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隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

2074.碧空のカノン

2022年03月22日 | 音楽
碧空のカノン
読了日 2021/11/03
著 者 福田和代
出版社 光文社
形 態 文庫
ページ数 355
発行日 2015/09/20
ISBN 978-4-334-76962-8

 

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者・福田和代氏は『TOKYOU BLACKOUT』、『迎撃せよ』の2冊を読んで、気になる作家の一人となった。
惚れっぽい僕は面白い作品を読むとすぐに惚れこんでしまうのだが、その反対の場合もありつまらないと感じた際には、もう二度とこの作家の作品は読まないだろうという気になる。
だが、そんな思いもその作家がほかの作品で評判になると、また読んでみようかと気が変わるのだ。
そして、面白くないと感じた作品だって、ある時ふと読み返して、なんでこの面白い作品をつまらないと思ったんだろうと、180度見方が変わることもあるのだ。 そんなことだから、僕は人に本を進めることなどできないのだ。面白くて感動したとしても、独りよがりなこともたくさんあったのだと思うが、それでも人一倍数読んでいるから、そうそう独りよがりな事もないだろうと、思ったりもしている。
僕は読書と同じくらい音楽も好きだ。まあ、ジャンルを問わずと言いたいが、若い頃から好きだったのはジャズだ。まだ結婚する前に、カミさんとサンケイホールにアート・ブレイキーとジャズメッセンジャーズの公演に行って、一層ジャズにのめり込むことになった。
一方では当時住んでいた大原町の映画館・富士館で行われた三波春夫ショーや、島倉千代子ショーなどにも行ったことがあって、歌謡曲も好きだった、

 

 

 

そんなことを書いていると切りも際限もなくなってしまいそうだ。
その頃は音楽や映画、特に映画は娯楽の花形だった。という言い方はいろいろある娯楽の中で、映画が突出しての人気だったというような感じだが、そうではなくてそれに匹敵する娯楽が他に無かったのだ。
今はなき日活の大スター・石原裕次郎氏の全盛時代でもあった。いや、話が尽きなくなりそうだから、映画の話はまたの事にしよう。
ユーチューブでたまたま自衛隊音楽隊の「栄冠は君に輝く」の演奏・歌唱を見て、本書が航空自衛隊航空中央音楽隊ノートという副題がついていることから、興味がわいた。アルトサックスを担当する成瀬花音を主人公としたストーリーは、一月後に長野で開催される“ふれあいコンサート”、そこで演奏される曲の楽譜をそろえるよう頼んだ真弓から、楽譜の一部が見当たらないと告げられた。(第一話 ギルガメッシュ交響曲)を始め六つのストーリーから構成されている。

 

 

ょっとそそっかしい所もあるが、努力家の成瀬花音の活躍を描いたストーリーで、僕はミステリーを想像していたら、純然たる自衛隊の音楽活動を描いたものだった。だが、それでも多少は第1話のように、楽譜の紛失事件と言った多少はミステリーっぽいところもあったが・・・。
音楽家の演奏の動画はユーチューブでその多くを見ることが出来て、重宝しているが、僕などはテレビで昔放送された番組がユーチューブで観られることがあり、こちらも重宝している。大橋巨泉氏の司会したジャズ番組や、同様にタモリ氏が司会しているジャズなど、見逃した回などが観られて感激した。
そんなことから、これは前にも書いたかどうか忘れたが、僕はビールはキリン派だが、テレビコマーシャルのサントリー金麦が、以前檀れい氏が担当していたことがあり、僕は彼女のファンなので溌溂として、あるいは茶目っ気を現した彼女の演技に癒されたので、ユーチューブを検索したら、まとめてアップされており、大いに楽しんだ。
こうなると欲しいものは何でもありそうな気もするが、まあ、そういう訳でもない事が後に分かってくる。
またもやなんだか訳の分からない話に終始してしまった。

 

収録作
# タイトル
1 ギルガメッシュ交響曲
2 ある愛のうた
3 文明開化の鐘
4 インジブル・メッセージ
5 遠き山に日は落ちて
6 ラッパ吹きの休日

 

 

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2045.祝祭と予感

2021年09月02日 | 音楽
祝祭と予感
読了日 2021/05/09
著 者 恩田陸
出版社 幻冬舎
形 態 単行本
ページ数 186
発行日 2019/10/01
ISBN 978-4-344-04390-7

 

