真っ青な空に銀色の円盤。ふわりと地上に降り立った。
中から現れたのは、これまた銀のスーツに身を包んだ異星人20名ほど。肌はうすい紫色ながら、目や耳と思われるものが2つ、口と思しきものが1つ、そして手と足がそれぞれ2本ずつ。白い歯まであり、それを見せながらにこやかな(と言っていいのだろう)表情で立っている。
基本的なところは人間とそう変わりない。生体構造の普遍性について、世界中の生物学者はもちろん、天文学者に哲学者たちの興味を大いに魅くこととなったのである。
耳から口にかけての装置を通して彼らが言うには、遠く離れたルテモという高度な文明を持つ星からやって来たのだそうだ。きれいな地球を見て、友好のために立ち寄らせてもらったとのこと。
「彼ら」と言ったが、実はオス/メスという区別はないようだ。詳しいことは分からないものの、必要に応じ、一匹の個体がオスになったりメスになったりできるとのこと。たしか魚にも、そういうのがあった。
それはともかく、彼らの美しく色っぽいことといったら。地球上の老若男女、どんな民族であれ誰もがとりこになるほど。宇宙的な意味でのエキゾチックさ、とでも言えばいいのか、あるいはニューハーフの艶めかしさ、いやそれ以上のものが、確かにあった。昔話に「絵にも描けない美しさ」というのがあったが、まさにそれ。(大人向けのショートショートなので、写真やイラストはありません。ここで皆さんにお見せできないのが、誠に残念)
当然マスコミが放っておくわけはなく、テレビやネット、新聞に雑誌はこぞって特集を組み、世界中で大々フィーバーが巻き起こったのである。
彼ら顔つきはそれぞれ少しずつ異なっていて、名前もある。発音はまた微妙に違うのだが「ミーニ」とか「クーム」とか呼び合っているようであった。
長年連れ添ったダンナに飽き飽きしている奥方たちはもとより、アイドルを追い掛け回していた若者も、新婚ほやほやの男女も、そして恋人のいる若いカップルでさえ、相手そっちのけで「レーヤ!」だの「ゴーシ!」だの口走る始末。普段冷静な評論家たちも「ナーハがいい」「ローヨだ」「いやいやイーフの方が」と言い争うほど。
その間もルテモ星からは次々と後続隊がやって来て、もてなす方は大わらわ。その後続の者たち、先発隊に比べ若干落ちるもののやはりいずれも美形揃い。
地球の男あるいは女と恋仲になった者もいたようだ。残念ながら“あそこ”の形状が異なるうえ、分厚い〈種の壁〉というものがあって子供ができることはなかったが、仮にできたとしたら一体どんなことになったろう。
彼らの生殖器官は、普段はスーツの中に納まっている長さ30センチほどの尻尾にどうやらあるらしい。何かで見たのだが、その先端はハート型になっており、カップルとなった者同士が、その際は倍以上の長さになるというお互いの尻尾を絡めてナニするとのこと。(まさに交尾…いや失礼)
ところで惚れたの腫れたのあると、自然痴話げんかというのも発生する。その流れで或る時、ルテモ星人がケガをしてしまい、血を流すはめとなった。その血が赤かったので、これまた生物学者たちの大いなる議論の的となったのである。
彼らの高度な科学技術を学ぼうと思い立った学者たちもいたにはいたが、その美貌に心奪われそれどころではない。
かくして、人類の数は見る見る減っていき、この美しい惑星・地球は、これまた美しいルテモ星人の住みかとなってしまったのである。思えば、あの尻尾の先はスペード型に見えなくも、ない。
ただ、高度な文明を持っている分、地球をこれ以上破壊せずに済んだのは、不幸中の幸いと言うべきか。
…相手の城を陥とすのに、これほど見事な手はない。敵ながらあっぱれ。
Copyright(c) shinob_2005
中から現れたのは、これまた銀のスーツに身を包んだ異星人20名ほど。肌はうすい紫色ながら、目や耳と思われるものが2つ、口と思しきものが1つ、そして手と足がそれぞれ2本ずつ。白い歯まであり、それを見せながらにこやかな(と言っていいのだろう)表情で立っている。
基本的なところは人間とそう変わりない。生体構造の普遍性について、世界中の生物学者はもちろん、天文学者に哲学者たちの興味を大いに魅くこととなったのである。
耳から口にかけての装置を通して彼らが言うには、遠く離れたルテモという高度な文明を持つ星からやって来たのだそうだ。きれいな地球を見て、友好のために立ち寄らせてもらったとのこと。
「彼ら」と言ったが、実はオス/メスという区別はないようだ。詳しいことは分からないものの、必要に応じ、一匹の個体がオスになったりメスになったりできるとのこと。たしか魚にも、そういうのがあった。
それはともかく、彼らの美しく色っぽいことといったら。地球上の老若男女、どんな民族であれ誰もがとりこになるほど。宇宙的な意味でのエキゾチックさ、とでも言えばいいのか、あるいはニューハーフの艶めかしさ、いやそれ以上のものが、確かにあった。昔話に「絵にも描けない美しさ」というのがあったが、まさにそれ。(大人向けのショートショートなので、写真やイラストはありません。ここで皆さんにお見せできないのが、誠に残念)
当然マスコミが放っておくわけはなく、テレビやネット、新聞に雑誌はこぞって特集を組み、世界中で大々フィーバーが巻き起こったのである。
彼ら顔つきはそれぞれ少しずつ異なっていて、名前もある。発音はまた微妙に違うのだが「ミーニ」とか「クーム」とか呼び合っているようであった。
長年連れ添ったダンナに飽き飽きしている奥方たちはもとより、アイドルを追い掛け回していた若者も、新婚ほやほやの男女も、そして恋人のいる若いカップルでさえ、相手そっちのけで「レーヤ!」だの「ゴーシ!」だの口走る始末。普段冷静な評論家たちも「ナーハがいい」「ローヨだ」「いやいやイーフの方が」と言い争うほど。
その間もルテモ星からは次々と後続隊がやって来て、もてなす方は大わらわ。その後続の者たち、先発隊に比べ若干落ちるもののやはりいずれも美形揃い。
地球の男あるいは女と恋仲になった者もいたようだ。残念ながら“あそこ”の形状が異なるうえ、分厚い〈種の壁〉というものがあって子供ができることはなかったが、仮にできたとしたら一体どんなことになったろう。
彼らの生殖器官は、普段はスーツの中に納まっている長さ30センチほどの尻尾にどうやらあるらしい。何かで見たのだが、その先端はハート型になっており、カップルとなった者同士が、その際は倍以上の長さになるというお互いの尻尾を絡めてナニするとのこと。(まさに交尾…いや失礼)
ところで惚れたの腫れたのあると、自然痴話げんかというのも発生する。その流れで或る時、ルテモ星人がケガをしてしまい、血を流すはめとなった。その血が赤かったので、これまた生物学者たちの大いなる議論の的となったのである。
彼らの高度な科学技術を学ぼうと思い立った学者たちもいたにはいたが、その美貌に心奪われそれどころではない。
かくして、人類の数は見る見る減っていき、この美しい惑星・地球は、これまた美しいルテモ星人の住みかとなってしまったのである。思えば、あの尻尾の先はスペード型に見えなくも、ない。
ただ、高度な文明を持っている分、地球をこれ以上破壊せずに済んだのは、不幸中の幸いと言うべきか。
…相手の城を陥とすのに、これほど見事な手はない。敵ながらあっぱれ。
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