NPO集改センター(NPO法人 集合住宅改善センター)活動レポート

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集改センター第164回スキルアップセミナー報告「改正民法がマンション管理の現場にどのような影響を与えるか」

2018-10-18 22:18:30 | スキルアップセミナー

第164回 スキルアップセミナー報告

開催日:2018年(平成30年)10月3日(水)

テーマ:「改正民法がマンション管理の現場にどのような影響を与えるか」

講 師:九鬼 正光(本会・正会員/弁護士)

<セミナー概要>

■はじめに

 改正民法は、2020年の4月1日に施行されます。今回のセミナーで説明する管理費の時効、瑕疵のある建物に対する各種の請求などの法律関係は、施行日以降に適用されることをご理解願います。

■消滅時効について

 管理費等の時効については、5年説と10年説が争点となっていましたが、今回の改正により5年説が明確となりました。管理費等の滞納が4年を経過すれば、訴訟等の法的手段をとることが重要になってきます。滞納の起算点については、理事長や管理組合ではなく、入出金の管理を委託している管理会社が滞納を知った時、と考えるのが妥当だと思われます。

■損害金について

利息を発生させる債権の法定利率が年5%から3%へ引き下げられた。多くの管理組合においては標準管理規約を参考に年14.6%と管理規約に規定されていると考えられ、この場合は管理規約の規定が優先されるので、問題はありません。個人的には年14.6%の利率というのはどうなのか、という思いがありますが。

■瑕疵担保責任について

今回の改正において、「法定責任説」が否定され「契約(債務不履行)責任説」が採用されました。改正前において用いられてきた「瑕疵」「瑕疵担保責任」という概念を使うのを止め、「契約の内容に適合しない(契約不適合)」という概念を用いることとしています。従来、売主は建物の瑕疵については担保責任、つまり法定責任を負うだけと考えられていたが、今後は売買契約の内容に適合しない場合は、買主に追完請求権や代金減額請求権を認めたうえで、損害賠償請求権・解除権をも認めています。改正民法施行後は、例えば外壁タイルの剥離があった場合に、契約不適合ということになれば、買主は売主にその修補等の履行の追完を請求することができるようになります。

■最後に

 マンションのような区分所有建物において、契約不適合の箇所が「共用部分」に存在している場合は、追完請求権を行使できるのは、区分所有者の団体としての管理組合や管理者(管理組合の理事長)と考えるのが適当だと思われます。個々の区分所有者に行使を認めることは、統一的な見解が出なくなり、混乱を生じるため、個々の権利は制約を受けるものと考えられます。また、売主も改正民法の施行に備え、契約書の内容について検討を進めてくると思われるので、購入を考えている場合は、分譲契約の内容をよく理解することが重要になってきます。

 

~次回開催予告~

■第165回スキルアップセミナー 2018年11月7日(水)午後3時から

 テーマ: 「新築と改修の設備の違い」

講 師:安達 博好(本会・正会員/設計監理事業部・設備担当)

<新築時と改修時の設備について、材料、工法、留意点などの違いについて説明いたします。>