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昨日(5/7)、木更津市立図書館に『半七捕物帳(四)』と『合唱 岬洋介の帰還』、『ビブリア古書堂の事件手帖~扉子と空白の時~』の3冊を返却の為に訪れた際、以前、恩田陸氏の『蜜蜂と遠雷』の続編だか番外編だかが出たというニュースがあったことを思い出して、本書を借りてきた。館内でパラパラとページを捲っていたら、ページ数も少なく文字フォントのサイズが大きく、行間も空いている。
おまけに短編集らしいと知って、ちょっと気落ちしたが、とにかく読んでみようと思った。
帰ってきてから、さっそく読み始めたが、半日もかからず読み終えてしまった。そして、本編ともいえる『蜜蜂と遠雷』を読んでから、かなりの時間が過ぎているから、その内容もほとんど記憶にない。そのためキャラクターに記憶が届かないから、面白くもなんとも感じてこないのだ。
「しまった!『蜜蜂と遠雷』も一緒に借りて、ざっと読んでからこちらを読めば、多分少しは感激の度合いが高まっただろう」と思ったが、後の祭りだ。

以前読んだ時の興奮は蘇ることもないが。少し読み方を考えるべきだった、と大いに反省。

 

 

 

こういう読書に関しての失敗は、僕にとってはいつものごとくで言ってみれば日常茶飯事ともいえる。
後になればもう少し落ち着いて取り掛かればいいのだが、そこがなかなか後で考えるほどはうまくいかないもので、「失敗は成功の母」とはならないのだ。
それでも、少し思い返せば、『蜜蜂と遠雷』の音楽的な描写や、キャラクター造形の素晴らしさを、ずっと後になって思い出しながら、行間から音の飛び出すようなピアノ演奏の素晴らしさが、どうして著者の筆から生まれるのだろうと不思議な感覚を思えるのだ。
こんな経験は初めてではなく、このミス大賞を受賞した中山七里氏の『さよならドビュッシー』で、その才能の奥深さを知り、「ぶったまげた!」と言うような感じだった。文章で音を感じさせるなんて、想像もしてなかったことを、感じさせてくれたことに作家の可能性の奥の深いことを、改めて思い知らされた感じだった。 そして、僕は中山七里氏の作品はすべて読もうと思った次第だ。
そうした思いを再び感じさせてくれたのがこの恩田陸氏だ。ここに至るまでずいぶん余分なことを書いたが、中山氏にしろ恩田氏においても、僕はよく思い出す諺に“一を聞いて十を知る”がある。まあ、ほんの少し(いや、大いにか)意味合いが違うかもしれないが、そうしたことが作家に無ければ、資料をいくら読みつくそうが、自分の経験してないことにおいて、読者を庵激させる文章を書けるわけはないのだ。

 

 

歳の時からたくさんのミステリーを読もうと、手当たり次第に読み漁るといった感じで、本を読み続けてきたが、そのおかげでたくさんの優秀な作家と巡り合うこともできて、僕は幸せな読書生活が出来たと思っている。
本書に限っては残念なことに、さほどの感激も喜びも感じられなかったが、たまにはそういうこともある。
優秀な作家でもいつも百万の読者を満足させる作品ばかりを掛けるわけではないだろう。
だが、それと作家の好き嫌いは別の問題だ。僕は相変わらず恩田陸氏のファンであることは間違いのないところだ。今後も彼女の作品を期待しながら読み続けることは間違いない。好きとか嫌いとかは個人の感情に委ねることが多いから、一概にこうだと決めつけることは出来ないが、僕の場合は一度好きになるとその後嫌いになることはないから、仮に同じ作家がつまらない作品を書いても(そんなことはないが・・・)その作家を嫌いになることも、ましてや見下したりすることはない。
それぞれ作家にも都合があって、出版社や編集者との付き合いもあるだろうから、そうしたことが思わぬ作品を生む場合もあるのではないか、そんなことを考えるからだ。

 

収録作
# タイトル
1 「祝祭と掃苔」
2 「獅子と芍薬」
3 「春と修羅」
4 「袈裟と鞦韆」
5 「竪琴と葦笛」
6 「伝説と予感」

 

 

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1939.もいちどベートーヴェン

2020年02月25日 | 音楽

  

もいちどベートーヴェン
読了日 2019/10/31
著 者 中山七里
出版社 宝島社
形 態 単行本
ページ数 306
発行日 2019/04/03
ISBN 978-4-8002-9321-3

 

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事用にExcelで簡単な表を作り、検索関数を使って表引きを設定、従来手書きとゴム印で作成していた配達先名簿を、簡易データベースを活用して、仕事の終了後データを入力(それまでは、事前に手書きをしていた)するように変更、大分時間と手間を省けるようになった。
その程度の事は若い頃なら―この若い頃というのは50歳くらいまでの事だ―それこそ簡単に作ったのだが、この頃は、関数の使い方はおろか、関連する関数のあることさえ忘れており、参考書を見ながらの作業となっている。
それは決して歳のせいではなく、普段そうした使い方をしていないからだとわかっている。だから関数の使い方一つをとっても、そうした具合で、ましてやVBAともなれば、また一から出直さなければならないほど忘れているだろう。
そんなこんなで、勘を取り戻すため、Officeアプリと真剣に取り組んでみようか思っている。

 

 

このミス大賞受賞作『さよならドビュッシー』のシリーズと言って良いだろう、『どこかでベートーヴェン』に続く第5作だ。猛烈と言えるほどの著作を世に送り出している、著者の作品の中でも特に好きなシリーズだ。
デビュー作で味わった強烈な印象は、物忘れのひどい僕でも、忘れることのできない読書体験だったことを覚えている。好きなシリーズ作品は、早く読みたいという気持ちが強くある。しかし、作者や出版社には申し訳ないが、その都度新刊を手にする余裕はなく、図書館を利用するか時を経て古書店で贖うしかないのだ。
10代から20代の初めは今よりずっと金銭的な事情は厳しかったのに、手に入れた本はほとんど新刊だったことを思えば、なぜだったのだろうと不思議な気がするが、そうして新刊を読むという間が今よりずっと、長かったからだろう。
出版事情が厳しくなっているとはいえ、ミステリーだけをとっても、今と昔とでは出版される量が桁違いだろう。一読者にとっては嬉しくもあり悩ましくもある、複雑な心境だ。

 

 

学中に司法試験に合格しながら、ピアニストへの道を選んだ岬洋介の、たぐいまれな推理力によって、事件解明への展開を描くというと簡単だが、ストーリーはそれほど簡単なものではない。

こういうストーリーを読むにつけ、僕は作家の行きつくところを知らぬ、豊かな想像力や知的な感性に驚きを覚えるのだ。音楽というとらえどころのないような(いや、それは僕という素人の想いなのだが)ものを、まるで音を響かせるような表現で、書き表すことが出来るのは、それこそが才能なのだろう。

前に読んだ恩田陸氏の『蜜蜂と遠雷』にしても、あるいは『羊と鋼の森』(宮下奈都著)にしても、同様に文字にすることの難しい内容を、多くの読者の共感を誘うがごとくの、豊かな表現力を駆使して魅力的な作品に仕上げている。
何の才も持たない僕などが云々することは適当ではないが、一読者としてはそうした作品を次々と読める幸せを、これからも満喫したいと思うばかりだ。

 


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1926.蜜蜂と遠雷

2019年09月12日 | 音楽
蜜蜂と遠雷
読了日 2019/07/30
著 者 恩田陸
出版社 幻冬舎
形 態 単行本
ページ数 507
発行日 2016/09/20
ISBN 978-4-344-03003-9

 

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件もの予約が続いていたので、僕の番はもう少し先になるだろうと思っていたら、存外早く「予約の資料が用意できました」のメールが入った。このところ専ら図書館を利用していて、著者や出版社には申し訳ない気持ちもあるが、何しろ手許不如意も続いており、致し方なし。
原因はタイヤ交換他の、車の維持費の出費によるものだ。現役の頃は外回りも多い代わりに、車検を始めとして車両保険、燃料費など、車に関する費用はすべて会社持ちだったから、楽だった。
20年以上も前のことを言っても始まらないが、僕にとっての古き良き時代の話だ。

2017年度、第156回直木三十五賞、及び本屋大賞を受賞して、多くのファンの称賛を得た本書。
著者にとっても、またファンにしても長く待ちわびた直木賞の受賞で、中には何をいまさらという感じを持った人も少なくないのでは? だが、僕は本書を読み始めて、従来とは異なる恩田節といった感じを持った。

 

 

では正当恩田節とはいかなるものか? 僕はデビュー作の「六番目の小夜子」に続く、ファンタジックな流れが、それだと思ってきたのだ。一部のファンは恩田氏の作品は分かりにくいという人もいるようだが、僕はそうした分かりにくいと感ずる作品も、それはそれで恩田氏独特の作風だと思っている。

そういえば、本屋大賞は第2回にも「夜のピクニック」で受賞しており、書店員が大挙して推すところを見れば、多くのファンが恩田作品を読んでいる証拠でもある。
僕も今までに、恩田作品は28冊も読んでおり、本書で29冊目となるが、特に好きなのは『遠野物語』に準じたというか、現代に移し替えたようなシリーズが好きだ。「光の帝国 常野物語」、「月の裏側」、「蒲公英 タンポポ草紙」、「エンドゲーム 常野物語」などを魅力的に感じている。

 

 

