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詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

池澤夏樹のカヴァフィス(19)

2019-01-07 10:23:18 | 池澤夏樹「カヴァフィス全詩」
19 ディオニュソス群像

 工匠ダモン(池澤の注によれば架空の人物)がディオニュソス群像をつくっている。前半はその群像の描写。後半は、一転して人間臭いことばが動く。

彼の思いはいく度となく報酬のことにおよぶ、
シュラクサの王より三タラント、たいした額だ
彼の持つほかの資産と合わせれば
向後は贅をつくして暮らせる筈。
そして政界にも乗り出せよう--この喜び!--
議会にも入れようし、アゴラにも立てようもの。

 内容(意味)は人間臭いが、ことばのリズムは論理的すぎるかもしれない。仕事をしながら金のことを考えるのだから、もっと飛躍というかスピード感があってもいいような気がする。
 いちばん気になるのが「彼の持つ」ということば。ふいに「客観的」なものがまじる。「論理的」すぎる。ダモン自身の思いならば、ここは「自分の持っている」ということになるだろう。自分というものは、ふつうは自分を意識しない。つまり、省略されたままことばは動く。「自分の」も省略して、「持っているほかの資産」となるのが「思い」というものだろうと私は想像する。「筈」と自分自身で納得しているのだから、きっと「自分」ということばは動かない。
 「たいした額だ」という口語のスピード(いきいきした感じ)が「彼の持つ」という妙に客観的なことばで、つまずいてしまう。
 詩を読んでいるというよりも、散文(論理)を読んでいるような気持ちになる。



カヴァフィス全詩
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