隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0123.ホワイトアウト

2001年08月24日 | サスペンス
ホワイトアウト
読 了 日 2001/08/24
著  者 真保裕一
出 版 社 新潮社
形  態 文庫
ページ数 637
発 行 日 2000/09/05
ISBN 4-10-127021-X

 

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ドバシカメラ千葉店のDVDソフトの売場で、本書の映画化されたものがDVDになるという宣伝が盛んにされていて、行くたびに目に付くので、それまで僕はこの作者も、映画が評判になったことも全く知らなかったのだが、DVDを見てみようと思った。
そして、その前に原作の方を先に読んでおこうと古書店でこの文庫を探してきた。この本で、僕は初めて著者が江戸川乱歩賞受賞作家であることを知る。江戸川乱歩賞については創設された時から、時を同じくしてきたミステリーファンにもかかわらず、 受賞作家も知らないでいたというのは、長いブランクがあったとはいえちょっとショックだった。作品はかなりの長編だが、息 もつかずという感じで読み進めた。

 

 

イトルのホワイトアウトとは、一面の吹雪で真っ白な中、何も見えなくなるという現象だそうだが、主人公のテロと戦う心境 をも表しているようだ。
日本一の貯水量を誇るダムで働く職員・富樫は雪山のアクシデントで、自分の所為で同僚の親友・吉岡を死なせたというトラウマを抱えている。一方、吉岡と結婚するはずだった千晶は、婚約者の職場を見たいという思いで、ダムを訪れる。そうした中、最新鋭の武装をしたテロリストグループがダムと麓の唯一の連結道のトンネルを爆破した上で、千晶を含めたダムの職員全員を人質に取り、ダムを占拠する。
同僚と屋外で作業をしていた富樫は、グループの襲撃を受けて、同僚は射殺されるが、1人身を隠して、テロに対抗する。現実離れしているという感もあるが、主人公・富樫の不屈の精神力と体力とに、感動する。

 

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0122.白く長い廊下

2001年08月19日 | メディカル
白く長い廊下
読 了 日 2001/08/15
著  者 川田弥一郎
出 版 社 講談社
形  態 文庫
ページ数 372
発 行 日 1995/07/15
ISBN 4-06-263008-7

 

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役の医師である著者が描いた医学ミステリーで平成4年に第38回江戸川乱歩賞を受賞した。
十二指腸潰瘍手術後の患者が、長い廊下を病室に運ばれる途中に容体が急変、死亡した。責任を問われた麻酔担当医窪島は、独 自に調査を開始し、意外な真相に辿り着く。しかし、その時、彼は大学の医局間の複雑な対立の中に、足を踏み入れてしまって いた。

この作品も、僕はドラマの方を先に見ている。今回原作を読んで、改めて、ドラマが割合、原作に沿って作られており、良く出 来ていたことを認識した。ロビン・クック氏やマイケル・パーマー氏等の米国産の医学ミステリーも大変物語として面白いが、国 産のものはやはり、身近に感じられて、そのせいかストーリーに入り易い反面、恐怖感も強くなる。
医師窪島が、自分の担当した麻酔による事故でないことを証明する為に若い女性薬局員・山岸ちづるの協力を得ながらも、絶望 的に不利な状況の中で、気の遠くなるような調べを進めるというストーリーが、現実感を帯びて迫る。

 

 

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0121.運命交響曲殺人事件

2001年08月15日 | 本格
運命交響曲殺人事件
読 了 日 2001/08/15
著  者 由良三郎
出 版 社 文藝春秋
形  態 文庫
ページ数 341
発 行 日 1987/06/10
ISBN 4-16-744601-4

 

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う17年も前になるが、テレビ朝日で放送された若山富三郎、田原俊彦、山本陽子ら各氏の出演したドラマを先に 見た。なかなか良く出来たドラマだったと記憶しているが、今度原作を読んで、映像とは違うミステリーの面白さを堪能した。
いつも思うことだが、原作の小説とドラマになったものとは別作品だということだ。脚本のせいか、演出のせいか、あるいは演 ずる訳者のせいかはわからないが、時によってはつまらないドラマになってしまうこともあるのは、残念なことだが…。
このドラマも白河警視に扮した若山氏については、原作のイメージとマッチしていた感じだが、そのほかについてはあまり印象 に残っていないのはどうしてだろう?まあ、ドラマについてはまた別の機会に書くとしよう。

