを読むとき思い出すのが、劇団民藝の女優・日色ともゑ氏だ。
昔のことだから詳しいことは忘れたが、彼女がテレビかだったかのインタビューに応えて、ペリイ・メイスン・シリーズを、父親の影響でよく読んでいたということだった。
そのお父さんという人は、読んだそばから忘れていくので、前に読んだ本をまた買ってくることが有ったというのだ。日色ともゑ氏といえば、最近テレビでもあまり見ないと思って、この記事を書くためにWikipediaを見たら、彼女は1941年の生まれだと分かり、僕より2歳年下ということで今年76歳になることに驚く。
女優さんのイメージは若い頃見た映画やドラマの印象が強く、いつまでも若い姿を連想するから、年齢を知って驚くことがしばしばある。
それに、今回初めて彼女のお父さんが、東京新聞の記者だったことも知り、僕が東京新聞を読んでいることから、多少の親近感を持ったこともある。いや、その同じ本を買ってくるというところ、僕も全く同様のことをしたことが有るし、何より僕は読んだそばから忘れていくので、同じようなことをすると言う日色ともゑ氏のお父さんに、親近感を抱くのかもしれない。

 

 

書いているうちに、もう少し思い出した。インタビューは多分NHKテレビではなかったかと思う。 当時放送されていた、アメリカのテレビドラマ「新・弁護士ペリー・メイスン」の、関連番組だった。彼女は小説で抱いていたペリー・メイスンと、ドラマでレイモンド・バー氏の扮するペリー・メイスン(最初の若い頃の番組を指している)があまりにも違うので、がっかりしたという話をしていた。
多分、レイモンド・バー氏のがっちりした体つきとは違い、もっとスマートな2枚目を連想していたのだろう。そう思ってなんとなく微笑ましい思いを抱いたことも、思い出した。
僕も最初の長寿番組だった「弁護士ペリー・メイスン」も、その後の「新・弁護士ペリー・メイスン」も観ているが、確かにガードナー氏の原作では、彼女と同様スマートでハンサムなメイスンを想像するのだが、僕はレイモンド・バー氏のペリー・メイスンも嫌いではない。
特に歳をとってから制作された「新・弁護士ペリー・メイスン」は、BS放送を録画して、何度も見返した。 若い頃のドラマは、ガードナー氏も監修として制作に参加していたようだが、200回以上にもなる長寿番組で、アメリカ本国でもヒットドラマだったようだ。

 

 

が国で「刑事コロンボ」のテーマ、と言われている楽曲は実はNBCミステリー・ムービーという番組用にヘンリー・マンシーニ氏によって作曲されたものだ。だが、「弁護士・ペリイ・メイスン」では、ドラマのテーマとして作曲されたものだから、その後制作された「新・弁護士・ペリイ・メイスン」でも同様な楽曲が使用されており、僕はこのテーマ曲も好きだ。まあ、どうでもいいことだが。
ドラマの話だけになってしまったが、1985年からのおおよそ90分と長尺ドラマになった「新・弁護士・ペリイ・メイスン」では、メイスンとデラ・ストリートが前と同様、レイモンド・バー、バーバラ・ヘイルのコンビ復活となって、第1作の「愛と欲望の行方(Perry Mason Returns)」の、スタート場面に感激したことも思い出深い。
「刑事コロンボ」と同様に、デジタル・リマスター版が出るのっを期待しているが、コストと視聴率の関係か?
何処からもそうした話題が出てこないのが寂しい。

 

 

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1788.恐ろしい玩具

2017年10月21日 | リーガル
恐ろしい玩具
The Case of The Deadly Toy
読了日 2017/10/21
著 者 E.S.ガードナー
Erle Stanley Gardner
訳 者 高橋泰邦
出版社 早川書房
形 態 文庫
ページ数 317
発行日 1983/11/30
ISBN 4-15-070232-2

 

