ドイツ出身のDEADLOCK。
通算5枚目のアルバム、最新作『Bizzaro World』を良く聴いている。
DEADLOCKのサウンドは一聴すると北欧系メロディック・デス・メタルと思えるが、よく聴けばドイツならではの金属的で硬質ながらも熱いエクストリームな要素を持ち合わせているのが判る。
だが、まだ若いバンドであるので湧き出して止まらぬ創作意欲と実験性により、バンドの持ち味をぶち壊した前作『Manifest』にはガッカリさせられた(苦笑)。
あれだけ良い楽曲を揃えながらも、結局はバンドとしての焦点の絞り方を誤ったと今は思えるが…。
世界的に認知度を高めた彼らにとって、本作『Bizzaro World』は文字通りの勝負作。
アルバムを全て聴き終えて思ったのは、本作は文句無しで傑作だと言う事。
いきなりラップやサックスのソロが飛び出す訳ではなく、DEADLOCKというバンドにファンが求める音楽性を最大限にして最高品質で詰め込まれている。
デス・メタルらしいアグレッシヴさとブルータリティー、このバンドでしか出せない「醜」と「美」が激しく入り乱れるドラマチックなサウンドが素晴らしい。
本作の素晴らしさを思うと、楽曲の大半を作りプロデュースも手掛けたセバスチャン・レイチェル(G.Key)の卓越した才能がある。
良い意味で意外性を排除した「自分たちとは何者か?」と言う拘り、決してアンダーグラウンドさだけではなくメジャーな感覚を持つ楽曲作りも巧みだ。
そして狭い枠には決して落ち着かないでいようとする、彼らの挑戦的な実験性と躍動感のバランスも秀逸。
随所に彼の独自のセンスをギラギラさせながらも、DEADLOCKと言うバンドが進むべき道を再構築している。
更にソングライターとしてだけではなく、本作では今まで以上にギターをテクニカルに弾きまくっているのも良い。
そして何よりもDEADLOCKというバンドの絶対的個性である、ヨハネス・ブレムとザビーネ・ヴェーニガー(アレ?ザビーネ嬢は改名したの?!)によるツイン・ヴォーカル。
前作ではヨハネス君とザビーネ嬢の「歌」の比重が逆転したが、今回は今まで以上に2人の個性が複雑に絡み合う絶妙のバランスとなっている。
そのバランス感こそが本作最大のツボであり、聴く者の心を鷲掴みにする大きな要素になっている。
デス・グロウル担当のヨハネス君。
その迫力ある咆哮は更に磨きがかかり、ただ絶叫するだけではない表現力の広がりを感じます。
無闇に喚き叫ぶだけの単調なデス・メタル・シンガーとは違い、その声はより深み増して表現力の向上を感じる。
特に“You Left Me Dead”のようなメロウな楽曲において、ザビーネ嬢の美しい歌声に絡み付くように慟哭する雄叫びはカッコ良い。
何かとザビーネ嬢への注目が集まり気味ではあるものの、今後はヨハネス君はルックスもかなりの美形であるので高い人気と評価を得ても良いと思います。
そしてザビーネ嬢。
この人、ホンマはメタルを唄うには相応しくない甘美で可憐な歌声の持ち主(笑)。
しかしバンドの持つ攻撃性や重量感と遊離するかのように、彼女のある意味甘くポップでメロディアスな歌は聴く者の心に優しく染み渡ります。
以前は無理に力んだり強張った歌になる事もありましたが、今は自然に透明感溢れる声で彼女が唄う事によってサウンドがより際立っている。
ヨハネス君もそうでしたが、ザビーネ嬢もまたその歌と声により深みが増しています。
この2人の「醜」と「美」、そして「静」と「動」の衝突と混在こそDEADLOCKの唯一無二の個性だと思います。
エクストリーム/デス・メタル系のバンドを敬遠するメタル・ファンも多いかと思いますが、これほどまでに美しくも哀しいまでにドラマチックなサウンドを出しているバンドは案外少ないです。
本作を通して、より幅広く多くのメタル・ファンより人気と支持を得られるのを願っています。
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PS:本作の中で、この曲が一番好きです。
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私が貴方を笑顔にしてあげる
耳から、もう片方の耳まで
その口を引き裂く
貴方の人生なんてジョークに過ぎないから
今度は貴方の腕を引き千切り
次は脚もへし折る
それから貴方をダンスに誘うの
何て残虐な愛なのかしら
知っている?
タンゴを踊るには絶対に2人必要なの
あまりに無慈悲で、残酷なロマンス