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中国の革命作家・魯迅の言論闘争に学ぶ「民衆を救う言葉の力」 

2022年09月24日 | 妙法

中国の革命作家・魯迅の言論闘争に学ぶ「民衆を救う言葉の力」 連載〈勇気の源泉――創立者が語った指針〉2022年9月24日

“勉学に励み、体を鍛え、21世紀の大舞台で、正義のために、平和のために、全てに勝利していきましょう!”――新入生に万感のエールを送る池田先生(2000年4月)
“勉学に励み、体を鍛え、21世紀の大舞台で、正義のために、平和のために、全てに勝利していきましょう!”――新入生に万感のエールを送る池田先生(2000年4月)
●創価大学・女子短大の入学式(2000年4月)

 〈2000年4月に行われた創価大学(第30回)・創価女子短期大学(第16回)の入学式。席上、創立者・池田先生に、中国の北京魯迅博物館から「名誉顧問」の称号が贈られた。式典で先生は、21世紀を担い立つ英知の若人たちに向け、革命作家・魯迅の箴言や生き方を紹介した。
 先が見えない閉塞感が漂う社会の中で、今、多くの人が不安を抱えて生きている。そうした人々の苦悩に寄り添い、希望と活力を送る「言葉の力」について、改めて先生のスピーチに学びたい〉
  
 「第一に重要なことは、いったい何か? それは人間の教育にある。人間が確立していけば、どんな事業でも成し遂げていくことができるからだ」(以下、「文化偏至論」〈伊東昭雄訳、『魯迅全集』1所収、学習研究社〉を参照)
 これこそ、わが尊敬する魯迅先生の根幹の思想の一つであります。
 「勇猛にして恐れなき人間をつくれ!」「剛毅にして不屈の人物を育てよ!」「人類の尊厳のために、万難を排して、断固として前進する青年よ、登場せよ!」
 魯迅先生は、こう主張してやみませんでした。
 わが創価大学は、「民衆のため」「平和のため」「世界のため」という明確なる目的を掲げた大学であります。
 私は、この創価大学こそ、人類史が待望する揺るぎなき信念の人材群を育成しゆく「希望の教育の城」であっていただきたいと念願する一人であります。民衆を忘れ、未来を忘れて、「就職のため」「立身出世のため」だけになってしまえば、もはや大学は必要ないのであります。

創価大学の第30回、創価女子短期大学の第16回入学式。席上、池田先生の北京魯迅博物館「名誉顧問」就任を記念して、魯迅の子息の周海嬰氏(右端)が見守る中、魯迅の故郷・紹興を描いた絵画が贈られた(2000年4月、創大池田記念講堂で)
創価大学の第30回、創価女子短期大学の第16回入学式。席上、池田先生の北京魯迅博物館「名誉顧問」就任を記念して、魯迅の子息の周海嬰氏(右端)が見守る中、魯迅の故郷・紹興を描いた絵画が贈られた(2000年4月、創大池田記念講堂で)
「論争」の時代

 〈“魯迅がつづり残した不滅の哲学は、世紀を超えて青年に多くのメッセージを伝えている”と訴える池田先生は、魯迅に学ぶべき人生の視座を学生たちに語りかける〉
  
 その一つとして、「忍耐強く、徹して学びぬけ!」ということが挙げられるのであります。(以下、顧明遠『魯迅―その教育思想と実践』〈横山宏訳、同時代社〉を参照)
 魯迅先生は、口先の理想や格好いい言葉やスローガンを叫ぶだけの青年には、まことに厳しかった。そういう人間を軽侮した。それでは、現実に「民衆を救う力」は持てないからであります。
 民衆と「直結」でいくのです。自分中心ではなく。
 私自身、創価学会の会長となって以来、40年間、ただ会員の皆さまのために、寸暇の休みもなく戦ってきました。人々に社会に貢献する心で、私自身の一切を、創価学会に、そして創価大学、学園等に捧げてきました。それが私の人生であります。
 皆さんは、決して恵まれた環境ではないかもしれない。しかし、苦労して、働きながら、また民衆とつながりながら、学んでいく。それが本当の「勉強」であると私は思う。
 魯迅先生もまた、「苦しさに耐えて学問を求めよ!」と、謙虚にして地道な粘り強い研鑽を訴えたのであります。
  
 さらに私は、魯迅先生の青年教育を通して、皆さま方に申し上げたい。「正義を叫びぬく、戦う知性たれ!」と。
 ある時、魯迅先生のもとにやってきた一人の青年が、現実社会の行き詰まりを嘆いて、弱々しく愚痴をこぼした。(以下、石一歌『魯迅の生涯』〈金子二郎・大原信一訳、東方書店〉から引用・参照)
 「いまわれわれには自由に大声で笑い、叫び、罵れる場所があまりないのです……」
 すると、すかさず魯迅先生は、鋭く問い返した。
 「では、なぜ自分で発言の場所を作らないのです?」と。
 青年よ、敢然と大胆に、声をあげたまえ!――これが、魯迅先生の一貫した叱咤でありました。若人にとって、臆病な沈黙は「敗北」です。魂の「死」であります。
  