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い頃随分たくさん読んだ記憶がある、弁護士・ぺリイ・メイスン・シリーズの1篇だ。シリーズ長編、第58作目の本書も読んでいるはずだが、読み始めても一向に思い出さないところを見ると、未読だったのか?読んだとしてもおそらくその頃は、同じ早川でもポケット・ミステリーだったはずだ。
因みにポケミスでは、519番となっている。
ポケミスにはいろいろお世話になったが、100番?あるいは200番くらいの発行だったころに、初めてであったのではないかと、うっすらとした記憶がある。あまり当てにはできないが。
それが本書の巻末に記載されているように、ぺリイ・メイスンの長編シリーズだけでも82冊すべて翻訳刊行されていることに驚く。もっとも、ポケミス1500番記念のミステリマガジン(写真)が出たのが、1988年のことだから、別に驚くことでもないか。
その後ポケミスを読むことも少なくなったので、現在何番まで刊行されているのか知らないが、いまだに世界中の傑作ミステリーを刊行し続けていることに、それこそ驚きを禁じ得ないのだ。

 

 



ミステリーの読書を楽しむ人にとっては、救いの主のような存在だが、ただ一つ僕にとっては、昔と比べようもないほどの価格の高騰だ。
昔は昔なりに適当な価格設定だったとしても、ポケミスが単行本に迫る価格を見せているのは、どうも納得できないでいるのは、貧乏人の僕だけか?
そんな僕は、今のところもっぱら図書館を利用しているので、何も言うことはないのだが、たまには新刊を買って自分のものにして読みたい、という気持ちもほんの少しだが残っている。
さて、このぺリイ・メイスン・シリーズの特徴は、などと僕が論ずることは何もないのだが、いろいろと依頼人の利益を確保するために、「アッ!」と驚くような離れ業を毎回見せるメイスン弁護士だが、我が国とアメリカとでは法廷の仕組みが異なるとはいえ、その法廷戦術にすべてを賭けるメイスン弁護士の姿勢は、依頼人にとってこれほど頼りになるものはないだろう。

 

 

者とすれば、アクロバティックな法廷論争を含め、エンタテインメントに徹しているところが、新しい作品を次々と読ませる要因だろう。
今回も伏線を滲ませた短いプロローグから、いつものように奇妙な事件の幕開きを見せる。 銀行家で大富豪のホレイス・セルカークの息子である、マーヴィン・セルカークは婚約者だったノーダ・アリスンの前で、息子のロバートの頬を張る、といった驚きの場面からストーリーはスタートするのだ。
なお驚くことに、そのロバートという7歳の少年に、実弾が入っていないとはいえ、本物の拳銃を玩具にさせるといった、ことだ。いくら国情の違いとはいえ、こういうストーリーを読んでいると、アメリカという国の自由奔放な思想が行きわたっているというのか、タイトルの持つ意味に文字通り恐ろしさを感じさせるのだ。
さらには、真夜中に就寝中の少年が、物音に気付いて拳銃をぶっ放すという事態が発生して、しかも父親が銃弾に倒れて死亡するというのだ。
この作品では、大陪審まで行かず予審―つまり予備審問(犯罪が行われたことについて十分な証拠があるかなどを検討する場で、陪審員はいない。)―の模様が描かれるのだが、それでもぺリイ・メイスンの追及は鋭く、検察側の誤りを追求する。
複雑怪奇な事件を解明するには、法律の知識だけではなく、人間を、その行動を深く理解することが重要だと、このドラマは教えてくれる。

 

 

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1787.六機の特殊Ⅱ 蒼白の仮面

2017年10月18日 | 警察小説
六機の特殊Ⅱ
蒼白の仮面
読了日 2017/10/18
著 者 黒崎視音
出版社 徳間書店
形 態 文庫
ページ数 327
発行日 2012/10/15
ISBN 978-4-19-893609-9

 

