トランプ報道を読む(3)
自民党憲法改正草案を読む/番外270(情報の読み方)
2019年05月28日の読売新聞(西部版・14版)の一面の見出し。
これだけ読むと、見出しになるニュースは何もなかったのだなあ、とわかる。
日朝会談に「反対」と言うとしたら、それは「おれ(トランプ)の交渉に口を挟むな」と言うことであり、こういう場合は「支持する」としか言えない。「だいたい拉致問題は日朝の問題なのだから、おまえ(安倍)が責任を持て。おまえが解決しろ。おれにいちいち頼むな」と言うのがトランプの言い分だろう。
貿易交渉は「8月には発表する」と宣言しているのだから、「加速」も何もない。読売新聞の記事によれば、トランプは
とあるが、「両国にとって」というのは、とてもあいまいな言い方である。たとえば、アメリカの農産物に対する関税を撤廃する。アメリカの農家は農産品が売れるので収入が増える。日本の消費者はアメリカの農産品を安く変えるので、家計が助かる。アメリカの軍需品を日本が大量に購入する。アメリカの軍需産業は儲かる。日本は防衛力が高まる。これを「両国にとって良い」交渉結果と、トランプは言うことができる。
でもそれは逆の見方もできる。アメリカの安い農産品が大量に入ってくると日本の農産品は売れなくなる。日本の農家は打撃を受ける。アメリカの軍需品を大量購入する。そのとき、日本の福祉予算を減らし軍事予算にまわさないといけないかもしれない。日本の国民は、国を守るという名目で苦しい生活を強いられる。
どのような状況も立場が違えば評価も違う。「ことば」を読むときは、そのことばを「立場」に還元して読まないといけない。だいたい「外交」のことばは、「立場」を配慮した「あいまい」な部分があり、そこに「かけひき」のすべてがある。簡単に鵜呑みにしてはいけない。
だいたい、日朝会談をほんとうに支持していて、会談によって日朝の関係がよくなることを期待しているのだとしたら、アメリカが武器を日本に売りつける理由はどこにある? 日本が武器を買わなければならない理由は? 単に米軍需産業を設けさせるだけであり、日本は不必要な軍備を抱え込むということになる。
アメリカにとって好都合なことが日本にとって好都合というわけではない。
もし日本にとっても「良い発表」なら、参院選の前に発表した方が国民は安心する。自民党の支持も高まるだろう。日本にとっては「悪い発表」だから「8月」までのばすのだろう。
ほんとうに「見出し」として書くべく部分は、農産品をめぐる次の記事の中にある。
この記事はもっと踏み込めば、アメリカの農産品にかかる関税はTPPのものより低い、つまりオーストラリアなどから輸入されている肉よりも安い牛肉がアメリカから大量に輸入される。アメリカの畜産家はもうかり、日本の消費者も助かる。でも日本の畜産家は大打撃をうける、ということだ。
こういう「密約」だから参院選が終わるまでは公表できない。
書くべきニュースがなにもないから、3面の解説には、きのうは記事から取り下げた「イラン」がまた復活してきている。その見出し。
アメリカとイランは書く合意をめぐり対立している。アメリカはイランへの経済制裁を強めている。そのあおりで、日本はイランからの石油輸入が難しくなっている。困っているのは日本である。イランも日本に石油を輸出できなくなれば経済が苦しくなる。でも、日本とイランの経済問題は、アメリカには関係がないだろうなあ。トランプにしてみれば、石油が必要ならイランからではなく、アメリカから買えよ、と言うことにもなる。さらに、イランにしてみれば、単に経済の問題だけではなく、イスラエルとの関係があり、そのためにアメリカと対立している。さらにその先には新聞に書いていないパレスチナ問題がある。世界がほんとうに求めている「橋渡し」は、読売新聞には書かれていない「イラン-イスラエル」、あるいは「イスラエル-パレスチナ」の橋渡しである。パレスチナとどう向き合うか、中東の平和をどう実現するかである。安倍のやっていることは、トランプのご機嫌とりに過ぎない。イランは、いざとなれば石油を日本には売らないという「切り札」を出すこともできる。対イスラエル戦略の関係で、他の中東諸国も石油を日本に売らないということで歩調をあわせることだってありうるかもしれない。
アメリカとイランの対立関係は、アメリカと北朝鮮の対立関係とはまったく性質が違う。北朝鮮はアメリカと戦っているが、イランはアメリカと戦う前にイスラエルと戦っている。中東で起きていることを書かずに、「橋渡し」という美しいことばをばらまいても意味はない。
トランプについてまわるだけでは、何も成果が上げられない。安倍はただ「顔出し」の機会を増やすことだけに専念している。
#安倍を許さない #憲法改正 #天皇退位
*
「天皇の悲鳴」(1000円、送料別)はオンデマンド出版です。
アマゾンや一般書店では購入できません。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977
ページ右側の「製本のご注文はこちら」のボタンを押して、申し込んでください。
自民党憲法改正草案を読む/番外270(情報の読み方)
2019年05月28日の読売新聞(西部版・14版)の一面の見出し。
トランプ氏/日朝会談「前面支持」/日米首脳会談 貿易交渉を加速
