ダンナのぼやき

あられダンナの日々のぼやきです。
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“パシフィック・リム症候群”と日本映画

2014-02-01 19:12:07 | 本・雑誌
「映画秘宝別冊 新世紀怪獣映画読本」を読んだ。

先に「映画秘宝」誌において2013年度ベスト部門において、ライター&読者の両部門で輝かしい1位を獲った『パシフィック・リム』。
この別冊は早い話、その『パシフィック・リム』の副読本とも言える内容になっている。



今更、こんな副読本を出して「黒船襲来」だの何やと騒ぐ前に。
公開前から『パシフィック・リム』と言う作品を、「映画秘宝」として盛り上げれば良かったのでは?!
過去にも日本公開の有無は関係なく、面白い映画を独自にピックアップして盛り上げていたのが「映画秘宝」と言う雑誌ではなかったのか?と言う疑問はある。
個人的には日本でこそ、この『パシフィック・リム』と言う作品を映画秘宝と言う雑誌が盛り上げるべきだったのでは?と思えて仕方ない。



何故それをしなかったのは、この別冊の内容にもリンクする背景があると邪推してしまう。
要は『パシフィック・リム』と言う作品を、映画秘宝も多くの日本の関係者と同じく「なめていた」と言う事だろう。
いくら「秘宝」で、以前より高く評価しているギレルモ“信頼出来る男”デル・トロが監督していても。
メジャーの超大作としての“怪獣映画”であっても、エメリッヒ版『ゴジラ』と言うあまりに大きく悲惨な失敗例がある。
日本人と欧米人では、根本的に「怪獣」への概念が異なる事も判っている。
それ故にハリウッドでは「(日本映画的な)怪獣映画」は撮れないだろうと言う、日本人としての自信と自負もあった筈だ。
だから、公開前より『パシフィック・リム』と言う作品を妙に冷ややかな視線で見ていたのだろう(過剰な期待を自重したと言う見方も出来るが)。



そして公開された『パシフィック・リム』。
そのあまりに大きな衝撃が、今回の「新世紀怪獣映画読本」と言う本のリリースにつながったと思う。
ソフト化された『パシフィック・リム』の中で、デル・トロ監督によるコメンタリーにて。
正々堂々と「特撮」・「怪獣」・「メカ(ロボ)」について、あそこまで愛と敬意を持って語られた今。
もうハリウッドとか、日本映画と言う枠の話ではない。
「怪獣映画(巨大ロボが出る映画も含む)」を語る場合、今後『パシフィック・リム』と言う作品が良くも悪くも“基準”となると思われる。
嫌な言い方だが、先にヤラレてしまった「後の祭り」って感じがするのも事実だ。



そして、この「新世紀怪獣映画読本」。
先に映画秘宝の在り方に関して批判的意見を言ってしまったが、実はコレがもう滅茶苦茶面白くて興味深い内容になっている(笑)。
『パシフィック・リム』という作品のファンなら、是非読んで欲しいと思う一冊に仕上がっている。
怪獣映画として「パシフィック・リム」を様々な視点で分析、同時に今現在の「怪獣映画」と言うジャンルについて考察。
当然、怪獣映画のファンとして『パシフィック・リム』という作品に対する賛否両論はある。
だが『パシフィック・リム』と言う現実を突きつけられ、日本の関係者側から今さら建て前も糞も無く様々な意見が語られていて楽しい。
率直な羨望と嫉妬、映画人として業界で仕事をする者だからこそ語れる切実な本音を通して「日本映画」の抱える問題も浮き彫りになっている。
本著の核心的部分は、中野貴雄氏による序文と寄稿が全て物語っているかと思う。



『パシフィック・リム』に続いて、今年はレジェンダリー版『ゴジラ』が公開される。
このレジェンダリー版『ゴジラ』の完成度によって、日本映画にとって“お家芸”であった「怪獣映画」と言うジャンルは終止符を打たれるかもしれない。
ぶっちゃけた言い方だが、観る側も作る側も「勝てない」と思ってしまう決定的な一撃を喰らう可能性がある。
しかし、日本人として幼い頃より国産怪獣映画をこよなく愛してきたファンとして言うが、何もそれによって悲観視する必要性な無いと思っている。



ただ日本映画の悪い所は、ハリウッドの流行りをすぐにフォローしようとする所だ(それに金を出すスポンサーの存在もある)。
しかしハリウッドと日本映画では、映画の作り方やシステム等において基礎と基盤が違い過ぎる。
その上でフォローしても、単に上辺をなぞっただけで中身の伴わない「劣化コピー」の様な作品になるだけだ。
あと逆にジャンルの固定概念に捕らわれてしまい、それが呪縛となり柔軟な思考を持ち難い作り手側(とファン)がいるのも事実だ。
ただ、日本映画にはまだまだ優れた技術と知識、そして柔軟な思考と野心を持った映画人がいる。
それを上手く活用し使いこなす事によって日本映画独自の個性を持つ作品を生み出し、幅広い新規のファンを獲得する可能性は充分にある…と信じている。



「パシフィック・リム症候群」を煩い、意地と対抗心だけで無闇に粗悪な作品を量産する事の方が恐ろしい。
本著において厳しい現状ながらも、熱い情熱を持った映画人たちがいる事がファンとして嬉しい。
『パシフィック・リム』より受けた衝撃を刺激として、そこから新たな作品を生み出そうとしているのが頼もしい。
来年公開となるが、実写版『進撃の巨人』や『THE NEXT GENERATION パトレイバー』等と言った作品がある。
ソレらは決して“パシフィック・リム症候群”に陥る事のない、斬新な作品になるのを日本の怪獣映画ファンとして心から期待している。
そして商業的にヒットして欲しいと、心から願っている。



肝心の『パシフィック・リム』も、北米において“売り方”を間違えてしまい興行的には今一つの結果となっている現実がある。
しかし、一方では結果的に昨年度の夏の超大作として世界規模で一番売れた作品となった。
更に映画の興行成績だけでなく、キャラクター・ビジネスとしても破格の成功をもたらした。
ここに今後の日本映画における「怪獣映画(と言うかジャンル系映画)」の作品として、ビジネスとしての成功の“鍵”が秘められていると思う。

あとファンとして、決して「パシフィック・リム原理主義」にはなってもダメだと思う。
今後、「パシフィック・リム」を凌駕する様な作品がドンドン登場して欲しいと願っているのが本音。

ただ残念な間違いを一つ。
巻頭にある「勝手に考えた怪獣図鑑」、昔の怪獣図鑑のようで懐かしくもあり楽しいのだが…。
そこで「ライジュウ」を「ミートヘッド」と間違っているのは痛い(苦笑)。
何故こんな間違いが起きたのか不思議でもあります。

何はともあれ『パシフィック・リム』と言う作品のファンの方々。
この「新世紀怪獣映画読本」を是非読んで欲しいと思います。


PS:今こそ、再評価しても良いのでは?と思う作品です。




PS:もう、このままの勢いと雰囲気を生かして映画化して欲しいです。




PS:鬼才・押井守監督と実写映画の相性に不安はありますが、監督の「エンターテイメントに徹する」宣言を信じます。




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