創価大学生・女子短大生に贈られた南アフリカの平和運動家マハトマ・ガンジーの令孫 エラ・ガンジー博士のメッセージ(要旨) 2020年10月30日
今月に行われた創価大学の第50回「創大祭」、創価女子短期大学の第36回「白鳥祭」に、南アフリカの平和運動家で、マハトマ・ガンジーの令孫であるエラ・ガンジー博士がメッセージを寄せた。それに先立つ本年3月、博士は両大学の卒業式にメッセージを贈った。しかし、新型コロナウイルスの影響で中止となったため、このほど加筆・修正し、改めて学生たちに届けた。ここでは、その要旨を紹介する。
一、若き学生の皆さんが外の世界に踏み出すとき、そこに重要な問題があることを目の当たりにするでしょう。
拡大する格差、失業、搾取、環境の劣化、不寛容、過激主義、怒り、暴力、大量破壊兵器の開発競争……これらは、人類が直面する問題の一部にすぎません。
こうした問題に向き合ってきたのが、マハトマ・ガンジー、ネルソン・マンデラ博士(南アフリカの人権の闘士)、池田大作博士、マーチン・ルーサー・キング博士(アメリカ公民権運動の指導者)です。これらの人物は、それぞれの時代において、人類が直面する問題に対する重要な答えとして、「人間主義」を掲げました。
結論を先に申し上げれば、全てが悲観的なことばかりではありません。私たちの眼前には社会の悲惨さが広がっていますが、一方で、人間主義に基づいた活動を、静かに、根気強く続けながら、小さくとも意味のある変化をもたらしている、何百万という人々が世界各地にいるのです。
一、ガンジーの言葉に、こうあります。“人類の偉大さは、世界をつくり変える能力にあるわけではない。私たち自身をつくり変えられることにある”
なぜ自身の変革が必要なのか。それは、考え方を変えることによって、自分の感情を上手にコントロールできるようになるからです。そうすると、私たちの行動や反応は変化し、周りにいる人々からも異なる反応を引き出すことができるようになります。こうして私たちが住む世界が変わっていくのです。
さらに、自身の内面の変化は、それまで考えもつかなかった、また、できると感じてこなかった方法で行動を起こすことを可能にします。
創価大学・短大で豊かな教育を受けてこられた皆さんは、ここに挙げた“問題に対処するために必要な能力”をすでに身に付けていると言えるでしょう。
しかし教育は、大学を離れたら終わるものではありません。私たちは皆、広い世界を経験しながら学び続けるのです。学ぶこと、そして人生を変えていくことは、生涯、続いていくのです。
一、“誰もが健全で幸せな生活を送る”という私たちの目標を達成するために必要な「三つの指針」をお伝えしたいと思います。
一つ目は、「自分を批判的に見て、それを習慣とする」ということです。
計画を成功に導くためには、常に評価を行い、そこで得た知見を基に、新しい計画を実施しなければなりません。それは人生においても同様です。
私たちは常に、自己を批判的に見つめながら自分自身を評価し、自分の内面で必要な調整や変更を行っていかなければなりません。そうしないと、成長は止まってしまいます。
私たちは誰でも間違いを犯しますが、当惑する感情を抑え、間違いを認め、新しい目標を設定するには、決断力、勇気、誠実さが求められます。こうした教訓は、誰かに教えられるのではなく、私たち自身が自己管理をしながら学んでいくものなのです。
一、二つ目は「中心的価値を『私』から『私たちと宇宙』へと変える」ということです。
私は、現在の世界的混乱は、自己中心的な考え方が中核にあると捉えています。私たちは、自分たちの行動が他人や地球環境や動物に与える影響について憂慮することなく、より安易な生活を選択することによって、いくつかの大事な問題を、ないがしろにしてしまっているのです。
私たち全員が、中心的価値を「私」から「私たちと宇宙」へと変えていけば、世界に大きなインパクトを与えるでしょう。
現代は、科学技術の発展によって人々の距離が離れていることは問題ではなくなりました。
私たちは、太陽、星、空気、水など周囲のあらゆるもの、そして、新型コロナウイルスや、人類の生存を脅かすかもしれない未知のものに心を配っていかなければなりません。
遠いブラジルの熱帯雨林を焼き払ってしまうような人類の行動が、他の人々の生活、そして環境や世界全般にどのような影響を及ぼすのか。こうした問題は、私たち全員がすぐに取り組んでいかなければなりません。ゆえに、自分たちの行動と、その行動が他の人々や世界に与える影響とを結び付けて考えていくことが、人々の関心を喚起させるのです。
一、最後にお伝えしたいことは「自己をコントロールする」ということです。
目まぐるしく、全てが緊急で走り回らなければならず、時間がお金に換算される世界――こうした世界は人々の心と体に悪影響を与えています。
この世界から抜け出せないとき、私たちは怒りっぽくなり、ねたみっぽくなり、傲慢になることを、私は自身の経験を通して知っています。対立や紛争はここから生まれ、その大きな渦に人類は飲み込まれてしまうかもしれません。
私たちが、こうした“負の感情”をコントロールできるようになれば、幸福、充足感、自尊心を獲得するきっかけとなります。そして、そうなれば、平和はより容易に達成することができるでしょう。
一、どんなに困難な状況であったとしても、交流や議論をもっと盛んにすれば、平和は訪れます。私たちは、壁をつくることをやめなければなりません。今日の世界は、性別、人種、宗教などの違いが強調され、私たちは、「我ら」と「彼ら」という壁をつくり、壁の向こう側の人々のことを知ろうとしません。
キング博士は、“私たちは、どこに向かっていくのか――「混乱」か「結合」か”と問い掛けました。
今、皆さんは、選択ができます。必要な行動を取るかどうか、自分で決めることができます。
私は、こう思うのです。皆さんには知識という武器があり、それを使って社会を建設することができます。皆さんこそ、この国とこの世界の未来のリーダーなのです、と。
アフリカには「ウブントゥ(Ubuntu)」という言葉があります。これは「あなたがいて、私がいる」、あるいは「人間同士の絆」「人間に必要なもの」「互いを慈しみ合うこと」という意味です。
皆さんの大学も、こうした哲学に基づいてつくられたと確信しています。
一、池田博士の深淵な哲学を紹介して結びとしたいと思います。
池田博士は、世界中の紛争、気候変動と人類の存続という問題、核兵器拡散の危険性に対して、“何よりも最初に、人間一人一人の生命、生活、そして尊厳がさらされている脅威に注目しなければならない”と語られています。
また、“この世界とは、何をおいても人々が共に生きていく場所なのだ”との信条を示されました。
私が特に感銘を受けたのは、1975年1月26日、グアムでのSGIが発足した会議のエピソードです。
博士は、会場にあった参加者署名簿の国籍欄に次のように記されたのです。
「世界」――と。
何という先見性でしょうか!
ありがとうございました。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます