goo blog サービス終了のお知らせ 

詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

池澤夏樹のカヴァフィス(35)

2019-01-23 10:03:19 | 池澤夏樹「カヴァフィス全詩」
35 アレクサンドリアの王たち

クレオパトラの子供らを見せるために
アレクサンドリアの民が集められた。

 彼らは、それぞれどこそこの王と宣言される。それが三連目で転調する。

アレクサンドリアの民は無論知っている、
そんな宣言がただの言葉、三文芝居に過ぎぬことを。
しかしそれは暖かい詩的な日のことで、
空の色も淡い青だった。

 しかもこの転調は、二回ある。
 華やかな宣言が「ただの言葉、三文芝居」と否定され、そのあと人事とは無関係の天候、空の青が描かれる。
 ここがとても美しい。
 「ただの言葉、三文芝居」は「意味」だが、「暖かい日」「空の青」には意味がない。自然(天候)は人事とは無関係に、絶対的に、そこに存在している。
 漢詩のなかに出てくる自然のようだ。

 最後の四行は、クレオパトラの子供ではなく、アレクサンドリアの市民の様子を描いている。この四行は、先に引用した四行があるからこそ、「人事」のむなしさのようなものを浮かび上がらせる。市民は、都市にとっての「自然」になるのかもしれない。

口々に、夢中になって、歓呼の声をあげ
見事な見世物に陶酔しきった--
内心ではこれらすべての無意味を知りぬき、
王位がからっぽの言葉にほかならぬことを承知しながら。

 池澤は、

カヴァフィスは歴史の皮肉を民衆の心の二重性の中に見ている。

 と書いている。





カヴァフィス全詩
クリエーター情報なし
書肆山田


「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
ここをクリックして2500円(送料、別途注文部数によって変更になります)の表示の下の「製本のご注文はこちら」のボタンをクリックしてください。

オンデマンド形式です。一般書店では注文できません。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。



以下の本もオンデマンドで発売中です。

評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009

評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 北川透「なんとかと」ほか | トップ | 絹川早苗『ボタニカルな日々』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

池澤夏樹「カヴァフィス全詩」」カテゴリの最新記事