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社説にみる国家意識

2006年03月14日 | Weblog
 今日は、米軍再編に伴う岩国住民投票に対する愛国度(亡国度)を赤裸々にチェックしてみようと思う。チェック方法というのは至って簡単で、全国紙のこの問題に関する社説を読んだ上での感想とする。

 3月13日付け朝日新聞:

 岩国住民投票 地元無視のツケだ

 江戸時代、大名行列が他藩の城下を通るときは、立てていた槍を倒すのが儀礼だった。しかし、現在の山口県東部にあたる周防国の岩国藩は6万石の小藩のため、大藩は槍を立てたまま通った。憤慨した藩士達は、道にかぶさるように枝を張った松を植えて、槍を倒させたという。
  
 日米両政府が進めてきた米軍再編に、岩国市が住民投票で「ノー」という意志表示をした。強者に物申すという点では、故事に通じるものがある。地元に十分相談せず、結果だけを押し付ける高飛車なやり方に反発したのである。
 
 3月に迫った最終報告のとりまとめの期限を前に、政府には痛烈な打撃だ。小泉首相は従来のスケジュールに「変わりはない」と強気だが、政府内からは「期限には必ずしもこだわらない」とう声も聞こえ始めている。

 全国各地で新たな基地や米軍機の受け入れの是非か問題になる中で、初めての住民投票だった。ここで政府が日米間の約束を最優先する余り、地元を無視するような態度をとり続ければ、反発は他の地域にも波及し、収拾がつかなくなる恐れがある。

 しゃにむに採取報告をまとめるようなことがあってはならない。政府は約束の期限を延ばしてでも、地元との調整を続けるべきだ。

 新たな空母艦載機の受け入れの是非を問うた今回の住民投票では、投票率が58%で、87%が反対票を投じた。投票率が50%に達しなければ開票されない規定があることから、基地の経済効果に期待する賛成派は、ボイコット採った。だから、9割近くが反対という数字は額面どおりには受け取れない。

 だが、反対票を数えると、有権者総数の過半数を占める。朝日新聞の出口調査では、投票した人の3分の1以上が自民党支持層で、その8割以上が反対票を投じた。基地との共存に理解を示していた保守層にも異論が出ているのだ。

 この投票結果に法的な拘束力はない。安全保障は一義的には国政にかかわるもので、自治体が直接責任を負えるものではない。だが、実際に負担を引き受けるのは市町村である。だからこそ、6割近い住民が投票所に足を運び、自分の考えを表明したのだろう。

 日米同盟が重要だという点では、多くの国民に異論はあるまい。だが、諸手を挙げて基地を引き受ける自治体はない。そうだとすれば、丁寧な説明や説得こそ欠かせない。そうした肝心なことを怠って、頭ごなしに進めてきたツケが回ってきている。

 最終報告の期日を守らなければ、日米同盟の信頼性が揺らぐ。それが政府の言い分だ。米側からは、地元の説得にいつまでかかっているんだと言わんばかりの苛立ちも聞こえてくる。

 しかし、民意に支えられない同盟の基盤はもろい。強行突破は、かえって日米関係を傷つけることになる。


 3月13日付け読売社説:

 「岩国住民投票」「それでも在日米軍再編は必要だ」

 山口県岩国市の住民投票で、在日米軍再編に伴う米空母艦載機移駐計画に「反対」とする票が多数を占めた。

 投票率は59%で、移駐反対票が賛成票を大きく上回った。新たな基地負担を避けたいという感情が住民の間に強いことを示すものだろう。

 投票結果には、法的拘束力はない。だが、米軍再編を円滑に進めるため、政府として、地元の理解を得るよう最善の努力を尽くすのは当然だ。

 日米両政府が合意した計画では、神奈川県米海軍厚木基地の空母艦載機57機と米兵1600人を米海兵隊岩国基地に移駐する。その代わりに、岩国基地の開城自衛隊機17機と隊員700人を海自の厚木基地へ移す。

