中国経済、頼みの綱の「EV市場」までも沈没…!〈給料が支払えない〉〈生産停止〉ヒト・モノ・カネの海外流出が止まらない
3/4(月) 7:19配信
現代ビジネス
EVメーカーが「淘汰」される…
足許、経済指標が示す以上に、中国経済は厳しさを高まっているようだ。
20日、中国人民銀行(中央銀行)は、期間5年超の最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート、住宅ローン金利の目安)を年4.20%から3.95%に引き下げた。
住宅ローン金利を低めに誘導することで、不動産市況の悪化に歯止めをかける意図が見えるものの、不動産価格の下落に歯止めが掛からない。
景気の先行き懸念は高まり、債務の返済を急ぎ支出を減らす個人や企業も増えた。
そうした要因もあり、1月、電気自動車(EV)の販売が前月比37%減と大幅に減少した。乗用車全体でも同14.1%の減少だった。
地方政府の販売補助金打ち切りによる販売減少、低価格競争の激化などで、これまで好調を維持してきたEVメーカーは淘汰の波を受けることが予想される。
一般庶民の中にも、経済的困難から海外に脱出する人も増えている。2019年以降で110万人以上が中国を離れたとの報道もある。
新築住宅販売も下落
海外進出を重視する企業も増えた。財政状況が悪化する地方政府が増えているなかで、財政出動は難しい。
支出より借金返済に注視する社会になっているため、景気の本格的な回復には時間が掛かるだろう。そうした状況下では、金融緩和策の効果は限られる。
中国経済の先行き不透明感は高まり、ヒト・モノ・カネの海外流出はさらに進んでいきそうだ。
中国の景気低迷は一段と深刻だ。1月、主要70都市の新築住宅価格は前月比0.37%下落した。
中国指数研究院によると、春節連休中の新築住宅販売(成約面積ベース)は前年同期比約27%減少した。
地方を中心に、マンションなど不動産価格はまだ下がるとの見方は多い。
限界が近づいている
不動産市況の悪化を食い止めるために、中国人民銀行は5年超の最優遇貸出金利を引き下げ、住宅需要の喚起を図った。
これまで、中国政府は銀行融資を促すため預金準備率を引き下げ、中長期の資金供給も強化したが、追加利下げには慎重だった。
その背景には、米国との金利差が拡大し、人民元が下落する展開を避ける意図があった。
しかし、地方政府の財政悪化で大型の景気対策の発動は難しい。結果的に、中国人民銀行は景気下支えのため追加利下げを余儀なくされた。
ただ、デフレ圧力が高まる中で金融を緩和しても、その効果は限定的になる。
既に、金融政策の限界は近づいているとみるべきだ。不動産市況の悪化によって、消費者心理は一段と冷え込み、企業の事業運営に対する負の影響も増大傾向だ。
半年「生産停止」になったEVメーカー
そうした動きは、EVメーカーをも直撃している。2月20日、EVメーカーの“華人運通”は少なくとも半年間、生産を停止すると報じられた。
2月末に1月分の給料を支払った後、同社は従業員への給与額を最低賃金レベルに引き下げる模様だ。
BYDのように急速にEVの生産体制を強化し、積載用の電池の生産能力を引き上げる企業はある。
しかし、経済全体で支出抑制の圧力が高まり需要は減少し、値下げ競争の激化によって破たんするEVメーカーは増えた。
華人運通の生産停止は、中国経済の苦境が一段と深まったことを示唆する。
当面、中国経済の低迷懸念は高まり、デフレ傾向も強まる可能性が高い。それに伴い、海外に生活の場を移す個人は増加傾向だ。
大手企業は海外シフトへ
これまで、カナダやオーストラリア、米国などに移住し、資産を運用したり、より安定かつ自由な経済環境を手に入れたりしようとする富裕層は多かった。
足許では、海外に移り住む中間層の市民も増加傾向だ。
南米経由で米国入国を試み、メキシコ国境で拘束される人は増えた。多くが一般の市民だという。
距離的に近いタイでは、ゼロコロナ政策が長引く中で中国人の移住が増加し、不動産価格が押し上げられる地域も増えた。
習政権は権力基盤の強化を優先している。一方、不動産バブル崩壊への対応は後手に回った。経済環境の悪化懸念を強める市民は増えるだろう。
主要企業の海外進出も勢いづいた。EV分野ではタイ、ハンガリー、ブラジルに次いでメキシコでもBYDが生産を目指す。
シーインはロンドンでIPO
中国、米国の2大市場、EV重視姿勢が強まった欧州市場などに、より航続距離の長いEVを投入してシェアを高める戦略は明確だ。
一方、中国国内では、海外進出の強化が難しく淘汰される中国EV関連企業は増えるだろう。
新興企業の海外重視姿勢も鮮明だ。アパレル通販企業のSHEIN(シーイン)は本土や香港ではなく、ロンドンでの新規株式公開(IPO)を目指す。
米中対立によって米国市場での上場は難しくなったのだろう。今のところ、成長期待の高い企業の力は景気回復につながっていない。
在来分野でのゾンビ企業の延命が続き、IT先端企業への締め付けが強まるとの不安も根強い。
そうした経済政策が続く間、中国経済の低迷懸念は追加的に高まるだろう。
ーーー
連載<中国株、政府の買い入れ指示で「反発」も長期低迷は確実視…習近平、IT企業の「締め付け」で大誤算>もあわせてお読みください。
https://gendai.media/articles/-/124723?utm_source=yahoonews&utm_medium=related&utm_campaign=link&utm_content=related