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視庁心理捜査官という大作で、初めて著者の作品を読み、すぐにファンとなったのだが、一つにはこの作品の続編を期待していたこともあった。だが、まことに残念なことに期待した続編はなかった。
読んだのは2006年のことだから、もう11年も前で月日の流れは速い。
その翌年、2007年に本書のシリーズとしての前作「六機の特殊 警視庁特殊部隊」を読んだ。同じ警視庁に所属する刑事たちを描いた作品だが、警視庁心理捜査官とは異なりアクションがストーリーの主体となる内容で、それはそれで魅力的なキャラクターを配して、華麗な動きが展開される。
どちらかといえば映像向きだと思われるが、逆にこうした特殊部隊をモデルにした映像は、作りにくいのかテレビドラマにもなっていないようだ。
闇のサイトで「蒼白の仮面」と名乗る住人は、そこで日ごろの不満を書き散らす鬱屈した人物に、犯罪を唆すばかりでなく、その方法まで示唆していた。

 

 

下記の収録作には、7話ということになっているが、1話としては極端に短いものもあり、短編集ではなく、「問題小説(徳間書店刊)」に連載されていたということもあるから長編といった方がいいだろう。
前述の通り、闇サイトの住人である「蒼白の仮面」に、唆されて犯罪に染まる犯人と、真の犯罪者といえる蒼白の仮面を追うストーリーは、名門女子高への立てこもり事件をはじめとして、タンクローリー強奪事件など、続発する事件に対応する警視庁特殊部隊の活躍も、いまいち焦点が合わず後手を踏む。
第六機動隊内の第四小隊は、キャリアである警視・土岐悟が隊長を務める部隊だが、隊員は副隊長の水戸以下、各部所から集められた精鋭と言いたいが、必ずしも適材適所というわけではないのだが、土岐小隊長の同期でありながら、今では上司となっている五反田警視から、「寄せ集め」などと蔑称されている。
事件への対応のミスにより、自分本位の五反田が上司になったことから、土岐の第四小隊長としての矜持は 変わることなく、部下の掌握と事件への関与はかえって強くなり、核心へと迫っていく

 

 

ころどころに示される伏線が、時に強く、とくには微かに、土岐の判断を誤らせたりもしながら、ネット上での犯罪誘発者の姿を現実の世界に浮かび上がらせるのかが、彼ら第四小隊の命運にかかっている。
だが、ストーリーは陰湿なところはあまり見せずに、専ら彼らのテロ対策と唆された犯罪者の対決がメインとなっている。
僕はこの著者がどことなく気になって、こうしてたまに著作を読むのだが、どうも最初に読んだ「警視庁心理捜査官」の、印象が強くて損後の作品に、その時のような心に響かなくなっている。
読んでいて面白くないことはないのだが、いま一つ感情移入できないのは、僕の精神状態のせいか?

秋の長雨というが、このところ雨や曇りが続いて。いささか憂鬱になっていたが、今日は朝から青空が広がって、洗濯日和だ。
しかし、この梅雨の晴れ間のような天候は、今日壱日限りのようだ。気象情報によれば今晩からまたしばらく雨天、曇天が続くみたいで、これも地球温暖化の一環かと思わざるを得ない。気象の変化は大気の流れや気温の変化によるものだろうが、いやお天気の神の気まぐれな悪戯かも・・・。

 

 

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1786.夏期限定トロピカルパフェ事件

2017年10月15日 | 青春ミステリー
夏期限定トロピカルパフェ事件
読了日 2017/10/15
著 者 米澤穂信
出版社 東京創元社
形 態 文庫
ページ数 246
発行日 2006/04/14
ISBN 978-4-

 