 在日米軍再編は、北朝鮮の核開発、中国の軍事大国化という安全保障環境の変化や、国際テロなどの新たな脅威に対処するが目的だ。日米同盟を強化し、日本の安全保障を、より強固なものとする上で、極めて重要な課題だ。

 住民投票自体には、様々な問題が指摘されていた。

 岩国市の住民投票条例では、投票率が50%に満たない場合、住民投票は不成立となる。そのため、移駐反対派は「反対」の投票を呼びかけ、移駐容認派は「棄権」するよう訴えていた。投票が成立すれば、圧倒的な反対多数の結果になることは当初から予測されていた。

 岩国市の井原勝介市長は、地元の意志を国に示す必要があるとして、自ら住民投票を発議した。

 しかし、岩国市の条例は、「市の権限に属さない事項は」住民投票の対象外と定めている。住民からも、「移駐計画は国の専管事項で、住民投票条例にはそぐわない」との声が上がっていた。

 岩国市は20日に周辺7町村と合併し、4月には、新岩国市の市長選が行われる。住民には、住民投票自体が市長選への選挙運動だ、という指摘もあった。移駐に理解を示す周辺市町村もある。合併直前に岩国市だけが住民投票を実施したことに疑問の声も出ていた。

 こうした事情を考慮すれば、今後岩国市側も、いたずらに政府と対立し、混乱を招くことがあってはなるまい。

 政府と地元自治体は、住民の利益に十分配慮しつつ、しっかりと国益を守るよう、誠実に協議することが大事だ。

 沖縄の米海兵隊普天間飛行場移設問題など、地元との調整でなお難題は少なくない。日本側の事情で再編計画が遅れては、日米、の信頼関係が損なわれる。政府は、月内を目標とする日米最終合意に向け、全力を挙げなければならない。


 3月14日付け毎日新聞社説:

 岩国住民投票「民意」の中身を吟味したい

 米空母艦載機の岩国基地移転の賛否を問う山口県岩国市の住民投票は、「反対」が87%に達し、投票資格者の半数を超えた。数字の上では、地元市民が米軍再編ににノーを突きつけた。

 岩国市の井原勝介市長は、政府に米空母艦載機の移転計画の撤回を正式に申し入れる。

 住民投票の結果が法的な拘束力を持たないとはいえ、政府は投票結果を重く受け止める必要がある。在日米軍再編の最終報告の取りまとめを今月末に控え、政府は苦しい立場に立たされた。

 在日米軍の再編に当たっては、「抑止力を維持し負担の軽減を図る」というのが日米政府の基本的な考えだ。日本政府としては地元の意向を踏まえ、負担軽減を米側に要求してきた。

 しかし、岩国基地の場合、1キロ沖合いに滑走路が完成する09年3月以降に米海軍厚木基地(神奈川県)の空母艦載機57機と米兵1600人を移駐する計画が中間報告に盛り込まれた。その一方で、岩国基地から海上自衛隊機17機、隊員600人を厚木基地に移転させることになっているが、地元からみれば明らかに「負担増」だ。

 このため政府は基地周辺の騒音対策などのほか、基地の負担増を埋め合わせるため地域振興対策などを検討する考えだ。地元の要望を聞く準備もしている。

 ところが、井原市長は「賛成」か「反対」かをはっきり決着をつけようと住民投票を発議した。賛否だけを問う住民投票だけに、結果は「反対一色」に染まった。

 岩国市が国から交付される周辺対策費などは、年間約27億円にのぼる。基地経済に支えられ「共存」してきただけに、地域振興のために空母艦載機移駐を受け入れるべきだという住民もいる。「賛成」「反対」だけでなく、「どちらかといえば・・・・・」もいるはずだ。

 間接民主主義では、重要な施策は市長や市議会が判断するのが原則だ。井原市長は「直接市民の意志を確認したい」と住民投票したが、釈然としないものが残る。20日に周辺7町村と合併する。4月23日には市長選が行われる。その市長選で新たな市民も含めた民意を問うことができたのではとの疑問も消えない。