真壁 昭夫(多摩大学特別招聘教授)
3/4(月) 7:19配信
現代ビジネス
EVメーカーが「淘汰」される…
足許、経済指標が示す以上に、中国経済は厳しさを高まっているようだ。
20日、中国人民銀行(中央銀行)は、期間5年超の最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート、住宅ローン金利の目安)を年4.20%から3.95%に引き下げた。
住宅ローン金利を低めに誘導することで、不動産市況の悪化に歯止めをかける意図が見えるものの、不動産価格の下落に歯止めが掛からない。
景気の先行き懸念は高まり、債務の返済を急ぎ支出を減らす個人や企業も増えた。
そうした要因もあり、1月、電気自動車(EV)の販売が前月比37%減と大幅に減少した。乗用車全体でも同14.1%の減少だった。
地方政府の販売補助金打ち切りによる販売減少、低価格競争の激化などで、これまで好調を維持してきたEVメーカーは淘汰の波を受けることが予想される。
一般庶民の中にも、経済的困難から海外に脱出する人も増えている。2019年以降で110万人以上が中国を離れたとの報道もある。
新築住宅販売も下落
海外進出を重視する企業も増えた。財政状況が悪化する地方政府が増えているなかで、財政出動は難しい。
支出より借金返済に注視する社会になっているため、景気の本格的な回復には時間が掛かるだろう。そうした状況下では、金融緩和策の効果は限られる。
中国経済の先行き不透明感は高まり、ヒト・モノ・カネの海外流出はさらに進んでいきそうだ。
中国の景気低迷は一段と深刻だ。1月、主要70都市の新築住宅価格は前月比0.37%下落した。
中国指数研究院によると、春節連休中の新築住宅販売(成約面積ベース)は前年同期比約27%減少した。
地方を中心に、マンションなど不動産価格はまだ下がるとの見方は多い。
限界が近づいている
不動産市況の悪化を食い止めるために、中国人民銀行は5年超の最優遇貸出金利を引き下げ、住宅需要の喚起を図った。
これまで、中国政府は銀行融資を促すため預金準備率を引き下げ、中長期の資金供給も強化したが、追加利下げには慎重だった。
その背景には、米国との金利差が拡大し、人民元が下落する展開を避ける意図があった。
しかし、地方政府の財政悪化で大型の景気対策の発動は難しい。結果的に、中国人民銀行は景気下支えのため追加利下げを余儀なくされた。
ただ、デフレ圧力が高まる中で金融を緩和しても、その効果は限定的になる。
既に、金融政策の限界は近づいているとみるべきだ。不動産市況の悪化によって、消費者心理は一段と冷え込み、企業の事業運営に対する負の影響も増大傾向だ。
半年「生産停止」になったEVメーカー
そうした動きは、EVメーカーをも直撃している。2月20日、EVメーカーの“華人運通”は少なくとも半年間、生産を停止すると報じられた。
2月末に1月分の給料を支払った後、同社は従業員への給与額を最低賃金レベルに引き下げる模様だ。
BYDのように急速にEVの生産体制を強化し、積載用の電池の生産能力を引き上げる企業はある。
しかし、経済全体で支出抑制の圧力が高まり需要は減少し、値下げ競争の激化によって破たんするEVメーカーは増えた。
華人運通の生産停止は、中国経済の苦境が一段と深まったことを示唆する。
当面、中国経済の低迷懸念は高まり、デフレ傾向も強まる可能性が高い。それに伴い、海外に生活の場を移す個人は増加傾向だ。
大手企業は海外シフトへ
これまで、カナダやオーストラリア、米国などに移住し、資産を運用したり、より安定かつ自由な経済環境を手に入れたりしようとする富裕層は多かった。
足許では、海外に移り住む中間層の市民も増加傾向だ。
南米経由で米国入国を試み、メキシコ国境で拘束される人は増えた。多くが一般の市民だという。
距離的に近いタイでは、ゼロコロナ政策が長引く中で中国人の移住が増加し、不動産価格が押し上げられる地域も増えた。
習政権は権力基盤の強化を優先している。一方、不動産バブル崩壊への対応は後手に回った。経済環境の悪化懸念を強める市民は増えるだろう。
主要企業の海外進出も勢いづいた。EV分野ではタイ、ハンガリー、ブラジルに次いでメキシコでもBYDが生産を目指す。
シーインはロンドンでIPO
中国、米国の2大市場、EV重視姿勢が強まった欧州市場などに、より航続距離の長いEVを投入してシェアを高める戦略は明確だ。
一方、中国国内では、海外進出の強化が難しく淘汰される中国EV関連企業は増えるだろう。
新興企業の海外重視姿勢も鮮明だ。アパレル通販企業のSHEIN(シーイン)は本土や香港ではなく、ロンドンでの新規株式公開(IPO)を目指す。
米中対立によって米国市場での上場は難しくなったのだろう。今のところ、成長期待の高い企業の力は景気回復につながっていない。
在来分野でのゾンビ企業の延命が続き、IT先端企業への締め付けが強まるとの不安も根強い。
そうした経済政策が続く間、中国経済の低迷懸念は追加的に高まるだろう。
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連載<中国株、政府の買い入れ指示で「反発」も長期低迷は確実視…習近平、IT企業の「締め付け」で大誤算>もあわせてお読みください。
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真壁 昭夫(多摩大学特別招聘教授)