Sightsong

自縄自縛日記

ニュージャズホールって何だ?@新宿ピットイン

2018-11-04 09:21:43 | アヴァンギャルド・ジャズ

新宿ピットインにおいて、「ニュージャズホールって何だ?それはpit innの楽器倉庫から始まった」と題するイベント(2018/11/3)。

カポネ副島さん(副島輝人さんの弟さん)による司会。会場には当時を懐かしむ人も、その歴史に興味を持つ人もいるように見えた。

■ 第1部:佐藤允彦スペシャルユニット

Masahiko Sato 佐藤允彦 (p)
Kazutoki Umezu 梅津和時 (as, bcl)
Nobuyoshi Ino 井野信義 (b)
Hiroshi Yamazaki 山崎比呂志 (ds)

このレジェンドたちの演奏だから当然なのだが、一点突破力にやはり驚かされる。出口に向けて突進する中で、山崎さんの気合いのドラミングはやはり唯一無二だなと感じ入ってしまった。

■ 第2部:伝説のNJHと副島輝人を語る

パネラー:中平穂積、佐藤允彦、佐藤文夫、山崎比呂志
司会:横井一江

山猫軒の南達雄さんらによる写真のスライド上映を行いつつ、各氏による面白い回想。写真があまりにも面白く素晴らしいので、登壇者たちもつい見入ってしまっている。中には阿部薫『ラストデイト』のジャケット写真もある。

佐藤允彦さんも山崎さんもどのような経緯でNJHができたのか覚えていなかった。副島さんや高柳さんに「こんどやろう」と声を掛けられた、と。観客数は出演者よりも少ない。何でも中にバッテンのパイプがあり、それをみんな演奏中に叩いたりしていたが、下のピットインからは苦情は来なかったという。クスリで倒れる演奏者もあり。だがこの混沌があってこそ独自のミュージシャンが出てきた。生活向上委員会。ナウミュージックアンサンブル。高木元輝。沖至。

詩人の佐藤文夫さんは「詩とジャズ」について語った。これを始めたのも副島さんだった。その前に『Doin'』という雑誌があって、吉増剛造、白石かずこ、諏訪優といった人たちが活動していた。はじめに神楽坂のクラブで朗読をしていたところ、吉増さんさえも「学芸会」のようなもので、ジョー水木さんが「まじめにやりましょう」と喝を入れたのだという。NJHでも「詩とジャズ」をやっていて、1970年5月には吉増剛造+山崎弘(当時)カルテットというコラボもあった。他の場所は、福生のBP(Black Powerという意味で黒人米兵相手の店)、明大前のキッドアイラック。佐藤さんがナウミュージックアンサンブルを労音に紹介し、鳥取の労音では演奏がはじまるやいなや会場の外に演奏に出てしまって、戻るころには観客がかなり帰ってしまっていた、というエピソードも紹介された。

マックス・ローチが来日して白石かずこさんと共演したとき、佐藤文夫さんに、毛沢東の『The Art of Guerrilla Warfare』を探すよう頼まれたという。日中関係も悪く見つからなかった、しかしローチも毛沢東に共感していたのは驚きだった、と語った。(なお、ローチがアーチー・シェップとともに『Force』において毛を取り上げるのは1976年のことである。1979年には『The Long March』も吹き込んでいる。)

DUGの中平穂積さんは、お店を出すときに植草甚一さんに相談したら「おやめなさい」と言われたそうである。店でアヴァンギャルド系のレコードをかけると客が減ってしまい、それではと火曜日のみリクエストなしでそのような音ばかりをかける日にしたところ、結果的にその日にもっとも客が集まってきたのだという。もとよりアメリカのニュージャズにのみ注目していた中平さんに、副島さんが、ヨーロッパも良いですよと魔の誘い。そこからのメールス行き、日本のミュージシャンの送り込み。ところで、副島さんは海外に行くと、同行者との食事の前に街を1時間半くらい歩き、安くてうまいものをみつけていたそうである(なんて良い話だろう!)。

山崎比呂志さんは、新世紀音楽研究所での高柳との活動に加え、阿部薫の思い出を語った。山崎さんは当時21歳。「凄い音とスピードだと思い感動した。1年くらい一緒にやった。いろんなことを教わった」と。阿部を知ったことが宝だとまで言った。

佐藤允彦さんによれば、当時、ジャズミュージシャンの間でもアメリカのコピーをすることが当然のように語られていたという(「あんた誰をやってんの」という挨拶)。それがNJHで変わった、その前に銀巴里などがあったとしても。NJHの功績は、相手の呼吸を読むことを育てたという点だ、と。フリーインプロヴィゼーションを行うきっかけになった富樫雅彦、副島輝人の両氏には感謝だと語った。

会場では、中平さん撮影のポストカードが配られた。わたしはコルトレーンやモンクではなくガレスピーをいただいた。

■ 第3部:詩とジャズ

山岡ミヤ、佐藤文夫、白石かずこ

Kazutoki Umezu 梅津和時 (as, bcl)
Nobuyoshi Ino 井野信義 (b)
Hiroshi Yamazaki 山崎比呂志 (ds)

3人の詩人による自作詩の朗読。それぞれ面白く、脳のよくわからない場所を刺激する。

中でも大トリの白石かずこさんはやはり圧倒的な存在感。「子分でもあり、神様であり、パートナーでもある詩」を読むと言ってはじめ、「ブラックバード」という言葉が出てきたら梅津さんも「Bye Bye Blackbird」をアルトで吹く。山崎さんはブラシも超一級だなと改めて発見する。最後は皆で鳥になった。終わってから、白石さんは、「歳をとると人は馬鹿になってゆくのです。みなさんどんどん馬鹿になりましょう!」と力強く呼びかけた。

それにしてもこれはNJHが出来て50年のプレイベント。来年何が行われるのか、震えて待とう。


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