『プロメテウス』を観ました。
ジャンル系映画ファンにとって、今年はホンマに「脅威の8月」と呼ぶに相応しい1ヶ月となりました。
それを締めくくるのに相応しい、御大リドリー・スコット監督によるSF超大作の登場です。
このブログでも何度も取り上げ、個人的にはかなり期待と注目をしていた作品である事は間違いありません。
ハッキリ言えば、色んな意味で「今年最大の期待作」でもありました。
何と言っても、あの巨匠リドリー・スコット監督がSF映画と言うジャンルに帰還した事実が喜ばしいです。
オープニング・シーンの圧倒的な雄大さと映像美は、御大でしか撮れない「画」だろう。
ただ、ハッキリ言えば作品に対しての賛否両論は厳しく激しく分かれるは事実。
(警告:強烈にネタバレします!!)
本作のテーマの様に語られる「人類の起源」云々については、もう冒頭の5分程度であっさりと明らかになる。
主人公たちが“創造主=神”と考えている、エンジニアと呼称される文字通りの宇宙人(エイリアン)により地球に生命の種はもたらされた。
この辺りの描写や作品全体を覆う雰囲気を含めて、予想以上に宗教的要因が強いのが本作の大きな特徴。
別の言い方をすれば、本作はリドリー・スコット版『2001年宇宙の旅』と言っても過言ではない。
もう今更言うのも野暮だが本作の企画の発端は、かの『エイリアン』シリーズの最新作にして完結編の製作だった。
様々な紆余曲折を経て、それが“エイリアン誕生”の謎に迫る内容になる事になった。
しかし製作途中でアイデアが膨れ上がったので、御大や関係者たちは「偉大な『エイリアン』シリーズのDNAを受け継ぐ作品」と本作を位置付けした。
本当にその通りの作品に仕上がっている。
そして「エイリアン」という大ヒット・シリーズの、最近流行りの“再起動版”にもなっている。
しかし、それが皮肉にも作品の賛否を分ける要因になっている。
本作を説明不足なガタガタの脚本により、物語が破綻してしまっていると糾弾するか。
敢えて「謎」として、観る側の想像力(別の言い方をすれば脳内補完)により物語を解釈するか…作品の印象が全く異なる。
主人公エリザベスや「エイリアン」シリーズに欠かせないウェイランド社は、エンジニアたちとの遭遇を求めて宇宙に出る。
プロメテウス号やスタイリッシュな宇宙服と登場するメカ、そこにSF映画としての醍醐味を感じてしまう(自嘲)。
そんな本作で最も魅力的なキャラが、ミヒャエル・ファスベンダーが演じるデヴィッド8。
彼はロボットであるが、あまりに妖しい存在感を発揮している。
ウェイランド社長の密命を受けてはいるが、それにしても彼のあまりに色んな事を知りすぎている。
そしてロボットなので「魂(心)」が無いとも言われるが、デヴィッドを観ていると彼が「魂(心)」を持っているとしか思えない。
そう思えるのは彼の行動が、あまりに謎が多くて不可解だから。
単に命令されたり、プログラムされたロボットの行動とは違う。
エンジニアたちの宮殿を操作出来たり、エリザベスの恋人ホロウェイ博士(彼はデヴィッドをロボットとして蔑む)を生体実験のモルモットとして利用したり、エンジニアたちの宇宙船の所在すら知っていた。
更には単独でエンジニアの宇宙船の調査をした時に、上官ヴィッカーズの指示に逆らいカメラを切ってしまう。
「2年間の孤独」のシーンも、非常に切なく情感に溢れている(彼はこの時点でエリザベスに興味・関心を抱いている)。
個人的にはエンジニアの星図を見た時、その無邪気で何とも言えない表情は凄く印象的。
そんな彼こそが、本作の真の主人公と言えるかもしれない。
そしてヒロインのエリザベス。
父の形見の十字架が大きな意味を持って、本作の宗教的要素を強めてくる。
彼女は何の根拠も無いままエンジニアたちを盲信しており、それが不用意に事態の悪化を招いてしまうし、自身もおぞましい体験をする。
クライマックス直前の「手術シーン」は、ある意味今後の映画史に残る凄まじいグロさ(苦笑)。
しかし、さすがは「エイリアン」シリーズ。
彼女の異様なまでの生存本能が、クライマックスを劇的に盛り上げる事に成功している。
演じるノオミ・パラスは何となくリプリーを彷彿とさせるが、その超人的な身体能力と回復力はエイリアン並み(笑)。
お馴染みの「死ね!」という台詞も迫力があった。
エリザベスたち以上に冷静で理性的な存在は、プロメテウス号の艦長ヤネック。
彼はエンジニアたちの目的と自滅した原因に対して、自身の推論を立ててエリザベスを説得する。
イドリス・エルバ、良い雰囲気を持った俳優だ。
多分、彼の推論こそが正しいのかと思う。
良いキャラなので、もう少し活躍するシーンを増やして欲しかった。
あとプロメテウス号の他のキャラも、もっと登場して主人公達と関わっていれば物語の深みも増しただろう。
そうすればヤネックの決断とクライマックスの展開も、よりSF/ホラー/アクション映画として怒涛の展開となった筈。
そして本作において最も重要なキャラはエンジニアだろう。
宮殿や宇宙船内のホログラムや夥しい死骸、そして唯一生き残った一人により、この惑星で何が起きたかはヤネックの推論通りだろう。
本作の舞台となる、衛星LV-223は彼らの「実験場」だったのだろう。
しかし何故、自分たちが作った人類をあそこまで憎んでいるかは謎。
自身が作り出した存在により、自らの種が絶滅の危機に瀕してしまったから?!
