隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0473.せどり男爵数奇譚

2004年01月30日 | 安楽椅子探偵
せどり男爵数奇譚
読 了 日  
著    者 梶山季之
出 版 社 筑摩書房
形  態 文庫
ページ数 307
発 行 日 2000/06/07
ISBN 4-480-03567-2

 

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ットで安楽椅子探偵譚を探していて見つけた1冊、なのだがかなりの間手に入らなかった。
ところが、探しているときはなかなか見つからないのに、手に入った途端他の文庫や単行本等いろいろと出てくるのだ。今更僕は稀覯本(きこうぼん)を集める気もないが本書はまるで、その内容と同様に稀覯本の様相を示しているかのようだ。
僕が今は亡き著者の本を最初に読んだのは、昭和38年頃に発表された「夢の超特急」だったと思う。
それまで読んだミステリーとは違う現実感を伴った内容に胸躍らせて読んだことを思い出す。話がわき道にそれたが、「夢の超特急」は翌昭和39年に大映で映画化されて大ヒットした。
その年に開通した東海道新幹線とあいまって話題沸騰となった。

 

 

さて、本書は麻雀(まあじゃん)の役をあしらったタイトルからなる連作で、下記のように6話が収録されている。
いずれも主人公・古書の業界で通称せどり男爵と呼ばれる笠井菊哉が古書の収集に際し遭遇する不可思議な事件の顛末が語られる。
「せどり」とはいろいろ説があるらしいが、古書市などで背文字を見ていち早く手に入れるということのようだ。要するに掘り出し物をつかむ目を持つということらしい。
第6話で布装の本の話が出てくるが、これを読んでいて昔僕も紺絣の装丁本を何冊か持っていたことを思い出した。あれはどうしたんだろう?今となっては遠いおぼろげな記憶しかない。

 

収録タイトル
# タイトル
第一話 色模様 一気通貫(いっきつうかん)
第二話 半狂乱 三色同順(さんしょくとうしゅん)
第三話 春朧夜 嶺上開花(りんしゃんかいほう)
第四話 桜満開 十三不塔(しーさんぷとう)
第五話 五月晴 九連宝橙(ちゅうれんぽうとん)
第六話 水無月 十三九(しーさんやおちゅう)

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0472.ヘビイチゴ・サナトリウム

2004年01月26日 | 青春ミステリー
ヘビイチゴ・サナトリウム
読 了 日 2004/01/26
著  者 ほしおさなえ
出 版 社 東京創元社
形  態 単行本
ページ数 290
発 行 日 2003/12/25
ISBN 4-448-01701-9

 

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京創元社から新たに刊行されたシリーズで、その名もミステリ・フロンティア。
第1回の配本が伊坂幸太郎氏の「アヒルと鴨のコインロッカー」で、本書は第2回目の配本である。
この出版社が催している「鮎川哲也賞」に応募される作品には選に漏れても最終選考に残った作品には、優秀な作品が多いという。そうした作品ばかりではないが、新しく優れた作品を掘り起こしていくのが狙いのようだ。
本書はたまたま、2002年の第12回鮎川哲也賞の最終選考に残った作品で、著者は、詩人でもあるとのこと。東京創元社からのメールマガジンで著者のサイン本のネット販売の紹介があって購入した。経済的にあまり余裕のない生活をしている僕にとって、単行本の新刊を買うことはまず無いといって良いのだが、東京創元社のミステリ出版物についてのクォリティの高さには定評のあるところなので、多少無理をしてしまう。

中高一貫教育の女子高で、校舎の屋上から高3の生徒が墜死するという事件が起こる。 そして、後を追うように男性国語教師が、同様に墜死する。
こうしてストーリーは始まるのだが・・・。タイトルの「ヘビイチゴ・サナトリウム」は作中に出てくるウエブサイトの名前。

 

 

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0471.「裏窓」殺人事件

2004年01月22日 | 本格

 

「裏窓」殺人事件 tの密室
読了日 2004/1/22
著 者 今邑彩
出版社 光文社
形 態 新書
ページ数 307
発行日 1995/02/20
ISBN 4-334-72005-6