 政府はあくまで岩国基地への空母艦載機の移転を進める考えだ。地方自治は尊重しなければならない。だが、住民投票で否定されたからといって、計画を白紙に戻すわけには行かない、という政府の言い分も理解できる。

 今回の住民投票は、岩国市民のさまざまな思いがつまった「民意」である。そこには同時に国民の多くが在日米軍の再編に対して抱いている疑問や懸念が含まれていると言えないだろうか。

 消化不良のまま日米協議が進むことに国民の間に不安がある。日米の連帯強化で日本の安全が強固になる一方で、歯止めはどうなるかと危惧する声もある。

 在日米軍の再編には、多くの国民の支持と理解が必要だ。その意味でも政府は今回の岩国市の住民投票を十分吟味すべきだ。


 3月14日付け産経新聞社説:

 主張 岩国住民投票 国の安全はどうするのか

 山口県岩国市の住民投票は、厚木基地の米空母艦載機の岩国基地への移駐案受け入れに反対する意見が多数を占めた。これに対し、政府は日米が昨年十月に合意した移駐案を堅持する方針だ。

 安倍信三官房長官は十三日、「基本的に日米間交渉が整えば、それが最終結論だ」と述べた。住民投票に法的拘束力はなく、日本が置かれている安全保障環境を考えれば、政府の対応は当然である。

 移駐案は、岩国基地沖合いに滑走路が完成する平成二十年度以降、空母艦載機五十七機と米兵千六百人を移すなどの内容だ。

 額賀福志郎防衛庁長官が「岩国移駐は日本の安全保障面から、是非とも実現しなければならない」と語ったように、今回の案は米軍の抑止力維持と地元負担の軽減を両立させようという米軍再編計画の一つである。特に艦載機の移駐は中国や北朝鮮を見据えたものであることも間違いない。

 急速に軍事力を強化する中国や、今月八日に二発の短距離ミサイル発射実験をした北朝鮮、更には国際テロなどの脅威に立ち向かうため、日米は共同して対処することを昨年の外務、防衛閣僚による日米安保協議委員会(2プラス2)で確認しているのだ。

 そもそも国民の平和と安全を守るという国家の最大の責務に属する日本の安全保障の問題を、一地域の住民投票にかけること自体が適切ではない。住民投票は市町村合併など自治体で自己完結するテーマに限るべきだ。

 しかも岩国市は二十日に周辺七町村と合併し、現在の市の住民投票条例は失効する。住民投票を自ら発議した井原勝介市長も十九日で失職する。四月の新市長選で改めて移駐の是非が問われる。井原市長は十二日の記者会見で「国防政策は国の責任で、地元が左右する権限はない」と語った。移駐案は条例で定めた住民投票の対象外と認めたのなら、今回の住民投票は一体、何だったのか。

 平成九年に名護市で普天間飛行場移設をめぐる住民投票が行われたが、更なる混乱を招いた。移設問題は今もなお実現のめどがついていない。

 国全体の公益を踏まえながら、地域の果たす責務を考えるという分権のあるべき姿を忘れてはなるまい。


 これが、「厚木基地の米空母艦載機の岩国基地への移設」と「岩国住民投票」に関しての「朝日」、「読売」、「毎日」、「産経」の主要全国紙の共通の政治問題に関する社説を読み比べてみると、自ずと「どの新聞を読むべきか」が明らかになると思う。

 新聞もいろいろであるが、「無国籍、無責任」な火事場の野次馬の視点に立ち、悪戯(いたずら)に地元の被害者意識だけを煽るような新聞が「日本の主要紙」の一翼いやいや二翼かもしれない。そこで、彼らに問いたいのだが、「彼らの口車に乗って、日本国が滅亡に追い遣られた際は、我々は『何人』と名乗ればよいのであるか?」、それも、万一生き延びればの話であるが。