なあむ

やどかり和尚の考えたこと

アイヌ語と地名 1 浅虫

2008年09月25日 11時27分06秒 | アイヌ語と地名

先だって青森県の浅虫温泉に1泊した。

同行の青森在住の友に、「浅虫」ってどこからきたの?と聞くと、昔、ここで「麻」を「蒸し」たらしい、との答え。それがどうして「浅虫」になったのと聞くと、「さあ」とのこと。

地名に関心のない人にはどうでもいいことなのだろうが、興味のある者にとっては、珍しい地名は、その由来が気になって仕方がない。

「浅虫」という虫がいたとも思えないし、かといって、麻を蒸したからという理由も腑に落ちない。青森だし、アイヌ語なのじゃないかと思い、帰ってから調べたら、案の定アイヌ語源の地名だった。

地名は、元々そこに住んでいる人々が呼び習わしてきた呼び方を、後から来た人もそのまま踏襲することが多く、古くは縄文時代の言葉が地名に残っているとも言える。いわば地名は言葉のタイムカプセルのような意味を持っている。

北海道に、元々北海道に住んでいたアイヌの人々の地名が多いのは当然として、「アイヌ語」とは言えないまでも、アイヌの人々と同じ言葉を使っていた人々が本州にもいたわけで、意味不明の地名が、アイヌ語で読み解くと分かるという例は、東北、関東から、西日本まで分布していることが分かっている。

何故私がアイヌ語と地名に興味を持ったのかは、追々語ることにして、珍しい地名、意外な地名とアイヌ語の関係を少し紹介していこうと思う。

さて、浅虫。

アイヌ語で「アサム」(パソコンの関係上、大雑把にカタカナ表記するが、知里真志保の表記に依れば、「ア」がカタカナで、「サ」はひらがな、「ム」は小さい字をあてている)は、「湾・入江・沼などの奥」、という意味で、「ウシ」はこの場合は「場所」ほどの意味なのだろうと思う。

つまり、合わせると「湾の奥の所」というのが、アイヌ語での「アサムシ」の意味となる。

浅虫を地図で見ると、ちょうど青森湾の一番奥に位置し、その地形からも、上記の意味と考えて間違いないだろう。

大和民族は、アイヌや「蝦夷」と呼ばれた原住の人々を蔑視した歴史があり、地名も原住の人々に由来することを嫌い、色んな意味づけを考えてきたのだと思われる。しかし、それでも地名として残ってきたことは誠にありがたいことで、元々の地名を読み解くと、そこに生きていた人々の暮らしぶりが見えるようで、温かいものを感じる。

今、せっせと地名を壊し意味のない町名や市名が誕生していることは全く持って慚愧に堪えない。


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