新・事件 月の景色 | ||
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読 了 日 | 2005/05/04 |
著 者 | 早坂暁 | |
出 版 社 | 大和書房 | |
形 態 | 単行本 | |
ページ数 | 189 | |
発 行 :日 | 1982/11/10 | |
ISBN | 4-479-54006-7 |
よいよこの事件シリーズもこれで最後になる。もっともこうして目標を立てて読み出す以前に、少なくとも3回以上は読んでいるから、殊更感慨はないのだが。
今となっては、映像化された、ドラマそのものを好きなときに見られる環境になったから、この後その台本である本書を読むこともそうはないだろう。
このドラマは、佐藤浩市氏のデビュー作でもあり、母親役の岸恵子氏との共演で、初々しさの残る好演だった。
大岡昇平氏の「事件」の後に続き早坂氏の脚本によるドラマのシリーズは、一貫して、簡単そうに見えた事件が、公判が進むにつれて思いもかけない真実を明らかにしていくというストーリーで、背後にその時の世相を反映した文字通りの「事件」を描いている。
本作では、河原で鳩を飛ばそうとしていた少年が、それを見ていた少女にからかわれた事に腹を立てて絞め殺した、という事件。

健康維持のため朝のジョギングを始めた菊池弁護士が、その途中で具合が悪くなったところへ救助の手を差し伸べた青年が、被告の少年の知り合いだったことから、少年の弁護を引き受けることになる。
板についた弁護士役の、今は亡き若山富三郎氏の演技が光るドラマだ。主演の若山氏はナレーションも兼ねており、その、もの静かな語りは、物語の背景としての役割も果たしている。
よく出来た脚本だが、映画や、ドラマがこの脚本により作られていくことを考えると、ロケ地の選択から、セットの組み立て、大道具、小道具、そして衣装の製作、キャスティングからスケジュール、音楽や効果音等々、脚本通りの映像を作るために、数え切れないほど沢山の人たちが係わっていることがわかってくる。
そんなことを考えながら感慨にふける。

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