自民党憲法改正草案を読む/番外29(情報の読み方)
私は目が悪いのでテレビを見ない。衆院予算委/参院予算委の論戦の全体を知らない。新聞には「詳報」と言いながら、「抄報」というか「抜粋」しか掲載されていない。それを引用し、書くしかないのだが。
稲田のパーティー券白紙領収書問題を小池晃(共産党)が取り上げた。小池が白紙の領収書を利用し、同一人物が書いたものだと指摘して、「金額も稲田事務所で書いたもので間違いないか」と問いただしている。(引用は2016年10月07日読売新聞朝刊/西部版・14版)
これに関連して、菅官房長官と高市総務相も答えている。
こういう発言に「社会常識」をぶつけても、何の役にも立たない。
だから、私は違うことを指摘したい。
高市の「領収書の発行側の作成方法についての規定は法律上ない」、だから「法律上問題はないと考える」という考え方。
これを憲法にあてはめるとどうなるか。
現行憲法には「侵してはならない」という「禁止」がある。これは「国は(権力は)、侵してはならない」という意味。一方、改正草案には、その「禁止」がない。ここに高市の発言をあてはめるとどうなるか。「侵してはならない」と書いていないから、「侵しても、それは憲法上問題はない」ということになる。つまり、自民党改正草案は、国民の思想及び良心の自由をいつでも侵害すると言っているのに等しい。
さらに現行憲法にはない「第十九条の二」。ここには「不当に取得し、保有し、又は利用してはならない」とあるが、その禁止の対象者は「国」ではなく、「何人も」である。「国民」に対して「禁止」を定めている。「国」というのは「人」ではないから、「国は個人に関する情報を不当に取得し、保有し、又は利用してもいい」と言っているのである。個人情報を取得し、それをもとに、国民の「思想及び良心の自由は、これを侵してもいい」と言っているのだ。
そんなことは書いていない、というかもしれない。
しかし、国民が「個人情報を勝手に取得し、それをもとに自由を侵害するのは間違っている」と国を批判したら、どうなるのか。国は「国が国民の自由を侵害してはならないという規定は、憲法上ない。だから国が国民の自由を侵害しても、憲法上の問題は生じないと考える」という答えが返ってくるだろう。
法律(憲法)に、どこまで「ことば」を盛り込むか。これはむずかしい判断になるが、自民党は「国への禁止事項」を削除し、国民への「禁止」を増やしている。そこには
という、現行憲法にはなかった「規定」があったりする。「家族は、互いに助け合わなければならない」はことばとしては美しいが、家族であってもわかれなければならない事態があるだろう。また助け合うことが困難なことがあるだろう。離婚するな、介護は「家族」で処理しろ、それが国民の義務だと言っていることになる。
国は社会福祉を切り捨てたいのである。
憲法問題については何度か野党が質問しているが、これに対して安倍は一貫して、
と主張している。安倍は「憲法審査会で討議すべきだ」というのだが、その憲法審査会は開かれていない。つまり、討議のしようがない。だれにも、答えを求めることができない。
こんな質疑応答があっていいはずがない。
選挙のたびに「アベノミクス、アベノミクス」と言い続け、野党の経済対策では景気はよくならないと主張してきて、議席が改憲に必要な三部の二に達すると、「憲法改正は公約に書いてある。国民の信任を得ている」と言うのは「詐欺」である。国民に議論させない、国民に知らせないまま、結果だけを押しつける、というのが安倍のやり方である。
*
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このブログで連載した「自民党憲法改正草案を読む」をまとめたものです。
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私は目が悪いのでテレビを見ない。衆院予算委/参院予算委の論戦の全体を知らない。新聞には「詳報」と言いながら、「抄報」というか「抜粋」しか掲載されていない。それを引用し、書くしかないのだが。
稲田のパーティー券白紙領収書問題を小池晃(共産党)が取り上げた。小池が白紙の領収書を利用し、同一人物が書いたものだと指摘して、「金額も稲田事務所で書いたもので間違いないか」と問いただしている。(引用は2016年10月07日読売新聞朝刊/西部版・14版)