これだけ読むと、見出しになるニュースは何もなかったのだなあ、とわかる。
日朝会談に「反対」と言うとしたら、それは「おれ(トランプ)の交渉に口を挟むな」と言うことであり、こういう場合は「支持する」としか言えない。「だいたい拉致問題は日朝の問題なのだから、おまえ(安倍)が責任を持て。おまえが解決しろ。おれにいちいち頼むな」と言うのがトランプの言い分だろう。
貿易交渉は「8月には発表する」と宣言しているのだから、「加速」も何もない。読売新聞の記事によれば、トランプは
「8月には両国にとって非常に良い発表ができるだろう」と述べた。
とあるが、「両国にとって」というのは、とてもあいまいな言い方である。たとえば、アメリカの農産物に対する関税を撤廃する。アメリカの農家は農産品が売れるので収入が増える。日本の消費者はアメリカの農産品を安く変えるので、家計が助かる。アメリカの軍需品を日本が大量に購入する。アメリカの軍需産業は儲かる。日本は防衛力が高まる。これを「両国にとって良い」交渉結果と、トランプは言うことができる。
でもそれは逆の見方もできる。アメリカの安い農産品が大量に入ってくると日本の農産品は売れなくなる。日本の農家は打撃を受ける。アメリカの軍需品を大量購入する。そのとき、日本の福祉予算を減らし軍事予算にまわさないといけないかもしれない。日本の国民は、国を守るという名目で苦しい生活を強いられる。
どのような状況も立場が違えば評価も違う。「ことば」を読むときは、そのことばを「立場」に還元して読まないといけない。だいたい「外交」のことばは、「立場」を配慮した「あいまい」な部分があり、そこに「かけひき」のすべてがある。簡単に鵜呑みにしてはいけない。
だいたい、日朝会談をほんとうに支持していて、会談によって日朝の関係がよくなることを期待しているのだとしたら、アメリカが武器を日本に売りつける理由はどこにある? 日本が武器を買わなければならない理由は? 単に米軍需産業を設けさせるだけであり、日本は不必要な軍備を抱え込むということになる。
アメリカにとって好都合なことが日本にとって好都合というわけではない。
もし日本にとっても「良い発表」なら、参院選の前に発表した方が国民は安心する。自民党の支持も高まるだろう。日本にとっては「悪い発表」だから「8月」までのばすのだろう。
ほんとうに「見出し」として書くべく部分は、農産品をめぐる次の記事の中にある。
日本政府は農産品の関税水準を環太平洋経済連携協定(TPP)と同程度に収めたい考えだが、トランプ氏は記者会見で「(米国が離脱した)TPPに縛られていない」とけん制するなど、貿易交渉を巡るずれが見られた。
この記事はもっと踏み込めば、アメリカの農産品にかかる関税はTPPのものより低い、つまりオーストラリアなどから輸入されている肉よりも安い牛肉がアメリカから大量に輸入される。アメリカの畜産家はもうかり、日本の消費者も助かる。でも日本の畜産家は大打撃をうける、ということだ。
こういう「密約」だから参院選が終わるまでは公表できない。
書くべきニュースがなにもないから、3面の解説には、きのうは記事から取り下げた「イラン」がまた復活してきている。その見出し。
日米会談/首相、橋渡し外交/「イラン緊張緩和」成果狙い
アメリカとイランは書く合意をめぐり対立している。アメリカはイランへの経済制裁を強めている。そのあおりで、日本はイランからの石油輸入が難しくなっている。困っているのは日本である。イランも日本に石油を輸出できなくなれば経済が苦しくなる。でも、日本とイランの経済問題は、アメリカには関係がないだろうなあ。トランプにしてみれば、石油が必要ならイランからではなく、アメリカから買えよ、と言うことにもなる。さらに、イランにしてみれば、単に経済の問題だけではなく、イスラエルとの関係があり、そのためにアメリカと対立している。さらにその先には新聞に書いていないパレスチナ問題がある。世界がほんとうに求めている「橋渡し」は、読売新聞には書かれていない「イラン-イスラエル」、あるいは「イスラエル-パレスチナ」の橋渡しである。パレスチナとどう向き合うか、中東の平和をどう実現するかである。安倍のやっていることは、トランプのご機嫌とりに過ぎない。イランは、いざとなれば石油を日本には売らないという「切り札」を出すこともできる。対イスラエル戦略の関係で、他の中東諸国も石油を日本に売らないということで歩調をあわせることだってありうるかもしれない。
アメリカとイランの対立関係は、アメリカと北朝鮮の対立関係とはまったく性質が違う。北朝鮮はアメリカと戦っているが、イランはアメリカと戦う前にイスラエルと戦っている。中東で起きていることを書かずに、「橋渡し」という美しいことばをばらまいても意味はない。
トランプについてまわるだけでは、何も成果が上げられない。安倍はただ「顔出し」の機会を増やすことだけに専念している。
#安倍を許さない #憲法改正 #天皇退位
*
「天皇の悲鳴」(1000円、送料別)はオンデマンド出版です。
アマゾンや一般書店では購入できません。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977
ページ右側の「製本のご注文はこちら」のボタンを押して、申し込んでください。