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品数はそれほど多くはないが、シリーズ作品がいくつかあって、本書はその一つ「小市民シリーズ」と呼ばれている。僕は春、夏、秋とあるから、単純に冬もあるのだろうと思っていたら、秋期で終わりのようだ。
「春期限定いちごタルト事件」を読んで、高校生の男女が小市民を目指すという、おかしな話だがちょっとした謎解きの面白さを感じたのは、2009年3月だから大分、前のことだ。
まだ盛んにBOOKOFFなど古書店に通っては、いずれ読みたいと思う本を探しては、買っていた時代に本書も買ったものだろう。2006年の発行というから作品としても、随分前に書かれたものだ。
そして、読むのも遅くなった。
僕はさほど自分は気が多いとも思っていなかったが、結果としてそれを自己認識していなかっただけと、今頃になって思うのだ。次々と著される新しい物語に気をとられて、読もうと思って買った本がどんどん古くなって、棚のスペースを占領していくのを、ただ漫然と眺めていたのだから、困ったものだ。

 

 

もう僕に残された時間も、そう多くはないだろうと思いながらも、蔵書の消化に手間取っているのは、なんとももどかしい限りだが、それだけではなく他にも残された課題が幾つかあって、心置きなくこの世を去ることが、できるだろうか?と心配!してもしょうがないか。
本書は下表のような章割りを示して、長編のようでもあり、また、章ごとに完結する話もあって、連作短編ともいえるのだが、ブログへの投稿に使っている自作のHTMLテンプレートは、短編集と長編とが異なるテンプレートとなっているから、迷うことになる。
しかし、大した問題でもないか。どちらを使っても多少の手直しで短編集にも長編にも使えるのだから。
自分で作った雛形なので若干の変更はどうにでもなる。だが、最近はそのHTMLの知識も忘れていることも多くなって、ちょっとした手直しの時でも、参考書を確認することが多くなった。
記憶力の減退は加齢とは無関係だというものの、ついつい歳はとりたくないという思いに駆られる。そういう思いがそもそも歳をとった証拠だろう。

 

 

校生になった小鳩常悟朗と小佐内ゆきが、遭遇する事件の真相を解明するというストーリーは、全作から踏襲されたもののようだが、小市民を目指すという二人の間柄が、僕にはよく理解できないところもある。
見方によれば小学生にも見えるという小柄な、小佐内ゆきと恋人同士でもない、小鳩常悟朗が互恵関係を保ちつつ、小市民を目指すというのが全体のテーマらしいが、今回のストーリーの大部分を占める第4章では、そうした二人の思いとはかけ離れた大冒険ともいえる内容となっている。

急に冬になってしまったような寒い日が続いて、ストーブを点けた。いくらなんでも、10月半ばにストーブはないだろう、などと思っても寒さには敵わない。世の中には80歳でも90歳でも、元気な姿を見せている人が大勢いるが、75歳を過ぎたころから急に暑さ寒さに弱くなった気がする。
もう少し若かったころは、そんなことはなかった気がするが、思い違いだったか?今からこの調子では、本格的な冬の寒さが思いやられる。

 

収録作
# タイトル
序章 まるで綿菓子のよう
第1章 シャルロットだけはぼくのもの
第2章 シェイク・ハーフ
第3章 激辛大盛
第4章 おいで、キャンデーあげる
終章 スイート・メモリー

 

 

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スワンの怒り

2017年10月12日 | サスペンス
スワンの怒り
The Ugly Duckling
読了日 2017/10/12
著 者 アイリス・ジョハンセン
Iris Johansen
訳 者 池田真紀子
出版社 二見書房
形 態 文庫
ページ数 558
発行日 1997/04/25
ISBN 4-576-97049-6

 

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却期限の10月4日、「櫻子さんの足下には死体が埋まっている ジュリエットの告白」を返しに、木更津市立図書館に行って、本書を借りてきた。「櫻子さん・・・」はもっと前に読み終わっていたので、早く返しに行こうと思いながら、ズルズルと期限いっぱいまで手元に置いてしまった。
いつもなら次に読む人が待っているから、と思って読み終わったらすぐに返しに行くのだが、今回は大した理由もないのに、遅れてしまった。