マンション「メゾン・クレール」の9階に住む北川翠が近くの路上で、墜死しているのが発見された。
9階の自室は施錠された上、チェーンもかけられていたことから、警察は自殺と断定した。しかし、その後坪田純子と名乗る女性から警視庁通信司令室に事件は殺人だという通報が入った。坪田純子は、「メゾン・ブランシュ」というマンションの8階に住む17歳の少女だった。
彼女の言い分では北川翠が墜死した時刻に、彼女の部屋に男がいたというのだ。交通事故の後遺症で、車椅子の生活を余儀なくされた17歳の少女・坪田純子は、ミステリー小説や、ミステリー映画が好きで、特にヒッチコック監督の「裏窓」はビデオテープが擦り切れるほど見ていた。そして、映画と同じような状況で純子も、彼女の部屋から双眼鏡で、北川翠の部屋を見ていて、男を見たというのである。そして、純子は無言電話を受けるようになる・・・・。

というような具合で始まるストーリーなのだが、本格ながらホラーのような様相も呈している。今回の探偵役は、警視庁刑事・貴島柊志(しゅうじ)だ。長身の29歳独身で、安アパートに一人暮らしの刑事は、割りと魅力的に描かれている。




0470.象と耳鳴り

2004年01月20日 | 短編集
象と耳鳴り
読了日 2004/1/20
著 者 恩田陸
出版社 祥伝社
形 態 単行本
ページ数 290
発行日 1999/11/10
ISBN 4-396-63158-8

ファンになったとは言っても多作家の場合はそうおいそれと次から次へとは追いかけられない。本書も図書館で何度も見かけていたがタイトルから受ける印象が、あまり良くなかったのか、なかなか手に取らなかった。その後インターネットで、安楽椅子探偵譚の1冊として紹介されているのを知り、同じくネットで手に入れた。
祥伝社の「小説NONに掲載された9編と、集英社「青春と読書」、早川書房「ミステリマガジン」の各1編、それに書き下ろし1編を加えた、全12編からなる短編集。
作品に登場する主人公・関根多佳雄は「六番目の小夜子」(298.参照)に出てくるキャラクター関根秋(しゅう)の父親だ。こうした遊び心も面白い作品集になっている。

初出一覧で判るとおり、最初の短編「曜変転目の夜」が発表されたのが1995年のことだから、この本が刊行された1999年まで4年の歳月を要したことになる。あとがきで著者が「悪戦苦闘した」と書いているが、この安楽椅子探偵型の本格ミステリーは、それだけに著者にとっても思い入れのある作品集ではないかと思わせる。

最初の「曜変転目の夜」は、関根多佳雄が妻の桃代と美術館へ曜変転目茶碗を見に行ったときに、見物中の老婦人が倒れたのを見て、亡くなった古い友人の事を思い返すと言うストーリーだ。
その夜、娘の夏の招待で、レストランで夕食後のコーヒーを飲んでいるときに、友人の酒寄順一郎が自分専用の古いノリタケのポットと茶碗で、紅茶しか飲まなかったことなどを思い出しながら、彼の死に思いを巡らせる。短い作品だが、しみじみとした情感をたたえた作品で、好きなものの一つだ。
「給水塔」は、前に読んだアンソロジー「不条理な殺人」(326.参照)にも収録されていた、ちょっと不気味な雰囲気を持つ作品だ。
この話の不気味さと言うのは、著者の最も得意とするパターンではないかと思われる。どこまでが本当で、どこまでが嘘なのかというのがこの作品の面白いところなのだが・・・。余韻を残す不気味さ、面白さだ。

タイトルともなっている「象と耳鳴り」は、行きつけの喫茶店で、関根多佳雄が隣に座った老婦人から聞いた話。「私は象を見ると、耳鳴りがするんです」という話を聞いてみると、幼い頃、両親と共に船旅でイギリスに行った時に、遭遇した象による殺人の話なのだが・・・。記憶の不思議さ?。

 

初出誌
# タイトル 紙誌名 発行月号  
1 曜変転目の夜 ミステリマガジン 1995年11月増刊号
2 新・D坂の殺人事件 青春と読書 1998年2月号
3 給水塔 小説non 1996年1月号
4 象と耳鳴り 小説non 1997年12月号
5 海にいるのは人魚ではない 小説non 1997年6月号
6 ニューメキシコの月 小説non 1996年8月号
7 誰かに聞いた話 小説non 1998年7月号
8 廃園 小説non 1998年3月号
9 待合室の冒険 小説non 1998年10月号
10 机上の論理 小説non 1999年2月号
11 往復書簡 小説non 1998年6月号
12 魔術師 書下ろし  

