詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

池澤夏樹のカヴァフィス(144)

2019-05-12 10:45:04 | 池澤夏樹「カヴァフィス全詩」
144 アレクサンドロス・イアナイオスとアレクサンドラ

ことを始めたのは偉大なるユダス・マカバイオスと
四人の名も高きその弟たちで、
その事業がまこと多くの障害や危難を
勇猛果敢に乗り越えて
今こそ申し分ない形で成就した。

 前半部分に出てきたことばが最後にもう一度繰り返される。すこしだけ形を変えて。

偉大なるユダス・マカバイオスと
四人の名高き弟たちが始めた事業は、
申し分ない形で成就した、
正に最も目覚ましい形で。

 「偉大」「名高き」「申し分ない」。こういうことばは「常套句」であり「散文的」でもある。けれど「常套句」であるからこそ、その響きには「安心感」がある。真新しい何かではなく、いつもこころに思い描いていたものという「親近感」と言いなおすこともできる。
 「偉大」「名高き」「申し分ない」ものが「自分のもの」として感じられる、ということ。
 カヴァフィスの書いているのは詩である。詩は、一種、特別な新しいものである。つまり「知らなかったもの」が目の前にあらわれたとき、詩の衝撃は強い。
 しかし、カヴァフィスは、それを「自分のもの/知っているもの」に変換させて、詩として提出する。
 そういう「特質」があらわれた作品だと思う。
 この作品は「墓碑銘」ではないが、ふと墓碑銘を思い起こさせるのは、墓碑銘というものがやはり「知り尽くしていること」を凝縮する形で「新しい姿」として提出することばで構成されているからだろう。

 池澤は「テーマは古代ユダヤ史である」と註釈を書き始め、ユダス・マカバイオスらのことを書いているが、私には読んでも理解できなかった。「歴史」はそのとおりな k
だろうが、「実感」には結びついてこない。私は「歴史」がどうにもなじめない。



 



カヴァフィス全詩
クリエーター情報なし
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