以前BOOKOFFなどに盛んに通っていたころ、よく目につくアイリス・ジョハンセンという名前が、ちょっと気になっていたことが有って、図書館の海外文庫の棚を見ていたら、そこにも10数冊があって著者の紹介文には、どれも最初に本書のタイトルが記されていた。
ところが棚には見当たらなかったので、備え付けのパソコンで検索すると、カウンターで尋ねるようにとのメッセージが。どうやら書庫に入っているようだ。図書館員に申し出て、ようやく借り出すことが出来た。

 

 

いろいろと調べてみると、本書は著者のハードカバーデビュー作だという。それも51冊目だというではないか。この前にロマンス小説を50冊も出しているということに驚いた。
アメリカ本国では、1880年代前半にロマンス小説で、デビュー以来成功を収めており、その後1996年からロマンティック・サスペンスや歴史ロマンスを書き始めて、2006年11月時点でニューヨークタイムズのベストセラー・リストで、17週連続ランクインしたという。

それほどの作家を知らずにいたというのは、読書人としていささか恥ずかしい思いもあるが、これを機会に少し読み続けてみようかという気もある。しかしながら、そうした作家が次々と僕の目の前に現れるのは、歓迎すべきことなのかどうか、僕が読める限度は限られているから、まことにもって悩ましく、嬉しさと困惑とが入り混じる心境だ。

まあ、そんなことは今更どうこう言うべき問題ではないのかもしれない。書店の棚を見れば知らない作家の方が多いことは、一目瞭然だ。その中に僕の好みに合う作家も、多分数知れないのだろう。 せいぜい今楽しんでできる読書を続けることだけだ。

 

 

生は儚く短い。この世を去るときは、多分あれもこれも読みたかったと、思うに違いないが、できる限りそうした思いを少なくしておきたいと思う。
しかし僕は、本を読むのが遅くなったとつくづく感じる。この本を読み終わるのに、3日も掛かった。いや、3日が5日であろうと、あるいは1週間であろうと、意識してゆっくり読んでいる場合は、遅くなっているわけではないから、気にもしないが本書のようにスリリングで、たっぷりとサスペンスを孕んだストーリーを、ページを繰るのももどかしく読んでいるのに、時間がかかるというのはそれだけ歳をとって、理解が追い付かなくなっている証拠だから、残念な気もひとしおなのだ。

それでも海外の女性作家はなぜ、こんなスケールの大きなサスペンス小説を、立て続けに書けるのだろうか?
アメリカにはメアリ・ヒギンズ・クラークという、同じくサスペンスを量産するベストセラー作家がいる。彼女たちはいずれも主婦業や子育ての傍ら、ベストセラーを生み出すという、いわば離れ業を繰り出しているのだ。
いつも思うのだが、世の中は不公平にできていて、二物も三物ももつ才能がそこここに居る割に、己のふがいなさに、どうしようもないいらだたしさを感じてしまうのは・・・、いや辞めておこう。
僕はただ、そういう面白い物語を楽しんで読むだけでいいのだろう。

 

 

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1784.京都寺町三条のホームズ8 見習い鑑定士の奮闘

2017年10月09日 | 本格
京都寺町三条のホームズ8
見習い鑑定士の奮闘
読了日 2017/10/09
著 者 望月麻衣
出版社 双葉社
形 態 文庫
ページ数 306
発行日 2017/09/17
ISBN 978-4-575-52032-3

 

