小説「新・人間革命」に学ぶ 第20巻 御書編 2020年6月17日
- 連載〈世界広布の大道〉
今回の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」は第20巻の「御書編」。小説で引用された御書、コラム「ここにフォーカス」と併せて、識者の声を紹介する。挿絵は内田健一郎。
彼等の人人の智慧は内心には仏法の智慧をさしはさみたりしなり(御書1466ページ、減劫御書)
民衆を救った彼ら(仏教以外の教えを実践する人々)の智慧は、その内心においては、仏法の智慧を含み持っていたのです。
<1974年(昭和49年)9月16日、山本伸一は、ノーベル賞作家のショーロホフ氏と会見。「人間の運命」について語らいを交わす>
伸一は、『人間の運命』の内容を踏まえて、ショーロホフに質問した。
「人間の運命を変えることは、一面、環境等によっても可能であるかもしれません。しかし、運命の変革を突き詰めて考えていくならば、どうしても自己自身の変革の問題と関連してくると思います。この点はどのようにお考えでしょうか」
ショーロホフは、大きく頷いた。(中略)
「われわれは、皆が“幸福の鍛冶屋”です。幸福になるために、精神をどれだけ鍛え抜いていくかです」(中略)
伸一は、身を乗り出して言った。
「まったく同感です。たとえ、どんなに過酷な運命であっても、それに負けない最高の自己をつくる道を教えているのが仏法なんです」(中略)
ショーロホフは、目をしばたたき、盛んに頷きながら、伸一の話に耳を傾けていた。
彼は、社会主義国ソ連を代表する文豪である。しかし、人間が根本であり、精神革命こそが一切の最重要事であるという点では、意見は完全に一致し、強く共鳴し合ったのである。
人生の達人の哲学、生き方は、根本において必ず仏法に合致している。いな、彼らは、その底流において、仏法を渇仰しているのだ。
(「懸け橋」の章、259~261ページ)
陰徳あれば陽報あり(御書1178ページ、陰徳陽報御書)
陰徳があるならば、陽報がある。
<山本伸一の第1次訪ソの最終日、モスクワ大学の主催で、歓送のパーティーが開かれた。伸一は、同大学の学生たちに感謝の意を伝える>
学生たちは、滞在中、ホテルで一行と寝食を共にし、荷物の運搬や道案内、車や食事の手配を行うなど、さまざまな面で支えてくれたのである。伸一は、彼らを心からねぎらい、御礼を言いたかった。(中略)
学生たちは、将来は日ソの友好を担って立つ俊英である。伸一は彼らを、「若き友人」と思っていた。(中略)
彼らは、伸一の訪ソの成功を、わが事のように喜び、コスイギン首相との会談のあとも、こう語っていた。
「山本先生は、ソ日友好の歴史に残る偉大な仕事をされたと思います。そのお手伝いができたことは、私たちの誇りです」
会食のはじめに、伸一は立ち上がると、丁重に御礼を述べた。
「この訪問で、日ソ友好の新しい橋を架けることができました。それを陰で支えてくださった、最大の功労者は皆さんです。私は、心から御礼、感謝申し上げます。ありがとうございました。
東洋の英知の言葉は、『陰徳あれば陽報あり』(御書一一七八ページ)と教えています。人に知られない善行であっても、明らかな善き報いとなって自らにかえってくるということです。これは人間が生きるうえでの大事な哲学です」
皆、笑顔で頷いた。
(「懸け橋」の章、290~291ページ)
1975年(昭和50年)1月10日、国連事務総長との会談を終えた山本伸一は、同日、日本協会の歓迎レセプションでスピーチ。新しき時代を開く哲学について語ります。
伸一は、核兵器や公害など、現代社会が抱える問題の本質を、「欲望とエゴに突き動かされ、自己をコントロールしえない『人間』そのものの問題」と指摘します。
そして、人類が目指す新しい方向について、①人類がもたなければならない価値観とは、全地球的な視野に立ったもの②人間は生命的存在であるという認識に立つこと――と論じます。この二つの視点に立脚して、「地球人類という普遍の連帯をもつ」ことを訴えます。
現実は国家のエゴが渦巻き、人類の「普遍の連帯」を築くことは至難です。しかし、伸一は「あえて、このインポッシブル・ドリーム(見果てぬ夢)を、私の生ある限り追い求めていきたい」と、参加者の前で宣言します。
池田先生は、日本と中国の間に友好の「金の橋」を架け、ソ連とも文化・教育交流の大道を切り開いてきました。あらゆる差異を超え、不信と対立を、信頼と友情による連帯へと転換してきたのです。
人類が現在のコロナ禍を乗り越えるには、国家や民族を超えた協力が不可欠です。「地球人類という普遍の連帯をもつ」という視座は、さらに重要性を増しています。