隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0809.慶応ボーイ

2007年03月25日 | 短編集
慶応ボーイ
読了日 2007/2/15
著者 戸板康二
出版社 河出書房新社
形態 単行本
ページ数 240
発行日 1989/4/25
ISBN 4-309-00556-X

またまた戸板氏の作品だ。この本は本来なら「魔性」の前に読み終わるはずだったもので、昨日書いたように絵を描きながらの読書で遅くなっていたところへ図書館からの連絡でそっちの方を優先させた為に後回しになってしまったのだ。 初出一覧にあるように8編からなる短編集だ。
タイトルになっている「慶応ボーイ」は、他の作品のおよそ倍くらいの長さがあり、松田貞之という大阪道修町の薬問屋の息子の、慶應義塾大学から兵役へ、といった時代を描いたストーリー。 下宿をしていた先の遠縁の姉妹との交流や、喫茶店での仲間との集まりだのが淡々とした文章でつづられていく。 慶応出身の著者の自伝的な話ではないかと思わせるような内容だ。兵役で、陸軍少尉となった主人公が学生時代の知り合いの2等兵と巡り合う最後はほろりとさせる。

初出一覧
# タイトル 発行月
1 史蹟 別冊文藝春秋 昭和39年新春特別号
2 もくれんでら オール読物 昭和40年6月号
3 新宿の少女 別冊文藝春秋 昭和40年春季号
4 慶応ボーイ 文藝春秋 昭和44年7月号
5 最高のもてなし オール読物 昭和52年新年号
6 ふく子の手紙 小説新潮 昭和52年7月号
7 妻の過去 オール読物 昭和53年12月号
8 嵐の日の事故 小説推理 昭和55年12月号




0808.魔性

2007年03月24日 | サスペンス
魔性
読 了 日 2008/03/24
著  者 渡辺容子
出 版 社 双葉社
形  態 単行本
ページ数 509
発 行 日 2006/11/20
I S B N 4-575-23567-9

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

いもので3月ももう終りに近づいてきた。前にもちょっと書いたが、1月の末頃からワードのオートシェイプ(マイクロソフトのアプリケーションソフトに付随する簡単な作図機能)での絵画作成にはまって、読書の方がおろそかになっている。
今月はこの2冊でどうやら終りそうである。昨年1月に、モーグ(マイクロソフトのアプリ「ワード」、「エクセル」、「パワポ」、「アクセス」等々のQ&Aなどが掲載されているホームページ)で開催されたオートシェイプでの絵画募集に応募された作品を見て、その素晴らしさに驚き、自分でも挑戦してみようと思いながら1年が過ぎてしまった。
しかも今年応募しようと考えていながら、作るのに夢中で気づいたら締切りが過ぎてしまっていた。残念ながら応募は来年のこととなった。

 

 

さて、インターネットで著者の新作が出ているのを知ってネットのオークションを探したがまだ高かったので、図書館で予約。およそ1週間くらいで図書館から連絡が入り借りることが出来た。6年前に江戸川乱歩賞受賞作の「左手に告げるなかれ」を読んで以来、気になる作家の一人となって、他の作品も読んだのだが、なにしろこの作者は寡作で、ミステリー作品は4作しかないから随分と次作を待っていた。例によって本作の主人公も女性である。
鈴木珠世・北海道出身、勤めていた会社を人間関係から辞めて、現在はヒッキーまがいの生活をしながら贔屓のサッカーチームのサポーターをしている29歳の独身。気が弱く引っ込み思案の性格から友達も出来ず、世を儚んで自殺をしようと思っていたときに、生きる勇気を与えてくれた高校生の少女・ありさと出会う。
ありさに引き込まれてサッカーチームを応援するようになって生きる希望を見出したのも束の間、そのありさが殺されるという事件が発生する。
前半の主人公の気の弱さにいささか辟易するところもあるが、何故、誰にでも優しく明るい性格のありさが殺されねばならないのかという不条理感が主人公を事件解明へと奔らせる。雑誌への連載作品だったせいか収束部分に慌ただしい感じがして、説明不足もあり、単行本にする際に加筆修正が出来なかったのか残念である。

 

初出誌 「小説推理」2005.2月号~2006.8月号

 

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0807.第三の演出者

2007年03月12日 | 安楽椅子探偵
第三の演出者
読了日 2007/2/15
著者 戸板康二
出版社 桃源社
形態 単行本
ページ数 269
発行日 1961/3
ASIN B000JAM99G

「一度機会があったら、新劇の世界の事件を、中村雅楽という歌舞伎俳優が推理したケースを書いてみたいと思っていた。雅楽自身は、現場を見もせず、関係者に会いもせず、ただ談話の聞き書を手がかりに、考えるわけだ。 雅楽によって演劇史上の大事件の再検討を試みさせたいと前からぼくは思っている。雅楽の好奇心が老いてますます旺盛なあいだに、それをさせたい。しかしこの物語の出来事も、雅楽にとっては、ひとつの演劇史だったともいえるようである。」(あとがきより)

中村雅楽譚の長編2作品の内の1冊である本書をどうしても読んでおきたかったので一月ほど前に図書館へリクエストカードを出しておいたら、このほどようやく入ったという連絡が来た。
県内の図書館ネットワークで、探すらしく見ると千葉県立中央図書館の蔵書となっている。
前に読んだもう1冊の長編「松風の記憶」(801.参照)とは趣が異なり、上に挿入した著者のあとがきからも判るように、純然たる安楽椅子探偵形式の作品だ。
多くの雅楽譚の記述が新聞記者の竹野記者によるものとなっているが、本作も関係者の供述を竹野がまとめており、勿論その中に竹野自身の記述も含まれている。

 

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