 魯迅先生は、仏法についても研究を深めておられました。仏法では「末法」、つまり「現代」という時代の様相を、「闘諍言訟」と言い表しました。すなわち、「戦い」「争い」「論争」の時代であると説いているのであります。
 この時代にあって、何が大切か? 私の師匠である戸田先生は、こう教えました。
 「戦いの勝利の原理は『勇気』と『忍耐』と『智慧』である」と。そして「言論は、機関銃のごとく! 大砲のごとく!」と。
 ともあれ、「雷鳴がとどろいて万物を冬眠から呼び起こすように」(「破悪声論」伊藤虎丸訳、『魯迅全集』10所収、学習研究社)、複雑な時代を、そして複雑な社会を覚醒させてゆく「正義の大声」を、青年が胸を張り、堂々と叫び切っていくことを、魯迅先生も信じ、期待していたのであります。
 わが創大生こそ、この魯迅先生の期待に応えて、先頭に立って、勇敢に恐れるものなく戦い、また戦って、偉大なる「青春の歴史」を、「不滅の自分史」を、つくっていっていただきたいのであります。

魯迅(1881~1936年) ©Bettmann/Getty Images
魯迅(1881~1936年) ©Bettmann/Getty Images
悪には容赦なく

 〈魯迅は、青年時代の1902年春に日本に留学し、牧口先生と縁ある教育機関で学んだ。池田先生は、その歴史を紹介し、同時代を生きた二人の信念の歩みに光を当てる〉
  
 魯迅先生が日本留学の第一歩を踏み出したのが、有名な「弘文学院」であります。この弘文学院では、ほぼ同時期に、若き牧口先生も、中国の英才たちに、「人生地理学」を講義しました。
 光なき暗い時代にあって、魯迅先生と牧口先生は、ともに正義のため、人道のために殉じていかれました。その思想と人生は、奥深く共鳴しあっております。
 なかんずく、お二人の最大の共通点は何か?
 それは、迫害の連続のなかで、最後の最後まで、悪と徹して戦いぬいた点であります。
 中国の文化史を通じて、魯迅先生ほど、あらゆる勢力から攻撃を受けた偉大な知性の方はいない、と言われております。
 魯迅先生も、売らんがための雑誌によって、つねに悪口を捏造され、書き立てられたのでした。
 また巨大な魯迅先生に敵対することで、自分たちを大きく見せようとする連中も、渦巻いていました。いつの時代にも見られる、浅ましい「妬み」と「謀略」の構図が、ここにあるのです。
 しかし、魯迅先生は、そうした輩に対しては、憤然と反撃していかれました。
 “利害にとらわれた知識階級などニセ者である”(「知識階級について」須藤洋一訳、『魯迅全集』10所収、学習研究社、参照)、“歴史上、陰謀によって文豪になった人間など、いない”(「310202 韋素園宛 書簡」深澤一幸訳、同全集14所収、参照)等々――魯迅先生の反論は、まことに痛烈でありました。
  
 魯迅先生は、どこまでも虐げられた民衆の側に立って、あらゆる邪悪を容赦なく攻めて、攻めぬいていったのであります。悪との戦いにあって、魯迅先生は中途半端な妥協は、絶対に許さなかった。それは、なぜか。
 魯迅先生は、断言されております。「光明と暗黒とが徹底的にたたかうことをせず、実直な人が、悪を見のがすのを寛容と思い誤って、いい加減な態度をつづけてゆくならば、今日のような混沌状態は永久につづくだろう」(竹内好編訳『魯迅評論集』岩波文庫)と。
 この深き哲学を、諸君も、よくよく胸に刻んでいただきたいのであります。ここにこそ、心から尊敬できる「戦う知性」の使命があり、責務があるからであります。

険しき山に挑め

 〈結びに池田先生は、新たな世紀の主役たる創大・短大の新入生へ指針を贈る〉
  
 ちょうど、40年前(=1960年)、私は、第3代会長就任を前に、日記に、魯迅先生の随筆「生命の道」の一節を書き記しました。その言葉を、大切な新入生の皆さまに贈りたい。
 「道とは何か。それは、道のなかったところに踏み作られたものだ。荊棘ばかりのところに開拓してできたものだ。むかしから、道はあった。将来も、永久にあるだろう。人類は寂しいはずがない。なぜなら、生命は進歩的であり、楽天的であるから」(前掲『魯迅評論集』)
 また、19世紀、ロシア最高峰の文芸評論家と言われたベリンスキーは、叫んだ。「精神には、肉体と同様に、運動が必要である。それなしに何もせず、無力になれば、精神は衰える」。そして、「人間性とは、人類愛のことである。それは、自覚や教育によって育まれるものである」。
 さあ、太陽のごとく昇りゆく、若き新入生諸君! 新しき学問の大道を、新しき自己の建設の坂道を、そしてまた、自分自身の勝利へ、自分の決めた眼前にある険しき山を、登り切っていってくれたまえ!――そう申し上げたいのであります。
  

 ※スピーチは、『池田大作全集』第142巻から抜粋し、一部表記を改めた。

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 kansou@seikyo-np.jp
 ファクス 03-5360-9613

 
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