て、本書は若き天才ピアニストたちの、コンサートの模様を描くストーリーだ。コンサートを勝ち抜くための努力や、彼らの演奏の素晴らしさと、行間から音が飛び出しているかのような、描写が感動を呼び起こした作品は、2012年に読んだ中山七里氏の、『さよならドビュッシー』ですでに味わっているが、この作品では少し趣の違った、一流ピアニストを目指す天才たちの、コンサート演奏が繰り広げられて、迫力のある描写が繰り広げられる。
3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。「ここを制した者は世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝する」と言われているジンクスがあり近年、覇者である新たな才能の出現は音楽界の事件となっていた。
今回の出場者の中でも、養蜂家の父とともに各地を転々とし自宅にピアノを持たない少年・風間塵15歳についての演奏と、その描写の生々しさは驚異的ともいえる印象を与える。
だが、唯一この作品で惜しまれるところは、この少年の活躍について中途半端で終始しているところなのだ。読者としては、もう少し世界の一流音楽家の指導や、彼が認めた天才のいかに技術を習得したか、と言ったことも知りたいところだ。

 

 

台風の自然災害に関する記述で、僕は毎回被害のないわが千葉県の良さを吹聴してきた。ところが長い間の付けが回ってきたかのような、甚大な被害が停電という恐ろしい形で、今もなお続いている。
我が家も、これは僕のうっかりミスの結果なのだが、二階の僕の部屋の窓ガラスが割れるという被害があった。夜中に「バリンッ!」という大きな音とともに、窓ガラスが寝ている僕の胸に向かって飛んできた。幸いかけていたタオルケットの上に、平らな状態で落ちたので怪我はなかったが、危ないところだった。
雨戸を閉めておけばどうということはなかったのだが、前述のように僕の閉めたという思い込みが、小さな被害に及んだというだけだが、ひとつ間違えば重大なことになりかねなかった。僕の住む真舟地区は高台で水の被害もなく、さらに停電も免れている。
今日も台風一過の晴天に、被災者には申し訳ないが、よかったという思いでいっぱいだ。

 

 

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1624.シューマンの指

2016年05月06日 | 音楽
シューマンの指
読了日 2016/05/06
著 者 奥泉光
出版社 講談社
形 態 文庫
ページ数 365
発行日 2012/10/16
ISBN 978-4-06-277385-0

 

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津市の生活介護施設「太陽(ひ)のしずく」で5月1日、天羽支部会が行われた。天羽支部会と言うのは、社会福祉法人薄光会が運営する「ケアホームCOCO」を利用する障害者の保護者・家族の会の名称で、もともとは入所施設・豊岡光生園の保護者・家族の会に所属していた人たちだが、昨年4月に分割されたものだ。
早いもので天羽支部会が結成されて1年が過ぎた。独自の活動をしようと言う鈴木支部長の案で、僕は会報作りをすることになって、今回で4号を作成・配布した。会報作りは、回を重ねるたびにだんだん難しくなっていくが、長年法人の役員の一端を担っていたことから、保護者と施設職員、あるいは法人組織等の仕組みなどを理解してもらえる、コミュニケーションツールとなるよう努力している。

 

 

法人組織は規模が大きくなるにつれ、組織内のコミュニケーションでさえ見通しが悪くなる傾向にあるから、せめて、保護者・家族の会と利用施設との間は、円滑な交流を目指したいと願うからである。

そんなことから、3日憲法記念日には富津市の新舞子海岸で行われたイヴェントに、「太陽(ひ)のしずく」が参加するということで、取材―と言うほどのことではないが―に行ってきた。小さな団体の主催する手作りのイヴェントは、結構な数の人たちが集まって、にぎわっていた。
我らが「太陽(ひ)のしずく」からの参加は、「にこちゃん喫茶」というソフトドリンクと手作り雑貨を提供するコーナーで、そこそこのお客さんからの注文を受けていた。僕は何枚かの写真を撮って早々に失礼したが、小さな集まりなのでケアホームの利用者が大勢参加することは無理なことが分かり、ちょっと残念な気もしたのである。
そんなこんなでブログへのアップデートが大分遅れた。

 

 

講談社から2010年にこの作品の単行本が刊行されたとき、テレビの書評番組(番組名は覚えていない)で紹介されたのを見て、記憶の片隅に残っていた。そんなことでBOOKOFFの100円の文庫棚でこの文庫を見かけて買ったものだと思う。
少し前のことでもどうでもいいことはすぐ忘れてしまうから、いやいやどうでもいいことばかりでなく、僕の頭は肝心なことでさえ時々忘れる。
半分は歳のせいにしているが、聞くところによれば忘れっぽいのは、加齢とは関係ないことだそうだ。つまり忘れないための努力をしていないからだそうだ。そんなことを言ったって、忘れないための努力はどうすればいいのかも分からないから、仕方がないのだ。
高校生の頃英単語をカードに書いて、一生懸命覚えたころの努力を、今更したくないという気持ちもどこかにあって、あえて忘れないための努力を怠っているのだ。だから、時折テレビで見るピアニストやヴァイオリニストが、難しく長い楽曲を空で難なく弾きこなす様を見ていると、こういう人達は違う人種だと思えてしまうのだ。

 

 

