隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1213.Q.O.L.

2011年12月26日 | ハードボイルド
Q.O.L.
読 了 日 2011/11/25
著  者 小路幸也
出 版 社 集英社
形  態 単行本
ページ数 285
発 行 :日 2004/08/30
ISBN 978-4-08-775337-9

 

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月6日に袖ケ浦市立図書館で借りてきた。前に読んだ東京バンドワゴンの第6作「オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ」の巻末の広告ページに載っていた本だ。
東京バンドワゴンともかかわりのある旨が書いてあった?ので、後で読もうと思い木更津図書館を検索したら残念ながらなかったので、袖ケ浦市まで赴いたのだ。だが、おしまいまで読んでもどこが東京バンドワゴンと関係があるのかさっぱりわからない。しかし物語そのものは面白く読めたから、まあ、いいとしよう。
袖ケ浦図書館は、木更津から旧国道16号線を通って、15分くらい千葉方面に向かって走ると右側にちょっと入ったところに位置している。
袖ケ浦市は君津地区の中でも1番新しい市で、市原市から続く海浜工業地帯を有する新興都市だ。それだけに図書館の活動も活発に行っており、市民の期待も高まっているようだ。そこへ行くと、わが木更津市は袖ケ浦、君津に次いで3番手のようで、こと文化方面において後れを取っているようで心もとない。
家のカミさんに言わせると木更津市は遅れているという。

 

 

そういえば君津市民会館では、音楽や演劇などのイベントが盛んに行われている。何年か前にカミさんに誘われて、「アルフレッド・ハウゼ楽団」の公演に行ったこともあったナ。 まあ、それはともかく図書館の蔵書もそれぞれ個性があるのだろうが、たぶん蔵書数においても君津や、袖ケ浦の方が多いだろうと思われる。近くだから、僕は両方の図書館を便利に利用させてもらっているのだが。

さて、本書はアメリカ映画を思わせるような3人の若者?の物語だ。海辺で出会った3人の若者男女が一緒に暮らすようになるスタートから、スピーディーな展開を示す。
二人の男はかつて高校時代に剣道の試合で戦った良きライバルの三崎龍哉と酒井光平だった。三崎は海の家で見事なまでにおいしそうな食べっぷりを示す若い女性・千田くるみの、その食べる姿に見とれていた。そうした三崎をまた遠くから見ていた酒井光平は剣道で戦った相手だと気付いて話しかける。こんな風にして出会った3人だが、父親が残したという葉山の別荘だった屋敷に、三崎は二人に一緒暮らさないかと提案するのだった。

 

 

三崎の北海道行きに、千田くるみと酒井光平は同行を頼み込むのだが。二人にはそれぞれ目的があった。
その辺から話は穏やかだった3人の日常から一転することになっていくのだが、何ということのない青春物語がミステリアスな方向に向かっていくところがクライマックスだ。

 

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1212.ギフト

2011年12月20日 | 短編集
ギフト
読 了 日 2011/11/21
著  者 日月恩
出 版 社 双葉社
形  態 単行本
ページ数 348
発 行 日 2008/06/25
ISBN 978-4-575-23619-4

 

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ったままかなりの間積ン読になっていた本だ。なんということなしに後回しになったが、僕は初めて読んだ著者の「それでも、警官は微笑う」でファンになり、その後2冊ほど読み、いずれも好みに合って面白く読めたにもかかわらず、ご無沙汰してしまった。
読む本に迷うほど次から次へと新作も出るし、、かといって毎回新作を買うほどの余裕はないのだが、ぜひ読んでおきたい古い作品もたくさんあって、時間はいくらあっても足りない、
そんな状態でありながら、僕は時々読書以外のことにも手を出して、手を出したからには精も出してしまうので困ったものだ。今は(12月20日現在)役員を務めている福祉施設・豊岡光生園が老朽化に伴う改築の計画があって、来期、平成24年度に着工の予定が立っている。
そのためのプロジェクトチームの活動経緯などを理事会をはじめとした会合での発表に、プレゼンソフトを使うことから、そのお手伝いをしているところだ。

 

 

