物価目標実現が「見通せる状況」、出口の検討必要-高田日銀委員
伊藤純夫
2024年2月29日 10:49 JST 更新日時 2024年2月29日 16:00 JSTブルームバーグ
持続的な物価上昇の実現につながり始めた、ノルム転換の変曲点に
緩和のギアを一段下げてもいい、3・4月会合「考えて対応したい」
日本銀行の高田創審議委員は29日、2%の物価安定目標の実現が見通せる状況になってきたとし、強力な金融緩和からの出口対応に向けた検討が必要との見解を示した。滋賀県金融経済懇談会で講演した。
高田氏は、先行き不確実性はあるものの、「2%の物価安定の目標実現がようやく見通せる状況になってきた」と言明。ポイントとなる今年の春闘でも多くの企業が昨年以上の賃上げ方針を示すなど「賃上げ機運が高まっている」とし、「持続的な物価上昇の実現につながり始めた」と語った。
こうした状況を踏まえた金融政策運営は、緩和効果と副作用のバランスも念頭に置きながら、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の枠組みやマイナス金利の解除、オーバーシュート型コミットメントの在り方など「出口への対応も含め機動的かつ柔軟な対応に向けた検討も必要」と言及。現在の極めて強い金融緩和からの「ギアシフト」が必要との認識を示した。
正副総裁の正常化に前向きな発言や底堅い消費者物価を受けて、3月か4月の金融政策決定会合でマイナス金利を解除するとの観測が市場で強まっていた。高田氏の発言は一段と踏み込んだもので、大規模緩和からの出口に向けた政策委員会内の議論が大きく前進する可能性がある。3月の金融政策決定会合は18、19日に開かれる。
高田氏は賃金・物価動向に関し、原材料価格高騰の財価格への転嫁、賃上げコスト上昇分のサービス価格への転嫁、予想物価上昇率の底上げという三つの段階を経て、賃金や物価は上がらないと考える規範(ノルム)が「ようやく転換する変曲点を迎えている」と述べた。
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Source: Bloomberg Intelligence
利上げどんどんしない
午後の記者会見では、金融政策運営について「非常に強い緩和の状況からギアを一段下げてもいいと思う」と指摘。あくまでもギアのシフトであって「バックするわけではない」とし、マイナス金利を解除しても緩和状態を維持して「どんどん利上げをするということではない」と語った。
3月会合で解除する可能性に関しては「3週間近く先であり、どのような判断をするかは、その場になって考えたい」と述べるにとどめた。物価目標の実現が「ある程度、視野に入ってきている」とし、「そうした認識に沿って、3月においても、その次においても考えながら対応していきたい」との考えを示した。
高田氏の講演後に、外国為替市場では円が対ドルで一時149円70銭まで上昇し、債券相場は下落に転じた。ただ、会見での「どんどん利上げをするということではない」との発言を受けて、円が上げ幅を縮小する場面もあった。
他の発言
企業の投資や賃上げに対する前向きな動きを最終的に確認したい
長短実質金利、政策を少々変更してもマイナス幅大きく縮小しない
ギアシフトの中にさまざまな選択肢、パッケージもあり得る
高田氏は、みずほ総合研究所副理事長や岡三証券グローバル・リサーチ・センター理事長などを歴任したエコノミストで、2022年7月に審議委員に就任した。昨年9月の講演では、2%の物価安定目標の達成に向けた芽がようやく見えてきたとし、金融政策運営は大規模緩和を継続するとともに、先行きの経済・物価情勢を踏まえて機動的に対応する必要もあるとの見解を示した。
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(記者会見での発言をブレットポイントで追加して更新しました)
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