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都の名所案内がごく自然に、ストーリーの中で行われて、そうした説明を聞きながら名所めぐりをしてみたい、そんな風なことを思わせる展開が心地よい。
僕は若い頃から旅行好きではなく、今でも特別に言ってみたいと思うところはないが、最近こうしたシリーズ作品を読んでいると、舞台となっている地域の観光名所などが出てきて、特にこのシリーズでは京都が舞台だから、主人公たちがそれほど有名ではない、隠れた名所を訪れることもあって、そうした際の名所案内がストーリーの展開に不自然でなく、行われるため思わず前述のごとく、行ってみたいと思わせるのだろう。
ミステリーといえば、殺人事件が起こるのがごく一般的だが、こうしたライトミステリーと呼ばれる作品は、凶悪な犯罪を追うことはごくまれで、もっと軽い事件を扱うことが多い。
そんなことからライトミステリーと呼ばれるのだろう。このシリーズも回を重ねるごとに、時の経過が表されて、今回、ホームズこと矢頭清貴は大学院を終了、そして、真城葵はいよいよ大学生となる。

 

 

 

この二人の主人公たちの恋愛関係も徐々に進んで、多分先行き二人が結婚するようなところまで、物語は続くのだろう。
ところがそうした状況を阻むがごとく、骨董店「蔵」のオーナーであり国選鑑定人の矢頭誠司は、清貴を修行ということで最低でも10社を回って来いと、受け入れ先の書類示して、命令したのだった。
ホームズといえど、オーナーの言うことに逆らうことは出来ない。
そしてホームズが最初に選んだ修行先は、松花堂美術館だった。松花堂は石清水八幡宮の社僧・松花堂昭乗が構えた草庵の名称だ。男山の麓にある石清水八幡宮には、宿坊が多くあり仁和寺の老僧が「一生に一度は、石清水八幡宮に行きたい」と言っていた、そんな記述が吉田兼好の徒然草にあるという。
ホームズの修行は元々彼が持ち合わせている経験や知識が、修行先の仕事に役立つといった状況だが、見識を広め、あるいは人脈を広げるといったことに関しては、オーナーの目論見通りだが、矢頭清貴のホームズたる所以はその先々で発生するミステリーを、解決に至ることにあるのだ。

 

 

主が案内する石清水八幡宮へは、ホームズをはじめ松花堂のボランティア5人と、タレントの梶原秋人、真城葵、宮下葵ら一行。
そこで、「目貫きの猿」の彫刻のところに来た時だった、ホームズの鋭い「目貫きの猿」の釘が抜けていることに気づいたのだ。左甚五郎が手掛けたという「目貫きの猿」とは、あまりにも精巧な作りだったため、夜になると猿がそこを抜け出して、町に降りて悪さをするようになったという。そこで右目に長けの釘を打つと、猿は抜け出さなくなった、という言い伝えだ。
その右目に打たれた竹の釘が、何者かに盗まれたというのだった。ホームズの推理がそこから始まるのだが、それまでに配置されたいくつかの伏線が、ホームズによって明らかにされるに及んで、名刺旧跡の魅力もさることながら、ホームズこと矢頭清貴の知識と観察力が冴えわたることになる。

 

収録作
# タイトル
プロローグ  
第1章 「一生に一度は」
第2章 「小さなホームズ」
第3章 「聖母の涙」
掌編 宮下香織の困惑
エピローグ  

 

 

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1783.函館・立待岬の女

2017年10月06日 | サスペンス
函館・立待岬の女
読了日 2017/10/06
著 者 斎藤澪
出版社 祥伝社
形 態 文庫
ページ数 296
発行日 1989/10/20
ISBN 4-396-32154-6

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

日から過去の記事を少しずつ修正している。と言っても記事の内容ではなく、記事の頭に設定してあるドロップキャップや、記事と記事の間にある飾り罫が、表示不可となっているのを表示するための修正だ。
僕のブログの記事は、一定の形式を保つために基本的には自作のテンプレートに、記事を流し込むというやり方をしている。普通は記事を三つに分けるから、間に二つの罫線代わりの飾り罫を配し、最初と終わりの記事の頭にドロップキャップを飾り付けている。