話が横道にそれたがもう少し脇道の話を続けよう。 マイクロソフトのオフィスソフトが2010となって、プレゼンソフトのパワーポイントもいくつか新しい機能も備わって、使い勝手も良くなった。僕も年に1回年度初めの理事会において、監事監査の報告に使っており、その便利さを活用しているが、今回施設のお手伝いをしている中で、面白いことをいくつか見つけた。
その一つは、アニメーション機能の中で、自作のアニメーションを作ることが出来るということだった。ちょっとしたテクニックと根気が必要だが、使いようによっては面白くインパクトのあるプレゼンが可能だ。ただし、自分でイラストなりを用意しなくてはならないのが玉にきずだが、そうしたことのできる人なら割合簡単にアニメが出来るだろう。
パワーポイントのアニメーション機能は、その種類の多さに驚くほどだ。オブジェクトの軌跡によって動かすことが出来るのは、前から有った機能だが特にその中でも、ユーザー設定パスというのがあって、奇跡を自分で設定できるところが面白い。

 

 

ソコンを使っていて、僕も「もう少し若かったなら・・・」などと考えるほど最近は、記憶力も集中力を衰えてきているが、まだまだ新しいことが次々と出てきて、覚えたいことは山ほどあるので、もどかしい思いをしている。
はてさて、きりがないから、この辺で肝心の本の藩士を少ししておこう。
下の収録作でわかるように本書は連作短編集だ。初めの2編を読んでファンタジイという感じだったが、読み進むうちにジャンルはともかくとして、次第に引き込まれていく。
過去に心に傷を負った元刑事と、あの世に行けずこの世に彷徨っている死者が見えてしまうという少年の二人が主人公である。レンタルショップでアルバイトをしている中年男が、ある時ホラービデオの前で涙を流す少年を見つけたことから、ストーリーは始まる。
少年の手に触れたときだけ、男にも死者が見えた。そして二人はその死者がこの世にさまよっている原因を見つけて、解決するということに関わっていくのだった。結果としてあの世に行けない死者を助けることにつながっていくのだが…。そして、涙なしには語れないラストにつながっていく。

 

収録作
# タイトル
1 とおりゃんせ
2 秋の桜
3 氷室の館
4 自惚れ鏡
5 サッド・バケイションズ・エンド

 

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1211.少年被疑者

2011年12月17日 | リーガル
少年被疑者
読 了 日 2011/11/18
著  者 松木麗
出 版 社 学陽出版
形  態 単行本
ページ数 210
発 行 :日 1997/08/01
ISBN 4-313-85111-9

 

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はなんとなくこの作者が好きだった。もちろん作品の方だ。女性検事の物語をもっと書いてほしかった、と思うのは僕だけではないだろうが、検事の職よりも政治家の方への関心が強かったのだろうな。残念!
著者の作品を読むのは多分これが(本書)が最後になるだろう。作家デビュー作の横溝正史賞受賞作「恋文」は、ドラマの方を先に見て、好きな女優さん(池上季美子氏)が主演だったこともあって印象に残り、原作を読みたいと思いながら、なかなか古書店で見つけられなかったことがずいぶん昔のことのように感じられる。
言い古された言葉だが、月日の経つのは早い。歳をとるとあっという間の一年だ。あまり聞いたことのない出版社からの刊行である本書を見ていて、作家と出版社の関係はどうなっているのだろう、などという思いがわく。テレビドラマなどでは、出版社の編集者が作家の許へ原稿を依頼に訪れる場面がよく見られるのだが、実際もそうなのだろうか?

 

 

あまり馴染みのない出版社の名前に出会うと、ふとそんなことを考えてしまう。
さて本書はタイトルが示す通り、少年犯罪を描いたストーリーで、想像できる通りの展開を示し、なんらミステリーとしての仕掛けはないものの、どういう結末を迎えるのだろうという興味は最後まで続く。
その点だけをとらえたら、ちょっと物足りない感じもするのだが、全体を見れば読み応えのある人間ドラマが描かれて、重厚な作品となっている。多分、こうした物語は多くの読者を獲得する、ということにはつながらないだろうとは想像する。
題材そのものは決して地味だとは思えないが、今の世では残念ながら決して珍しいことではなくなってしまった少年犯罪は、次第に凶悪な事件も増えて、時代の動向だとは思いたくない、が・・・・・。

