雨をかわす踊り

雨をかわして踊るなんて無理。でも言葉でなら描けます。矛盾や衝突を解消するイメージ・・・そんな「発見」がテーマです。

Picky6

2014-11-26 07:04:50 | 料理
珈琲のことを知らないことはわかっていた。

地元紙で珈琲について連載する「大御所」のもとで、豆を買ってはいたが、世にいうblue mountainを買う気にはならなかった。

マツタケや肉のようにピンからキリまであり、ピンを選び抜く力があるとは思えなかったからだ。

かつて世話になった日本料理や、現在お世話になってるフランス料理店主のような120%派ではないと感じていた。

学生は、教師に力は及ばなくてもその力の全体量は見抜くというわけだ。

しかし今回もしやという方に出会えた。

その珈琲専門店店主がすすめるままに注文すると、今までの各銘柄の概念が180度変わったといっても過言ではない。

もちろん各銘柄内のトップを出してくるのはいうまでもないが、それ以上に驚いたのがあの「おもてなし」の心だ。

メールしてお店のことを伺うと、夜店主から僕の好みを尋ねる電話を頂戴した。

「お客様一人一人に合わせて焙煎させて頂きます」

とのことだった。

懐石料理じゃあるまいし、と驚いたが、実際に飲んだあとの驚きは期待以上だった。

例えばボルカンアスールの酸味は上質の果実のそれに似ていた。

思わず「これは本当にボルカンアスールですか?」と訊いてしまった。

すると、「お気に召さないようでしたらキャンセルして結構です」といい、ボルカンアスールのいろんな味を教えてもらった。

今まで僕が知っていたボルカンアスールではなかった。

おそらくこの店でコロンビアを頼むひとはいまい。

単なるバランスの良さなど、何にも面白くないからだ(この店のコロンビアはのんでないが)。

図示される通り確かな輪郭を個性豊かに発揮している。

そして特筆したいのは、その力だ。

頂くと身体中に清涼な精気かみなぎる。

もちろん単なるカフェインではない。

そんなこんなで、僕の水筒から毎日違う珈琲の香が漂うようになった。

隣に座るアメリカ人はもともと動物学が専門で、共通の話題がなかったが、珈琲の話をするようになった。

僕の挙げる銘柄の名前は、途中までは知っているが後半は聞いたことがないと、一ヶ月前の僕のようなことをいうレベルなので、話が尽きない。

とにかく楽しい。

何が楽しいって、もちろん自分探しがである。

これだけ繊細だと本当に自分が好きなものを探せる。

当分逍遥を楽しめそう。

追伸:こういうこだわりを愉しむのは僕だけでは申し訳ないと息子を蕎麦屋に連れていった。四歳になってアレルギーの心配はなかろうと妻の許可をえて、初めてのそば体験だ。この蕎麦屋は、福島に住む義父が、僕が連れていった関東の蕎麦屋のなかで唯一会津並みと認めたところなのだが、一口食べて、本能を刺激され、僕の分もほぼ平らげた。彼が貪るのをみて、はっきり言って後悔した。彼がこれ以外をソバと思わないとしたら。妻をみると、同じ恐怖を感じていたのだろう。実際に食事を作る担当者として子供達が僕の給与に見合わないものを求めているのは僕も知っている。ため息していた。

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