僕も20代前半の頃、アコースティックギターを習い始めて、まだまだ若かったその頃は今よりはずっと物覚えも良かったから、それほど難しくない曲は楽譜を見て弾けるようになった。小学生の頃同級生の指導で、バイエルの後半まで行ったから、同時に譜面を読むことを覚えた。ずいぶん昔のことだが、ギターを始めてそんなことも思い出して、どうやら譜面通りに指を動かすことも抵抗がなかったのだろう。
だが、数年前にギターを弾こうと思ったら、なんとチューニングの仕方も全く覚えていないことに気づいた。
覚えるのは簡単ではないが、忘れるのはいとも簡単に忘れてしまうものだと、愕然としたものだった。
いや、どうでもいいことを長々書いたが、僕はそれほど音楽と無関係ではなかったことを言いたかっただけのことだ。そんなことで、今では専ら音楽は聞くだけにとどまっているが、音楽なしでは夜も日も明けずと言った頃もあったことが、懐かしい。

 

 

書を読み始めて、中山七里氏の「さよならドビュッシー」を読んだ時の感動とは、また趣の異なった感動を覚える。こちらはタイトルからも想像できるように、ドイツ・ロマン派を代表するローベルト・アレクサンダー・シューマンの生涯を描いた作品、ではなくそのシューマンに傾倒する若き天才ピアニスト永嶺修人(まさと)と、その先輩にあたる語り手・里橋優の交流を描いた物語だ。
と、途中まで疑いもなく思っていたら、なんと・・・・その先はネタバレになるから書けないが、シューマンに関する精緻を極めた解説―里橋と永嶺の会話による―にどんな結末が待っているのかと言う期待に、そうした音楽論議に多少の辟易を覚えながらも、よくもこれほどの解説や会話を紡いだものだと、関心もしながら読み進めた。
しかし、ようやく半ばに至って、突然発生する殺人事件が、それまでの音楽論議から一変して、ミステリーへと変遷するのだ。

 

 

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1436.女神のタクト

2014年02月10日 | 音楽
女神のタクト
読 了 日 2014/01/31
著  者 塩田武士
出 版 社 講談社
形  態 単行本
ページ数 280
発 行 日 2011/10/26
ISBN 978-4-06-217322-3

 

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近テレビの書評番組で知った著者とその作品は、「崩壊」というタイトルだったが、生憎木更津市の図書館には蔵書がなく、「捜査官」、「盤上のアルファ」、「女神のタクト」と並んだ棚から、本書を選んで借りてきた。タイトルと表紙イラストからミュージック・ストーリーと言うことに興味があったからだ。
ミュージック・ストーリーと言えばまだ読後の興奮を思い浮かべることのできる、中山七里氏の2作品「さよならドビュッシー」、「おやすみラフマニノフ」がある。その行間から音があふれ出すような、圧倒的な演奏の描写が胸を高鳴らせた。ということなどはさておき、そうでないとまた長々とわき道に逸れそうだ。

古書店めぐりを控えて図書館通いをするようになって10日ほどが過ぎ、その間4冊ほど借りて詠んだ。読書ノートの後ろの方に、メモしてある気になるタイトルを少しずつ消化しているところだ。
木更津市の図書館にないものもあるが、そうした本は大抵は君津市か袖ヶ浦市の図書館にあり、またそちらの方にも足を伸ばそうと考えている。サラリーマン現役の頃は、会社が千葉市にあったものだから、近くの県立中央図書館をよく利用していた。
だいぶ前のことになるが、刑事コロンボに関する資料を探していた折(昭和61年~62年頃)は、NHKで放送されていた当時の映画雑誌などを見るため、国立国会図書館にまで出かけていったことがあった。

 

 

折角軌道修正したのにまた、少し横道に逸れてるが、ちょっとだけ・・・。 その当時は今のようにまさかHDリマスター版の刑事コロンボが全作放送されるなど、思いもよらないことだったから、昭和49年から56年にかけてNHKの放送をビデオ録画した人を探して、テレビ雑誌に投稿したりしていた。まだまだその頃はビデオ機器も一般的ではなかったし、録画した人が僕の投稿を見ることも少なかったようで、数本しか入手できなかった。
それでも北海道札幌市に在住の吉川さんという方から連絡をいただき、ソニーのβテープで録画したものを数本ダビングしてもらったものを(これは違反なのだがもう時効ということで)、何度も繰り返し見たものだ。
それが縁で、この方とは今も年賀状のやり取りを続けている。

他のエピソードはもう二度と見ることはできないのではないかと言う思いで、夢中だったことが今となってはほろ苦くも懐かしい。
そうした環境の中、映像を見ることができないなら、せめても当時の雑誌の記事でもいいから探して集めよう、などという涙ぐましい努力を重ねた末に、国会図書館にまで足を運ぶことになったのだ。初めて訪れた国立国会図書館は広く大勢の人でにぎわい、上の階には食堂などもあり、1日いても飽きないほどだった。
30数年前のことである。
今は古書であろうと、欲しい資料やデータなども、大概のものはネットで調べて、入手することもできて便利な世の中になった。当時の苦労は滑稽とさえ思える時代になった。