人類は彼ら(エンジニア)にとって失敗作なのか?
更に人類が神の真似をして、デヴィッドのような人型のロボットを作った事への激高なのか!?
解釈は幾らでも出来る。
意味深に登場するヴィッカーズ監督官。
シャーリーズ・セロン起用が大正解で、その人間離れした美貌が非常に生きている。
だから彼女が人間なのか、デヴィッドと同じくロボットなのか曖昧なままなのは良い。
ウェイランド社長は、甲斐甲斐しく自分の世話をするデヴィッドを「息子」と呼ぶ。
しかし実の娘であろうヴィッカーズにウェイランドは冷淡であり、ヴィッカーズとデヴィッドの間にも異様な緊張感が漂っている。
展開によっては重要なポイントのキャラだったと思うが、その最期がコントみたいだったのは残念だ。
本作のラスト。
「エイリアンのDNAを受け継いだ」と語る通りの展開となる。
個人的にはアレにも、ラストでエンジニアたちの宇宙船に向かって欲しかったが…。
本作は既に続編の製作が決定している。
リドリーは敢えて「エイリアン」第1作目への明確なつながりを避けた理由も、続編があるならばそれも納得出来る。
真実を知る為に、エンジニアたちの星に向かったエリザベスとデヴィッド。
そのエンジニアより生まれた新たな凶悪な存在、それらが一つとなり観る側の期待を遥かに超越した作品になるのを期待したい。
本作を個人的には非常に楽しんで観る事が出来た。
出来ればもう一度鑑賞して、膨大な情報量を持つ作品の魅力に深く浸りたいと思える久々の作品でした。
「それでも神を信じるんですか?」
PS:これで監督特有の3時間ディレクターズ・カット版が発表されれば、また作品に対する印象はガラッと変わるな(笑)。
ジャンル系映画ファンにとって、今年はホンマに「脅威の8月」と呼ぶに相応しい1ヶ月となりました。
それを締めくくるのに相応しい、御大リドリー・スコット監督によるSF超大作の登場です。
このブログでも何度も取り上げ、個人的にはかなり期待と注目をしていた作品である事は間違いありません。
ハッキリ言えば、色んな意味で「今年最大の期待作」でもありました。
何と言っても、あの巨匠リドリー・スコット監督がSF映画と言うジャンルに帰還した事実が喜ばしいです。
オープニング・シーンの圧倒的な雄大さと映像美は、御大でしか撮れない「画」だろう。
ただ、ハッキリ言えば作品に対しての賛否両論は厳しく激しく分かれるは事実。
(警告:強烈にネタバレします!!)
本作のテーマの様に語られる「人類の起源」云々については、もう冒頭の5分程度であっさりと明らかになる。
主人公たちが“創造主=神”と考えている、エンジニアと呼称される文字通りの宇宙人(エイリアン)により地球に生命の種はもたらされた。
この辺りの描写や作品全体を覆う雰囲気を含めて、予想以上に宗教的要因が強いのが本作の大きな特徴。
別の言い方をすれば、本作はリドリー・スコット版『2001年宇宙の旅』と言っても過言ではない。
もう今更言うのも野暮だが本作の企画の発端は、かの『エイリアン』シリーズの最新作にして完結編の製作だった。
様々な紆余曲折を経て、それが“エイリアン誕生”の謎に迫る内容になる事になった。
しかし製作途中でアイデアが膨れ上がったので、御大や関係者たちは「偉大な『エイリアン』シリーズのDNAを受け継ぐ作品」と本作を位置付けした。
本当にその通りの作品に仕上がっている。
そして「エイリアン」という大ヒット・シリーズの、最近流行りの“再起動版”にもなっている。
しかし、それが皮肉にも作品の賛否を分ける要因になっている。
本作を説明不足なガタガタの脚本により、物語が破綻してしまっていると糾弾するか。
敢えて「謎」として、観る側の想像力(別の言い方をすれば脳内補完)により物語を解釈するか…作品の印象が全く異なる。
主人公エリザベスや「エイリアン」シリーズに欠かせないウェイランド社は、エンジニアたちとの遭遇を求めて宇宙に出る。
プロメテウス号やスタイリッシュな宇宙服と登場するメカ、そこにSF映画としての醍醐味を感じてしまう(自嘲)。
そんな本作で最も魅力的なキャラが、ミヒャエル・ファスベンダーが演じるデヴィッド8。
彼はロボットであるが、あまりに妖しい存在感を発揮している。
ウェイランド社長の密命を受けてはいるが、それにしても彼のあまりに色んな事を知りすぎている。