多くの記事を以前の“ぷらら”からこのgooブログに移したのだが、記事が多すぎたため移行のための、アプリが使えなかったのが悲劇だった。
慎重に手作業で移行をしたのだが、記事の多さと僕の不手際が、膨大な手間と時間を要したことは言うまでもない。にもかかわらず、画像の指定が既に使用不可となっている、“ぷらら”のアドレスになっていたりして、そうしたミスの手直しにもさらに時間と手間がかかった。

 

 

昨日何気なしに、過去の記事のインデックス(年月)を最初からたどってたら、かなりの数でドロップキャップや飾り罫の部分が表示不可になっていることに気付いたのだ。
毎回記事をアップする際には、細心の注意を払っているにもかかわらず、なぜそうしたことが起こるのだろうと、不審には感じたが自分の不注意のせいに他ならない。
HTMLを見てみると、画像のアドレスが古い“ぷらら”のものになっていた。多分まだ修正前の古い記事の部分を、コピペしたとか、あるいは“ぷらら”時代にExcelで作った、アドレス表(ブログにアップしたタイトルや画像、著者などのアドレスを記録してある)を使ってしまったとか、そういったことなのだろう。

手直しの作業というのは、なかなか手間のかかることで、一つには面倒だという思いも重なって、多くの時間がかかるだけでなく、手間もかかった。それでもまだ完全に直ったとは言い難く、もう少し時間がかかりそうなのだ。

そんなことをしている間に、せっかく積ン読本の消化の1冊で、楽しんで読んだ斎藤澪氏の本書も、どんな内容だったか、危うく忘れるところだった。
先日、BSフジで放送されたドラマ「海に消えた女」が、斎藤澪氏の原作だったので、蔵書の中から本書を選んで読んだというわけだ。その原作だという「待っていた女」を、ネットで調べてみたが見当たらない。若しかしたら短編なのか・・・。

 

 

隆三氏と中原理恵氏の主演によるドラマは、いかにも斎藤澪氏の作品だと思わせる、田舎の港町で起きた船員の殺害事件を追う話で、静かなそして少し暗い雰囲気で進む展開が、1989年制作の古さもあってか、観ていて物憂い感じを抱かせたものの、まあまあみられる出来だった。
中原理恵氏の謎めいた女が魅力的に描かれていたな。
そんなこんなで、その原作も読もうと思ったら、前述の通りだ。
それほど著作は多いとは言えないので、近いうちに著者の作品をまたぞろ、読んでみようと思うほど、何とはなしに僕は著者の作品が気になるのだ。

本書は女シリーズなどと、カバー後ろの解説にはあるが、同じ祥伝社から「ノサップ岬の女」というのが出ており、僕はそれも持っているからまずはその辺も読んでおこうと思っている。
柴木俊子という26歳の、売れない女優がテレビドラマのチョイ役が、映画監督の目に留まり、映画出演の幸運に巡り会えたと思ったら、何やら事件に巻き込まれるというストーリーで、関係者の過去の事件までもが彼女に関わってくるのだ。
タイトルの函館、立待岬などは旅情を誘うが、本編の内容は旅情を誘うというより、かつて名を売った女優のなれの果てを、観るようで侘しさが漂う。

しかし、こういう話を読んでいると、若かりし頃今よりもずっと映画や、人気俳優に憧れたりしていたことを、思い出して僕にも苦労知らずの頃があったのだと、なんだか懐かしく可笑しい。

 

 

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1782.櫻子さんの足下には死体が埋まっている ジュリエットの告白

2017年10月02日 | 本格
櫻子さんの足下には死体が埋まっている
ジュリエットの告白
読 了 日 2017/10/02
著  者 太田紫織
出 版 社 KADOKAWA
形  態 文庫
ページ数 281
発 行 日 2017/08/25
ISBN 978-4-04-105204-4