 

 

性検事の丹念な仕事ぶりと、真相究明にあきらめない調査が、周囲の思い込みとは少しずつ異なる状況を示していく様が検事への共感を抱かせる。しかし、巻末の著者のあとがきによれば、「恋文」で据えた女性弁護士の主人公と、著者自身が「重ね合わせて見られることに辟易した」とあるが、それは仕方のないことだろう。
著者に限らず小説の中の人物が著者の分身のように見られるのは世の常で、僕などは決して悪いことではないと思うのだが、感じ方は人それぞれなのだな。
ところで先に僕が疑問を呈した、出版社からの依頼で作家が書くのだろうか?ということについて、巻末で著者の記述があった。この作品は出版社からのたっての依頼で、その女性検事を主人公としたシリーズの第1作として書いたもののようだ。知る限りではその後シリーズの第2作以降が書かれたということはないみたいだ。2作、3作も読みたかったな、重ねて残念!

 

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1210.東京バンドワゴン オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ

2011年12月14日 | ホームドラマ
オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ
東京バンドワゴン
読 了 日 2011/11/16
著  者 小路幸也
出 版 社 集英社
形  態 単行本
ページ数 302
発 行 :日 2011/04/30
ISBN 978-4-08-775400-1

 

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5作の「オール・マイ・ラビング」と一緒に図書館で借りて読んでしまった。読んでしまった、という言い方はおかしいが、前にも書いたように最新作の本書はもう少し後で読もうかと思っていたのだが、幸か不幸か長いこと貸し出し中だったのが、第5作を借りようと図書館に寄った際に返ってきていたから、思わず2冊とも借りてきてしまったのだ。
それでも2冊続けて読みたいところを我慢して、間に1冊入れてから読んだ。
この続きが来年の4月末だそうだから、その近くになったら読もうと思っていたのだが、考えてみればその先はまた1年待つことになるのだ。僕のように遅れてきた読者は、それだって6作目までは待たずに読めたのだから、それだけでも十分満足すべきかもしれない。

 

 

おなじみの堀田サチによる前口上は、季節の移ろいなど織り込みながらの名調子で、下町の昔ながらの風情が語られて心地よい。毎回4つの連作に託して描かれる四季折々の堀田家の日常は、同じようでいながら変化に富んだ成り行きを見せる。
なんで僕はそんなに引き付けられるのだろうと、毎回思うのだがやはり個性的な人々の生活の中で感じられる、易しさとか我南人風に言えばLOVEなのかなあ。ここに登場する人たちは、欲がないというか物に執着しない、というところも好ましく思えるのか。 金さえ出せば何でも手に入る世の中で、堀田家にはエアコンもなければ、テレビだって1台しかなくて、たまに子供がみてるくらいなのだ。そういえば誰一人携帯電話も持っていないのではないだろうか。
それだって何不自由なく楽しく暮らせるのだが、一度手に入れた便利さや豊かさから人はなかなか抜け出せないものだ。しかし、本書を読んでいると、本当の豊かさとはなんだろうと考えさせられるのだ。

 

 

し話がずれるが、タイトルはこれも他の巻でも使われている、ビートルズのポール・マッカートニーの曲だ。
ナイジェリアの言葉で「人生は続く(英語でLife Goes On)」という意味だそうで、マッカートニーが作曲した際はそうした意味を込めて作ったようだ。しかし、聞くところによれば、ナイジェリアにはそんな言葉はないということらしい。
まあ、どっちでもいいのだが、本シリーズを読み続けてきて、毎回このタイトル込められたという“Life Goes On(人生は続く)”にふさわしい展開を見せて、本当にずっと続けてほしいという思いが強くなるのだ。
今回、収録作タイトルをメモしておかなかったことに気付かず、図書館に反してしまった。また後で、図書館で見たときに追加することにしよう。

 

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1209.第三の容疑者

2011年12月11日 | リーガル
第三の容疑者
読 了 日 2011/11/15
著  者 小杉健治
出 版 社 双葉社
形  態 文庫
ページ数 338
発 行 日 2010/07/18
ISBN 978-4-575-51366-0