そしてロボットなので「魂(心)」が無いとも言われるが、デヴィッドを観ていると彼が「魂(心)」を持っているとしか思えない。
そう思えるのは彼の行動が、あまりに謎が多くて不可解だから。
単に命令されたり、プログラムされたロボットの行動とは違う。
エンジニアたちの宮殿を操作出来たり、エリザベスの恋人ホロウェイ博士(彼はデヴィッドをロボットとして蔑む)を生体実験のモルモットとして利用したり、エンジニアたちの宇宙船の所在すら知っていた。
更には単独でエンジニアの宇宙船の調査をした時に、上官ヴィッカーズの指示に逆らいカメラを切ってしまう。
「2年間の孤独」のシーンも、非常に切なく情感に溢れている(彼はこの時点でエリザベスに興味・関心を抱いている)。
個人的にはエンジニアの星図を見た時、その無邪気で何とも言えない表情は凄く印象的。
そんな彼こそが、本作の真の主人公と言えるかもしれない。
そしてヒロインのエリザベス。
父の形見の十字架が大きな意味を持って、本作の宗教的要素を強めてくる。
彼女は何の根拠も無いままエンジニアたちを盲信しており、それが不用意に事態の悪化を招いてしまうし、自身もおぞましい体験をする。
クライマックス直前の「手術シーン」は、ある意味今後の映画史に残る凄まじいグロさ(苦笑)。
しかし、さすがは「エイリアン」シリーズ。
彼女の異様なまでの生存本能が、クライマックスを劇的に盛り上げる事に成功している。
演じるノオミ・パラスは何となくリプリーを彷彿とさせるが、その超人的な身体能力と回復力はエイリアン並み(笑)。
お馴染みの「死ね!」という台詞も迫力があった。
エリザベスたち以上に冷静で理性的な存在は、プロメテウス号の艦長ヤネック。
彼はエンジニアたちの目的と自滅した原因に対して、自身の推論を立ててエリザベスを説得する。
イドリス・エルバ、良い雰囲気を持った俳優だ。
多分、彼の推論こそが正しいのかと思う。
良いキャラなので、もう少し活躍するシーンを増やして欲しかった。
あとプロメテウス号の他のキャラも、もっと登場して主人公達と関わっていれば物語の深みも増しただろう。
そうすればヤネックの決断とクライマックスの展開も、よりSF/ホラー/アクション映画として怒涛の展開となった筈。
そして本作において最も重要なキャラはエンジニアだろう。
宮殿や宇宙船内のホログラムや夥しい死骸、そして唯一生き残った一人により、この惑星で何が起きたかはヤネックの推論通りだろう。
本作の舞台となる、衛星LV-223は彼らの「実験場」だったのだろう。
しかし何故、自分たちが作った人類をあそこまで憎んでいるかは謎。
自身が作り出した存在により、自らの種が絶滅の危機に瀕してしまったから?!
人類は彼ら(エンジニア)にとって失敗作なのか?
更に人類が神の真似をして、デヴィッドのような人型のロボットを作った事への激高なのか!?
解釈は幾らでも出来る。
意味深に登場するヴィッカーズ監督官。
シャーリーズ・セロン起用が大正解で、その人間離れした美貌が非常に生きている。
だから彼女が人間なのか、デヴィッドと同じくロボットなのか曖昧なままなのは良い。
ウェイランド社長は、甲斐甲斐しく自分の世話をするデヴィッドを「息子」と呼ぶ。
しかし実の娘であろうヴィッカーズにウェイランドは冷淡であり、ヴィッカーズとデヴィッドの間にも異様な緊張感が漂っている。
展開によっては重要なポイントのキャラだったと思うが、その最期がコントみたいだったのは残念だ。
本作のラスト。
「エイリアンのDNAを受け継いだ」と語る通りの展開となる。
個人的にはアレにも、ラストでエンジニアたちの宇宙船に向かって欲しかったが…。
本作は既に続編の製作が決定している。
リドリーは敢えて「エイリアン」第1作目への明確なつながりを避けた理由も、続編があるならばそれも納得出来る。
真実を知る為に、エンジニアたちの星に向かったエリザベスとデヴィッド。
そのエンジニアより生まれた新たな凶悪な存在、それらが一つとなり観る側の期待を遥かに超越した作品になるのを期待したい。
本作を個人的には非常に楽しんで観る事が出来た。
出来ればもう一度鑑賞して、膨大な情報量を持つ作品の魅力に深く浸りたいと思える久々の作品でした。
「それでも神を信じるんですか?」
PS:これで監督特有の3時間ディレクターズ・カット版が発表されれば、また作品に対する印象はガラッと変わるな(笑)。