 

 

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0469.完全無欠の名探偵

2004年01月17日 | 本格

 

完全無欠の名探偵
読 了 日 2004/01/17
著  者 西澤保彦
出 版 社 講談社
形  態 新書
ページ数 357
発 行 日 1995/06/05
ISBN 4-06-181847-3

 

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の著者の名前は、宮部みゆき氏の文庫の解説で見たことがある程度で、良くは知らなかったのだが、安楽椅子探偵型の作品を紹介しているサイト(残念ながら現在は内容が変わってしまっている)で、「麦酒の家の冒険」という作品が著者のものだと言うことを知り、興味を持った。
そこで、古書店で目に付いた本書を読んでみようと思ったのだ。カバー後ろにある著者の紹介を見ると、大学の助手や、高校教師をしていたようだが、第1回鮎川哲也賞に応募した「聯殺」が最終候補に残ったというので、調べたら、「仔羊たちの聖夜」と改題されて、角川書店から刊行されたようだ。

 

 

本書「完全無欠の名探偵」は割合初期の著作らしいが、ここに登場する名探偵?は、自分で推理して謎を解明すると言うタイプの人物ではない。
「山吹みはる」という若者は、人が心の奥に持っており、その当人はとっくに忘れていたわだかまりを、当人の口から吐き出させた上、疑問に感じていた真相まで推理させてしまう、特殊な能力を持っているのだ。
白鹿毛(しらかげ)グループの総帥・白鹿毛源衛門は、孫娘りんが四国高知の大学に事務員として就職することに大反対なのだが、自分で彼女に翻意をさせる自信はない。
そんな時、秘書兼運転手の黒弦からの勧めで、特殊能力を持つ山吹みはるをりんと同じ職場に就かせて、彼女がどうして高知の大学に事務員として留まることにしたのか、を聞き出そうと言うのだ。

ストーリーは、そうした発端で始まるのだが、本編とは別にfragnent(物語の断片)として、ある少女とケーキの箱に詰められた鳩の死骸の顛末が、章ごとに挿入されていき、これが本編とどう重なっていくのかも、ミステリーとなっている・・・。高知は、土佐弁のセリフがぽんぽん飛び出すユーモラスな会話が面白い効果を挙げている。

 

 

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0468.硝子のドレス

2004年01月11日 | サスペンス
硝子のドレス
読了日 2004/01/04
著 者 北川歩実
出版社 新潮社
形 態 単行本
ページ数 301
発行日 1996/03/20
ISBN 4-10-672744-5

 

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>家についても、内容についても判らない本を、安いということと、新潮社のミステリー倶楽部の1冊だということで買ってしまった。
この新潮社の「ミステリー倶楽部」とか、文藝春秋の「本格ミステリマスター」という一連のシリーズのような形の刊行を何と呼ぶのか知らないが、そのうちの1冊に面白かったものがあると、他の作品も同様に面白いだろうと、考えがちだ。(僕だけかもしれないが?)
ところで、本書はダイエットをテーマにしたミステリーだ。僕個人に関して言えば、女性は肥っていようが、痩せていようが一向に気にならない。が、女性本人にとって見れば肥満と言うことが、それを気にする人にとって大変な問題である、ということが良くわかる。肥満に悩む女性にとって本当の敵?は、自分自身だということに気付かないことではないのか?女性に限らず、健康を害するような体型ならいざ知らず、ダイエットに奔る人の気持ちはいまいち理解が出来ないでいる。

 

 

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0467.競作 五十円玉二十枚の謎

2004年01月09日 | アンソロジー
競作 五十円玉二十枚の謎
読了日 2004/1/9/tr>
著 者 若竹七海・他
出版社 東京創元社
形 態 単行本
ページ数 470
発行日 1993/01/20
ISBN 4-488-02404-1