 

 

の作品は裸一貫で起こした稼業を、大企業にまで発展させたオーナー・白石麟太郎が、今は亡き妻のために結成したオーケストラ、「神戸オルケストラ」の再生を期して、たまたま出会った矢吹明菜に、世界的な名声を博す指揮者・一宮拓斗を連れてくるよう依頼する。
そんなところからストーリーは始まるのだが、この矢吹明菜も三十路を間近に控えて、職と男とを同時に亡くしたばかりで、傷心?の旅の途中でたまたま下車した町の海岸で、白石老人と出会ったのだった。
成功報酬をもらえると言うことに心を奪われて、彼女は目的の人物がいると言う京都に向かうのだ、が・・・。
第一章の章タイトルの「その女、凶暴につき」と、何処かで見たようなそのタイトルに見合った、すぐに手の方が出る、という怖いお嬢さん?三十路間近だからお嬢さんでもないか。

まったく音楽とはかかわりのなかった矢吹明菜が、無事一宮拓斗を神戸オルケストラの指揮者にすえることが出来るのか?そして、神戸オルケストラの再生を図ることができるのか?
一癖も二癖もあるような楽団員や事務局員を向こうにまわして、暴力女・矢吹明菜の奮闘が始まる。

 

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1366.いつまでもショパン

2013年07月12日 | 音楽
いつまでもショパン
読 了 日 2013/07/05
著  者 中山七里
出 版 社 宝島社
形  態 単行本
ページ数 325
発 行 日 2013/01/24
I S B N 978-4-8002-0551-3

 

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頃、僕の病気かとも思える買い物症候群が頭をもたげて、そっちこっちから単行本、文庫本の新刊を買いあさって、なお飽き足らずにBOOKOFFへいって中古本をあさる始末だ。
と言ったって収入があるわけでもないのにどうやってそんなに本が買えるのかと言えば、一つはありがたいことに、ヨドバシカメラが本を扱うようになったから、溜まったポイントで本が買えるようになったこと。
もう一つは、5月に行われたNPO法人の総会で頼まれて議長を務めた謝礼にと、GIFT件をもらったのだ。
こんなことはそうそうあることではないが、こんなときでもないとなかなか新刊本なんて手に入れる機会はない。
そうして手に入れた新刊はできるだけ早いうちに読んで、積読を増やさないようにしないと。
早速1冊目を読む。「このミス大賞」を受賞した「さよならドビュッシー」のシリーズ3作目だ。
前作「おやすみラフマニノフ」の文庫で解説を書いた音楽家の仲道郁代氏が監修に当たっている。もしかしたら前作で作品にほれ込んだ仲道氏が自ら申し出たのだろうか?そんなことはねえか!
と言うようなことを考えるのも、前作の解説で、仲道女史は本職の音楽家の目にも、すばらしい音楽表現がどんな人物なのだろうと、思わせていることからもしかしたら、中山氏に合って話をしたのだろうかと、想像したのである。

 

 

どんな人物かと言うことなら、先だってBSイレブンの「宮崎美子のすずらん本屋堂」に、当の中山七里氏がゲストとして出演、新作「切り裂きジャックの告白」について、MC宮崎女史からのインタビューにいろいろと答えていた。
にこやかに答えるその口からはなんと衝撃的な話が飛び出した。
先述のごとく本職のピアニストを驚かすような、演奏の描写、まるでページから音が飛び出してくるような表現を読めば、誰だってクラシック音楽に精通している人だろうと、素人の僕でさえ思う。ところがあにはからんや、話を聞けば音楽とはまるで関わりのない生活を送ってきたと言うことなのだ。
全部想像が生んだ産物だと言うのである。何てことだ。さらには、今まで書いた作品はすべて出版社の編集者の注文により書いただけだと言うのだ。まさにプロの職人と言った感じだ。
彼の話を聞いてびっくり仰天と言ったMC宮崎美子氏だったが、見ているこっちだって同様だ。しかし、中山氏はプロの作家として、いろいろな出版社からのオファーに備えるべく、「このミステリーがすごい!」大賞受賞以前から周到な計画を練っていたようで、その後の執筆活動は「出版社の編集者の注文」どおりということながら、それに応えられるだけの準備がしてあり、今風の言葉で言えばすべて「想定内」のことだったようだ。
そんな事柄を気負いもなく、淡々と話す中山七里恐るべし。