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

週木曜日から始まった日本女子オープンゴルフの、テレビ中継はNHK・BS1と地上デジタルの両方で、4日間にわたって放送された。昨年の覇者は畑中奈紗選手。史上初というアマチュア、しかも18歳という若い選手の優勝は、女子プロゴルフ界に衝撃を与えるとともに、ゴルフファンを大いに沸かせた。 そしてディフェンディングチャンピオンの畑中選手は、今回も初日5アンダーという好位置で発進。2日目の第2ラウンドでは8アンダーで早くも単独首位に駆け上がった。決勝ラウンドの第3ラウンドからは1オーバーの69名の選手によっての闘いだ。
第3ラウンド終了時点で、13アンダーという好成績を収めた畑中選手の、「20アンダーを目指す」というインタビューに答えての発言があった。そして、最終日の17番ホールのバーディでついに言葉通りの“20アンダーを達成したのだ。
2位以下に8打差をつけての闘いは、一人次元の異なる舞台だったかのようで、圧倒的な強さで第50回という節目の、日本女子オープンを飾った。僕は鈴木愛選手のファンで、彼女の最終日の盛り返しを願って見ていたのだが、カップルのアマチュア小倉彩愛(さえ)選手が気になったか、いまいち自慢のパットも冴えを見せることがなく、11アンダーで3位の小倉選手に次いで、10アンダーの4位に終わった。

毎回ドラマチックな展開を見せる日本女子オープンだが、今年も高校2年生のアマチュア、小倉彩愛選手の活躍などにも注目が集まったり、初日の豪雨というような悪天候にも見舞われたり、という展開を見せたが、やはり何と言っても樋口久子選手に次ぐ、先週に続き2週連続優勝、大会2連覇を達成した畑岡奈紗選手の偉業は長く語り継がれることだろう。

 

 

早いもので、このシリーズも12巻目となった。読み始めたのは、今年の7月だから4カ月弱で12巻を読んだことになる。ほとんどが連作短編という形だから、読みやすいということと特異なキャラクターによる推理が、時には僕の好きな安楽椅子探偵の様相を示して、なおさら僕はこのシリーズに引き込まれるというわけだ。
好きなシリーズが長く続くのは、読書好きにとってこの上ない幸せだ。
幸いにして僕はこの他にもいくつかのシリーズ作品を知って読んでいる。若い頃もシリーズ作品という感覚はなかったが、同じ主人公や気に入ったキャラクターが登場する作品は、探して読んでいたのだが、今読み続けているシリーズ作品のように、短い期間でほとんど立て続けに発行されるようなことはなかったし、作品によっては何年もの歳月を過ぎて刊行されることもあったから、全く異なる味わいではあった。
しかし多くの時を過ぎた今となっては、そうした古典的名作でさえ、読もうと思えば時を待たずして読めるのだから、とにかく至福の時を簡単に手に入れることができる環境に感謝。

 

 

月18日に木更津市立図書館からのメールで、予約してあった本書の用意が出来たとのこと。翌日は火曜日で休館日だったので、20日に行って借りてきた。
こうして順調に予約した本が早く読めることは、何よりうれしいことだ。目次を見ると、第参骨の「わたしのおうちはどこですか」が“前”となっている。ということは、すでに次の巻が予定されているということで、まだ物語は続くことがわかる。大河ドラマのごとくに主人公たちの人生の展開が、この後も繰り広げられていくのだろうと、ますますシリーズの継続と櫻子さんが遭遇する事件と、彼女の推理に期待を寄せるのだ。
一般的にこのシリーズ作品のような形態が、ライトミステリーと呼ばれているようだが、気軽に読めるという点では言葉通りだが、内容は決して軽いばかりではなく、キャラクターの特性を生かした筋立てや、ミステリーを解明する論理性に、僕は本格ミステリーの面白さを感じている。

 

収録作
# タイトル
プロローグ  
第壱骨 ケルヌンノスの妙薬
第弐骨 ジュリエットの告白
第参骨 わたしのおうちはどこですか 前

 

 

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