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ダンナのぼやき

あられダンナの日々のぼやきです。
色んな事を思い、考えぼやいてます…。

マイケル・キスクという男

2014-07-13 17:11:50 | 音楽
マイケル・キスク。

個人的に、この人ほど愛憎入り乱れる複雑な感情を抱くシンガーはいない。

この人の存在を初めて知ったのは、僕が中学2年生の頃だった。
当時、毎日のように通っていたレコード屋さんがあった。
そこの店長さんに「最近ウチに入って来る様になって、カッコ良いって言うお客さん多くて売れてる」と勧められ、あるアルバムを買った。
そのアルバムこそ『Walls of Jericho』であり、僕とHELLOWEENの最初の出逢いだった。



数ヶ月後、この前のバンドの最新作が出たと言われ迷わず買った。
それが他でもない、あの『Keeper of the Seven Keys Part I』だった。
ウチに帰って、レコードを聴き始めた瞬間凄まじい衝撃を受けた。
勿論『Walls of Jericho』も素晴しいアルバムだったが、この『Keeper of the Seven Keys』は全てが桁外れだった。
バンドのパフォーマンス、楽曲、サウンド・プロダクション、全てが「完璧」としか言えなかった。
何より14歳だった僕に、一番衝撃を与えたのがバンドに5人目のメンバーとして加入したマイケル・キスクというシンガーの存在だった。



聞けば、このシンガーはまだ18歳だと言う。
深みがある力強い中低音、天駆けるように何処まで伸びる美しいハイトーン。
自分が知っているロニー・ジェイムズ・ディオ、ロブ・ハルフォードやジェフ・テイトといったシンガーに匹敵する存在。
自分と4歳程しか変わらない人物が、こんなにも凄い声で唄っていると言う事実。
この衝撃は純粋に憧れとなり、HELLOWEENというバンド、そしてマイケル・キスクというシンガーは特別な存在となった。
しかし、ソレは決して長くは続かなかった…。
『Keeper of the Seven Keys Part II』リリース以降、HELLOWEENというバンドは何かと不安定になっていく。
今現在のメタル・シーンにあっても、この『Keeper of the Seven Keys Part I & II』は絶大な影響を持っている。
それはHELLOWEENというバンドの音楽的方向性を決定的なモノとし、バンドにとって大きく重い「十字架」となってしまった。
音楽的方向性と、バンド内でのメンバー間の不仲とエゴの衝突によって、事実上HELLOWEENというバンドは完全に崩壊してしまう。
バンドの再生させる為に、リーダーのマイケル・ヴァイカート(G)はキスクを解雇する。
ヴァイカートは当時キスク解雇について、独裁的と多くの批判を受けながらも辛辣ながらもハッキリと言い切った。
「あのエルヴィス野郎(キスクはエルヴィス・プレスリーの大ファン)をクビにした」と…。
後に救世主アンディ・デリスの加入によって、HELLOWEENというバンドは不死鳥の様に再生して今もメタルの最前線にて活躍をしている。



例えHELLOWEENを去ったからと言っても、キスクというシンガーがまだ特別だった事には変わりなかった。
先のヴァイキーの発言ではないが、キスク自身もバンドを解雇されたショックは大きかったのは事実だ。
まるでHELLOWEENの音楽的低迷の責任は、キスク一人の責任による「戦犯」扱いをされた。
メンバー間の不仲やエゴ、音楽的方向性の巡る確執はキスクに大きな“傷”となっていたと思われる。
そんなキスクからファンにとって、決定的とも言える衝撃的な発言が飛び出す。
「ヘヴィ・メタルなんか大嫌いだ、もう二度と唄いたくない!」。
コレを聞いた時、多くのファンは正直落胆し裏切られたような気持ちになった…僕もその1人だ。
これまでも憧れも敬意も、その一言によって木っ端微塵に砕け散った。
この後、キスクはソロ・アーティストとして活動を続けるようになる。
一時期、マネージャーの関係もあってかIRON MAIDENへの加入も噂されたがキスク本人によって否定された。
ただキスク自身興味に無かった訳ではないだろう(一時思わせぶりな発言もしていた)。
ただ「メタルが嫌い」と公言する人物が、よりによってIRON MAIDENに加入する訳がない(苦笑)。
その後、ソロ・アルバムや幾つかのプロジェクトに参加していたが次第にマイケル・キスクというシンガーの名はシーンから消えて行った…。