高々1年半足らずの間に、本書で8冊目となる読書量も、どれもが期待を裏切ることのないエンタテインメントであることが、著者の話でなるほどと至極当然に思えるのだ。

 

 

アニストで音大の講師も勤める名探偵・岬洋介のシリーズ第3弾である。
今回は彼自身もエントリーするピアノ・コンクールが行われるショパンの祖国ポーランドが舞台だ。クラシック音楽に詳しいものなら、ピアノの詩人と言われるショパンが、戦火によって生涯戻ることがかなわなかった祖国への望郷の想いを持って、数々の曲をつくったことは誰でもが知っていることだ。
そんなショパンへの想いはポーランド人にとって特別なものがあるようだ。世界各国からエントリーした未来のピアニストたちによって、争われるショパン・コンクールの会場で、殺人事件が発生する。
さらには、「ピアニスト」というコードネームを持つテロリストが暗躍する。しかしそんな中でも主催国ポーランドにとって特別なイベントである、ショパン・コンクールは続行されるのだが・・・・。

コンクールには、日本からも岬洋介と、盲目のピアニスト・榊場隆平の2名がエントリーしている。
辻井伸行氏をモデルにしたような人物や、岬洋介のピアノがコンクールでどのような結果を示すのか、と言う興味も惹きながら最終予選までの、波乱含みの展開は前2作に勝るとも劣らず、胸を打つ終末を迎える。

 

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1288.おやすみラフマニノフ

2012年09月04日 | 音楽

おやすみラフマニノフ

おやすみラフマニノフ
読 了 日 2012/09/02
著  者 中山七里
出 版 社 宝島社
形  態 文庫
ページ数 372
発 行 日 2011/09/20
I S B N 978-4-7966-8582-5

 

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者の「さよならドビュッシー」を読んだ後、同様の音楽ミステリーである本書を続けて読みたいという思いを持つ自分を、どうやらなだめすかして、(そんなことをする必要もないのに…)楽しみを後回しにしていた。
とにかく素人の僕でさえ、音楽関係の人なのかしら?と思わせるほどのクラシック音楽に通じて、そればかりでなくその業界にも詳しくて、本書の解説を書いているピアニストの仲道郁代氏でなくても、中山七里とは何者?といった感じを持たせるのだ。
とにかくオーケストラの音があふれ出てくるような描写は、サスペンス小説そこのけの迫力でインパクトを与える。前作で名探偵ぶりを発揮した岬洋介が今回も登場するから、これはシリーズと言ってもいいだろう。
ということはこの先も続編が登場する可能性があるということか?出るといいな。
こんな小説を読んでいる時が、一番の幸せを感じる時だ。

 

 

今回巻末で解説を書いている仲道郁代さんは、世界的なピアニストでずっと前に(2年くらい前だったか?)、NHKBSのハイビジョン特集「仲道郁代 ショパンのミステリー」という番組では、彼の地を訪れてショパンの愛用したピアノを弾くなどの姿を見せていた。
古くは?中村紘子氏の例を取るまでもなく、わが国の女性ピアニストには別嬪さんが多いね。(失礼、最近はこの程度の発言もセクシャルハラスメントと取られかねないから、気をつけないと)
プロの音楽家を唸らせるほどの内容は、全く素晴らしく、多少でもクラシック音楽に興味のある人ならなおさらだろう。

前作に続いて今回もロシアの誇る作曲家・セルゲイ・ラフマニノフの名を冠したタイトルが、前の興奮を思い起こさせて、読む前から期待に胸が高鳴る。今回は語り手でもある、城戸晶という愛知音大に通う青年がヴァイオリニストを目指すストーリーだ。

 

 

ころがその愛知音大でとんでもない事件が持ち上がったのだ。金庫室とも呼ばれている楽器の収納室から、チェロが盗まれるという事態が発生した。ただのチェロではない、時価2億円のストラディバリウスなのだ。
楽器収納室には警備員もついており、温度・湿度の管理上部屋には窓が一つもなく、確実に施錠もされていたから、現場は完全な密室だった。一体どうやって犯人は盗み出すことが出来たのだろう? 発見者は音大の学長であり世界的なピアニストでもある柘植彰良の孫娘、柘植初音である。彼女もここでチェリストを目指している音大生だ。
冒頭の愛知芸術劇場で、聴衆の城戸や柘植初音を圧倒するピアノの腕前を披露するのは、音大の臨時講師を務める岬洋介。チェロ紛失事件を追うとともに、毎年、年1回行われる愛知音大定期演奏会のメンバーを選出するオーディションが行われる。今年の演目はラフマニノフのピアノ協奏曲第二番、ピアノはもちろん柘植彰良学長である。オーディションにより先行される楽団員は合計55名。

当然のことながら、城戸晶もそれに向かって挑戦するのだが、目指すのはコンマス(第一ヴァイオリンのコンサートマスター)である。家庭の事情で、実家からの仕送りが跡絶え、半期分の学費が未納の身としては、ぜひともコンマスの座を射止めて、学費免除を勝ち取るしかないのだ。
しかしながらコンマスを目指すには大きな障壁が存在した。
そんな中で、第二の事件が発生する。柘植学長専用のスタンウェイのピアノが破壊されたのだ。チェロ盗難事件と同一犯人の仕業か?