 

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イトルにあるように沢木検事のシリーズで、しかもこれは第2作らしい。手当たり次第というような本の買い方をするから、シリーズものを途中から読むようなことは僕にとって珍しいことではない。
著者の作品も3冊目となった。前の2冊で複雑に絡み合った人物のドラマが、気の遠くなるような地道な調査で、それでも次第に解きほぐされていく様が、ミステリーの醍醐味を味あわせてくれた。
一つの裁判が終わってからさらにもう一つのドラマが始まるという展開にも驚きを感じさせて、以前ドラマ共々夢中になった「事件」シリーズ以来の裁判ドラマという感じさえ抱かせる。欧米の陪審員裁判とは異なった我が国の裁判の一味違った人間ドラマを見せてくれる。

 

 

一口に裁判ドラマと言っても、被告や容疑者の視点からのストーリーや、あるいは弁護士が主役となるもの、また、裁判官の視点から語られる物語といろいろある中で、本書はタイトルからも分かるように、検事が主人公だ。
しかしそう簡単に言ってしまえるほど単純ではなく、この作品でも著者はこれでもかというほどの複雑な展開を見せてくれる。

さて本書は、スナックを経営する堂本圭次郎が老夫婦殺害の容疑で、逮捕されたことから始まる。彼はかつて高校野球のエース投手だったことから、彼のファンだという二人の青年が彼の無実を信じ、弁護士への依頼をはじめとする救出に力を貸すことになった。二人の熱心な依頼によって弁護に立ち上がったのは、その実績から高く評価される新田弁護士だった。
一方、沢木検事は帰り道で見かけた男が公園で死体となって発見された事件と関わることになる。見かけた際に男の発した言葉が気になっていたが、それが後々に思わぬ展開を見せていくことになるのだ。
またもや、著者の描く裁判ストーリーは一筋縄ではいかない複雑な様相を示す。

 

 

冊読んで、著者の裁判ドラマは前作読まなければ、という気にさせられる。法律関係とは畑違いの分野からの出発をした作家なのに、多数の法廷ドラマを書いている著者の中で、どういう思いがあるのだろうか?
本職の弁護士や検事から作家への転業をした人は数多く、その経歴を生かしてこれまた数多くの傑作が世に出ているが。専門外の作家である小杉氏が多くの法廷小説をものにしていることに驚きを感じる。さらにはそのどれもが(僕はまだ3冊しか読んでないが)面白く読ませるということにも感嘆する。
しばらくは著者の法廷ドラマから目が離せなくなる。

 

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1208.東京バンドワゴン オール・マイ・ラビング

2011年12月08日 | ホームドラマ
オール・マイ・ラビング
東京バンドワゴン
読 了 日 2011/11/13
著  者 小路幸也
出 版 社 集英社
形  態 単行本
ページ数 301
発 行 :日 2010/04/30
ISBN 978-4-08-771350-3

 

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京バンドワゴンの5作目を図書館で借りてきた。来年(2012年)4月末に7作目が出るようなので、その近くまで待ってから5作目と6作目を読もうかとも思ったが、待ちきれずに借りてきてしまった。(この巻と次の第6作はまだ文庫になっていないから、図書館の単行本を借りることにしていた)
このシリーズは最初の東京バンドワゴンが発表された2006年から、1年1作の割で毎年発表されてきたということで、この第5作目は昨年(2010年)の発行となっている。実は本書と一緒に今年(2011年)の4月に出たばかりの第6作「オブ・ラ・ディ・オブ・ラダ」も借りてきたのだ。
少し前までは貸し出し中になっていたのだが11月12日に図書館に行ったら、返ってきていたのでつい嬉しくなって、2冊とも借りてきてしまった。しかし今(11月13日)本書を読み終わって、続けて読もうかどうしようかと迷っている。図書館への返還期限(11月26日)はまだ先だから1冊か2冊、間に入れて読むことにしよう。

 

 