稲田防衛相 主催者の了解のもとで稲田側で未記載の日付、宛名、金額を記載したものだ。パーティーの円滑な運営に支障が生じることから、面識のある間では、いわば委託を受けて参加者側が記載することがしばしばおこなわれている。
これに関連して、菅官房長官と高市総務相も答えている。
菅官房長官 主催者の了解のもとで(菅事務所で)記載している。政治資金規制法上、問題ないと思っている。
高市総務相 領収書の発行側の作成方法についての規定は法律上ない。主催団体が了解しているものであれば、法律上問題はないと考える。
こういう発言に「社会常識」をぶつけても、何の役にも立たない。
だから、私は違うことを指摘したい。
高市の「領収書の発行側の作成方法についての規定は法律上ない」、だから「法律上問題はないと考える」という考え方。
これを憲法にあてはめるとどうなるか。
(現行憲法)
第十九条
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
(自民党改正草案)
第十九条
思想及び良心の自由は、保障する。
第十九条の二
何人も、個人に関する情報を不当に取得し、保有し、又は利用してはならない。
現行憲法には「侵してはならない」という「禁止」がある。これは「国は(権力は)、侵してはならない」という意味。一方、改正草案には、その「禁止」がない。ここに高市の発言をあてはめるとどうなるか。「侵してはならない」と書いていないから、「侵しても、それは憲法上問題はない」ということになる。つまり、自民党改正草案は、国民の思想及び良心の自由をいつでも侵害すると言っているのに等しい。
さらに現行憲法にはない「第十九条の二」。ここには「不当に取得し、保有し、又は利用してはならない」とあるが、その禁止の対象者は「国」ではなく、「何人も」である。「国民」に対して「禁止」を定めている。「国」というのは「人」ではないから、「国は個人に関する情報を不当に取得し、保有し、又は利用してもいい」と言っているのである。個人情報を取得し、それをもとに、国民の「思想及び良心の自由は、これを侵してもいい」と言っているのだ。
そんなことは書いていない、というかもしれない。
しかし、国民が「個人情報を勝手に取得し、それをもとに自由を侵害するのは間違っている」と国を批判したら、どうなるのか。国は「国が国民の自由を侵害してはならないという規定は、憲法上ない。だから国が国民の自由を侵害しても、憲法上の問題は生じないと考える」という答えが返ってくるだろう。
法律(憲法)に、どこまで「ことば」を盛り込むか。これはむずかしい判断になるが、自民党は「国への禁止事項」を削除し、国民への「禁止」を増やしている。そこには
(改正草案)
第二十四条
家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。
という、現行憲法にはなかった「規定」があったりする。「家族は、互いに助け合わなければならない」はことばとしては美しいが、家族であってもわかれなければならない事態があるだろう。また助け合うことが困難なことがあるだろう。離婚するな、介護は「家族」で処理しろ、それが国民の義務だと言っていることになる。
国は社会福祉を切り捨てたいのである。
憲法問題については何度か野党が質問しているが、これに対して安倍は一貫して、
行政府の長として答弁に立っているので草案を解説するのは適切ではない
(2016年10月07日読売新聞朝刊/西部版・14版、4面)
と主張している。安倍は「憲法審査会で討議すべきだ」というのだが、その憲法審査会は開かれていない。つまり、討議のしようがない。だれにも、答えを求めることができない。
こんな質疑応答があっていいはずがない。
選挙のたびに「アベノミクス、アベノミクス」と言い続け、野党の経済対策では景気はよくならないと主張してきて、議席が改憲に必要な三部の二に達すると、「憲法改正は公約に書いてある。国民の信任を得ている」と言うのは「詐欺」である。国民に議論させない、国民に知らせないまま、結果だけを押しつける、というのが安倍のやり方である。
*
『詩人が読み解く自民憲法案の大事なポイント』(ポエムピース)発売中。
このブログで連載した「自民党憲法改正草案を読む」をまとめたものです。
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