東京創元社の戸川安宣氏については、前にどこかで書いたと思うが、そのユニークな編集方針で、特に本格ミステリーに向き合う姿勢に多くの本格ミステリー作家たちの共感を得ている(のではないかと、推測する)。
元来、僕は(僕に限らず読者は)ミステリーを読んで、作家には興味を持つが、編集者については、目を向けることはなかった。ところが、北村薫著氏と宮部みゆき著氏の対談などから、あるいは、創元推理文庫の編集方針などを見ていると、ミステリー全般に対して優れた感性の持ち主ではないか、という思いが涌いてきた。
一度、そうした思いを抱くと、事あるたびに、彼のそうした面での活躍というか、仕事振りが目に入るようになって、初めて、作家以外の人のファンになっていった。

~~~・~~~・~~~・~~~・~~~

さて、本書もそうした戸川氏の働きの一つとして刊行されたアンソロジーである。しかも、競作アンソロジーという面白い企画だ。女流作家の若竹七海氏が以前、実際に体験したという謎に対して、プロの作家のみならず、一般から公募した解答編をもあわせて、13編を収録したものだ。否、最後にいしいひさいち氏の漫画と14編だ。
さて、その問題編はというと、謎の方だから書いても良いだろう。10年前に若竹七海氏が体験した謎は、大学生だった彼女が書店でアルバイトをしていたときのことだった。書店のレジ係をしていた彼女のところへある土曜日の夕方、一人の男が「千円札に両替してください」と言って、50円玉20枚を出したと言うのだ。そして、その後も土曜日のたびに男は同じように、50円玉20枚を持ってきて、千円札との両替をするように言った、というのが若竹氏が経験したことなのだが、
問題は
1. 何故、本屋で毎週50円玉を千円札に両替するのか?
2. その50円玉は、どうして毎週男の手元にたまるのか?
この二つが問題編の内容なのである。
これに対して、以下のごとくいしいひさいち氏の漫画を除いて、13篇の解答ストーリーが収録されているというわけだ。
この解答編の中で、一般公募から若竹賞に選ばれた、佐々木淳氏は、現在ミステリー作家として「猫丸先輩・・」(343.参照)や、「占い師辰寅叔父さん」(329.参照)でおなじみの、倉知淳氏である。

収録作一覧
# 摘要 タイトル 著者

1 問題編 50円玉20枚の謎 若竹七海
2 解答編   法月綸太郎
  依井貴裕
3 一般公募 若竹賞 佐々木淳(倉知淳)
法月賞 高尾源三郎
依井賞 谷英樹
優秀賞 矢多真沙香
優秀賞 榊京助
最優秀賞 高橋謙一(剣持鷹士)
4 プロ作家 老紳士は何故 有栖側有栖
五十円玉二十個を両替する男
または編集者Y・T氏の陰謀
笠原卓
五十円玉二十枚両替男の冒険 阿部陽一
50円玉とわたし いしいひさいち

 

 

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0466.悪魔がここにいる

2004年01月08日 | 本格
悪魔がここにいる
読了日 2004/1/8
著 者 今邑彩
出版社 中央公論社
形 態 新書
ページ数 214
発行日 1994/12/20
ISBN 4-12-500326-2

この作品は、今から14年前に「ブラディ・ローズ」というタイトルで東京創元社から出された作品を改題したものだという、が、なぜ改題したのだろうかと読み始めて思った。第1部のスタートで紹介される、古い屋敷の庭に咲き乱れる薔薇の種類や名前が、これから展開されるであろうドラマの幕開きとして、ふさわしい装いを示しており、前のタイトルがそれに似つかわしいと思ったのである。
ところが、読み終わって改題されたあとの、現在のタイトルもこれまた、二重、三重の意味を持たせたタイトルだったということが判るのだ。僕はこの著者のこうしたストーリーの語りが好きだ。なんとなく昔の探偵小説を思わせるような、悪く言えば、思わせぶりなところがなんとも言えない。

この屋敷の女主人だった、苑田俊春の最初の妻雪子の死、そして、二人目の妻良子は私(相澤花梨)の目の前で2回の部屋から石畳の上に飛び降り自殺をしたのだ。それでも、苑田を愛した私は、二人の女の血を吸った石畳や、むせ返るような薔薇の香りに包まれたこの屋敷に三番目の花嫁として屋敷の入ろうとしている。

著者の作品は、ホラーめいたストーリーが特徴だが、僕がいつも読んだ後感心するのは、そうしたちょっと怖い装いを施しながら、きっちり本格ミステリーを形成していることだ。