このシリーズは毎回1年を四季に分けて物語が語られる形式となっている。そして、1作ごとに当然のことのように登場人物たちも一つずつ歳をとっていくのだ。なんだかその辺がリアルタイムで、一緒に暮らしているかのごとき錯覚を起こす。
このさわがしい楽園(これは1978年にTBS系列で放送された連続ドラマ「人間の証明」の挿入歌に使われた歌のタイトルでもある。ハスキーな歌手りりいさんの歌唱が素晴らしく、僕は今でも時々思い出したように聴いている)に身を置いている時が、僕の至福の時でもあるのだ。
毎度のことながら、巻頭は今は亡き堀田サチによる大家族・堀田家の紹介に始まる。10ページ足らずの中で、要領よく家族を一人ずつ簡単な略歴までも添えて、紹介しながら家族の成り立ちまでも語っていく。このイントロ部分を読んでいるだけで、堀田サチの暖かな目線を感じて、心を洗われるような気がしてくるのだ。

 

 

1作の「東京バンドワゴン」を図書館で借りて読んだ時には気付かなかったが、この第5作も図書館の本だがまだ新しいせいか、紫の立派な紐(この紐には名前があったが度忘れした)がついており、単行本も良いなと思い、一瞬単行本を揃えてみようかなどと不届きな考えがよぎる。「ぜいたくは敵だ!」なんてことが戦時中言われていたな。
もちろん、思うだけだ。そんな経済的な余裕はこれっぽっちもない。
昔読んだ本の中だったか、「あまり人を好きになりすぎてはいけませんよ。別れがつらくなるから。」というようなセリフがあった。ドラマだったかな?シリーズ作品に入れ込むのは、パトリシア・コーンウェル女史の「検屍官」以来か、このドラマが終わるときのことを考えただけでも寂しくなる近頃である。

 

収録作
# タイトル
あなたの笑顔は縁二つ
さよなら三角また会う日まで
背で泣いてる師走かな
オール・マイ・ラビング

 

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1207.わくらば日記

2011年12月05日 | 青春ミステリー
わくらば日記
読 了 日 2011/11/12
著  者 朱川湊人
出 版 社 角川書店
形  態 文庫
ページ数 317
発 行 日 2009/02/25
ISBN 978-4-04-373502-0

 

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の本はブログによくコメントを頂いていた“根無し草”さんから紹介された中の1冊だ。つい先達て読んだ「萩を揺らす雨」とか本書なども、紹介されなければおそらく読むことはなかっただろう。
僕はいい加減に目につく本を片っ端から読んでいるようだが、何というかそれなりに自分の感性に合った本を選んでいるようだ。
だから、たまにこうして人から紹介された本を読むと、また新しい本の世界に踏み入れたような感覚を覚える。本当は人に紹介されるまでもなく、自分でできるだけ広い分野の作品を開拓していけばいいのだが、一つは臆病なせいもあるのだろう。なかなか思うようには進まないものなのだ。
もう、この歳になると残された時間はそれほど豊富にあるわけではないから、自分が面白いと思う本だけを読んで行こう、という思いも一方にあるからだろう。

 

 

“根無し草”さんが僕にこの本を紹介したのは、僕が小路幸也氏の「東京バンドワゴン」シリーズに嵌っており、昭和の時代色が残る下町の風情に、懐旧の思いをブログに書いたことからだ、と思っている。
東京バンドワゴンに惹かれているのは、実はそれだけではないのだが、今となっては僕も昔人間(となるのだろうな)だから、自分の子供時代に有った向こう三軒両隣といったごく狭い地域社会の在り様と、そこに暮らす人々の優しさや(時には厳しさも)人情といったものも合わせて、心を癒されるような気になるのだ。
尤もその頃の僕はと言えば、そうした世界から早く抜け出せないかという気持ちが強かったのだが・・・・。

本書は昭和30年代のころに少女期を過ごした上条和歌子と、その姉・鈴音(りんね)の物語である。今は亡き姉の鈴音と過ごした時代の思い出を語るのが中年になった和歌子というのも、東京バンドワゴンにちょっと似たところだ。
病弱でいつも家の中で静かに本を読んでいる鈴音だったが、彼女にはたぐいまれな美貌の他に、特殊な能力が備わっていた。人が持っている過去の記憶を読み取ることが出来たのである。ふとしたことから和歌子は姉のそうした能力について知ることになる。
そして、町内の派出所の若い警官に、淡い恋心のようなものを感じた和歌子は、彼を助ける目的で鈴音の力を借りようとする。和歌子のたっての頼みで、鈴音は事件に関わることになるのだが・・・・。