普段あまり書かないストーリー解説をつい興奮のあまり長々書いてしまった。僕の下手な解説を読むより、興味のある方は是非とも本を読んでいただきたい。僕の興奮の度合いがわかるというものだ。

 

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1251.さよならドビュッシー

2012年05月16日 | 音楽
さよならドビュッシー
読 了 日 2012/05/11
著  者 中山七里
出 版 社 宝島社
形  態 文庫
ページ数 415
発 行 日 2011/01/26
I S B N 978-4-7966-7992-3

 

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めて読んだ著者の「要介護探偵の事件簿」で、主人公である香月老人のキャラクターに惚れ込んで、その前に登場するという作品ということなので、本書はずっと読みたいと思っていた。
こんな風な読み方をしていると、時間と金がいくらあっても足りないと思うが、と言って僕の欲望は簡単に改まるわけでもなく、困ったものだ。しかし、時間の方は何とかなるにしても(それだってふんだんにあるわけではない)、いくら欲張っても金の方は天から降ってくるわけでもないから、どうにもならない。世の中はうまく出来てる。いやいや、世の中ままならない、の間違い。
なんだかんだでようやく手に入れた本書を読み始めて、いきなり現れたお目当ての香月老人は、大声を上げて威勢のいいところを見せたと思ったら、住まいの離れが火事になって、あっさりと死んでしまうのだ。

 

 

香月老人はここではあくまで脇役だったのだ。本編の主役はピアニストを目指す香月遥、香月玄太郎老人の孫である。香月玄太郎老人には玲子という娘がいたのだが、片桐と一緒になってすぐにインドネシアに引っ越して、帰化までしてしまったのだ。ところが、例のインドネシアを襲った地震による巨大津波は、一人娘のルシアを残して夫妻をさらってしまった。
香月家には玄太郎老人の長男夫婦とその娘遥、そして次男が暮らしており、ルシアはそこに引き取られることになった。遥といとこ同士になるルシアとは、同い年できょうだい同様に暮らし始めたのだが、たまたま火事になったその時、離れには遥とルシアもいて、いとこ同士のうちの一人だけが九死に一生を得たのだ。

生き残った遥は、香月家の財力と優秀な形成外科の医師によって、普通なら助からない火傷を負った身体を、復旧された。そこから、香月遥のピアニストへと向かっての、不断の努力が始まるのだが・・・・。

 

 

の物語の凄いところは、まるでピアノの音があふれ出てくるような、演奏の描写である。遥にスパルタ的なピアノレッスンを行う家庭教師・岬洋介の魅力的なキャラクターも加えて、音楽への情熱が語られる。この岬洋介なる人物は、著名な検事を父に持ち、自身も司法試験に優秀な成績を以て合格しているのだが、それをけってピアニストになったという、変わり種だ。
しかし、それだけではなく・・・・・。いや、それ以上は興をそぐことになるから、やめておこう。

こういうストーリーを読んでいると、著者は出るべくして世に出たとか、取るべくして賞を獲ったのだと思わざるを得ない。読後しばらく興奮状態が消えなかった。この後の音楽ミステリー作品「おやすみラフマニノフ」も読みたいものだ。

 

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0223.殺意の演奏

2002年06月05日 | 音楽
殺意の演奏
読 了 日 2002/06/05
著  者 大谷羊太郎
出 版 社 講談社
形  態 文庫
ページ数 299
発 行 日 1979/06/29
書籍ID 0193-360221-2253(0)

 

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学時代アルバイトで楽団のギター奏者をして、その後、芸能プロデューサーとなり歌手を連れて全国を廻った、という珍しい経歴の著者が4度目にして成し遂げた江戸川乱歩賞受賞作(昭和45年、第16回)である。
経験を生かした音楽シーンや、事件解決に至るプロセスに工夫を凝らした力作。
巻頭の著者によるモノロ-グで、上田敏の訳詩集「海潮音」の序文にヒントを得て作品に活かそうと思った旨を書いているが、作者の試みは見事に実を結んでいる、と思われる。

芸能ショーの司会者・細井道夫が内鍵のかかった密室状態の部屋で、ガス中毒死した。机に遺書らしい暗号で書かれた日記が残されており、解読した捜査当局は自殺と断定、捜査を打ち切る。 ところが後日細井の弟・杉山真二は暗号に別の解釈のあることに気づく。事件は複雑な様相を示し始める。

 

 

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