そして時間が流れた。
盟友カイ・ハンセン率いるGAMMA RAY、そしてトビアス・サメットのメタル・オペラ・プロジェクトAVANTASIAへの参加。
メタル・シーンにおいて、マイケル・キスクという希代のシンガーへの注目が再び集まり始めた。
しかしキスク自身もメタル・シーンとの関わりについて、自身も非常に慎重な発言を繰り返し微妙な距離を保っていた。
そんなキスクを見て、僕個人は非常に複雑な思いがしたのも事実だ。
「キスクが好きなら聴くべきだ」と言われても、とても素直に「ハイ、そうですか」と聴けなかった。
否、正直に言ってしまうとキスクの歌をコチラから一方的に拒絶していたのが事実だ。
「あの時」、憧れと敬意を持っていた人物によって裏切られて負った傷は思った以上に深かった。
「どうせ小遣い稼ぎの為にメタル唄ってるんだろ?」と、心の中で毒を吐いていた。
感情的に、どうしてもマイケル・キスクというシンガーを再び自分自身が受け入れる事が出来なかった。
でも事態は全く思わぬ方向に動き出した。
そう、キスクは新たにUNISONICというバンドを結成したのだ。



いわゆる当時キスクがソロで演っていたサウンドとは異なる、ハード・ロック路線の音楽だと言う。
「そうなのか」と平静を装っていた。
運命は更に皮肉な事に、そのUNISONICにカイ・ハンセンの正式加入という信じられない様な事実を発表した。
僕の硬く閉ざされていた心は、動揺しだしたのは事実だ。
何と言っても「あのサウンド」を手掛けた存在が2人もいるのだ。
キスクだけでなく、新たに加入したカイまでもが「コレはプロジェクトではなく、シリアスなバンドである」と発言し出した。
僕の心は穏やかではなかった。
そしてUNISONICのファースト・アルバムがリリースされた。
過剰な期待はしてはいけないと、心の中で皮肉屋で嫌味な僕が囁いていた。
実際にアルバムを聴いた時、正直「なるほどな」と妙に納得してしまった。
嫌味な言い方をすれば、「メタル嫌い」というキスクと他のバンド・メンバーの絶妙な「落し所」とも言えるサウンドだと思った。
ただ以前と何も変わらない、あのキスクの歌を聴いてしまうと更に意固地になる自分がいた。



あれから2年。
事態はたった1曲によって全く変わってしまった。
7月にリリースされる最新作『Light Of Dawn』より、先行シングル“For The Kingdom”を聴いた時。
これまで自分の中にあったキスクに対する、複雑かつ屈折した感情は一気に崩れ去って行くのを感じた。
自分が聴きたかったのは、「こんな曲を唄うキスク」であるという事実だ。
そう、14歳の時にレコード・プレイヤーの前で衝撃を受けた時と全く変わらない歌声がソレを僕に告げた。
正直この“For The Kingdom”を初めて聴いた時、自然と涙が溢れたて泣いてしまった。
今まで一体何に拘って来たのだろう?!
今もキスクの声は「あの頃」と全く変わっていない。
逆に月日を積み重ねた事によって、その歌声はより艶やかで表現力豊かなモノになっていた。
そして今も天空を突き抜けるような、美しく伸びやかなハイトーンも健在である。
アレから20年、キスク自身も言うように今も「あの頃」と変わらずに唄えると言う事実は奇跡的なのかもしれない。
UNISONICというバンドにとって、この最新作『Light Of Dawn』というアルバムは“真の勝負作”である。
勿論既に『Light Of Dawn』は予約済みであり、来日公演のチケットも購入済みである(自嘲)。
メタル・シーンに復活を果たした、キスクの姿をしっかりとこの目に焼き付けたいと思います。
愛憎入り乱れ鬱屈した感情は消えた、今は再びキスクのこの「歌声」が聴けるという事実にメタル・ファンとして幸福と思いたいです。






PS:デビュー・アルバムの中で、この曲が一番好きってのも皮肉な気がします(笑)。



誰も本当の私を知らない
誰も私の話す事を聞いてはくれないの
誰も私と言う存在に気付いてくれない
誰も私がどれほど苦しんでいるかも知らない
だから私は消える事にした


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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
私もMichael Kiskeの歌声に衝撃を受けました。 (kenta)
2014-07-21 01:40:47
はじめまして。
私が初めて彼の声を聞いたのは中学の時。友人に貸して貰ったCDがきっかけでした。それまでに抱いていたメタルに対する先入観だけのネガティブな印象が全て取っ払われるほどの衝撃でした。その後の彼の迷走っぷりには戸惑いましたが…それでもいつかきっとまた彼がメタルシーンに戻ってくると信じて。
KiskeとKaiは私にとっては人生を変えた存在。その二人が紆余曲折を経て、また同じバンドで活動しているという事実。間待ち続けてよかったと、本当に思います。
UNISONIC。何気にHELLOWEENとPINK CREAM69の新旧メンバーのシャッフルというのも運命のイタズラか。ライブ、やっぱ行きたいです。
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