この作品でも、古い、曰く有りげな屋敷に三番目の妻として、苑田俊春に嫁いだ相澤花梨が誰ともわからぬ者から受け取る脅迫状や、最初の妻だった雪子の部屋の様子、無口で無愛想な薔薇園丁、古くから住み着いている家政婦、無口な若いお手伝い、そして車椅子の妹の存在などが、いかにも恐怖ストーリーの様相を呈し、この作者の物語作りに嵌ってしまうのだ。
しかも、主人公の相澤花梨、彼女の目の前で身を投げて死んだ二番目の妻・良子、屋敷の主人・苑田俊春、その妹・晶、家政婦の寿世、良子になついていたお手伝いの有美、そして園丁の壬生、という7人の登場人物しかいない中での謎解きの面白さを味あわせてくれるから、この著者の作品からはちょっと目が離せない。




0465.レイン・レインボウ

2004年01月06日 | サスペンス
レイン レイン・ボウ
読了日 2004/1/6
著 者 加納朋子
出版社 集英社
形 態 単行本
ページ数 275
発行日 2003/11/30
ISBN 4-08-774675-5

本書のようなタイトルは、初めから考えてあったのだろうか、とくだらないことを考えた。それぞれ虹の一色が付けられた短編が7編で虹を構成しているので、そんなことを思ったのだ。
こうした自然体で書かれたようなストーリーを読んでいると、著者は、もしかしたら読んでいる読者の僕たちよりも楽しんで書いているのではないかなどと、思ってしまう。
高校時代の同級生のチーズこと牧知寿子が死んだという知らせが、同じ同級生の片桐陶子から入った。告別式の日に渡辺美久は赤ん坊の美也を置いていくため、夫の文也に早い帰宅を頼み、出かけた・・・ここでは、幸せな結婚生活を送っている専業主婦の渡辺美久が長いこと思い込みを持っていたことが、その後、彼女の家を訪れた片桐陶子によってひっくり返されるというストーリーが語られる(サマー・オレンジ・ピール)。

こうして、牧知寿子の葬儀に参列した昔の仲間たちの一人一人のドラマが語られていく連作のような短編集だ。

初出誌(小説すばる)
# タイトル 発行月号    
1 サマー・オレンジ・ピール 2001年2月号  
2 スカーレット・ルージュ 2001年5月号  
3 ひよこ色の天使 2001年11月号  
4 緑の森の夜鳴き鳥 2002年3月号  
5 紫の雲路 2002年7月号  
6 雨上がりの藍の色 2003年4月号  
7 青い空と小鳥 2003年7月号  




0464.恋文

2004年01月05日 | リーガル
恋文
読 了 日 2004/01/04
著  者 松木麗
出 版 社 角川書店
形  態 単行本
ページ数 224
発 行 日 1992/05/25
ISBN 4-04-872702-8

 

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align="left" />の本の発行された同じ年の平成4年にTBSで放送されたドラマのほうを先に見ている。僕はミステリーを読むのと同じくらいミステリードラマも好きなので、テレビ番組誌などを見て、これはと思うものは録画して、昼間見るようにしている。
主演が好きな女優さん(池上季実子氏)だったこともあり、女性検事の話を興味深く見た。
第12回横溝正史賞を受賞したこの本はドラマを見た後、早く読みたいと思っていたが、その当時はまだゆっくり本など読むような心のゆとりがなく、とうとう読まずじまいだった。
こうして読書の目標を立てて読み始めてからは、今度は古本屋さんになかなか出てこないので、今度手に入れたこの本は昔の恋人にあったような気分だった。
この著者の本は昨年「告発捜査」という本を先に読んでいるが、本書と同様女性検事が活躍する話で、著者自らの体験を活かした?題材だ。もう今では本名の佐々木和子さんに戻り、議員活動に忙しいようだが、こうした女性検事の目を通した作品をもっと沢山書いてほしかったと思う。

「最後の恋文」という作品で14年前に賞を取り文壇にデビューした、上野兼重が自殺した、という新聞報道があった。「最後の恋文」は検事・間瀬惇子が青春時代に愛読した本だった。上野兼重は、惇子が今度赴任したT市に住んでいた。そして、新聞報道があってから4日後、夫殺害の容疑で妻の規世子が逮捕された。彼女は調べに対し、殺人を自供したが、2回目の公判でその自供を翻した。
スナックのママをしていた上野規世子は、なぜ自供を翻したのか?女性検事・間瀬惇子との女の闘い?が始まる・・・・。

 

 

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