 

 

殊な能力を持つ人物が登場するストーリーは、宮部みゆき氏の作品にもいくつかあって、ファンタスティックな物語を違和感なく読んできたから、本書にもスムーズに溶け込むことが出来たのだが、ここでも、鈴音の特殊な能力がメインテーマでなく、語り手の和歌子が過ごした遠い過去のエピソードが懐かしさを伴って語られるところにあり、読み手に感動を与えるのだろう。

 

初出(野生時代)
# タイトル 発行月・号
1 追憶の虹(「虹の追憶」改題) 2004年7月号
2 夏空への梯子(「夏空の梯子」改題) 2004年9月号
3 いつか夕陽の中で 2004年11月号
4 流星のまたたき 2005年1月号
5 春の悪魔 2005年4月号

 

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1206.黒の試走車

2011年12月02日 | 企業

 

黒の試走車
読 了 日 2011/11/10
著  者 梶山季之
出 版 社 角川書店
形  態 文庫
ページ数 398
発 行 :日 1973/10/30
分類番号 0193-136001-0946(1)

 

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末にある書評家・村上兵衛氏によれば、本書はは昭和37年の作品だそうだ。すると僕が以前読んだのはその年かあるいは1―2年後だったか、どのくらいのタイムラグがあったのか記憶にないが、後の「夢の超特急」などと梶山氏の小説に入れ込んでいた時期もあった。この作品は光文社のカッパノベルスで読んだような気がするが、例によって僕の記憶は定かでない。
当時僕の中では梶山氏の作品は黒岩重吾氏などと社会派といったような位置づけがなされていたようで、結構読んだという気がしているが、あまりあてにはならない。
この作品がヒットして大映で映画化もされた。人気俳優だった田宮二郎氏の主演で、このタイトルから黒のシリーズと銘打って先の「夢の超特急」も「黒の超特急」とタイトルが返られて映像化されたのではなかったかと思う。高度成長期に入る直前の時期で、国中に活気があふれていたような気がする。

 

 

当時、著者はトップ屋と呼ばれ週刊誌にトップ記事を売り込む、記者として知られていたが、著者は必ずしもそれを喜んではいなかったようだ。ある時、酒場で同席した扇谷正造氏にトップ屋と言われて、起こったというエピソードがあるくらいで、尤も扇谷氏が週刊誌の鬼と言われるようなジャーナリストだったこともあってのことだったのか、その辺のところは定かでない。
この作品のテーマの一つは、自動車メーカーの新車の開発競争だ。このころから国策の一環として庶民に手の届く大衆車が開発されていたのだと思う。トヨタ自動車のパブリカ(Public Carのもじりか)がその一つだったと記憶している。確か1000ドルカーなどと呼ばれていたのではなかったか。もちろんその頃は今のような円高ではなく、為替相場も固定相場で1ドルは360円だったから、36万円ということになる。
そして、もう一つのテーマはその頃流行語のように叫ばれていた産業スパイだ。
企業の秘密情報を盗んでほかの企業に売り込むという、産業スパイが暗躍していた時代でもあった。まさに自動車メーカーの新車開発に関するストーリーには、産業スパイというのは格好のテーマだったのだろう。

 

 

世紀も前となった時代の物語は、自動車の開発そのものは今も厳しい状況にあるのだろうが、経済状況もユーザーのニーズといった環境も全く違うから、当時のような興奮を呼ぶことは亡くなったが、それでも熾烈な競争の中の人間ドラマは読ませるものがある。 僕は何を勘違いしていたか、「夢の超特急」を再読したものとばかり思っていたが、記録をたどってみたら読んでないことが分かった。ちょっと納得できないのだが、読後すぐに書いている記録に誤りはないだろう、近々探して読むことにしよう。東海道新幹線が開通した昭和38年は僕が結婚した年で、翌年だったか僕はこだまだったが静岡まで仕事で初めて乗った時のことを思い出した。

 

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