コンサートホールで、満場の聴衆を前に指揮者の指揮棒が振られ、ベートーベンの運命交響曲の冒頭の部分が鳴り始めた途端に 、指揮台が爆発して指揮者が爆死するというショッキングな事件が発生する。

話が変わるが、僕はこのベートーベンの交響曲第5番が好きで、先年、NHKテレビで朝比奈隆氏の86歳の誕生日に当たる日 (1994/7/6)に、朝比奈氏の指揮でN響の第5番が放送され、ビデオに録画しながら見た。86歳とは思えぬ力強い指揮が印象的で 、何回となく見返している。
さて、本作は医師で東大教授の著者が、第2回サントリーミステリー大賞を受賞した作品。本格推理で、事件解明にあたる人物の キャラクター造形にも好感が持てる。

 

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0120.黄金流砂

2001年08月08日 | 本格
黄金流砂
読 了 日 2001/08/08
著  者 中津文彦
出 版 社 講談社
形  態 文庫
ページ数 350
発 行 日 1992/01/20
ISBN 4-06-183311-1/td>

 

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書も江戸川乱歩賞受賞作で、昭和57年・第28回の受賞を岡島二人氏の「焦茶色のパステル」(未読)と共に分け 合っている。
ミステリ文学賞の老舗ともいえる乱歩賞の制定されたのは、僕が中学3年の昭和29年のことだった。当時江戸川乱歩氏が探偵小説 の発展を願って、寄付した100万円を基金として創設された。その頃確か江戸川氏は探偵雑誌「宝石」の編集にあたっていたので はなかったかと思うが、例によって僕の記憶はあまりあてにはならないから、確かではない。
だが、そうしたことで新たな探偵小説の潮流を掘り起こそうとしていたことは事実だ。当初の乱歩賞は小説作品にではなく、探 偵小説界に功績のあったことに対する評価だった。一般の公募作品を対象にしたのは第3回からだった。その公募作品の第1回の 受賞者が戦後女流ミステリ作家の草分けともいえる、仁木悦子氏だ。
そうした流れをリアルタイムにたどってきた僕だが、探偵小説ファンを自認していたにもかかわらず、さほど乱歩賞に関心がな かったのはどうしたことだったのか?今頃になって、懸命に読み始めるのもおかしなことだ・・・・。

横道にそれた。
高名な歴史学者が森岡のホテルで殺されるという事件が、義経北行説に絡む謎の古文書へと発展する。
古代和文字で記された古文書の解読で明かされる謎とは?東朝新聞に入社した方眼総一郎は盛岡支局勤務を命ぜられ、事件を追 うことになる。殺人事件と、暗号解読の二つのなぞを追うストーリーで最後まで興味を引く。
僕の苦手な歴史ものだ。しかし、そんなことは関係なく物語は、ところどころに事実を挟んで面白く展開する。ものを知らない 僕は終盤でどう収束するのかということに、胸が痛くなるほどの興奮を覚えた。

 

 

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0119.左手に告げるなかれ

2001年08月03日 | サスペンス
左手に告げるなかれ
読 了 日 2001/08/03
著  者 渡辺容子
出 版 社 講談社
形  態 文庫
ページ数 537
発 行 日 2000/03/30
ISBN 4-06-264620-X/td>

 

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年前、この作品が出版された当時、江戸川乱歩賞受賞の帯のかかった本をあちらこちらの書店で目にした。
タイトルの意味は判らなかったが、なんとなく気になり、読んでみようと思わなくもなかったが、なぜかそれっきりになっていた。今回手に入れたのは文庫版だが、文庫になると、解説や、裏表紙のあらすじなどで、多少内容がわかり買ってみた。
タイトルの意味は、聖書から来ているようだ。右手がたとえよいことを行っても、左手にさえ吹聴してはならないという、言わば善行は人に言ったり、自慢したりしてはならないという戒めらしい。

スーパーマーケットなどの店舗で、万引きの捕捉をする女性保安士の話だ。
女性保安士・八木薔子(しょうこ)は3年前に分かれた不倫相手の妻が殺された事件で、刑事の訪問を受ける。利害関係から容疑者と見られたということらしい。一応の容疑は表面的には晴れたようだったが、行きがかり上彼女は独自に、事件を調べ始めた。
犯人探しを始めるという動機がちょっと弱い気もするが、畳み掛ける様な語り口と文章で、引き込まれるように読んだ。
収束部分が物足りないように感じたのは、乱歩賞の枚数制限の所為か?だが、僕は作品の面白さからもっとこの作者の作品を読んでみたいと思った。

 

 

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